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月夜の五線譜(仮設置)

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兄さんが帰ってきたので、状況報告

2008-03-13 13:36:00 | ノンジャンル
脳内ネタですので、付いて来れない方はスルー、それ以外の方は続きをどうぞw

朝8時前、昨夜は預けてしまった兄さんが気になって眠れず、ちょっと目がショボショボする。
いかん、人が来るというのに目の下にクマでは色々マズイ。
主に女子的な意味で。
初対面の印象くらい、少しはまともにしておかねば…

着替えを済ませて洗面所へ。
鏡を覗くと案の定、目の下に薄っすらとクマが見えた。
化粧なんて滅多にしないが、これは塗らずには誤魔化せるレベルではないので、顔を洗うと化粧ポーチを引っ張り出して、化粧をする。
…まあ、何とか自然に見える範囲だろうか。
軽く嘆息すると、部屋に戻ると隅の方でクッション類に埋もれるようにして寝ているミクを起こす(1DKという小さな家の中ゆえ、2人の寝る場の確保はこれが限界)
相変わらず眠そうだが、寝かせたままでは流石に体裁が悪い。
それにただでさえ広い部屋ではないので、数人の人間が居るだけで手狭な印象があるのだ。
デスクトップのパソコンを置いた大き目の机の上には、最近になって買い込み始めたDTMと作曲関係の本が積まれ、机の脇にあるチェストには、型の古い○AMAHA製のキーボードが置かれている(まあ、よく見ればゲーム機やらも数台有ったりもするのだが)
部屋のあちこちに可愛い小物が置いてあったりして、その辺だけ見れば実に女の子らしい部屋、かも知れないが…背の高い本棚と、机と向かい合わせたロフトベッドの下の本棚を埋める大量の蔵書のインパクトの方が強いのではなかろうか。
よく見れば、大半が漫画とジュニア小説。残りが絵の資料として買った本だ。
…部屋全体で見れば、実に雑多でちぐはぐに見えると言ってもいい。

「マスター、朝から完全武装して、これからおでかけですかぁ?」
ミクが不思議そうな顔をして私を見上げた。
…そんなに化粧が濃かっただろうか。
言われて、少し不安になる。
いきなり「ケバい」なんて印象持たれたら、当分浮上出来そうに無いではないか。
「兄さん、あれからお泊りしちゃったから、あちらの兄さんが送って来てくれるんだって」
「…そうなんですかぁ」
生あくびをしながら、答えるミク。
…本当に眠そうだな。
やっぱり寝かせ過ぎてたのが、いけないんだろうか…

時計は8時半を回った。
やっぱり落ち着かない。
朝食代わりの野菜ジュースを飲みつつ(朝は摂らないのだ)、時計を見る。
ちゃんと起きれただろうか、何かやらかしてないだろうか、そんなことばかりが頭をよぎる。
それを察したのか、そばに座ったミクがほんわかと言う。
「マスター、もう少し落ち着きましょうよぅ。兄さん見た目も中身も子供っぽいけど、それ以外は普通なんですからぁ」
(いや、子供っぽいんじゃなくて、あれは完全にお子様だから)
私は内心、その発言にツッコミを入れた。

