折角厳しい就職戦線を勝ち抜いて社会人になっても、1~3年で止めてしまう人が徐々に増えています。
冒頭の棒グラフは、1990年から2003年までの新入社員の離職率の推移を示しています。但し、文系と理系の区別はされていません(厚生労働省HP「平成17年版労働経済白書」)。拡大図はこちらです。
1990年でも、4人に一人が3年以内に辞めていますね。その後徐々に増えて、2000年には3人に一人が辞めています。
90年代は、日本経済が「失われた10年間」と言われた厳しい時期で、退職してもそう簡単には次の職は見つからなかったと思います。
それなのになぜ辞めたのか。統計局の調査結果があります(厚生労働省HP)。
拡大図はこちらです。理由は4つですね。
①収入 ②安定 ③適性 ④仕事がきつい
これは、本人にとっても会社にとっても、大変不幸なことです。もう少し仕事の実態を調査・理解していれば、こういうことにはならなかったはずです。
「働く」ということに対する自分の想像と現実がマッチしなかったのでしょうね。
面接訓練などの就活テクニックに頼りすぎ、肝心な自分の能力アップ・自己分析・企業研究が十分でなかったのではないでしょうか。
私にも実体験があります。
80年代後半はバブル経済でした。企業は新入社員を大量に獲得するために学生の鼻先にアメをぶら下げました。
私もリクルータをしていたのでよく覚えているのですが、会社説明会後の大宴会は勿論、会社見学の時に万博の入場券までつける企業もありました。
そういう風にして、「なんだ会社ってこんなに楽なところか」と錯覚をして入ってきた新入社員は、結局使い物になりませんでした。
その時に私の部下になった某旧帝大系大学出身の新人は、研究者としては超優秀でしたが、仕事に対するプロ意識が全く身につかず、出来ない理由を百も並べて涼しい顔をしてました。
彼はすぐに私の部署を離れましたが、結局昇進はかなり遅れているようです。
逆にバブル崩壊後の就職氷河期に入ってくる新入社員は、殆ど例外無く優秀で仕事ができる人ばかりでした。
この違いは何でしょうか。学生の能力が違うわけではありません。違うのは社会人になる覚悟の有無でした。
バブル期に会社研究もせず売り手市場で楽々入ってきた学生と、就職氷河期に会社研究と自己のスキルアップを十分に積み、厳しい就職戦線に生き残った学生では、「給料を貰う」ということの意味の理解度が全く違いました。