産業集積について整理してみる。
集積の分類
・「縦型集積」… 集積した要因が取引企業があること
・「地域社会型集積」… 集積した要因が企業の壁を越えたその地域社会自体に魅力があること
1.縦型集積
縦型集積が生じる要因としては輸送費と取引費用がある。
①輸送費低減のための集積
事例 倉元製作所
・本社所在地:宮城県栗原市若柳
・農業→ガラス加工→液晶パネルに不可欠なガラス基板の研磨加工。ガラス基板製造装置
も自ら製造
・宮城へ立地したのは、ガラス研磨で必要な大量な水が豊富、同社の知名度向上に伴い若
く優秀な人材も集まってきているため
・ガラス基板はデリケートな製品であり、運搬費がかさむ。かさむ運搬費を抑えるために、
西の拠点として三重工場を建設
⇒輸送費のかかる部品の場合 、納入先との距離が短い方が輸送費が削減できるため集積する
②取引費用低減のための集積
取引費用…情報探索(ex.取引相手の発見)の費用、交渉・意思決定の費用、契約締結・履行確保
の費用などのこと。
各企業が近接することにより、移動距離が減り、相手の評判を知ることができ、コミュニケーショ
ンも良く取れるようになるので、取引費用が減少
※「擦り合わせ」
例)・自動車は多くの部品が相互に調整し合って乗り心地の良さを発揮するため、各部品がそれ
ぞれ別の企業で製造されても、それらの設計の間には「擦り合わせ」が必要となる。
・パソコンは各部品の基本設計が業界レベルで標準化されており、複数企業間の「寄せ集め
・組み合わせ」が容易となっている。
⇒擦り合わせが必要な製品の場合、取引費用を下げるために集積が進む。
⇒「擦り合わせが必要な製品」とはどういった製品なのか?
・生産工程の段階が多いもの、
・加工が多いもの
例)「一般機械」、「電気機械」、「輸送機械」は「関連企業の近接性」を重視。
一方、「食料・飲料」や「木材・家具」は「関連企業の近接性」をそれほど重視せず
2.地域社会型集積
①シリコンバレー
○グーグル、ヤフー、イーベイ、アドビシステムズ、シマンテックはいずれもシリコンバレーの
企業
○この地に特徴的なこととして以下のことがある
・分業し、それに伴い企業間ネットワークがあること
完成品メーカー・完成部品メーカーは開発・設計と最終組み立てに特化し、他の工程は外注。
ソフト開発においても分業がなっているためにソフトウェア業とエンジニアリング業などの
緊密な連携で行われている。大企業であっても、例えばHP社が戦略事業単位に分権化・専
門化しているように、分業化している。
また、HP社やサン・マイクロシステムズに典型なように自社技術仕様の公開による市場確立
とデファクトスタンダードを目指すというオープンな志向がある。従って、連携と競争が併
存している。
・資金提供+人材紹介をしてくれるエンジェル投資家の存在
ビジネスプランをエンジェル投資家に持ち込む。認められれば、資金提供に加え、経営能力
のある人材や関連分野の知識のある人材や法律家・会計士・コンサルタントの紹介もする。
・企業を超えた私的なネットワークで手に入る情報(暗黙知)の存在
イベント、トレードショー、セミナー、クラブ、私的な非公式会合など多様な情報収集・交
換の場が頻繁に行われている。それらは生の情報(暗黙知)が手に入る特別な機会。ギブアン
ドテイクな相互学習(互恵主義)。個人レベルの企業横断的な人的ネットワークも存在。
・起業文化の存在
知識労働の担い手は企業に対してでなく自分の専門的な仕事に忠誠心を持っている。個々
の企業にとっては人材流出でも、シリコンバレーという地域経済にとっては「人材循環」
シリコンバレーでは労働市場が極めて流動的で、優秀な人材ほど、起業を目指したり、大
企業よりも活力のある小企業に就職しようとしたり、2,3年で職場を変えるのが普通。
・大学と産業との関係