「マスター、ただいま~!」
PCを通して2つの人影が現れた。
一つは言うまでもなく、我が家の世話のかかるお子様だw
うちの兄さんは床に降り立つなり、脇目も振らずに私の元へと走ってくる。
「おかえり、心配したんだからね?」
申し訳なさそうに、泣きそうな小さい声で彼は口を開いた。
「…約束破って、ごめんなさいマスター」
私を見上げる彼の頭を、いつもより乱暴に撫でた。
まったく、人が居る手前、盛大に説教なんて出来ないではないか…。
「しょうがないなぁ、おまけは今回だけだよ?」
肩をすくめて軽く溜息をつく。
パッと、その顔が安堵で笑顔になった。
「はいっ」
そして、私はこの小さなKAITOと共に現れた、もう一人の方に向き直る。
やっぱり背が高い。そして、確かにどこか無愛想ではあったけれど、冷たい印象はあまり感じなかった。
すっかり懐いてしまった、うちの兄さんの口ぶりがそう思わせているのかも知れなかったが。
いきなり自分の方を向かれて、相手は一瞬身構えた…本人もそれに気付いているのか、解らないくらいの僅かな反応だ。
彼が麒麟さんの家のKAITO。そして我が家の兄さんと同じ、ボーカロイドだ。
軽く会釈する彼に向かい、
「送ってきてくれて、どうも有難う」
私はにっこりと微笑んで、頭を下げた。
「…い、いえ、それほどの事ではありませんよ」
冷静を保とうとしているが、どことなく顔が緊張で少し強張っているように見える。
気付かない振りをして、笑みを崩さず一歩だけ前へ出た。
「まずは初めましてよね。私が望月うさ美。うちの兄さんがいつもお世話になってます」
そして、右手を差し出して付け足す。
「よろしくね」
私の視界の端の方で、ミクもそれに合わせて頭を小さく下げているのが見える。
いきなりすぎたのか、これには、あからさまに当惑しているのが見て取れた。
さっきから私の挙動に対して、彼の反応はほぼワンクッション置いて、である。
本当に、解り易い。
私は内心苦笑していた。
少し気安すぎただろうか、とも思いはしたけど、これくらいは慣れてもらわねば。
今後も何度か、顔は合わさなければならないのだろうし。
…それにしても、この右手の行き場はどうしてくれよう。
そう思った瞬間、
「はい、握手~」
間に入った小さなKAITOが、麒麟KAITOの手を引っ張って強引に握手を成立させてしまった。
ちょ、ちょっと兄さん、何すんの!
あぁ、固まってるよ。向こうの兄さんが。
これは早く話を打ち切って帰してあげないと、間違いなく許容オーバーする…。
さり気なく手を下ろして、私は半歩下がり、距離をとる。
「そ、それじゃ、麒麟さんに宜しくね。無理しないようにって、伝えておいて」
可哀想なので、切り上げようと、私は強引に話を〆る方向に持っていく。
本当は、お茶の1杯でも出してあげたかったのだが、長引くと、どんどん気の毒な事になってきそうだ。
「…あぁ、はい。マスターにはそのように伝えますね」
私の台詞に我に返ったのか、麒麟さんちのKAITOはどうにか落ち着いた表情に戻していた。
いや、むしろ挙動がどこか不自然になったような…?
そんな私の思考をよそに、名残惜しそうに、小さい兄さんがそんな彼の顔を見上げた。
「あの、僕、また行ってもいいですか?」
いつものおねだりの時の最強パターンだ。
この目で見上げられて、首を横に振れる人が居たら、教えて欲しいと言うくらいの超破壊力だという事に、本人はまるで自覚がないからこそ凶悪だと思う。
「マスターがいいというなら、な」
淡々とだが、その口調に嫌そうな響きは無い。
…ないのだが、やっぱり様子がおかしい。
そして、無理に微笑もうと失敗して、顔が引きつっている。
(笑えてない、笑えてないから、それ)
色々突っ込みたかったが、この場は黙っておく。

「お邪魔しました」
そう言って会釈すると、やってきた時と同じような唐突さで、我が家の住人を律儀に送ってきてくれた麒麟KAITOは、PCの中に消えていった。



ちょっとだけ付け加えると、この後うちの兄さんは私のお小言を15分ほど食らったのだけど、それは別の話だ。




(えっと、こんな感じで良かったですかね?)


望月側 淡々と近況報告

2008-03-13 03:06:00 | ノンジャンル
いわゆる脳内ネタ。
付いて来れる方のみ、続きをどうぞ。


昨日の11時ごろ、うちの兄さんが麒麟さんのお宅にお邪魔しに行きました。
…今あちらは追い込みで大変だと言ったのに、やっぱりどうしても行きたいと言うので、基本的に人に甘い私は、折れざるを得ませんでしたorz
と言うか、あの甘え方はいっそ卑怯と言うべきか…^^;
子犬に見詰められて、キュンキュンするような人なら、気持ちはよく解ると思います。

