岡山県議会議員 森脇ひさき

2023年の岡山県議選で5期目当選させていただきました。
「命と暮らし、環境が最優先」の県政へがんばります。

人が人として大切にされる共生社会を

2017-07-29 | 福祉・医療充実のとりくみ
 倉敷市内の障害者就労支援事業所を運営する2つの法人(経営者は同じ人)が、経営悪化を理由に閉鎖し、そこで働く障害者約220人に解雇予告を出した問題で、日本共産党岡山県議団(森脇ひさき団長=小生)と同倉敷市議団(末田雅彦団長)は7月20日、障害者への支援などを求めて県知事あての要望書を提出しました。

 ◇長いですがぜひ読んでいただきたいです。ご意見をお寄せください。

 閉鎖される事業所は、株式会社が運営する3事業所のうち1つと、一般社団法人が運営する5事業所のすべてです。これらの事業所は、就労継続A型事業所として、2014年~17年に倉敷市の認可を得て開設。パンなど食品製造や軽作業をおこなっていました。A型事業所で働く障害者は、単なる「利用者」でなく、雇用契約にもとづく「労働者」として、最低賃金以上の賃金、雇用保険などが保障されます。事業者にはそのことが義務付けられます。

 報道によると、障害者への解雇予告は6月下旬。「経営不振に陥った中、雇用を維持するべく経営努力をしてきたが、明るい見通しがたっていない」、賃金不払いになることを避けるため「閉鎖せざるを得ないと判断した」としています。一方、倉敷市に対して「A型事業所とは別に設けたウナギの養殖場に対する投資で経営悪化した」とも説明している(「毎日新聞」7月20日)とのことです。
 就労継続支援A型事業所は、国の特定求職者雇用開発助成金を障害者1人あたり3年間で最大240万円、事業報酬として障害者1人当たり1日5,840円(月約11万6千円)受け取ることができます。これに目を付け、もうけようとする「悪しきA型」事業者(所)が全国的に大きな問題になっていますが、倉敷市の閉鎖される事業者がどうだったのか、解明が求められます。

 そこで日本共産党県市議団は、雇用されていた障害者の不安解消、新たな就労・生活維持等への支援を、県としても、倉敷市やハローワークなど関係機関とともにとりくむこと 事業所閉鎖にあたっては、行政まかせでなく、事業者にも責任を果たすよう厳しく求めること(これは「障害者総合支援法」で、事業者が事業の廃止又は休止の届出をしたとき、利用者が継続して各種制度を利用できるよう「他の指定障害福祉サービス事業者その他関係者との連絡調整その他の便宜の提供を行わなければならない」とされています) 事業所閉鎖に至った原因を解明し、認可のあり方、監査のあり方など(詳しくは※1で触れます)を改善すること 県下の他のA型事業所についても実態調査をおこなうこと 国に対し、A型事業所の構造的問題(もうけ本位で「障害者を食いモノ」にする恐れがあること)を正すよう求めること――を要望しました。
 要望に対して、①ハローワークと協力し、再就職等への説明会がおこなわれること、すぐに再就職先が決まらない方には失業給付があること ②相談支援事業所とも連携し新たな支援につなげること、事業所には最後の一人まで毎週の経過を報告するよう求めていることなど――説明がありました。また、岡山県のA型事業所は暫定支給(試用期間)の制度がなく、他県に比べ助成金が受け取りやすいと言われていることなども話題にのぼりました。

 では、※1についてです。少しまわり道になり恐縮ですが・・・。
 倒産する1つの事業所は株式会社の運営でした。そもそも株式会社は利潤をあげ、株主のために「奉仕」するものです。その特徴は、利潤のためには何でもする、「あとは野となれ山となれ」――最近ではブラック企業に代表されます。
 本来、企業があげた利益は労働者や下請けの企業のために還元されるべきものです。ところが近年は逆に、労働者や下請け企業を犠牲にしています。その一方で、内部留保をどんどん上積みしています(ついこの前、「300兆円を超えた」と言われていたのに、最新情報では400兆円に迫る勢いです)。
 日本の経済は家計消費(国民の日々の買い物)によって支えられているのに、賃金を上げないまま十数年が推移しました。一部の大企業や大金持ちは豊かになりましたが、多くの国民には景気回復の実感が得られないのはそのためです。
 さらに、もうけを上げている大企業や大金持ちには減税の連続。国民には消費税増税はじめ、様々な負担増を押し付けているのにです。そういう政治ですから、国や地方の財政危機が改善されないのは当然ではないでしょうか。なのに、さらに財政危機を叫び、社会保障の縮減、国民への負担増を求めています。

