こんにちは!!
ラジコンは京商よりもタミヤ派だった西原です。
「椎間板ヘルニアのハリ治療」
さて、前回は犬の椎間板ヘルニアについて、
臨床獣医学的な視点で
考えてみました。
その中で、電気ハリ治療は登場しましたが、
普通のハリ治療は出てきません。
では、普通のハリ治療はどうでしょうか?
実は犬の椎間板ヘルニアにおいて、
普通のハリ治療の文献ってほとんどありません。
ですので、他の治療方法と比べてどうなのか?
というのを獣医学的に評価することが
非常に難しいのです。
じゃあ、何をもって「ハリ治療は効果あり」
と判断すればよいのでしょうか?
実はこれが、どこにも見当たらないのです。。。
ハリ治療のメカニズムは不明ですし
(一応、説明を受けたことがあるのですが、
その説明もまた十分な証拠がなくて・・・)、
実際に犬の椎間板ヘルニアに対して、
ハリ治療を行っている先生のお話を聞いたり、
ハリ治療を行っている病院さんのHPを見ても、
「この子はハリ治療で回復しました!!」
というものしかなく、
獣医学的な説得力が皆無な情報
しか見つけられないのです。
たとえ、百歩譲って(笑)、
その先生のご意見を参考にするとしても、
逆に私の経験としては、
私が診させていただいたワンちゃんで、
ハリ治療を選択された方は
(私はハリ治療は行わないので、
転院されて治療しています)、
ほとんど立てないままだったので、
私のハリ治療の印象は「効かない」です。
その私の「この子たちはハリ治療で立てませんでした」
という経験は、
ハリ治療を行う獣医師が
「この子たちはハリ治療で立てるようになりました」
と同レベルの意見ですので、
どちらの優劣もつけることはできず、
結果、私の経験を覆すには至らないのです
(議論にならないのを承知でですよ)。
あるいは、ハリの先生が、
「実際ハリ治療をしている数が違うよ」
と言われるかもしれませんが、
そこで実際にどれくらいの治癒率なのか、
あるいはグレード4や5のワンちゃんが、
どれくらい立てるようになったのか、
データとして見たことがありません。
ちなみに、グレード1~3の椎間板ヘルニアは、
内科療法でも8割以上のワンちゃんは
立てるようになります。
また、こんなこともありました。
あるハリ治療を行う先生が、
「手術は気脈を遮るから、
手術をすると、ハリも電気ハリも効かなくなる」
とおっしゃっていました。
ですが、前回ご紹介しましたが、
手術と電気ハリ治療を組み合わせると、
結構回復率が良かった!!
という論文があります。
つまり、先生と論文の言い分が違うのです。。。
実は、ずっと前のブログでも、
椎間板ヘルニアと鍼治療のことは
書かせていただいたのですが、
そこでは”基礎研究に期待”と記しましたが、
今のところ、進展の報告も目にすることはありません。
要は、今現在、犬の椎間板ヘルニアのハリ治療は
神秘体験
なのです。
ここからは、個人的な考えになりますが、
人間の脳は、一度神秘体験をすると、
そこで感じたものを信じるようになります。
つまり、同じような事象に対しても、
神秘体験をした場合は、
とても肯定的に捉えるようになります。
ハリ治療自体が神秘的で、
その処置のあとに立てるようになると、
本当はハリ治療をしなくても立てるようになったかもしれませんが、
「ハリ治療で立てた!!素晴らしい!!」
と思ってしまうのです。
神秘体験は、昔は新興宗教の洗脳テクニック
のようなものに利用されてきましたが、
一方で今現在は、脳機能科学が発展し、
神秘体験に対する人間の反応が、
科学的に解明されつつあります。
いずれにせよ、今現在、ハリ治療の確立に必要なのは、
基礎研究と、臨床データの集積および分析です。
それがなされれば、その結果として、
ハリ治療もりっぱな治療の一つとして
確立できる日が来るかもしれませんが、
それまでは、犬の椎間板ヘルニアでは、
少しでも科学的に有効な治療方法を
選択していただければと思います。