レビュー

音楽や書籍に関するフェイバリットの紹介とそのレビュー。

ライブ/ファビオ・ボッタッツォ

2012-11-05 03:40:37 | 日記


りょうこ女史のイタリア修業時代の友人・ファビオくんのジャズユニットのライブにいきました。
鎌倉、横浜と回って、次になぜだか大泉学園、という謎のツアーです。
場所は「in F」という、場末の小さなライブ酒場。
大テーブルにカウンターだけ、という狭い酒場に、グランドピアノがでーんと鎮座する店内は、シックでなかなかの味です。
さて、ファビオ氏は、新潟を拠点にライブ活動を繰りひろげてる、ジャズギタリスト。
今回は、都内在住のピアノ、ベース、ドラムと組んだギターカルテットという編成。
第一部は、常連さん的飲み客たちが見守る中での、落ち着いた演奏。
手探りな感じで、耳ざわりのいい、あらゆる意味で破綻のない、こなれた雰囲気でした。
が、9時過ぎに二部がはじまってみると、店内に残ってるのはりょうこ女史とオレ、そしてカウンターのすみっこにひとりの客だけ。
オーディエンス、まさかの三人きり。
こりゃいいや、と思い、バンドの真正面間近に陣取りました。
客が少なくなるとあれですね、バンドというのは、「1、手を抜く」「2、冒険をおっぱじめる」の二種類に分かれますね。
ファビオチームは「2」でした。
ドラムの疾走感がすごかった。
自信満々的ベースがブルージーな骨格をつくり、ピアノがそれに流麗なメロディーラインをのっけ、ファビオ氏は穏やかなトーンで全体をまとめます。
ファビオ氏のギターは、旋律をつま弾くというよりは、コードの進行で明度、彩度といった色調、それにリズムをコントロールしてく感じの、ジム・ホールみたいな奏法。
ド派手な主張をしないかわりに、演奏全体が散らからないように、ひとつの方向に統一してく役割を担ってます。
性格がよくわかります、だけどもっと前に出たほうがいいかもよ。
ドラムは出色でした。
実験的で、すべてのテクニックを全開にやらかすやんちゃっぷりに、ほれぼれしました。
考えてみれば、あれのカウンターバランスとしてのギターのトーンなのかも。
全員がそれぞれにすごかったし、一体感もまたすごかった。
いい夜でした。

東京都練馬区・陶芸教室/森魚工房 in 大泉学園

情熱のピアニズム/ミシェル・ペトルチアーニ

2012-11-01 09:22:40 | 日記


ミシェル・ペトルチアーニは、身長1メートルのジャズピアニスト。
全身の骨が折れた状態で生まれてきたんだって。
無理をするとすぐに骨が折れちゃう難病を患ってて、ひとに抱えてもらわないと移動できないほどの、重度のハンディを負った人物なの。
だけど最初に言っておかなきゃいけないのが、このひと、本物の「天才ジャズミュージシャン」だってこと。
病気のわりに、とか、特異な人物、とかいう取り上げ方でなく、掛け値なしのリアルランカー、世界超一流のピアニストと認識しなきゃだめ。
ぼくはこのひとの音が大好きで、手に入れられるかぎりの演奏を収集してるのだ。
で、「情熱のピアニズム」は、このコビトピアニストの生涯を追ったドキュメンタリー映画ってわけ。
あとどれだけ残されてるのかわからない人生に追われて、「太く」「短く」という体型通りに駆け抜けることを余儀なくされたピアニストは、すさまじいツアースケジュールをこなしつつ、ヒトビトに囲まれ、いくつもの恋をし、それをひょいと捨てては、流れ流れ、本能のおもむくままに生きてる感じ。
ドラッグに手を出し、享楽に溺れつつも、恐ろしく禁欲的な演奏を残し、36年の生涯を閉じます。
この映画の優れたところは、そんなペトルチアーニを、障害者として扱ってない部分。
あまりにもナチュラルな撮影に、映画鑑賞者たちも、ついに彼が障害者であったことを完全に忘れ去り、天才ピアニストのデタラメな生き方に苦笑いしつつ、その目くらむような演奏に耽溺させられます。
その演奏は、エレガントでロマンチック、かと思えば、超絶的技巧の早弾き、正確無比のリズム感覚、斬新な曲の解釈、アドリブの創造性・・・なにを取ってもため息しか出ません。
演奏に見入る法王・ヨハネ・パウロさんの、深い感銘を受けたまま固まる表情が印象的。
もう少しライブ部分が長回しで観られたらよかったと思うんだけど、とにかく面白い映画でした。
またCDで聴き込もうっと。

興味のある方は、ユーチューブで↓
ミシェル・ペトルチアーニ「情熱のピアニズム」

東京都練馬区・陶芸教室/森魚工房 in 大泉学園