「傾けても崩れるものじゃないけど、気を付けて持って行くのよ?」
昨夜のうちに焼き上げていた、レモンを焼きこんだ甘酸っぱいケーキ(ホールにして4号サイズ)を箱に入れて、私は兄さんに持たせると、念を押すように繰り返す。
「いい?あちらは今、動画の作成のために忙しいのよ?歌の調声してるんだから、本当なら、あんたが行っても邪魔なだけなんだからね?」
「はい、大人しくいい子にしています」
この小さいKAITOは、数日前に麒麟さんの家にお邪魔して以来、すっかりそこのKAITOに懐いてしまっていた。
お世辞にも愛想がいい方ではない、とはマスターである麒麟さんの談だが、それでも懐いてしまったものは、懐いてしまった訳で。

「…それから」
「はい、なんでしょう?」
「あんまり長い時間、お世話にならないのよ?無理を言って頼んだんだから」
「はい、わかってます」
修羅場の最中にゴリ押しのように頼んだのに、それでも申し出を断わりもせず、受けてくれた事が申し訳なくて、私は埋め合わせには全然足りないとは思いつつも、ケーキを焼いて持たせて行くことにしたのだ。
確かに、私の立場からなら、兄さんのお願いを無効には出来た。
けれど、彼の仲良くなりたい、少しでもいいからお話しがしたい、そんな気持ちは理解出来たから、やっぱり無碍には出来なかった。
他者との繋がりは、時間を掛けて積み上げていくものだと、身をもって理解して欲しいと、マスターとしてというより、保護者としての気持ちが勝ってしまったせいかもしれない。

<以降、状況だけを説明>

昼前後に麒麟さんから忙しい合間を縫って、近況の報告を頂く。
とりあえず、大人しくジッとしているとの事で、少し安心する。
でも、先日応援に行かせた時よりも、ずっと心配になっているのは何でだろう…

午後に入って、仕事に出なければならないので、連絡はそこまでしか受け取れなかった。
気にはなったが、預けた以上、あちらにお任せするしかないので、仕事に専念する。
それから、仕事から帰って家に戻ってくると、まだ部屋の中は真っ暗だった。
「早く帰ってくると、言ったでしょうに…」
小さく呟く。
仕方なく、休眠していたミクを起こす。
最近寝っぱなしのせいか、とても眠そうに私を見上げ、「マスター、おはようございますぅ」と一言。
そしてすぐにKAITOの不在に気付き、「兄さんどこかにおでかけですかぁ?」とこれまた眠そうに言う。
帰宅を催促するのも気後れして、中々言い出せない間に日付が変わる。
ようやく連絡が入ったかと思ったら、どうやら向こうで寝付いてしまっていたらしい。
今晩のところは、あちらに預けるよりないようだ。
…とりあえず、明日帰って来たら、説教確定。

一応 私信。 その2

2008-03-12 10:19:00 | ノンジャンル
麒麟さんへ>
特に初回ですし、そちらの兄さんの負担を考えて、数時間で帰るよう言いつけておきました。
なお、今回お持たせにレモンケーキ(自作)持たせましたので、宜しければ。



そうそう、こちらから押しかけてばかりなので、そのうち逆の事も考えなくてはいけなくなって来そうですが、うちに来る方の話は、しばらく先でいいだろうなと思われます。
こちらにはミクもいるので、彼にとってはかなり煩いでしょうし、ああいうタイプは、環境変わると順応遅れがちになりますから、居場所なくて困るだろうと思うので。
まあ、やるなら手始めに届け物とかで、顔を合わせるとかからでしょうね…


KAITOからのお礼状

2008-03-10 10:29:00 | ノンジャンル
許可が出たので、こちらに私が差し上げた原文を掲載させて頂きますw
話がちゃんとあちらの日記とリンクしているのを、楽しんで頂ければ幸いです。
それではどうぞ~♪

こんにちは。
望月うさ美マスターのところのKAITOです。
(あ、あの、マスター…この後、なんて書けばいいんですか?え、思ったように書けばいいって
…そんな、こういうの初めてで、判りませんよ~;;)
あ…えっと、先日は大変お世話になりました。
マスター以外の他のマスターさんと、僕以外のKAITOに初めて会って、すごく緊張しましたけど、
優しくして頂いて、とても嬉しかったです。

