goo blog サービス終了のお知らせ 

森のいぬねこ病院 院長blog ~走れシーズー!!緊急オペです!!~宮城県仙台市の動物病院、ヘルニア、がんのことなら!

宮城県仙台市のとある緑豊かな場所にある動物病院「森のいぬねこ病院」。ガンビー院長がその思いをつづります。

椎間板ヘルニア再考(4)

2015-01-24 12:00:00 | 椎間板ヘルニア

こんにちは!!

ラジコンは京商よりもタミヤ派だった西原です。

 

「椎間板ヘルニアのハリ治療」

さて、前回は犬の椎間板ヘルニアについて、

臨床獣医学的な視点で

考えてみました。

その中で、電気ハリ治療は登場しましたが、

普通のハリ治療は出てきません。

では、普通のハリ治療はどうでしょうか?

 

実は犬の椎間板ヘルニアにおいて、

普通のハリ治療の文献ってほとんどありません。

ですので、他の治療方法と比べてどうなのか?

というのを獣医学的に評価することが

非常に難しいのです。

 

じゃあ、何をもって「ハリ治療は効果あり」

と判断すればよいのでしょうか?

実はこれが、どこにも見当たらないのです。。。

 

ハリ治療のメカニズムは不明ですし

(一応、説明を受けたことがあるのですが、

その説明もまた十分な証拠がなくて・・・)、

実際に犬の椎間板ヘルニアに対して、

ハリ治療を行っている先生のお話を聞いたり、

ハリ治療を行っている病院さんのHPを見ても、

「この子はハリ治療で回復しました!!」

というものしかなく、

獣医学的な説得力が皆無な情報

しか見つけられないのです。

 

たとえ、百歩譲って(笑)、

その先生のご意見を参考にするとしても、

逆に私の経験としては、

私が診させていただいたワンちゃんで、

ハリ治療を選択された方は

(私はハリ治療は行わないので、

転院されて治療しています)、

ほとんど立てないままだったので、

私のハリ治療の印象は「効かない」です。

 

その私の「この子たちはハリ治療で立てませんでした」

という経験は、

ハリ治療を行う獣医師が

「この子たちはハリ治療で立てるようになりました」

と同レベルの意見ですので、

どちらの優劣もつけることはできず、

結果、私の経験を覆すには至らないのです

(議論にならないのを承知でですよ)。

 

あるいは、ハリの先生が、

「実際ハリ治療をしている数が違うよ」

と言われるかもしれませんが、

そこで実際にどれくらいの治癒率なのか、

あるいはグレード4や5のワンちゃんが、

どれくらい立てるようになったのか、

データとして見たことがありません。

ちなみに、グレード1~3の椎間板ヘルニアは、

内科療法でも8割以上のワンちゃんは

立てるようになります。

 

また、こんなこともありました。

あるハリ治療を行う先生が、

「手術は気脈を遮るから、

手術をすると、ハリも電気ハリも効かなくなる」

とおっしゃっていました。

ですが、前回ご紹介しましたが、

手術と電気ハリ治療を組み合わせると、

結構回復率が良かった!!

という論文があります。

つまり、先生と論文の言い分が違うのです。。。

 

実は、ずっと前のブログでも、

椎間板ヘルニアと鍼治療のことは

書かせていただいたのですが、

そこでは”基礎研究に期待”と記しましたが、

今のところ、進展の報告も目にすることはありません。

 

要は、今現在、犬の椎間板ヘルニアのハリ治療は

神秘体験

なのです。

ここからは、個人的な考えになりますが、

人間の脳は、一度神秘体験をすると、

そこで感じたものを信じるようになります。

 

つまり、同じような事象に対しても、

神秘体験をした場合は、

とても肯定的に捉えるようになります。

ハリ治療自体が神秘的で、

その処置のあとに立てるようになると、

本当はハリ治療をしなくても立てるようになったかもしれませんが、

「ハリ治療で立てた!!素晴らしい!!」

と思ってしまうのです。

 

神秘体験は、昔は新興宗教の洗脳テクニック

のようなものに利用されてきましたが、

一方で今現在は、脳機能科学が発展し、

神秘体験に対する人間の反応が、

科学的に解明されつつあります。

 

 

いずれにせよ、今現在、ハリ治療の確立に必要なのは、

基礎研究と、臨床データの集積および分析です。

それがなされれば、その結果として、

ハリ治療もりっぱな治療の一つとして

確立できる日が来るかもしれませんが、

それまでは、犬の椎間板ヘルニアでは、

少しでも科学的に有効な治療方法を

選択していただければと思います。


椎間板ヘルニア再考(3)

2015-01-22 12:00:00 | 椎間板ヘルニア

こんにちは!!

