内分泌代謝内科 備忘録

内分泌代謝内科臨床に関する論文のまとめ

2021/12/30

2021-12-31 08:47:18 | 日記
乳酸アシドーシス
NEJM 2014; 371: 2309-2319

1. 乳酸値は死亡の予測因子であり, 治療のメルクマールである.

・低灌流または敗血症に乳酸アシドーシスが伴う場合,死亡率は3倍近く上昇する(Crit Care 2006; 10: R22-R32).

・乳酸値が高いほど死亡率は高くなる(Crit Care 2010; 14: R25)

・蘇生後8時間まで乳酸値を2時間毎に20%以上低下させると,死亡率および合併症が低下する(Crit Care Med 2010; 182: 752-761).

2. 嫌気性呼吸で産生される乳酸は Cori cycle でグルコースに再変換される.

・骨格筋や赤血球における解糖によって生じた乳酸は肝臓(~7割)および腎臓に運ばれてグルコースに再変換(糖新生)される. この過程は Cori cycle として知られている.

・激しい運動をすると,乳酸の産生速度は数百倍に増加する.しかし, 乳酸のクリアランスは大きいので, 速やかに乳酸値は低下する(Acta Physiol (Oxf) 2010; 199: 499-508).

3.循環不全・組織低酸素が乳酸アシドーシスの主な原因である.

・低灌流になると乳酸が肝(および腎)に運ばれないために乳酸のクリアランスが低下する.また組織への酸素の供給が低下するために乳酸の産生量が増加する.このように循環不全・組織低酸素をともなう乳酸アシドーシスを type A, 循環不全・組織低酸素をともなわない乳酸アシドーシスを type B と分類する.

・type A の乳酸アシドーシスの原因としては, 心原性ショック, 低容量性ショック, 出血性ショック, 敗血症性ショック,重症心不全があり,乳酸アシドーシスの原因の大部分を占める(Crit Care 2011; 15: R238).

敗血症においては循環不全がなくても乳酸クリアランスが低下することが知られており,ピルビン酸脱水素酵素の機能障害が原因かもしれない(Am J Respir Crit Care Med 1998; 157: 1021-1026).

4.メトホルミンによる乳酸アシドーシスは極めて稀である.

・メトホルミンによる乳酸アシドーシスは type B に分類される.メトホルミンは肝の糖新生を抑制する作用をもつ(NEJM 1998;
338: 867-872)ので, 乳酸のクリアランスを低下させ得る.

・メトホルミンの使用者における乳酸アシドーシスの発症頻度は 3件/10万人・年で極めて少ない.このうちメトホルミンが直接の原因だったと考えられるのは半数以下であり, 循環不全や組織低酸素など乳酸アシドーシスのリスクを抱えていた例が過半数だった(『糖尿病学』(西村書店)2015, pp. 362).

・腎不全患者や高齢者, 循環不全・低酸素血症の存在が疑われる場合(心不全の急性増悪など)にはメトホルミン投与を控えることが重要.

5.乳酸アシドーシスの明確な診断基準は存在しない.

・呼吸性アルカローシス/アシドーシス,代謝性アルカローシス/アシドーシスが併存する状況がしばしばあるので, pH や HCO3
の値をもって乳酸アシドーシスの診断基準を一義的に定義することは難しい.

・重症の循環呼吸器疾患,敗血症,重症外傷,循環血漿量の低下が存在することは,乳酸アシドーシスを疑う重要な手がかりになる.

・アニオンギャップの開大は診断の手がかりになるが, 乳酸値が 5-10 mmol/L だった患者の50%でアニオンギャップが開大していなかったとする報告もある(Crit Care Med 1990; 18:275-7).

臨床的に乳酸アシドーシスの合併を疑う場合は積極的に乳酸を測定することが重要.

6.乳酸アシドーシスの治療の基本は十分な輸液

・十分に輸液を行い,組織低灌流を改善させることが乳酸アシドーシスの治療の基本である.

・プロトンの除去に最も重要な緩衝系は重炭酸緩衝系である.

H+ + HCO3- ⇄ H2CO3 ⇄ H2O + CO2

低灌流のために末梢組織の CO2 貯留があると,上式の平行は左に移動し,プロトンを効果的に除去できない.