えっと、家に帰って、マスターにそちらに伺ってからのことを、たくさんお話ししました。
そしたら、「そっか、麒麟さんのところの兄さんは、うちのにいさんの初めてのお友達なんだね」って
言って、たくさん撫でてくれました。
何だか不思議ですよね、同じKAITO同士でお友達って…。
でも、友達って、くすぐったくて温かくって優しい響きのする、素敵な言葉ですね。
マスターに言われてから、何度も繰り返して呟いてたら「お仕事でじゃなくて、遊びに行っても
いいんだよ」って、言ってもらえたので、またお邪魔しに行かせて貰えたらいいな、と思います。

それでは、また。      
                              2008.03.8  望月KAITO

望月家側  実況 その2

2008-03-10 10:22:00 | ノンジャンル
許可が出たので、こちらに私が差し上げた原文を掲載させて頂きますw
話がちゃんとリンクしているのを、楽しんで頂ければ幸いです。
それではどうぞ~

3月5日  20時半過ぎ

帰宅。
部屋に入って明かりを点けると、兄さんが眠ったままのミクの傍でしょんぼりしていた。
「あれ、今日は早くない?」
肩に掛けていたバックを置きつつ尋ねると、やっと私に気付いたのか驚いて顔を上げる。
「あ、マスター」
いつもなら、玄関の鍵を開けた段階で気付いて猛ダッシュしてくるため、それが無い段階で、
まだ帰ってないと思って私室のドアを開けたというのに、暗がりで体育座りされてて驚いたのは
こっちの方だ。
「どうしたのよ、麒麟さんのところに行ったんじゃなかったの?」
「…行きましたけど、今日は大丈夫だよって言われたので、早めに帰ってきました」
どこか言い淀んでいるような口調に気付いて、私はコートを脱ぎながら更に問いかける。
「何かあったの?」
「……」
(これは謝りに行って、更に拗らせたかな?)
一瞬どうしようかと考え、いい事に気付いてバックに手を突っ込んで、中から食べかけの
一口クッキーの袋を引っ張り出す。
「兄さんも、食べる?」
私は1枚取り出し口に放り込みつつしゃがみ、袋を差し出すと小さく頷きながら「はい」と答えて、
彼も手を伸ばして一つ取った。
クッキーを口に運んで、食べ始めたのを静かに見詰めながら、自分ももう一つ食べた。
この後夕飯なのだが、2,3個だし、まあ仕方ない。
しばらくして、俯いたまま兄さんは口を開いた。
「…マスター」
「ん?」
「…謝り損ねちゃいました」
「そっか…」
拗らす以前だったのには軽く呆れたものの、妙に納得もしてしまう。
彼は最初の頃から恥ずかしがり屋と言うか、少し緊張し易いところがあって、調声の時でさえ
声の出が遅れるのだ。
最近あげている仕事の内容が、普通に考えても恥ずかしい物だというのは、この際棚の上に上げて
置く。
「…KAITOさんに謝ろうと思ったんですけど…僕の顔も見てくれませんでした」
「なるほどね…でも、無視されようが、目を合わせてくれなかろうが、こういうのは、謝っちゃった
もの勝ちじゃない?」
「…そんなものでしょうか?」
「だって非があるのを認めて、誠心誠意頭を下げてるんだったら、それ以上は意地張ってる方が
悪いでしょ、違うのかな?…まあ、謝り方間違ってれば、話は別だけど」
「………」
「とにかく、明日はちゃんと謝って来なさいね。じゃないと、あんたも後味悪いでしょ?」
「はい」
少しだけ浮上したようで、返事は小さいが表情にいつもの明るさが戻ってきていた。
釣り込まれるように、こちらも自然と笑みが浮かぶ。
…が、ふと彼の傍に置きっぱなしにされた袋に気が付いて、顔が引きつった。
「…ちょっと、KAITO」
「な、何でしょうマスター」
私が兄さんを名前で呼ぶ時は、大抵いい事でではないことが多い。
それを知っていて、彼は反射的に身構えた。
「その袋、どれ位前からそのままよ?」
「…あ…っ!」
おろおろと視線を泳がせる。
「正直に言えば、情状酌量の余地くらいは認めるわよ?」
そう言ったのが効いたのか、僅かに逡巡したようだが、兄さんは意を決したように口を開いた。
「じゅ、14時過ぎくらいからです…」
「・・・・・・・・・」
「…マスター?」
「こンのばっかも~~~ん!!」
冬場だし、室内に暖房こそ入ってなかったが、そんなに長い時間放置していれば、流石にアイス
だって溶ける。
「…溶けたのをまた凍らしたアイスって、カッチカチに固まる上に不味いのよね」
聞こえるように、ボソリと呟いた。
「…」
シュンとうな垂れている兄さんは例のごとく目に涙を浮かべているが、ケジメは付けさせないと
いけない。
「こんなのを持って行かせる訳には行かないわ。今日中に代わりのを買ってきなさいね」
立ち上がりながら、私が溜息混じりにそう言うと、慌てて彼も立ち上がる。
「…は、はいっ」
「それと、この溶けたのはあんたが責任持って食べるように。…私は嫌だわ」
すっかり溶けてしまったアイスが入った袋を拾い上げ、台所へと向かって歩きだした私に倣って、
兄さんもまたその後ろから付いて来た。
「マスターごめんなさい。KAITOさんに謝ることが出来なくて、どうしたらいいのかわからなくて…
帰って来てからもずっと、まだ怒っているんだろうなとかって…ぐるぐるしてきちゃって…だから、
あのっ」
「…ホントに、今まで何から何まで私の事だけで一杯って感じだったのが、他の人の事もちゃんと
考えるようになったという意味では、行かせて正解だったのかもね」
成長した、という意味では嬉しい反面、どこか一抹の淋しさもあったけれど。