研究型大学、教育型大学が2校ずつ、短期大学が7校ある。そこから、技術者・経営者が育
成され、大学教授のベンチャーへの転身や兼職、中小企業に対する技術・人材育成面での
指導、講師が大学に欠けていれば企業の技術者を充てることもあり、社会人教育も実施
②新潟県燕(ツバメ)市
○和釘生産から始まり、金属加工技術を磨き、ヤスリ・銅器・煙管・矢立へ多角化を図ってきた。
そして、輸出用金属洋食器の試作に成功したことをキッカケに1950年代には金属洋食器と金
属ハウスウェアの世界的な供給基地となった。
○金属加工技術を基盤に、金属洋食器や金属ハウスウェアの産地からそれらを含む多様な金
属製品を生み出す産地へと変容しながら産地を維持している。
○この地に特徴的なこととして以下のことがある。
・需要搬入企業の存在
産地問屋や有力元請メーカーが産地外のマーケットで需要を獲得し、獲得した需要を産地に持
ち込み、元請メーカーに生産を発注している。また、2003年には「磨き屋シンジケート」とい
う組織を地元企業で組織。それによっても市場の需要獲得と地域の企業への生産発注を実施
・分業間取引費用の低さ
この地では相当程度細分化された工程間で分業が行われている。例えば、一本のスプーンで
あっても複数の工場での作業を経て、製品化されている。
また、その分業間での取引費用は低い。例えば、同産地のD社は燕産地で製品を開発しようと
する場合、「必要な連携先を容易に見つけられる。2日後には試作品が入手できる。連携先に
近接しているためユーザーのニーズに合わせて、連携先ときめ細かく擦り合わせを行うことが
できる。」つまり、分業間取引費用が低い。
・企業間の情報の共有
Aの工場で考案された技術は翌日にはもうBの工場で利用されるなど、製造も工程もすべて開
放的であり、また、その技術進歩の過程を見るとき、誰がその技術を導入したのか、開拓した
のか判明しないなど企業間で情報が共有されている。さらに、人々が意識・無意識のうちに相
互に観察しコミュニケーションを行い、相互に理解し、相互に働きかけ合い、相互に心理的刺
激をしている。
↓石巻の漫画館駐車場に立つ像
集積の分類
・「縦型集積」… 集積した要因が取引企業があること
・「地域社会型集積」… 集積した要因が企業の壁を越えたその地域社会自体に魅力があること
1.縦型集積
縦型集積が生じる要因としては輸送費と取引費用がある。
①輸送費低減のための集積
事例 倉元製作所
・本社所在地:宮城県栗原市若柳
・農業→ガラス加工→液晶パネルに不可欠なガラス基板の研磨加工。ガラス基板製造装置
も自ら製造
・宮城へ立地したのは、ガラス研磨で必要な大量な水が豊富、同社の知名度向上に伴い若
く優秀な人材も集まってきているため
・ガラス基板はデリケートな製品であり、運搬費がかさむ。かさむ運搬費を抑えるために、
西の拠点として三重工場を建設
⇒輸送費のかかる部品の場合 、納入先との距離が短い方が輸送費が削減できるため集積する
②取引費用低減のための集積
取引費用…情報探索(ex.取引相手の発見)の費用、交渉・意思決定の費用、契約締結・履行確保
の費用などのこと。
各企業が近接することにより、移動距離が減り、相手の評判を知ることができ、コミュニケーショ
ンも良く取れるようになるので、取引費用が減少
※「擦り合わせ」
例)・自動車は多くの部品が相互に調整し合って乗り心地の良さを発揮するため、各部品がそれ
ぞれ別の企業で製造されても、それらの設計の間には「擦り合わせ」が必要となる。
・パソコンは各部品の基本設計が業界レベルで標準化されており、複数企業間の「寄せ集め
・組み合わせ」が容易となっている。
⇒擦り合わせが必要な製品の場合、取引費用を下げるために集積が進む。
⇒「擦り合わせが必要な製品」とはどういった製品なのか?
