脳内ネタですので、付いて来れない方はスルー、それ以外の方は続きをどうぞw
朝8時前、昨夜は預けてしまった兄さんが気になって眠れず、ちょっと目がショボショボする。
いかん、人が来るというのに目の下にクマでは色々マズイ。
主に女子的な意味で。
初対面の印象くらい、少しはまともにしておかねば…
着替えを済ませて洗面所へ。
鏡を覗くと案の定、目の下に薄っすらとクマが見えた。
化粧なんて滅多にしないが、これは塗らずには誤魔化せるレベルではないので、顔を洗うと化粧ポーチを引っ張り出して、化粧をする。
…まあ、何とか自然に見える範囲だろうか。
軽く嘆息すると、部屋に戻ると隅の方でクッション類に埋もれるようにして寝ているミクを起こす(1DKという小さな家の中ゆえ、2人の寝る場の確保はこれが限界)
相変わらず眠そうだが、寝かせたままでは流石に体裁が悪い。
それにただでさえ広い部屋ではないので、数人の人間が居るだけで手狭な印象があるのだ。
デスクトップのパソコンを置いた大き目の机の上には、最近になって買い込み始めたDTMと作曲関係の本が積まれ、机の脇にあるチェストには、型の古い○AMAHA製のキーボードが置かれている(まあ、よく見ればゲーム機やらも数台有ったりもするのだが)
部屋のあちこちに可愛い小物が置いてあったりして、その辺だけ見れば実に女の子らしい部屋、かも知れないが…背の高い本棚と、机と向かい合わせたロフトベッドの下の本棚を埋める大量の蔵書のインパクトの方が強いのではなかろうか。
よく見れば、大半が漫画とジュニア小説。残りが絵の資料として買った本だ。
…部屋全体で見れば、実に雑多でちぐはぐに見えると言ってもいい。
「マスター、朝から完全武装して、これからおでかけですかぁ?」
ミクが不思議そうな顔をして私を見上げた。
…そんなに化粧が濃かっただろうか。
言われて、少し不安になる。
いきなり「ケバい」なんて印象持たれたら、当分浮上出来そうに無いではないか。
「兄さん、あれからお泊りしちゃったから、あちらの兄さんが送って来てくれるんだって」
「…そうなんですかぁ」
生あくびをしながら、答えるミク。
…本当に眠そうだな。
やっぱり寝かせ過ぎてたのが、いけないんだろうか…
時計は8時半を回った。
やっぱり落ち着かない。
朝食代わりの野菜ジュースを飲みつつ(朝は摂らないのだ)、時計を見る。
ちゃんと起きれただろうか、何かやらかしてないだろうか、そんなことばかりが頭をよぎる。
それを察したのか、そばに座ったミクがほんわかと言う。
「マスター、もう少し落ち着きましょうよぅ。兄さん見た目も中身も子供っぽいけど、それ以外は普通なんですからぁ」
(いや、子供っぽいんじゃなくて、あれは完全にお子様だから)
私は内心、その発言にツッコミを入れた。
「マスター、ただいま~!」
PCを通して2つの人影が現れた。
一つは言うまでもなく、我が家の世話のかかるお子様だw
うちの兄さんは床に降り立つなり、脇目も振らずに私の元へと走ってくる。
「おかえり、心配したんだからね?」
申し訳なさそうに、泣きそうな小さい声で彼は口を開いた。
「…約束破って、ごめんなさいマスター」
私を見上げる彼の頭を、いつもより乱暴に撫でた。
まったく、人が居る手前、盛大に説教なんて出来ないではないか…。
「しょうがないなぁ、おまけは今回だけだよ?」
肩をすくめて軽く溜息をつく。
パッと、その顔が安堵で笑顔になった。
「はいっ」
そして、私はこの小さなKAITOと共に現れた、もう一人の方に向き直る。
やっぱり背が高い。そして、確かにどこか無愛想ではあったけれど、冷たい印象はあまり感じなかった。
すっかり懐いてしまった、うちの兄さんの口ぶりがそう思わせているのかも知れなかったが。
いきなり自分の方を向かれて、相手は一瞬身構えた…本人もそれに気付いているのか、解らないくらいの僅かな反応だ。
彼が麒麟さんの家のKAITO。そして我が家の兄さんと同じ、ボーカロイドだ。
軽く会釈する彼に向かい、
「送ってきてくれて、どうも有難う」
私はにっこりと微笑んで、頭を下げた。
「…い、いえ、それほどの事ではありませんよ」
冷静を保とうとしているが、どことなく顔が緊張で少し強張っているように見える。
気付かない振りをして、笑みを崩さず一歩だけ前へ出た。
「まずは初めましてよね。私が望月うさ美。うちの兄さんがいつもお世話になってます」
そして、右手を差し出して付け足す。
「よろしくね」
私の視界の端の方で、ミクもそれに合わせて頭を小さく下げているのが見える。
いきなりすぎたのか、これには、あからさまに当惑しているのが見て取れた。
さっきから私の挙動に対して、彼の反応はほぼワンクッション置いて、である。
本当に、解り易い。
私は内心苦笑していた。
少し気安すぎただろうか、とも思いはしたけど、これくらいは慣れてもらわねば。
今後も何度か、顔は合わさなければならないのだろうし。
…それにしても、この右手の行き場はどうしてくれよう。
そう思った瞬間、
「はい、握手~」
間に入った小さなKAITOが、麒麟KAITOの手を引っ張って強引に握手を成立させてしまった。
ちょ、ちょっと兄さん、何すんの!