・通常, 静脈血の pCO2 は動脈血の pCO2 よりも 6 mmHg 高い.pCO2 (静脈血) - pCO2 (動脈血) > 6 mmHg であれば,末梢組織の CO2 貯留があると判断できる.その場合は十分に輸液を行って組織低灌流を改善させるべきである(ハルペリン
病態から考える電解質異常 第1版(ELSEVIER)2018, pp. 12-15).

7. 生理食塩水による輸液はCl 負荷による急性腎障害を引き起こすかもしれない.

・生理食塩水による輸液はCl 負荷による急性腎障害を引き起こすかもしれない(JAMA 2012; 308: 1566-1572).

生理食塩水による輸液はアニオンギャップ非開大性アシドーシスを引き起こす可能性もあり(Crit Care Med 2007; 35: 2390-2394),Caイオン濃度を低下させて心機能を低下させる可能性も指摘されている(Ann Intern Med 1990; 112: 492-498).

・乳酸リンゲル液(ラクテック, ハルトマン)や酢酸リンゲル(ヴィーンF)は生理食塩水よりも体液組成に近く,アニオンギャップ非開大性アシドーシスは引き起こさない.乳酸イオンや酢酸イオンは代謝されて重炭酸イオンに変換されるので,代謝性アルカローシスは来し得る(NEJM 2013; 369: 1243-1251).

・重症患者に対して乳酸リンゲルや酢酸リンゲルを投与した場合, 生理食塩水を投与した場合に比べて,腎代替療法が必要になる患者が少なかったという報告がある(JAMA 2012; 308: 1566-1572). しかし,これについては異論もある(Am J Kidney Dis 2013; 62: 20-22).

・乳酸リンゲルを多量に投与すれば血清乳酸値は上昇し得るが, 乳酸クリアランスの異常がなければ通常は軽度の上昇に留まる(Crit Care Med 1997; 25: 1851-1854).

8.重炭酸イオン投与は有害である可能性がある.

重炭酸イオン投与が死亡率低下や循環動態の改善に寄与するかどうかは分かっていない(Crit Care 2011; 15: R238).
重炭酸イオン投与によって, ①CO2貯留が増悪する可能性があり,
pH上昇による遊離Caイオン濃度の低下で心機能に影響を及ぼす可能性がある(Nat Rev Nephrol 2012; 8: 589-601, Ann Intern Med 1990; 112: 492-498).

2021/12/28

2021-12-28 21:22:51 | 日記
多発性内分泌腫瘍症1型 (multiple endocrine neoplasia type 1: MEN1) のレビュー。
JCEM 2018; 103: 1296-1301

原発性副甲状腺機能亢進症(primary hyperparathyroidism: PHPT) を診断した場合にどのように多発性内分泌腫瘍症をスクリーニングするべきかについてはずっとすっきりしないと思っていた。

MEN2 については発症年齢が若く(MEN2A は30歳台、MEN2B は小児期)、ふつう甲状腺髄様癌が発端で診断される(PHPT が発端になることは稀)ので、MEN2 のスクリーニングが必要になることはほとんどない。そうすると、主に MEN1 をスクリーニングすれば良いことになりそうだが、MEN1 のスクリーニングはどのようにすれば良いのかはよく分からない。そこで、MEN1 の総説を読んでみた。

1. 神経内分泌腫瘍 (neuroendocrine tumor: NET) のスクリーニング

MEN1 では前腸に由来する神経外胚葉性腫瘍 (胸腺カルチノイド、気管支カルチノイド、胃カルチノイド、十二指腸ガストリノーマ、非機能性膵島腫瘍、インスリノーマ)を合併し、死因の 50%になる。多くの NET はクロモグラニン A と膵臓ポリペプタイド (pancreatic polypeptide: PP) を過剰分泌するので、これらは NET のマーカーとなり得る。最近の MEN1 の診療ガイドラインでは、膵臓のNETのスクリーニングのために年に1回のクロモグラニン A と PP、グルカゴン、血管作動性腸管ペプチド (vasoactive intestinal peptide: VIP) の測定を勧めている。しかし、この推奨の根拠となっているのは確定された腫瘍についての知見であり、これらのマーカーが NETの早期診断に役立つかどうかには疑問がある。実際、2つの後ろ向き観察研究では、クロモグラニンA、PP、グルカゴン単独または組み合わせは腫瘍の早期診断には役立たなかった。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6276662/

