地理講義   

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148.富士山(3) 五合目の問題

2014年09月25日 | 地理講義

富士観光有料道路富士スバルラインの終点が、5合目(標高2,300m)である。毎年7~8月の2か月に観光バス・自家用車あわせて2万台が通過し、20万人の登山客・観光客を運ぶ。富士山五合目の収容能力を越える人数であり、山梨県有地にあるホテル・レストラン・土産物は増築を重ねた。中には違法承知で、地下に団体客用食堂を掘り下げた施設もある。ICOMOSは県有地などに無許可で観光施設を建設し、既成事実の積み上げで営業を続ける各施設のデザインの悪さを指摘した。また、施設全体の不調和の改善も求めた。

地図

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

総合管理センター
スカイパレス富士は林野組合の土地を借り、軽食・喫茶の営業をしていた。2014年に山梨県総合管理センターがこの建物を借り、五合目付近の自然体験ガイドや、入山協力料を徴収している。世界文化遺産の山梨県側の現地案内所・現地事務所の役割を果たしている。借りた建物だが、隣のこみたけ売店とは、全く美的調和もない。
売店

こみたけ売店の裏には、小御嶽神社がある。その入り口左がこみたけ売店だが、軽井沢・京都・成田同様、あの梅宮辰夫の漬物店がある。
梅宮辰夫が芸能活動で得る収入だけでは不足なのか、旅行業者とタイアップして全国展開しているのか、高率の所得税を梅宮辰夫本舗の赤字でほどよく調整しているのか、は分からない。富士山五合目の土産として梅肉たくあんを買うのもまた一興ということなのだろう。なお、小御嶽とは現在の富士山体の溶岩におおわれた、小型旧富士山である。火山活動は70万~20万年前である。

こみたけ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

馬に乗って富士登山
総合管理センターの向かいに駐馬場がある。片道一人7,0000円で七合目まで馬に乗って登山ができる。高地運搬にアルパカが適し、馬には気の毒ではある。 

馬

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

馬料金

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無国籍デザインの休憩施設
富士スバルライン終点に五合園レストハウスがある。インド風・唐様・チベット風建築をミックスした無国籍デザインの、巨大休憩施設である。1階は土産物店と軽食喫茶で、郵便局もある。郵便局長は五合園レストハウスの社長である。社長は富士登山観光株式会社を経営し、河口湖から五合目までの観光開発を進めた。さらに、五合目から山頂までの山小屋経営にも乗り出した。五合園レストハウスの2階3階は団体専用大食堂である。それでも団体観光客をさばききれず、地下を掘り下げて、従業員宿舎スペースと物置を増築したが、山梨県会議員が自然保護地域を無許可で変更したため大問題になった。現在、入り口は閉鎖して使用していないようだが、倉庫は使っていると疑われている。なお、五合園レストハウスのトイレは100円、シャワーは500円である。かつて、団体宿泊客も泊めた。
隣の富士みはらしも、その隣のこみたけ売店も、五合園レストハウスの物置のような存在である。ICOMOSは五合園レストハウスの巨大さと無粋さが、富士山の文化的価値を貶めるとみなし、しかも他の観光施設とは著しく不調和であるから、ICOMOSは事実上、五合園レストハウスの改善を要求しているのである。冨士山を霊峰とみなす限り、最も不調和に見えるのは五合園レストハウスだが、経営者とその政治的支持者は、富士山にふさわしい美的人工建築であるとICOMOSに反論するだろうが、文化遺産登録は取り消しになるかもしれない。

五合園

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

五合園内製造メロンパン
世界文化遺産登録前には富士スバルライン終点は、店の呼び込みや団体客の歓声で、うるさくて、汚かった。山小屋は身の安全を守れば十分という発想でつくられ、知らぬ登山客の雑魚寝で寝付かれないうちに、山頂でご来光を拝むためには3時に起きなくてはならなかった。トイレを我慢して脂汗をかきながら、五合目まで降りて来た者にとって、五合園レストハウスなどの休憩所は、感謝しなくてはならない存在であった。有料のトイレもシャワーも決して高いとは思えなかった。ICOMOSは五合目の休憩所の非宗教的建築を求めているが、疲れ果てて山頂から戻った者には、売店の屋根の形など、どうでもよいことである。トイレとシャワーがあり、手製のメロンパンがあれば、それだけで十分に存在価値がある。

弁当

 

 

 

 

 

 

メロンパン

 

 

 

 

 

 

 

富士急雲上閣
富士山5合目の地元零細資本とは異なり、東証一部上場の大企業富士急は、五合目の建物のデザインの醜悪さに気づき、ホテル雲上閣をいち早く改装し、2014年7月14日にオープンしたた。男女別1室8人か6人のカプセルホテル、ルームチャージ方式で、6人か8人を集めて宿泊しないと割高になる。8人収容の個室のルームチャージは43,200円、シャワーは500円である。富士山5合目の他の施設のモデルとなるデザインである。しかし他の施設とは並んでいないため、富士山の景観の妨げになっている。雲上閣の存在そのものが、最大の欠点である。  

富士急

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新館

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三保松原
ICOMOSは富士山の最上級の美的価値を損なう、構造物の除去を求めている。これが、三保松原のコンクリートを除去することを求めていることは明白である。しかし、三保松原を海岸侵食からを守るためには、景観に悪影響を承知しつつ、コンクリートを並べなくてはならないのである。やせ細ってきた砂浜を守るためには、汀線に高さ20m程度の防潮堤を築き、潮流・高潮・津波などからの侵食を押さえることになる。ゼネコンは、多分、三保松原の文化遺産を取り消されることを覚悟していると思う。

三保松

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

安倍川が三保松原の砂礫供給源
安倍川は南アルプスの安部峠を源流とし、長さ60kmの短い急流である。河口は静岡市であり、河口でありながら安倍川の砂礫の堆積量の多い扇状地である。上流・支流は南アルプスの隆起量が年間2cmもあるために、侵食作用が強い。本流には砂防ダムはないが、支流には砂防ダムが多い。砂防ダムと堤防を増強して、静岡市の洪水を防いではいるが、その代償として、安倍川の砂礫が砂防ダムに蓄えられて、海に流れなくなったのである。安部川から供給される砂礫が潮流に流され、砕かれ、下流側に堆積した。砂の堆積場所が三保松原である。三保松原の砂浜を自然の復元力で元に戻すとすれば、急流安倍川の支流に建設された砂防ダムを除去することになる。静岡市は当然、洪水被害が増える。現在の三保松原は、富士山の景観維持と、安倍川の治水とのバランスの上に存在する。残る方法は、毎日、大型ダンプカーを連ね、三保松原に砂礫を運搬することであるが。

安倍川

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 



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