アイデアは生み出すよりもいただく方の西原ですwww

 

「犬の椎間板ヘルニアの

良い治療って??」

さて、これまでは、「良い治療って何?」

ということについて書いてきました。

では、犬の椎間板ヘルニアの治療の

「良い治療」についてはどうでしょうか?(やっと本題^^;)

まず統計学的に検証された論文としては、

内科療法(ハリ治療ではありません)と

手術治療を比較したものがいくつかあります。

また、ハリ治療の中でも

電気ハリ治療と手術療法を比べた論文もあります。

 

まず、犬の椎間板ヘルニアの

内科療法と手術療法を比べた論文ですが、

ざっくりとした結論では、

グレード3までの犬の椎間板ヘルニアは、

内科療法でも手術療法でも立てる割合が高いのに対し、

グレード4では、明らかに内科療法よりも

手術療法の治療が優れていることが示されています。

またグレード5では、どちらも治療成績はイマイチですが、

その中でも手術療法の方が優れていると言われています。

 

また、電気ハリ治療と外科療法を比べた論文はどうでしょうか。

これは私は原文を読んでいませんので、

読んだ先生から教えていただいたものですが、

ちょっと面白い結果になっています

(なぜ面白いかは、また後ほど)。

 

この中で、もっとも治療として優れていたものは、

手術療法と電気ハリ治療を組み合わせたもの

になります。

つまり、手術療法を単独で行うよりも、

手術後に電気ハリ治療を組み合わせた方が

治療成績が良いということなのです。

もちろん、もっと細かくチェックするところはたくさんあって、

まだまだ実際に応用するには時期尚早なのですが、

かなり期待を持ってもいいのではないでしょうか。

 

上記の各論文は、

今現在の視点で見ると、

いわゆる“突っ込みどころ”がいくつかありますので、

決して完璧に優劣をつけるものになるわけではないのですが、

それでも、特に内科療法と手術療法の比較論文は、

今の獣医療では一般的に多く受け入れられていますし、

私自身あるいは実際に多くの先生方に支持されている論文ではあります。

 

つまり、犬の椎間板ヘルニアでは、

●立てなくなり、排尿管理が難しい場合は外科(手術)

●立てなくなり、深部痛覚もない場合は外科

●立っている間は内科もしくは外科

●将来的には電気ハリ+外科かも!?

ということが言えます。

(論文の精度など、”突っ込み”を

考慮しても、このポイントは変わらないと考えています)

 

では、ハリのみについての論文はどうでしょうか。

上記では電気ハリ治療となっていますが、

私が知る限り、日本の多くの病院で実施されているのは、

電気ではないハリ治療です。

次回はそこを探ってみます。


犬の椎間板ヘルニア再考(2)

2015-01-20 12:00:00 | 椎間板ヘルニア

こんにちは!!

疲れがたまると鼻血が出る方の西原です(笑)

(もちろん原因不明ww)

 

「”良い治療”とは??」

 

さて、今回は、獣医学的に

「良い治療」というのはどういうことか、

について書かせていただきます。

 

さっそく、その「良い治療」ということですが、

今のところは、

統計学的に検証された上で、

優れていると結論付けた治療方法が

良い治療である

と評価されています

(あくまで獣医学的な視点での“良い治療”についてです)。

 

まあ、もっと単純に言うと、

統計学的に優れている治療が

「良い治療」

ということなのです。

(厳密にはちょっと違うので、

上記のような言い回しをしています。。。

実は結構同業者の方もご覧いただいており、

ときどき突っ込みをいただいております(笑))

 

ざっくりいうと、犬の椎間板ヘルニアで、

ハリ治療をしたら、

1000頭中800頭は回復しました!!

というものと、

外科治療をしたら

1000頭中200頭しか回復しませんでした

というのを比べると、

明らかにハリ治療の方が優れている、

というのはわかりますよね。

 

つまり、良い治療というのは、

わが子一頭だけで証明された治療方法ではなく、

できるだけ数多くの頭数を治療し、

その治療成績の差を比べ、

その上で優れているとされる治療方法なんです。

 

ただ、現実の治療成績の差はもっと微妙で、

たとえば1000頭中、

A治療では500頭が回復、

B治療では600頭が回復した

という微妙な差であることも多々あります。

ではこの場合、果たして

本当にBという治療方法の方が

優れていると言えるのでしょうか?

