レビュー

音楽や書籍に関するフェイバリットの紹介とそのレビュー。

ゴルゴ13/さいとうたかを

2014-09-17 20:28:59 | 日記


読めども読めども、未読巻が減らない「ゴルゴ13」。
なにしろ、138冊もあるんだった(最新ではもう少し先まで刊行されてるはず)。
このボリューム感はいかついぜ。
それにしても、面白い!
衝撃だよ。
こんなに夢中になれるなんて、思ってもみなかった、大人買いしてはみたものの。
悪者が理不尽に暴れまくり、最後にゴルゴが現れ、一発の銃弾で倒す、ってシンプルな「勧善懲悪もの」かと思ってたら、とんでもない。
設定、プロットともにすごく練り込まれてて、一話として同じアプローチのストーリーがないし、ネタも表現手段も常に新鮮。
感情の説明を極力排除して、行動と現象の描写だけで心の内をにじみ出させよう、って試みがハードボイルド作法なんだけど、まさにそんな高度な文学表現の粋だ。
なにしろ、「・・・・・」の無言のフキダシは、実にゴルゴのセリフの86%を占めてるらしい。
乾いてるぜ~、乾きすぎて、哲学性を超えて、わびさびまで感じさせる。
その表現形式に加えて、画がまた優れたもの。
映画の画面構成を用いてるうえに、小道具の細部の構造から現象面における物理的論理に至るまで、ディテールに異様な気配りがなされてて、それが「極端な物語」に説得力を与えてる。
文句なしにかっこいい、家宝にしたい一作。
だけど、読み終えても置き場に困る138冊の物量なのだった・・・

東京都練馬区・陶芸教室/森魚工房 in 大泉学園

somethin' blue/山中千尋

2014-09-02 09:06:43 | 日記

山中千尋さんは、バークリー音楽院を首席で卒業、ってことで、上原ひろみさんとよく比較されるジャズピアニストです。
ぼくはこちらの千尋さんの方が、耳あたりがなじんで、好ましく聴くことができます。
上原さんは奔放で創造的で、イタコと紙一重の神がかり的演奏をするひとですが、過度にチャレンジングなために、聴いてていつも緊張を強いられます。
フリーすぎてくたびれるというか。
千尋さんはタイプがちがって、ジャズの長い歴史と広大な沃野を丹念に歩きたおして、よく勉強してるひとです(想像)。
で、その各所各所を発展させる手法で、自分独自のスタイルをつくってます。
クラシカルな作法をベースにしつつ、少しずつプログレッシブに、自分流によく熟れたところまで弾き込んでるって印象。
アドリブのラインは流暢でよどみがなく、無法な破綻(上原さんみたいな)もなく、つまり几帳面でお行儀がいいわけですが、高度にソフィスティケイトされたアグレッシブさも持ってまして、ところどころでハッとさせる音が魅力的です。
その感性にはドキドキさせられます、かわいいし。
音の選び方と、全体をまとめる力との、バランスの取れたピアニストさん。
つまり上原さんをピアノの大天才とすると、千尋さんは「大秀才」なのです。
アレンジで考えすぎる(わざわざ難しくする)きらいがあるけど、それもアイデンティティに迷う学級委員長のジレンマ。
清潔な音を持ちつつ、だけどもっといい音を探し求めてる、悩める芸術家と見てます。

東京都練馬区・陶芸教室/森魚工房 in 大泉学園