2021/12/27

2021-12-27 23:34:20 | 日記
骨粗鬆症治療薬のレビュー
Lancet Diabetes Endocrinol 2017; 5: 898-907

1. SERMs

1940年代に Fuller Albright が女性の骨代謝におけるエストロゲンの重要なはたらきを発見してから、エストロゲンを骨粗鬆症の治療に用いることが試みられてきた。

Womens Health Initiative では、閉経後の女性にエストロゲンを投与すると、5.6年間の観察期間で骨折のリスクを 24% 減らすことが示された。しかし、エストロゲンは子宮内膜過形成の他、乳癌や心血管疾患を増やすことが明らかになった。

そこで、骨のエストロゲン受容体に選択的に作用する薬剤として開発されたのが、選択的エストロゲン受容体調整薬(selective oestrogen recepter modulator; SERM) である。ラロキシフェンは椎体骨折は減らすが、椎体以外の骨折は減らさない。また乳癌のリスクは減っているが、ホットフラッシュと静脈血栓症の副作用がある。


2. カルシトニン

現在、ヒト由来のカルシトニンとサケ由来のカルシトニンが骨粗鬆症の治療薬として使用できる。両者で効果に差はない。

他の骨粗鬆症治療薬と比べて骨折予防の効果が劣り、長期使用で癌が増える可能性があることから、あまり使用されていない。


3. ビスホスホネート

世界で最もよく使われている骨粗鬆症治療薬。骨粗鬆症に対しては、アレンドロン酸、リセドロン酸、イバンドロン酸、ゾレドロン酸の4種類が使用できる。

椎体骨折を4-7割、大腿骨頚部骨折を4-5割減らせる。副作用に非定型大腿骨骨折と顎骨壊死がある。5年以上使用した場合の効果はよく分かっていない。

もともとビスホスホネートは主に腐食防止剤として使用されていた。他にも繊維の錯化剤、肥料、石油工業で用いる試薬として使用されていた。その後、石灰化と骨吸収を抑制する作用があることが分かり、臨床応用された。

薬理は臨床応用から何十年も経ってから明らかになった。ビスホスホネートはファルネシル二リン酸合成酵素の活性を阻害する。この酵素はイソプレノイド合成を触媒し、破骨細胞の生存と機能に必要な単量体G 蛋白の翻訳後修飾に関わる。


4. テリパラチド

Fuller Albright は臨床での観察からパラトルモンは慢性的に過剰な場合は骨吸収を促進させるが、骨形成を促進する作用もあると報告している。その後、ヒトや動物での研究で間歇的にパラトルモンを投与した場合、骨吸収以上に骨形成が促進されることが分かった。なぜ間歇的に投与すると骨形成が促進されるのかは分かっていない。

パラトルモンのアナログであるテリパラチドを20mcg/day で投与すると、椎体骨折が 65%、椎体以外の骨折が 53%減った。強い骨折予防効果があるが、骨肉腫を増やす可能性(ラットを用いた動物実験の結果による)から FDA は 24ヶ月以上の使用は認めていない。しかし、市場後調査ではテリパラチドの使用後に骨肉腫が増えたという報告はない。

最近、第2世代パラトルモンアナログ製剤(正確には PTHrP アナログ)のアバロパラチド(商品名: オスタバロ)が承認された(日本は 2021/3 承認)。


5. デノスマブ

2000年は骨粗鬆症治療薬創薬の分水嶺というべき年だった。2000年以前の骨粗鬆症治療薬はビスホスホネートのような偶然の産物か、骨代謝に関わるホルモンそのもの、あるいはその類似物だった。2000年以降の新しい骨粗鬆症治療薬は1990年代後半に飛躍的に進歩した骨代謝のしくみ(リンク2参照)の理解に基づいている。この新しい骨粗鬆症治療薬の元祖がデノスマブである。

骨代謝の理解についての進歩は骨代謝と関係ない研究領域からもたらされた。

ラット胎児の腸管に発現している遺伝子の cDNA ライブラリから TNF 受容体スーパーファミリーに属する新しい受容体が発見された。この遺伝子をマウスで過剰発現させると骨量が増加した。これより、新しい受容体はラテン語で「骨を守る」という意味のオステオプロテグリン(OPG)と名づけられた。

