※ネタバレ注意
今日は「ザ・フォーリナー/復讐者」を鑑賞。
この作品は、テロにより娘を失った元特殊部隊員の父親がテロ首謀者を執念で探し、犯人に迫る姿を描いたサスペンス。
監督はマーティン・キャンベル。
製作&主演はジャッキー・チェン。
出演はピアース・ブロスナン、オーラ・ブラディ、レイ・フィアロン、ロリー・フレック・バーンズ他。
いよいよ待ちに待ったジャッキー師匠の最新作が公開。
…といっても全国では5月3日公開だったので20日ほど遅れで松山では公開…どいうこと!?( ;`Д´)
しかも中国やアメリカでは2017年に公開されていて、ずーーーっと待たされた感が…(*`Д')
予告でもわかるように本作は師匠の笑顔やコメディ要素を一切封印。
復讐の鬼と化した姿が話題に。
で、本作の背景にあるのは北アイルランド紛争。
本作を鑑賞した人は、この長く続いた紛争のことをどれだけ理解しているかで"面白い"か"面白くない"か分かれてしまうのでは!?
幸いビートルズ・ファンには"The Luck Of Irish"、"Sunday Bloody Sunday"、"Give Ireland Back To The Irish"という北アイルランド紛争のことを歌った曲があり、このおかげで本作の内容を理解することが出来、助かりました。
本作では"IRA"(アイルランド共和軍)が登場せず、"UDI"という組織が出てきます。
この"UDI"はおそらく"IRA"のこと思われ、UVF(アルスター義勇軍)はそのままの名前で登場。
※IRAが起こした"オマー事件"はしっかり劇中でセリフとして出てくる。(UDIが起こした事件として登場)
アイルランド副大統領のヘネシー(ピアース・ブロスナン)は元UDIのメンバーで、過去に数々のテロを行い現在の地位を手に入れました。
その妻メアリーは20年前にアルスター義勇軍に弟を殺害されたことで、ヘネシーに対して怨みを持っていて(弟の仇を一向に打ってくれないヘネシーに怨みを抱く)、UDIメンバーたちもすっかりイギリス側にすり寄ってしまったヘネシーに対し不満を抱き、ついに実力行使に。
つまりUDI暫定派(ヘネシーと甥の)とUDI急進派とで内部分裂が起き、UDI急進派が一般人を巻き込んだテロを起こしてしまうのです。(ヘネシーは北アイルランドに融資をする銀行への爆弾テロを行うはずだった。)
この争いの中でクアン(ジャッキー・チェン)の娘ファン(ケイティ・レオン)は巻き添えとなってしまい命を落としてしまうのでした~~というのが事件の背景。
タイトルにもなった"Foreigner"。
日本語にすると"外国人"や"よそ者"という意味で、あまりよろしくない単語。
もちろん移民であるクアンのことを指すタイトルですが、事件の背景を見るとヘネシーのことも指していたことが分かります。
UDI急進派のメンバーたちからすればイギリス側の犬となってしまったヘネシーは完全に"よそ者"。
このタイトル、実は主演二人のことを指していた ということに思わず「おー!」と感心。(但し副題の"復讐者"は正直邪魔!)
とにかく本作で話題になったのはジャッキー師匠の笑顔を一切見せない姿。
老けメイクをし、足を引きずり、表情を変えない姿に"浮ウ"まで感じさせる演技で挑んでいます。
本作のテーマでもある"復讐"。
師匠の作品でも復讐劇というものは意外に多く、古くは「少林寺木人拳」や「龍拳」など初期作品はほぼ"復讐"がメイン。
冒頭で見られる"泣き"の演技も「ファースト・ミッション」や「新香港国際警察」など数多くあり、「こんなジャッキーを見たことがない」という声があがってますが、そういう人はジャッキー作品をほとんど見てない証拠。
※しかし師匠がこれまで演じてきたキャラクターの中では断トツで一番不幸な境遇を持つことは確か。
個人的な意見としては、師匠は演技力や表現力はどの役者よりもあるのに、師匠を起用する監督のほとんどが師匠の良さを引き出せずにいたこと。(なので師匠の代表作でパッと思い出されるのは「プロジェクトA」や「ャ潟X・ストーリー/香港国際警察」といった師匠自ら監督した作品が多い傾向なのはそのため)
しかしマーティン・キャンベルは師匠の"俳優"としての良さを見事に引き出せた唯一の監督だったように思いました。
常に新しいことに挑戦し続ける師匠ですが、アクション面でもこれまでの立ち回りとは違い、"アメリカ軍特殊部隊兵"出身という過去を持つクアンだけにカンフー要素を極力排除したコンバット・アクションはかなり新鮮に感じられたし(随所に師匠らしさの動きは見られるが)、中盤での階段を使ったアクションでもアクロバティックな動きをわざと封印し、よりリアルな戦闘シーンを再現していたのが印象的。
師匠が登場しない爆弾テロのシーンなども多くのスタントマンが爆風で吹き飛ばされる姿を映し、エンターテイメント性のアクションよりはリアルさを追及したアクションに重点を置いていたのも凄かった。
(師匠はよくアクションには「独自のテンモェ大事だ」と語っていますが、キャラクターの年齢やクアンの人物像を考えて本作では敢えてテンモオていた。)
※一瞬だけ映るトレーニング・シーンはファンへのサービス・ショットだろうけど、やはりこういうシーンは見ていて嬉しい。
そして話題となったジェームズ・ボンドとの共演。
実は師匠がジェームズ・ボンドと共演するのは本作で2回目。
一回目は「キャノンボール」で3代目ジェームズ・ボンドを演じたロジャー・ムーアと共演していて、こちらはロジャー・ムーアがジェームズ・ボンドのパロディを演じているというレアな作品でした。
師匠はここ数年前からずっと「アジアのロバート・デ・ニーロになりたい」と語っていて、いかにアクション俳優が短命(アクション俳優は人気がすぐに落ちるという意味。)なのかを語っています。
しかし40年以上の間、人気は衰えることなく一線で活躍。
ファンから求められるものと新しいことに挑戦したい気持ちとの狭間に苦悩しつつ、たくさんの作品を作ってきました。(作品の歴史は怪我の歴史でもある。)
しかし本作での師匠の姿を見て感じたのは65歳にして(撮影時は63歳)ようやく実年齢に合った役を演じることが出来たのではと感じ、何だか安心感さえも。(ファンとして。)
今後はもうこの路線(アクションを極力控え、年齢に合った役を)でいってほしいとさえ願います。
それほど本作での役は見事にハマっています。
(もちろん共演のピアース・ブロスナンの重厚な演技があってこそ引き出されたんだと思いますが)
エンド・ロールではJCスタント・チーム"成家班"の名前もスタントとわざわざ別クレジットされていたりと配慮も感じられ、こういう細かいところも嬉しい。
ただ一つだけ。
ラストのブロムリー警視の「わざわざドラゴンを起こす必要はない…」というセリフだけは無くて良かったのでは!?(いくら何でもこのセリフは無いわ…)
ラストで師匠が中国語で歌う主題歌"ORDINARY PEOPLE"も熱い!!