あぁ、固まってるよ。向こうの兄さんが。
これは早く話を打ち切って帰してあげないと、間違いなく許容オーバーする…。
さり気なく手を下ろして、私は半歩下がり、距離をとる。
「そ、それじゃ、麒麟さんに宜しくね。無理しないようにって、伝えておいて」
可哀想なので、切り上げようと、私は強引に話を〆る方向に持っていく。
本当は、お茶の1杯でも出してあげたかったのだが、長引くと、どんどん気の毒な事になってきそうだ。
「…あぁ、はい。マスターにはそのように伝えますね」
私の台詞に我に返ったのか、麒麟さんちのKAITOはどうにか落ち着いた表情に戻していた。
いや、むしろ挙動がどこか不自然になったような…?
そんな私の思考をよそに、名残惜しそうに、小さい兄さんがそんな彼の顔を見上げた。
「あの、僕、また行ってもいいですか?」
いつものおねだりの時の最強パターンだ。
この目で見上げられて、首を横に振れる人が居たら、教えて欲しいと言うくらいの超破壊力だという事に、本人はまるで自覚がないからこそ凶悪だと思う。
「マスターがいいというなら、な」
淡々とだが、その口調に嫌そうな響きは無い。
…ないのだが、やっぱり様子がおかしい。
そして、無理に微笑もうと失敗して、顔が引きつっている。
(笑えてない、笑えてないから、それ)
色々突っ込みたかったが、この場は黙っておく。
「お邪魔しました」
そう言って会釈すると、やってきた時と同じような唐突さで、我が家の住人を律儀に送ってきてくれた麒麟KAITOは、PCの中に消えていった。
ちょっとだけ付け加えると、この後うちの兄さんは私のお小言を15分ほど食らったのだけど、それは別の話だ。
(えっと、こんな感じで良かったですかね?)
朝8時前、昨夜は預けてしまった兄さんが気になって眠れず、ちょっと目がショボショボする。
いかん、人が来るというのに目の下にクマでは色々マズイ。
主に女子的な意味で。
初対面の印象くらい、少しはまともにしておかねば…
着替えを済ませて洗面所へ。
鏡を覗くと案の定、目の下に薄っすらとクマが見えた。
化粧なんて滅多にしないが、これは塗らずには誤魔化せるレベルではないので、顔を洗うと化粧ポーチを引っ張り出して、化粧をする。
…まあ、何とか自然に見える範囲だろうか。
軽く嘆息すると、部屋に戻ると隅の方でクッション類に埋もれるようにして寝ているミクを起こす(1DKという小さな家の中ゆえ、2人の寝る場の確保はこれが限界)
相変わらず眠そうだが、寝かせたままでは流石に体裁が悪い。
それにただでさえ広い部屋ではないので、数人の人間が居るだけで手狭な印象があるのだ。
デスクトップのパソコンを置いた大き目の机の上には、最近になって買い込み始めたDTMと作曲関係の本が積まれ、机の脇にあるチェストには、型の古い○AMAHA製のキーボードが置かれている(まあ、よく見ればゲーム機やらも数台有ったりもするのだが)
部屋のあちこちに可愛い小物が置いてあったりして、その辺だけ見れば実に女の子らしい部屋、かも知れないが…背の高い本棚と、机と向かい合わせたロフトベッドの下の本棚を埋める大量の蔵書のインパクトの方が強いのではなかろうか。
よく見れば、大半が漫画とジュニア小説。残りが絵の資料として買った本だ。
…部屋全体で見れば、実に雑多でちぐはぐに見えると言ってもいい。
「マスター、朝から完全武装して、これからおでかけですかぁ?」
ミクが不思議そうな顔をして私を見上げた。
…そんなに化粧が濃かっただろうか。
言われて、少し不安になる。
いきなり「ケバい」なんて印象持たれたら、当分浮上出来そうに無いではないか。
「兄さん、あれからお泊りしちゃったから、あちらの兄さんが送って来てくれるんだって」
「…そうなんですかぁ」
生あくびをしながら、答えるミク。
…本当に眠そうだな。
やっぱり寝かせ過ぎてたのが、いけないんだろうか…
時計は8時半を回った。
やっぱり落ち着かない。
朝食代わりの野菜ジュースを飲みつつ(朝は摂らないのだ)、時計を見る。
ちゃんと起きれただろうか、何かやらかしてないだろうか、そんなことばかりが頭をよぎる。
それを察したのか、そばに座ったミクがほんわかと言う。
「マスター、もう少し落ち着きましょうよぅ。兄さん見た目も中身も子供っぽいけど、それ以外は普通なんですからぁ」