その後、アイスを買い直しに行かせたりした後、ほんの少しだけ調声作業をした。
喋りのではなく、歌の方だ。
でも「調声しようか」と言った直後に露骨に身構えられて、思わずドツキそうになったのは
ここだけの話。
翌朝は、揺すり起こす兄さんの声で目が覚めた。
「マスター、起きて下さい。朝になっちゃいましたよ?」
「ん~、今何時よ?」
「えっと、8時半回りました。あと20分ほどで約束の時間です」
「なっ、起こすなら、もっと早くに起こしてよ!」
「さっき、あと30分て、言ったじゃないですか…」
(ちょっ、寝ぼけて口走ったのか、そんな台詞)
慌ててムクリと起き上がる。
顔を上げると、眠気が抜けぬままの視界の中、ロフトベッドの梯子の上から私を見上げている
朝だと言うのに少し緊張の入り混じった浮かない顔の彼が見えて、うっかり気が滅入りかける。
「…えっと、とりあえず、兄さん…許してもらうまで帰って来なくていいから」
何を考えているのか想像がついたので、少しだけ弄ってみようと寝不足のテンションから口走ってみた。
「え、なっ、何でですかマスター?!」
ほんの冗談のつもりだったのだが、真に受けた兄さんは見る間に泣きそうな顔になる。
「あ、ああもうウソウソ、冗談だって…」
私は慌ててパジャマの袖で、彼がその瞳一杯に溜めた涙を拭い、…表情を引き締めた。
「しっかりしなさい、男でしょ?」
そして勢いよく指先でその額を弾く。いわゆるでこピンだ
「い、痛っ」
(それほど痛くはしなかったはずなんだが、やっぱり力の加減しにくいな…これ)
私は、立っている位置が高いので、どうやら怖くて手摺りから手が離せないらしい兄さんの顔に、
自分の顔を近付け…コツンと額をくっ付けた。
「わ、ちょ、ちょっと、ま…っま、ま…」
「…大丈夫、ちゃんと仲直り出来るよ。うちのKAITOはいい子なんだから」
額を離すと、茹りそうなほど顔を真っ赤にしている兄さんの頭を、いつものように撫でる。
「勇気出た?」
「…は、はいっ」
言いながら、ギクシャクと梯子を下りていくが、最後の1段というところで足を滑らせ、見下ろす
私の前で尻餅をついた。
「ちょっと、兄さん?!」
「へ、平気ですっ」
…声が激しく上ずって聞こえた気がするのは、抜け切らない眠気のせいではなかったはずだ。
(どうしてそんなに動揺するの…^^;)
そして、約束していた時刻。
両手に荷物を抱えて、私のPCの前に立つ兄さん。
「忘れ物ないよね?」
「はい」
「頑張っといで」
ひらひらと手を振る私に見送られて、彼は出かけて行った。