OPG を特異的に発現抑制すると、重度の骨粗鬆症と石灰化を認めた。これより、OPG は骨代謝で重要なはたらきをしていると考えられ、リガンドの探索が行われた。こうして同定されたリガンドが RANKL である。

RANKL は骨芽細胞や骨細胞に発現しており、破骨前駆細胞に発現している RANK と結合することで破骨細胞の分化を誘導する。OPG はRANKL のデコイ受容体(結合はするが、シグナルは伝えない受容体)だった。

以上の骨代謝のしくみを元に開発されたヒト抗 RANKL モノクローナル抗体がデノスマブである。FREEDOM trial ではデノスマブは椎体骨折を68%、大腿骨頚部骨折を40%減らした。


6. アバロパラチドとテリパラチド

パラトルモンアナログ製剤は強い骨折予防効果を持つが、骨形成と同時に骨吸収を促す。

パラトルモン受容体1型には、R0 と RG の2つのコンフォメーションがあり、前者は比較的長時間 cAMP 濃度を上昇させるのに対し、後者はより短時間 cAMP 濃度を上昇させる。アバロパラチドはテリパラチドと比較すると RG と高い親和性がある。そのため、アバロパラチドの方が短時間の受容体刺激ができるので、骨形成を誘導しやすいのではないかと予想された。

実際、第2相試験では椎骨および大腿骨頚部の骨密度はテリパラチド 20 mcg/day でそれぞれ 5.5%、1.1% 上昇させたのに対し、アバロパラチド 80 mcg/day では 6.7%、3.1%上昇させた。

第3相試験では、アバロパラチド 80 mcg/day はテリパラチド 20 mcg/day と比較して画像上の大骨折が 65% 少なかった。ただし、臨床的な骨折および非椎体骨折については有意差は認めなかった。


7. 新しい骨粗鬆症治療薬

骨硬化症および van Buchem's 病は骨量の増加と骨折しにくさを特徴とする稀な疾患である。いずれも Wnt シグナル経路のインヒビターであるスクレロスチンの機能欠失性変異で起こる。そこで新しい骨粗鬆症治療薬として、スクレロスチンの阻害薬が開発されている。同じく Wnt シグナル経路のインヒビターである DKK-1 も治療標的となっている。

スクレロスチンに対するモノクローナル抗体であるロソモズマブの第2相試験では、12ヶ月の観察期間で偽薬、アレンドロン酸、テリパラチドとの間で骨密度の変化が比較された。その結果、ロソモズマブは骨密度を椎体で11.3%、大腿骨頚部で4.1%増加させ、アレンドロン酸やテリパラチドよりもより大きく骨密度を増加させた。

第3相試験では、骨粗鬆症の閉経後女性7180名を対象に12ヶ月の観察期間で骨折の頻度を偽薬と比較した。その結果、ロソモズマブでは骨折が73%少なかったが、臨床的な骨折の85%超を占める非椎体骨折については有意差がつかなかった。またロソモズマブ投与群で顎骨壊死2例、非定型大腿骨折1例を認めた。骨折減少効果は投与開始3ヶ月後から認めるので間歇投与でも良いかもしれない。

さらに、アレンドロン酸やテリパラチドと治療効果を比較する第3相試験が行われた。


8. ビスホスホネートの副作用

ビスホスホネートの副作用として非定型大腿骨折と顎骨壊死があるが、いずれも稀である。

非定型大腿骨折の発症率は 3.2-50/10万・人である。骨折のリスクが高い骨粗鬆症患者では、ビスホスホネートの使用による非定型大腿骨折1例あたり50-8000例の骨粗鬆症性骨折を予防できる。非定型大腿骨折の前駆症状としては、鼠径部や臀部の疼痛がある。

顎骨壊死はビスホスホネートを処方されている患者 1-10万に1例の頻度で起こる。予防のためには口腔内の衛生を保つことが重要。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5798872/

骨代謝のしくみ
https://seikagaku.jbsoc.or.jp/10.14952/SEIKAGAKU.2019.910529/data/index.html