(いや、子供っぽいんじゃなくて、あれは完全にお子様だから)
私は内心、その発言にツッコミを入れた。
「マスター、ただいま~!」
PCを通して2つの人影が現れた。
一つは言うまでもなく、我が家の世話のかかるお子様だw
うちの兄さんは床に降り立つなり、脇目も振らずに私の元へと走ってくる。
「おかえり、心配したんだからね?」
申し訳なさそうに、泣きそうな小さい声で彼は口を開いた。
「…約束破って、ごめんなさいマスター」
私を見上げる彼の頭を、いつもより乱暴に撫でた。
まったく、人が居る手前、盛大に説教なんて出来ないではないか…。
「しょうがないなぁ、おまけは今回だけだよ?」
肩をすくめて軽く溜息をつく。
パッと、その顔が安堵で笑顔になった。
「はいっ」
そして、私はこの小さなKAITOと共に現れた、もう一人の方に向き直る。
やっぱり背が高い。そして、確かにどこか無愛想ではあったけれど、冷たい印象はあまり感じなかった。
すっかり懐いてしまった、うちの兄さんの口ぶりがそう思わせているのかも知れなかったが。
いきなり自分の方を向かれて、相手は一瞬身構えた…本人もそれに気付いているのか、解らないくらいの僅かな反応だ。
彼が麒麟さんの家のKAITO。そして我が家の兄さんと同じ、ボーカロイドだ。
軽く会釈する彼に向かい、
「送ってきてくれて、どうも有難う」
私はにっこりと微笑んで、頭を下げた。
「…い、いえ、それほどの事ではありませんよ」
冷静を保とうとしているが、どことなく顔が緊張で少し強張っているように見える。
気付かない振りをして、笑みを崩さず一歩だけ前へ出た。
「まずは初めましてよね。私が望月うさ美。うちの兄さんがいつもお世話になってます」
そして、右手を差し出して付け足す。
「よろしくね」
私の視界の端の方で、ミクもそれに合わせて頭を小さく下げているのが見える。
いきなりすぎたのか、これには、あからさまに当惑しているのが見て取れた。
さっきから私の挙動に対して、彼の反応はほぼワンクッション置いて、である。
本当に、解り易い。
私は内心苦笑していた。
少し気安すぎただろうか、とも思いはしたけど、これくらいは慣れてもらわねば。
今後も何度か、顔は合わさなければならないのだろうし。
…それにしても、この右手の行き場はどうしてくれよう。
そう思った瞬間、
「はい、握手~」
間に入った小さなKAITOが、麒麟KAITOの手を引っ張って強引に握手を成立させてしまった。
ちょ、ちょっと兄さん、何すんの!
あぁ、固まってるよ。向こうの兄さんが。
これは早く話を打ち切って帰してあげないと、間違いなく許容オーバーする…。
さり気なく手を下ろして、私は半歩下がり、距離をとる。
「そ、それじゃ、麒麟さんに宜しくね。無理しないようにって、伝えておいて」
可哀想なので、切り上げようと、私は強引に話を〆る方向に持っていく。
本当は、お茶の1杯でも出してあげたかったのだが、長引くと、どんどん気の毒な事になってきそうだ。
「…あぁ、はい。マスターにはそのように伝えますね」
私の台詞に我に返ったのか、麒麟さんちのKAITOはどうにか落ち着いた表情に戻していた。
いや、むしろ挙動がどこか不自然になったような…?
そんな私の思考をよそに、名残惜しそうに、小さい兄さんがそんな彼の顔を見上げた。
「あの、僕、また行ってもいいですか?」
いつものおねだりの時の最強パターンだ。
この目で見上げられて、首を横に振れる人が居たら、教えて欲しいと言うくらいの超破壊力だという事に、本人はまるで自覚がないからこそ凶悪だと思う。
「マスターがいいというなら、な」
淡々とだが、その口調に嫌そうな響きは無い。
…ないのだが、やっぱり様子がおかしい。
そして、無理に微笑もうと失敗して、顔が引きつっている。
(笑えてない、笑えてないから、それ)
色々突っ込みたかったが、この場は黙っておく。
「お邪魔しました」
そう言って会釈すると、やってきた時と同じような唐突さで、我が家の住人を律儀に送ってきてくれた麒麟KAITOは、PCの中に消えていった。
ちょっとだけ付け加えると、この後うちの兄さんは私のお小言を15分ほど食らったのだけど、それは別の話だ。
(えっと、こんな感じで良かったですかね?)