慢性腎臓病におけるインスリン抵抗性についての総説
Am J Physiol Renal Physiol 2016.
インスリン抵抗性は慢性腎臓病の初期から認める代謝異常で腎機能が低下し始める前から出現し、終末期腎不全に至る頃にはほとんど全ての患者で認める。
インスリン抵抗性の評価には空腹時のインスリン測定が簡便だが、腎機能が低下すると腎におけるインスリンクリアランスが低下するため評価が難しい。正常血糖グルコースクランプはインスリン抵抗性の評価のゴールドスタンダードであり、筋肉のインスリン抵抗性も評価できる。
慢性腎臓病においては主に骨格筋のインスリン抵抗性が亢進し、インスリン受容体以外の要素が関係していると考えられている。
原因はひとつではなく、活動性の低下、慢性炎症、酸化ストレス、ビタミンD 欠乏、代謝性アシドーシス、貧血、アディポカインの異常、腸内細菌叢の変化などが関与すると考えられている。
インスリン抵抗性は慢性腎臓病の増悪因子でもあり、交感神経系の亢進やナトリウム貯留、ナトリウム利尿ペプチド系の抑制などのメカニズムを介して腎血流を低下させると考えられている。
インスリン抵抗性はまた、心室肥大、血管の機能障害、動脈硬化などのメカニズムを介して慢性腎臓病と心血管疾患とを結びつけている。しかし、インスリン抵抗性が慢性腎臓病における心血管疾患や死亡のリスクを予測する独立したリスク因子であるかどうかはまだ分かっていない。
インスリン抵抗性は介入可能な因子であり、インスリン抵抗性を解除することによって慢性腎臓病における心血管疾患のリスクを低下させることが可能なのではないかと期待されている。慢性腎臓病におけるインスリン抵抗性の病態生理が明らかになれば、新しい治療標的になるかもしれない。
https://journals.physiology.org/doi/full/10.1152/ajprenal.00340.2016?rfr_dat=cr_pub++0pubmed&url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori%3Arid%3Acrossref.org