2021/12/26

2021-12-26 12:58:32 | 日記
多発性内分泌腫瘍症2型のレビュー

1. MEN2A

MEN2 は30歳台で甲状腺髄様癌を発端として発症することが多い。原発性副甲状腺機能亢進症が発端になることは稀である。

MEN2A は遺伝性甲状腺髄様癌の8割を占める。髄様癌は必発で、RET変異のタイプによるが褐色細胞腫は~5割、副甲状腺腺腫は~3割で出現する。他にも皮膚苔癬アミロイドーシスやヒルシュスプルング病、稀に角膜神経過形成を認める。

髄様癌は神経堤由来C 細胞から発生する。孤発性髄様癌はふつう片側性だが、遺伝性髄様癌は多中心性で両葉の上中部に多発していることが多い。

褐色細胞腫は MEN2A および MEN2B の50%で出現する。診断時の年齢の平均は36歳で、髄様癌が先行する場合が50%、同時の場合が40%、褐色細胞腫が先行する場合が10%。65%は両側性・多発性で、片側の場合でもふつう10年以内に対側に褐色細胞腫が出現する。

副甲状腺機能亢進症は MEN2A の 20-30%で出現する。診断時の年齢の平均は 36歳で、髄様癌と同時に発見されることが多い。副甲状腺機能亢進症が先行するのは 5%未満である。高 Ca 血症はふつう軽度で、85%は無症候性である。1~4腺が腫大している。

皮膚苔癬アミロイドーシスは MEN2A の 10%に出現する。T2-T6 のデルマトームの背側、つまり肩甲骨のあたりの皮膚に出現することが多い。小児期に出現することもあり、最初の症候になり得る。

ヒルシュシュプルング病は MEN2A の 7% に出現する。神経堤由来の細胞が腸管神経叢にうまく分化できなかったことによって起こる。面白いのは、髄様癌や褐色細胞腫は RET の恒常的な活性化で起こるが、腸管神経叢の分化は RET の作用不足で起こる。矛盾しているようだが、神経前駆細胞の変異 RET は細胞表面の発現量が低下するので、神経への分化誘導に十分なシグナルが入らないためだろうと考えられている。


2. MEN2B

MEN2B は小児期に診断されることが多く、予後不良。50%は家族歴がなく、特徴的な身体所見から疑えることが重要。

MEN2B は遺伝性髄様癌の5%を占める。診断時の平均年齢は 14.2 歳。褐色細胞腫を合併し、口唇が厚い特徴的な顔貌(リンク2参照)とマルファン様体型、眼の異常(角膜神経肥厚、乾性角結膜炎、涙を流して泣くことができない)、筋骨格系の異常(四肢の屈曲、大腿骨頭すべり症)、全身の神経節神経腫(リンク3参照)を認める。

90%以上で消化器症状(腹痛、便秘ときに下痢、腹部膨満、巨大結腸)があり、特に小児、若年成人で顕著。しばしば外科的治療が必要になる。

MEN2B の髄様癌はたいへん悪性度が高く、治癒切除が期待できる時期は限られている。したがって、小児科医は特徴的な身体所見から MEN2B を疑えることが大切。しかし、ベストなタイミングで手術できたとしても予後は厳しい。

50%が新規の生殖系列細胞の変異によることも早期診断を困難にする。この場合、変異遺伝子は父親由来である。

3. 家族性甲状腺髄様癌

遺伝性髄様癌の15%を占める。MEN2A や MEN2B に比べると発症年齢が高く、予後も 良い。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5399478/

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5399478/

MEN2B の顔貌
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0278239114013846

MEN2B の神経節細胞腫
https://www.semanticscholar.org/paper/Multiple-endocrine-neoplasia-type-2.-Lodish/e5c0fec49cc6e8674e1846029a2b2aa5d4752e58/figure/0

2021/12/25

2021-12-25 15:47:16 | 日記
自己免疫性膵炎に対するステロイド治療の血糖コントロールへの影響を検討した小規模 (n=69) 観察研究
Gut Liver 2012;6:501-504

自己免疫性膵炎の半数弱で糖尿病を合併していた。ステロイド治療開始3ヶ月後の評価では5-6割で血糖コントロールが改善、1割前後で悪化した。

他の同じような観察研究でも同様の傾向で、多くの場合ステロイド治療で血糖コントロールは改善する。

ちなみに、自己免疫性膵炎に対するステロイド治療の効果は速やかに認めるそうで、ステロイド治療開始から 1-2週間で膵腫大は改善し始め、3-4週後には正常のサイズに戻るそう。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3493733/