地理総合の研究 付2018年センター地理AB本試・追試解説 

「地理講義」の続き。「地理総合」に「2018年センター試験地理AB本試・追試の問題と解答解説」を追加。

6.中国 豚の過密飼育 地理総合

2019-01-28 17:56:34 | 地理講義

中国の豚肉供給
中国の養豚業は、全農林水産業のうちの14%を占める。豚の飼育頭数は5~6億頭である。飼育頭数数頭の零細養豚農家は減少し、5万頭以上の大規模養豚場が増加している。

中国の豚肉輸入先は次の通りだが、イギリスからは安い部位の肉を大量に輸入するため、輸入量は増加傾向にある。他の国は2016年に輸入が多いが、中国で豚肉の生産量が落ち、2016年に輸入を増やしたためである。


大規模養豚農家の出現 
中国国内の豚肉生産量が頭打ちになると、輸入豚が増加する。これは中国の豚関連食品大企業が海外に進出して、海外の食品会社を買収して中国に豚を送り込む傾向が強まっているためである。輸入総量は中国全消費量の4%であり、今のところ、中国の養豚業を脅かすほどのものではない。
中国の豚肉関連食品大企業は国内に大規模養豚場を経営するだけではない。国内の零細養豚農家に子豚と飼料を貸し付け、飼育された豚を買い取る。契約養豚の形で、生産を委託している。したがって大規模養豚農家と零細養豚農家は共存が可能ではある。

しかし、中国政府は環境問題との関連で、糞尿の汚水が深刻な養豚業の規制に乗り出した。汚水浄化装置を建設できる大規模農場には有利だが、浄化装置を設置できない養豚農家は廃業することになる。

中国における零細養豚農家数が圧倒的に多く、大規模養豚農家への集約統合は困難である。零細農家は大規模養豚業者との契約で養豚をしているケースが多いためである。また中国の豚肉は冷蔵・冷凍しない常温流通が50%以上である。遠方の大規模養豚場と加工場からの豚肉では供給量が不足する。大都市近郊の零細養豚農家が有利である。


全国生体豚生産発展計画(養豚発展計画)
2016年の養豚発展計画では、国家レベルでも養豚業の適正発展をめざすことになった。

重点発展地域(1億7,450万頭。40.3%)
現在も養豚業の盛んな地域である。コールドチェーンを整備し、冷凍肉・冷蔵肉の流通を進める。毎年1%ずつ飼育頭数を増やす計画である。
潜在発展地域(8,344万頭。19.2%)
飼料が豊富で、環境汚染問題も少ない地域である。毎年1~2%ずつ飼育頭数を増やす計画。
適正発展地域(2,365万頭。5.5%)
現在は養豚業は盛んではないが、これから食品(養豚)大企業グループを積極的に誘致する。
制約発展地域(1億4,778万頭。34.0%)
河川の多い低地が多く、養豚業は環境汚染の原因である。淘汰によって養豚農家を減らし、適正規模の飼育頭数にする。

環境規制の強化
中国人民共和国環境保護法(2015年)の環境政策は、養豚場があらゆる面で優れていても環境問題において失格ならばすべて失格となる(1票否決)。このため、糞尿処理のできない養豚農家は飼育頭数の削減や飼育の禁止の対象となる。
大規模家畜家禽飼育場における汚染防止条例(2013年)では地方政府の裁量で家畜家禽の飼育の禁止地域を指定することができる。中国全土で63万㎢が規制対象となり、21万の養豚場が閉鎖された。潜在発展地域では小規模零細養豚農家が減少、適正発展地域では大規模飼育農家が増加した。
環境保護税(2018年)では大気汚染、水質汚染、騒音に、各省が罰金を課すことになった。水質汚染対策のできない養豚農家は、糞尿処理をするか、1頭当たり1.4元(邦貨20円相当)~14元の罰金を払うことになった。多くの零細養豚業者は撤退するか、契約の大手養豚企業から借金をして水質汚染対策をしなければならなかった。大手企業グループは環境対策に積極的に投資し、養豚業における割合を増やしている。

中国内の豚肉の旺盛な消費と零細養豚農家の撤退のため、これからは大手養豚業者の豚肉生産割合が増加するとともに、中国系資本を通して海外からの輸入が増加する。

豚ホテルあるいは豚マンション
中国南部の広西チワン族自治区に、新しい試みとして豚ホテルによる多頭密集飼育がある。7階~13階のホテル風ビルディングで、メス豚を飼育し、子豚を生産するのである。各フロアで1,000頭、全部で30,000頭を飼育する。年間84万頭の子豚を生産することができる。
養豚業の敵地が少ないために、高層ビルの多頭飼育になるが、フロアごとに衛生管理を厳重にする。換気・排気もフロアごととし、病気の発生拡大をおさえる。廃棄物は専用処理場での処理をしてから、農家に肥料として販売する。
低地における養豚業よりは3割のコスト高になるが、環境規制が将来厳しくなった時には、豚ホテルが最も対応しやすい形である。将来の養豚業のあるべき姿と考えられている。
 


 


 

 

 



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