 政府は、国民に消費税10%を求める前に、莫大な内部留保をためている大企業に内部留保のうち10%を拠出するよう求めるべきではないでしょうか。消費税2%増税で得られる財源は年4~5兆円です。しかもこれは大企業や大金持ちへの減税で消えてしまいます。一方、内部留保から10%出させれば、40兆円近い財源が一気に確保できるのです。そうすれば社会保障の充実と財政再建が同時にできると思います。さらに労働者の賃金や下請け企業への単価引き上げを行わせれば、消費が増え、景気回復の大きな力になります。
 国民を犠牲にしても恥じることを知らない、株主のため、私腹を肥やすため「利潤第一」の株式会社、そしてそれを応援する政府のもとで、人権・人の生命を何より大切にしなければならない福祉の事業が両立するはずないではありませんか。
 就労支援事業をおこなって得る報酬(事業費)は補助金と違い、基本的に使途に制約がありません。A型事業所に障害者を雇用するごとに支給される助成金も同様です。しかし、多くの真面目なA型事業所では、得た収益は障害者支援事業のために使われています。一方、いわゆる「悪しきA型」と言われるところでは、経営者や株主のため、あるいは障害者支援と関係ない事業のために使うでしょう。まさに「障害者を食いモノにして」もうけをあげるわけです。つい最近問題になった「貧困ビジネス」と同じです。
 問題は、このようにヒドイ運営をしていても、事業所の監査で見破るのは難しいことです。福祉法人なら法人の監査がありますが、株式会社には他の事業を監査する術がないからです。 そういう点で、株式会社に福祉事業を行わせた政府の責任を問い、制度の見直しを求める必要があると思っています。同時に、「障害者を食いモノにしている」事業所の責任を厳しく問う仕組みづくりが必要だと思います。 「株式会社の運営は福祉と相入れない」ことを国に認めさせる運動をすする必要があります。

 5つもの事業所を倒産させたもう1つの法人(一般財団法人)はどうでしょうか。「ウィキペディア」によると、「設立許可を必要とした従来の社団法人とは違い、一定の手続き及び登記さえ経れば、主務官庁の許可を得るのではなく準則主義によって誰でも設立することができる。また設立後も行政からの監督・指導がなく、非営利法人であるが事業は公益目的に制限されず、営利法人である株式会社などと同じく収益事業や共益事業なども行うことができる」と、されています。株式会社と同様、一般社団法人も、障害者支援の事業以外は「行政からの監督・指導がない」ということです。つまり、資金の流れがどうなっているのか、障害者支援以外の事業が健全なのかどうか、知ることができなければ、行政には指導権限がないということです。

 仮に、今後もあらゆる法人が障害者(あるいは高齢者等も)の支援事業を行うことを許すのであれば、障害者(高齢者等)にかかわる事業をおこなう法人には、法人の種別にかかわりなく、法人がおこなうすべての事業について、資金の流れや経営状況を監査・指導できる権限を行政に与えるべきです。そうすれば、「障害者を食いモノにする」ことに一定の歯止めとなり、「悪しきA型」といわれるような運営を許さないことにつながるのではないでしょうか。ホント長かったですね。ここまで※1の関係でした。


 さて、220人もの障害者が一度に解雇されるという今回の事件。解雇という衝撃的な事態に接し、当事者の方々の精神的な不安はたいへん大きなものがあるでしょう。しかも、当事者の多くは精神的に不安定な方が多数ですからなおさらです。いま、新たな就職・生活につなげるために、倉敷市内に数少ない「相談支援事業所」の方々が大奮闘されており、心から敬意を表します。また、ハローワークや倉敷市の関係課の方々もがんばってくれています。ところが、もっとも責任が問われる事業所には「再就職について便宜提供が不十分」という勧告を倉敷市が出したと、7月25日付の山陽新聞で報道されていました。先に触れた「障害者総合支援法」の事業者(所)責任に照らして絶対に許されることではありません。

 大量解雇する事業所は、事業実施にあたって「障がい者の方大募集」「先着30名様に就労御祝い金30,000円」 「就労するにあたり障がい者の方を、様々な形でサポート致します」などとチラシを配布していました。おいしいうたい文句で障害者を集めながら、事業の閉鎖に当たってなすべき責任も不十分というわけですから、二重に許せない話です。さらに、別の事業所を創っているという話も聞こえてきます。これが事実なら「三重に許せない!」です。

