内分泌代謝内科 備忘録

内分泌代謝内科臨床に関する論文のまとめ

2022/08/05

2022-08-05 22:18:17 | 日記
横紋筋融解症で入院した患者において低ナトリウム血症と横紋筋融解症との関係を検討した横断研究
J Clin Med 2022; 11: 3215

低ナトリウム血症は横紋筋融解症の危険因子ではないかと言われているが、両者の関係はよく調べられていない。また、両者が関連しているように見えるのは交絡因子のせいかもしれない。

そこで著者らは横紋筋融解症患者における低ナトリウム血症の頻度と関連の強さ、患者の特徴を調べるために横断研究を行った。

横紋筋融解症で入院した成人患者 870名のクレアチニンキナーゼの中央値は 4064 U/L (四分位範囲 1921-12002 U/L) だった。血清ナトリウム濃度に対して log クレアチニンキナーゼをプロットすると、低ナトリウム血症と高ナトリウム血症でクレアチニンキナーゼが高値になる U 字型の分布になった (リンク参照)。

横紋筋融解症で入院した患者における軽度 (130-134 mEq/L) 、中等度 (125-129 mEq/L)、重度 (く125 mEq/L) 低ナトリウム血症の頻度はそれぞれ、9.4%、2.5%、2.1%だった。

高ナトリウム血症のものを除いて多重回帰分析を行った (n = 809) 。血清ナトリウム濃度正常 (135-145 mEq/L) の群を対照として、年齢、アルコール摂取量、違法薬物の使用、糖尿病、精神疾患の合併の有無で調整すると、血清ナトリウム濃度が低下するにつれ、カテゴリーを移動する毎に 25%ずつクレアチニンキナーゼ濃度が増加した (リンク参照)。

横紋筋融解症の原因はひとつでないことがふつうである。低ナトリウム血症の患者では、一般集団に比してアルコール依存症患者と精神疾患患者が多い。これらの患者では向精神薬や違法薬物を服用していることが多いので、横紋筋融解症を来しやすいということもあるだろう。

血清ナトリウム濃度とクレアチニンキナーゼ濃度との関係
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/instance/9181719/bin/jcm-11-03215-g003.jpg

年齢、アルコール、違法薬物、糖尿病、精神疾患で調整した後の血清ナトリウム濃度とクレアチニンキナーゼ濃度の関係
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/instance/9181719/bin/jcm-11-03215-g004.jpg

元論文
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35683602/