※ネタバレ注意
今日は「ドラえもん のび太の月面探査記」を鑑賞。
この作品は、のび太が「月にはうさぎがいる!」と発言したことでクラスのみんなに笑われたのがきっかけとなり、月の裏側にうさぎ王国を作ろうとするアドベンチャー作品。
監督は八鍬新之介。
声の出演は、水田わさび、大原めぐみ、かかずゆみ、木村昴、関智一、広瀬アリス、柳楽優弥、吉田国セ郎他。
39作目の劇場版となる本作。
脚本は直木賞作家の辻村深月。
劇場版ドラえもんは2014年の「STAND BY ME ドラえもん」以来。
親子連れや子供たちに混ざって恥ずかしいと思いながら入場…
しかし、内容は予想外の展開!
良い意味で裏切られました。
本作のテーマは"想像力"と"家族"。
とにかく伏線の回収の仕方が凄すぎて、子供向けの作品じゃない!
劇中、一番のキーとなるのが"異説クラブ・メンバーズ・バッジ"という道具。
これは今まで"異説"とされてきたことを現実的にするバッジ。(但しバッジをつけた人にのみ現実になる。)
この道具を使いのび太は月の裏側にうさぎ王国を作ろうとします。
そこで月の裏側に住むエスパルたちと出会い、彼らを守ろうと立ち上がる訳ですが、この道具の伏線が最後まで重要で、のび太の"想像力"が月の裏側に住むエスパルの人たちやかぐや星人たちを救うという結果に。
劇中で登場するのび太に似たうさぎ"ノビット"がキーパーソン。
このノビットは頭が良く、色々なものを作る発明家。
彼が作るものは何でも通常とは逆のものを作ります。
のび太に似ていますが、のび太とは逆で頭が良く、後ろ向きに走る自動車を作り、異説バッジを拾い新たに定説バッジという道具を作るのです。
この定説バッジは、異説バッジをつけた人にしか現実にならなかったものが定説バッジのおかげで異説のものも現実の世界に行けるという道具。(つまり異説バッジで現れたものはあくまで異説なので現実の世界では存在していない。バッジを付けた人の中でだけ現実となる。あくまで異説は異説なので現実の世界には行けないが、定説バッジのおかげて異説のものも現実の世界へ行けることになる。)
これにより結果エスパルやかぐや星人たちを救うことになる訳です。
面白いのは、エスパルの設定。
エスパルは1000年以上も生き、月の裏側でひっそりと暮らしてきた種族。
かぐや星人たちにとってもエスパルの存在は1000年前から語られている伝説上の人物であり、もはや"異説"の存在。
テーマとなる想像(異説)だった者が実在していた訳ですが、あくまでかぐや星人たちにとっては異説だったということ。(ラストでゴダードがエスパルの存在をかぐや星人たちに教えようとするが、ルナたちは異説のままにしておくことを望む。)
そしてもう1つ重要な"想像力"。
劇中、ドラえもんとヴィランのディアボロとのセリフで~
ディアボロ「想像力は破壊だ!」
ドラえもん「違う!想像力は未来だ!思いやりだ!人間がそれを諦めた時に破壊が生まれるんだ!」
というセリフが登場します。
人間は想像力を使って未来を切り開きながら長い歴史を作ってきました。
このセリフに強いメッセージ性を感じますが、もはやこのセリフにあるように子供向け作品ではなくなってる…。(ディアボロの言うセリフも間違いではない。人間は想像力で偶像を作り、それを理由に破壊を繰り返してきた歴史も持つ。つまり宗教。)
そしてこのドラえもんが言う"思いやり"はルナたち両親の子供への愛情やのび太がルナたちを助ける理由として言った友情についてのセリフに繋がっているのにも注目。
個人的に印象的だったのが、中盤でののび太たちが月に行くことを決心するシーン。
構図がめちゃくちゃ良く、各キャラクターの葛藤がよくわかる描写となっていて、非常に印象深いシーン。
後で調べてみると本作のャXターが話題となっているらしく、"ムーン・ヴィジュアル・ャXター"ということでSNSでも取り上げられていました。
ラストでルナを含むエスパルは普通の人と同じように歳を取り、死んでいく人生を望みます。
死があるからこそ命は尊く、限りある時間の中で生きていくからこそ人生が素晴らしいものだと悟るのです。
このラストが切なく、涙…(ToT)
ってか、これって手塚治虫先生の「火の鳥"復活編"」と全く同じテーマ!
子供向けの作品故に分かりやすく描かれているものの、非常に難しいテーマを取り上げていたのは脚本を担当した辻村深月さんの影響が大きいと思います。
小説版も気になるところ。
月が舞台なので全体的にSF要素が強いですが、オープニング曲が流れるシーンで月の形をしたドラえもんに宇宙船が当たる描写が!
これ、世界初のSF作品と言われているジョルジュ・メリエスの1902年の作品「月世界旅行」という作品へのオマージュ。(こんなところに感動)
ドラえもんってこんなに考えさせられる作品だったんだ…
改めて感動。
ちなみに藤子・F・不二雄先生によるとSFは"サイエンス・フィクション"ではなく、"少し不思議"なんだとか。
う~ん、素敵な言葉♪