 

そういったときに役立つのが

統計学的な検証です

(もちろん、統計はもっと複雑な捉え方をしますが)。

 

治療方法について、

実際に統計学的に検証することが大切

だというのは、人間の医療では

すでに当たり前のこととして考えられています

(前述の捏造問題とかではありません)。

 

実際に、

理論的には効果があるとして作られた薬で、

動物実験や発売前の検証実験では

効果が実証されていたのにもかかわらず、

いざ発売をしてから、その効果を検証すると、

実は何も効いてなかった・・・

ということもあります

(逆に理論的には効果がないはずなのに、

実際には効いていたというケースもまれにあります(笑))。

 

しかし、獣医学、

特に犬や猫の獣医学に関しては、

少し困ったことがあります。

私たちが実際に行っている治療において、

数多くの治療を行い、

それを統計学的に検証された論文って

あまりないのです。

 

つまり、ないものは比べようがありませんから、

実際のところは

はっきりとした優劣の結論がつけられず、

どちらがより良いのか議論できないのです。

 

ですので、そういった場合には、

別の視点で検討します。

しかし、そうなると、

さきほどの統計学的な検証ほど、

たしかな優劣はつけられません。。。

 

ですが、それが獣医療の現状ですので、

そこをきちんと踏まえた上で考える必要があります。

 

かなり前置きが長くなってしまいましたが、

ここをご存知いただかないと、

どんな治療も良し悪しを判断することはできません。

 

動物の治療は、

動物をきちんと治療することはもちろん、

飼い主様もご満足いただける治療

をすることが大事です。

 

しかし、中には、

飼い主様の満足だけがフォーカスされて、

動物の治療の良し悪しよりも

優先されることがあります。

 

そうならないためにも、

飼い主様ご自身も

しっかり考えることが

大切なのではないでしょうか。

 

それでは次回以降、

犬の椎間板ヘルニアの治療について

考えてみたいと思います。

(つづく)


犬の椎間板ヘルニア再考(1)

2015-01-18 11:30:00 | 椎間板ヘルニア

こんにちは!!

腰痛はあっても肩こりはない方の西原です!!

なのに、マッサージを受けると必ず「肩こりひどいですね~」と言われます(笑)

 

「犬の椎間板ヘルニアの治療を見直す」

 

さて、たまたまFacebookの広告の中で、

「椎間板ヘルニアで歩けなくなったダックスさんが、

ハリ治療とストレッチでみるみる回復しました!!」

というある動物病院さんの広告を見つけました。

何気に見させていただいたところ、

ものすごい数の「いいね」とシェアが集まっていました。

 

過去のブログでも書かせていただいていますが、

私は、動物のハリ治療って

何が良いのかまったくわかりませんし、

今のところ、ハリ治療はしてもしなくても

一緒じゃないかと考えています。

その理由は徐々に書かせていただこうと

思っていますが、

 

ただ、そう書くと、必ず

「うちのワンちゃんはハリ治療ですっかり良くなってますけど?」

と言われてしまいますので

面倒なのですが(あ、つい本音が・・・苦笑)、

やっぱり、椎間板ヘルニアで苦しむ犬のためにも、

今一度、考えてみることにします。

 

で、犬の椎間板ヘルニアの治療を考える前に、

「よい治療」って何でしょう?

ということをしっかりと確認する必要があります。

 

「うちの犬が治った治療方法は良い治療方法だ」

「あの先生は良い先生だと評判だから治療内容も間違いない」

「以前の治療では良くならなかったけど、

今回の治療で良くなったから、これは良い治療だ」

などなど、みなさんの中には、

上記のような基準で治療の良し悪しを

判断されていらっしゃる方もいるかもしれません。

 

しかし、医学的には、

実はそういった基準はあまり重要視されていません。

だってそうですよね。

犬の椎間板ヘルニアの治療で考えてみても、

「うちの子はハリ治療で良くなった」

というのと

「いやいや、うちの子はハリをしなくても薬で良くなったよ」、

あるいは

「手術したら歩けるようになった」というのと、

いったいどれが一番優れている治療かなんて

判定できませんよね。

 

どれももしかしたら

「ハリ治療しなくても良くなったかもしれない」ですし、

「薬を飲まなくても良くなったかもしれない」ですし、

「手術しなくても歩けるようになったかもしれない」ですし。

なので、

「うちの子が良くなった治療が良い治療」

と言われても、

ここでの議論では、正直なところ困るわけです。

もちろん、その治療自体が悪いと言っているわけではありません。

 

ですので、まずは

獣医療的に「良い治療」とは何か?

について考えていきます。

(つづく)


椎間板ヘルニアのむうたろうさんの回復がいい感じです

2014-11-29 08:30:00 | 椎間板ヘルニア

こんにちは!!

肉か魚かと聞かれると、魚を選ぶことが多くなった西原です。

 

さて、先日のブログでご報告させていただいた

椎間板ヘルニアのむうたろうさんですが、

グレード5の診断を受けたにも関わらず、

非常にいい感じで回復してきています。

どれくらいいいのか?

ぜひ動画でご確認ください(笑)

 http://youtu.be/UUmoWMVXl1c

 

もうちょっと!!