レビュー

音楽や書籍に関するフェイバリットの紹介とそのレビュー。

ロバート・グラスパー

2015-07-30 11:22:30 | 日記


すき、と決めたらまっしぐら。
その人物のCD(データじゃヤ!)をぜーんぶ手に入れて耽溺してみる、大人買いのジャズ聴きです、わたくし。
さて、ロバート・グラスパーは、殺し屋みたいな風体のひとです。
実際、何人かを半殺しくらいにはしてるにちがいないんですが(推察)、にも関わらず、なんとなく今の音楽界は「このひとのもの」って雰囲気になってまして。
世界を獲ったったでー、という、いわばギャング界でいうところのドンですね。
とりあえず、現代ジャズ界における最近の最重要人物です。
なのに、現場でからだを張る鉄砲玉の方がお似合いの・・・まあ言っちゃ悪いけど、ワルい顔のひとです。
そんなたたずまいなのに、ピアノと音楽性に関しては洗練が行き届いてます。
頭脳も明晰なんだろうなー、を思わせる音使いです。
そして、そんな確かな才能をベースにして、相当にリスキーな冒険と実験をくり返すギャンブラーでもあります。
そんな仕事っぷりで、ことごとく当ててるわけです。
当ててる、ってのも的を射てないな、つまり、時代にのっかった、ってよりか、時代に半歩進んでる音楽性なのですよ。
アグレッシブ&プログレッシブ。
そのピアノは、まさしく自由自在。
今ぼくは、ジェリ・アレンと、ブラッド・メルドー、それからこのロバグラをヘビーローテに聴き込んでまして、それぞれのプレイヤーはいろんな方向に自由です。
ジェリは、自由奔放の自由。
本能でもって、天衣無縫に音を飛翔させる魔法使いです。
ブラッドは、感性がそよぐままに、技巧を駆使して表現しつくすひと。
どんだけ引き出しを持ってんの?と言いたくなるほどに禁欲的に音楽を練り込む職人さんなんだけど、それを突き詰めて、ついにフリーさを半周させた抑制的昇華ってところにまでたどり着いちゃったという、まあ禅の境地で音を編む修験者です。
逆にロバート・グラスパーは、自由自在に音を遊んでるひと。
楽曲の構成から、リズムの展開、メロディラインの転がし、周囲とのコンビネーション・・・そのたわむれ方が普通じゃない。
4拍子が4小節の間に12拍子にまで展開されてく(※説明ちがってるかも)リズムなんて、耳にした経験もなかったもんね。
確かに新しいのです。
さて、彼を世に送った話題作、ヒップホップやR&B融合の「ブラック・レディオ」のシリーズは、おもしろいけど、ブラックコテコテに塗り込めすぎで、ぼくにはあまり好ましくない。
むしろ初期のサイドマンものや、トリオみたいなシンプルなものが、ジャジーな意味でチャレンジングで、しかもしっかりと構成を効かせた上で高度に遊んでて、興味深いです。
フリージャズとヒップホップ系、今後はどっちに軸足がいくのか注目だけど、才能の容量を考えると、次はもっと別なギャンブルに浮気する心づもりかも。
そのことを思うと、眠れなくなるくらい待ち遠しくなります。
やっぱりワルい男なのでした。

東京都練馬区・陶芸教室/森魚工房 in 大泉学園