レビュー

音楽や書籍に関するフェイバリットの紹介とそのレビュー。

フェルマーの最終定理/サイモン・シン

2014-02-04 09:17:10 | 日記


数学界でいちばんの永い歳月を生き伸びた未解決問題「フェルマーの最終予想」を解決して「定理」とした数学者、アンドリュー・ワイルズを描いたドキュメンタリー。
時は安土桃山時代、関ヶ原の合戦があった年にフランスで生まれたフェルマーという人物が、ノートの片隅に残した落書きは、300年以上も数学界のヒトビトを悩ませてきました。
それが、↓これ。
「nを3以上とすると、xn(n乗) + yn = zn となる数 (x、y、z) の組は存在しない、ってことを発見したよ。証明はここには書かないけどね」
そのことをものの本で知ったアンドリュー少年は、それとちょっと似てるピタゴラスの定理=「直角三角形において、a2 (2乗)+ b2 = c2が成り立つ」ってところを取っ掛かりに、どんどん難問解決に近づいていきます。
ピタゴラスからはじまって、過去のキラ星のような数学者たちを紹介しつつ、彼らが編み出した技術、方法論を使って絡まった糸をほどいてくアンドリューは、天才というよりも、孤独に悩む数学マニア(本当にこっそりと内緒で、ひとりきりでこの難問を解いてくのだ!)みたいな描かれ方をしてて、それがまたわくわく感をそそり、感情を移入させてくれます。
がんばれアンドリュー、他の連中を出し抜いたれ、的な。
問題解決ヘの道には、論理的な積み上げがあり、この本ではそれがとてもわかりやすく解説されてて、数学を知らないひとでもたのしめます。
そして、最後に最終定理が解ける瞬間は、劇的かつ感動的。
ついに見つけた証明を、大観衆の前で発表し、「これで終わりにしたいと思います」というアンドリューの言葉は、数学界における300年間のイライラと、自身の7年に及ぶ戦いがついに終わったんだ、ってことをシリアスに物語ってて、最高のカタルシスです。
数学書じゃなくて、エンターテイメントとして素直に面白い「傑作小説」です。

東京都練馬区・陶芸教室/森魚工房 in 大泉学園