・生産工程の段階が多いもの、
・加工が多いもの
例)「一般機械」、「電気機械」、「輸送機械」は「関連企業の近接性」を重視。
一方、「食料・飲料」や「木材・家具」は「関連企業の近接性」をそれほど重視せず
2.地域社会型集積
①シリコンバレー
○グーグル、ヤフー、イーベイ、アドビシステムズ、シマンテックはいずれもシリコンバレーの
企業
○この地に特徴的なこととして以下のことがある
・分業し、それに伴い企業間ネットワークがあること
完成品メーカー・完成部品メーカーは開発・設計と最終組み立てに特化し、他の工程は外注。
ソフト開発においても分業がなっているためにソフトウェア業とエンジニアリング業などの
緊密な連携で行われている。大企業であっても、例えばHP社が戦略事業単位に分権化・専
門化しているように、分業化している。
また、HP社やサン・マイクロシステムズに典型なように自社技術仕様の公開による市場確立
とデファクトスタンダードを目指すというオープンな志向がある。従って、連携と競争が併
存している。
・資金提供+人材紹介をしてくれるエンジェル投資家の存在
ビジネスプランをエンジェル投資家に持ち込む。認められれば、資金提供に加え、経営能力
のある人材や関連分野の知識のある人材や法律家・会計士・コンサルタントの紹介もする。
・企業を超えた私的なネットワークで手に入る情報(暗黙知)の存在
イベント、トレードショー、セミナー、クラブ、私的な非公式会合など多様な情報収集・交
換の場が頻繁に行われている。それらは生の情報(暗黙知)が手に入る特別な機会。ギブアン
ドテイクな相互学習(互恵主義)。個人レベルの企業横断的な人的ネットワークも存在。
・起業文化の存在
知識労働の担い手は企業に対してでなく自分の専門的な仕事に忠誠心を持っている。個々
の企業にとっては人材流出でも、シリコンバレーという地域経済にとっては「人材循環」
シリコンバレーでは労働市場が極めて流動的で、優秀な人材ほど、起業を目指したり、大
企業よりも活力のある小企業に就職しようとしたり、2,3年で職場を変えるのが普通。
・大学と産業との関係
研究型大学、教育型大学が2校ずつ、短期大学が7校ある。そこから、技術者・経営者が育
成され、大学教授のベンチャーへの転身や兼職、中小企業に対する技術・人材育成面での
指導、講師が大学に欠けていれば企業の技術者を充てることもあり、社会人教育も実施
②新潟県燕(ツバメ)市
○和釘生産から始まり、金属加工技術を磨き、ヤスリ・銅器・煙管・矢立へ多角化を図ってきた。
そして、輸出用金属洋食器の試作に成功したことをキッカケに1950年代には金属洋食器と金
属ハウスウェアの世界的な供給基地となった。
○金属加工技術を基盤に、金属洋食器や金属ハウスウェアの産地からそれらを含む多様な金
属製品を生み出す産地へと変容しながら産地を維持している。
○この地に特徴的なこととして以下のことがある。
・需要搬入企業の存在
産地問屋や有力元請メーカーが産地外のマーケットで需要を獲得し、獲得した需要を産地に持
ち込み、元請メーカーに生産を発注している。また、2003年には「磨き屋シンジケート」とい
う組織を地元企業で組織。それによっても市場の需要獲得と地域の企業への生産発注を実施
・分業間取引費用の低さ
この地では相当程度細分化された工程間で分業が行われている。例えば、一本のスプーンで
あっても複数の工場での作業を経て、製品化されている。
また、その分業間での取引費用は低い。例えば、同産地のD社は燕産地で製品を開発しようと
する場合、「必要な連携先を容易に見つけられる。2日後には試作品が入手できる。連携先に
近接しているためユーザーのニーズに合わせて、連携先ときめ細かく擦り合わせを行うことが
できる。」つまり、分業間取引費用が低い。
・企業間の情報の共有
Aの工場で考案された技術は翌日にはもうBの工場で利用されるなど、製造も工程もすべて開
放的であり、また、その技術進歩の過程を見るとき、誰がその技術を導入したのか、開拓した
のか判明しないなど企業間で情報が共有されている。さらに、人々が意識・無意識のうちに相
互に観察しコミュニケーションを行い、相互に理解し、相互に働きかけ合い、相互に心理的刺
激をしている。
↓石巻の漫画館駐車場に立つ像

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