 再就職のためには、1人ひとりに応じた親身な援助が必要で、相談支援事業所の支援はなくてはならないものです。しかし、今回のようなケースの場合には、相談事業所への報酬が出ないそうです。先日おこなった県への要望では、「(相談支援事業所には)なくてはならない大事な役割を担ってもらっているのだから、必要な財政支援を」と要望しました。制度になければ、大量解雇する事業所に財政負担を求め、相談事業所に配分するべきではないでしょうか。「事業者は身銭を切って支援の経費を支払え!」と言いたいです。

 いろいろ書きましたが、まずは今、形はどうであれ220人の再就職・生活支援に、県も、倉敷市も、そして国も、全力をあげていただくよう切にお願いします。
 そののちの課題として、これは7月24日の県障害者施策推進協議会と県障害者差別解消地域協議会で私が述べたことですが、A型事業所の質の向上をすすめる課題として2点提案します。1つは、事業所を利用する障害者がおこなう仕事の内容についてです。最低賃金など労働法制が適用されるA型事業所ですから、それだけの収益が見込める仕事が確保されているのか、仕事をする障害者がそれに耐えることができるのか、認可の段階からしっかり見極める必要があるということです。
 2つめは、事業を運営する法人や責任者に「人権の精神」「福祉の精神」が備わっているのかという点です。認可の段階で「あなたには福祉の精神がありません」と断定することは、よっぽど過去に悪質な実体がない限り困難だと思います。したがって、特に、法人の責任者(事業者)と事業所の責任者(サービス管理責任者)が異なる場合、サービス管理責任者は「雇われ」の場合がほとんどなので、事業者(法人の責任者)に対し、事業開設前(申請時)や開設後も、人権・福祉の精神、事業者としての責任など繰り返し指導する場が必要だということです。近頃はコンサルタント会社に申請から運営まで委託する事業所もある(こういうところが「悪しきA型」が多い)ようですから、なおさら事業者への指導が必要です。


 最後に、社会全体が何より「人間が大切にされる」ことが必要です。社会が病んでいるなかで、障害者や子どもたちにだけ健全な施策がおこなわれるはずがないと考えるからです。
 競争をあおり人を蹴落としてでものし上がる社会、儲けのためならなりふりかまわず突き進む社会・・・今の社会は、国民を守るまともなルールが無さすぎると言わなければなりません。
 長時間労働、超過密労働、残業代ゼロ、過労死、派遣切り、ワーキングプア、生活できない年金、保険あって介護なしの老後、老々介護、介護を苦にした心中、介護離職、高すぎる国保料、子どもの貧困、保育園落ちた、生活保護の水際作戦、障害者福祉の有料化、障害者にも「自助・自立」・・・日本国憲法には生存権保障、人権保障がうたわれているのに、日本の経済力を国民のために生かせばたちまちに解決できるのに、長年放置されてきました。放置するだけでなく、自助・自立、相互扶助(共助)をあおり、事態をいっそうひどいものにしてきました。
 力のあるものが勝つことを「正当」化する社会というのは、「弱いもの、役に立たないものは必要ない」という考えに結び付くと思います。昨年の相模原市の事件の1つの背景もそういう点にあるのではないでしょうか。
 また、勝者(強いもの・できるもの)は、敗者(弱いもの・できないもの)をうまく利用することを「当然」とする、といった考えにもつながってしまうと思います。今日のひどい雇用主と労働者の関係にはそういう側面もあらわれています。障害者を食い物にするような発想や、必要なくなれば平気で労働者を解雇することも、そういうなかから出てくると思います。

 翻って、障害者の「全面参加と平等」をうたった国際障害者年(1981年)の「長期計画」には、「ある社会がその構成員の一部を閉め出すような場合、それは弱くてもろい社会である」という一文があります。私が学生時代、障害者の権利を守る運動を通じてこの文章に接し、たいへん感動し、今も大切にしている考えのひとつです。障害のある人も、ない人も、高齢の人も、子育て中の人も、子どもたちも、若い人も、働く人がどんな立場で、どのような仕事をしていても、人間としての尊厳がきちんと守られる社会、そのためのきちんとしたルールづくりが必要ではないでしょうか。
 この精神で、平和のもとで、すべての国民の基本的人権、生命と尊厳が大切にされる社会(政治)にすることが、「国民を守るルールが無い」ためにおこる様々な問題を解決する土台になると思います。具体的には、税金の集め方、使い方を国民本位にあらため、国民の生命と暮らしを守るルールをつくることです。この仕事は、日本共産党の「綱領」や「日本改革の提案」にも示されています。これは(社会主義にならなくても)今の社会体制のもとでもできることです。そのために、力を合わせて政治を変えましょう。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 障害者就労事業所220人解... | トップ | 特別支援学級の編成、一歩前進 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

福祉・医療充実のとりくみ」カテゴリの最新記事