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悶茶流的同性愛小説

小説を書く練習のためのブログ。

俺の彼氏はヤンチャ坊主! 「坊主が屏風に上手にダイヤの絵を描いた!その3」

2011年04月28日 | 小説 「俺の彼氏はヤンチャ坊主!」
キーンコーン カーンコーン♪

キーンコーン カーンコーン♪



昼休みのチャイムが鳴った瞬間、ダイヤは机と椅子を跳ね飛ばして教室を飛び出した。

「きゃっ! ちょっと何あれ! 超うざいんだけどー!」

気の強い女子があからさまに叫ぶ。

――うるせえブス! こっちはそれどころじゃねんだよ!

ダイヤは心の中で毒づきながら全力で廊下を駆ける。
すると、別の教室から突然男子生徒が飛び出してきた。
三日前からしつこくダイヤの後を追ってくる男、高橋まもる。
確かマメ柴ってあだ名で呼ばれてるチビだ。
廃部になった柔道部から新聞部へ移ったはずなのに、足はかなりの駿足だった。
走ることにはそこそこ自信のあったダイヤだが、マメ柴は彼のすぐ後ろを、
今にも抜き去りそうな勢いで迫ってくるのである。

「お前そんなにアレが欲しいのかよ!」

ダイヤはたまらず叫んだ。

「毎日君が独占してんのがいやなだけ!」

マメ柴も返す。

「そんなクソみたいな理由で譲れっか馬鹿野郎!」

「君はどんな理由があって毎日走ってんのさ!?」

――それを言えるくらいなら苦労はねんだよクソチビ!

ダイヤはついにマメ柴を振り切ってゴールに辿り着いた。
購買部前。

「いらっしゃい」

おばさんがいつものように笑顔でアレを差し出す。

――た、助かった……。

「はい、2個限定のチクワドーナツサンド、2個で300円ね」

それはチクワをドーナツ状の輪っかにして天ぷらにしたものを、
コッペパンに二つ挟んで上からお好みソースをかけたものだった。
いったい誰がこんなもんをすき好んで食うのか謎だったが、あのクソ野郎、進藤虎男はこれが大好物らしい。

「次こそは勝つ!」

マメ柴が肩で息をしながら挑戦的な目をする。

「お前と俺とじゃ覚悟のレベルが違げぇんだよ、バカ」



**********



ダイヤは教室へ戻ると、

「ほらよ」

虎男の机の上に不躾にチクワサンドを投げた。
虎男は満足げにニタニタ笑うと、ラップを解いてそれを食べる。
たいして美味くもないそのパンを、ダイヤも嫌々食べた。
一つは虎男の分、もう一つは自分の分だからだ。

「おい、喉が渇いた。お茶」

水筒のお茶をカップに注いで差し出すダイヤ。
クラスメイト達の冷めた視線が痛いほど背中に突き刺さる。

「ねぇ、何なんだろうね、あの二人。急に仲良くしちゃって気持ち悪い」

「仲良くっていうか、あれ中村の方がパシリにされてるだけじゃない?」

「そうそう。もう一週間くらいずーっとあんな感じだよねー」

「いくら進藤が喧嘩強そうっつっても、あそこまでコキ使われたんじゃただの奴隷だよねえ、情けない」

クスクス笑う女子の声。
ダイヤは大声を張り上げて、

「うるせぇクソブス! 全部聴こえてんだよ!」

慌てて視線を逸らした女子たちが、
また聴こえるか聴こえないかの声でヒソヒソと何かを喋っている。
ダイヤはイライラして仕方なかった。虎男の顔面に熱い茶をぶっ掛けて、今すぐにでも教室を出て行きたかった。
しかし、それは決して許されない。何故ならこれも全て、目の前のクソ野郎、進藤虎男の命令だからだ。

「おい、ボケっとすんな。チクワサンドのゴミ、早く片付けろ」

ダイヤは黙ってチクワサンドを包んでいたラップを受け取り、ゴミ箱へ捨てる。

――もしかしてこれは、俗に言う因果応報ってやつか……。いや、天罰だ天罰。そうに違いない……。

激しい後悔を味わいながら、ダイヤは力尽きたボクサーのように椅子に座りこんだ。



今から一週間前。
ダイヤは異常な性欲にほとほと参っていた。
原因があるとすれば、あの男だ。二十八歳サラリーマン。見た目は冴えず、会話もつまらない。
どう控え目に見ても勘違いしたダサファッションに身を包んだそのアホみたいな男は、ドライブの最中いきなり、

「何か健太君(ダイヤの偽名)のこと見てたら興奮してきちゃった、ほら」

そう言ってズボンのチャックを下ろすと、イキリ勃つ自分のモノをボロンと出してダイヤに見せつけたのだ。
一瞬頭が真っ白になり、目の前のそれが勃起したペニスだと認識するのに若干の間があった。
そして、それが生まれて初めて見る他人の勃起ペニスだと脳が理解すると、全身の血が逆流するような興奮を覚えた。
思わず顔を近づけ、細部にいたるまでまじまじと観察してしまう。

「うはっ、恥ずかしいなぁ~」

男はまんざらでもない顔でそう言うと、勃起したペニスを露出したまま運転を続けた。
ダイヤはその間、一ミリたりとも男の股間から目を離すことが出来なかった。
蛇が這うように浮き出た太い血管や、露出した亀頭の裏で突っ張るスジ。
尿道の穴に雫のように溜まった透明な液、チャックの隙間から漏れ出た陰毛。
自分のモノとさして変わりないはずなのに、何もかもがダイヤの性欲を異常なまでに掻き立てた。
そしてパンツの中で痛いくらいに勃起した自分のペニスを、ダイヤはズボンの上から無意識に握っていた。
たったそれだけで絶頂を迎えてしまいそうな快感があった。あと少し、ほんの少しでダイヤの理性は吹っ飛ぶところだった。
しかし、残念ながら男は触れてしまったのである。ダイヤの胸に。

例のごとく怒り狂うダイヤだが、一年前とはわけが違う。
ロクでもない大人を数々相手にしてきたダイヤに、もはや遠慮や躊躇のタガはなかった。
知り得る限りの言葉を総動員し、徹底的に罵声を浴びせ、人格を否定し、己のやっていることの浅ましさを骨の髄まで思い知らせてやった。
みるまに萎えていく男のペニスに捨て台詞すら吐いてやった。
ときどき逆切れして手をあげようとする奴も居たが、そんな時は足を使って逃げた。
普段ロクに運動してないおっさんどもを撒くくらい何でもなかった。

しかし、その二十八歳のアホリーマンをコテンパンにやっつけた後、ダイヤはあの勃起ペニスの幻影に悩まされることになる。
ふとした瞬間、たとえば小便をしてる時、飯を食っているとき、テレビを見ているとき、学校の授業を受けてるとき、
突然あの勃起ペニスが脳裏に浮かぶのだ。
がっついてまじまじと見てしまったせいか、細部まで鮮明に思い出すことができた。
ダイヤはそのつどトイレに駆け込み、ネットでダウンロードした動画を見ながらオナニーをした。
不思議なことに、あの男の勃起ペニスは性欲のスイッチを入れるだけで、射精への起爆剤にはならなかったのだ。

あの日もそうだった。
授業中突然勃起ペニスをイメージしたダイヤは、具合が悪くなったと嘘をついて(今月に入って三度目だった)保健室へ行った。
頭痛薬をもらって飲んだ振りをし、しばらくしてから例のトイレへ駆け込む。旧校舎の幽霊便所だ。
過去二回はまったく問題なかった。携帯でエロ動画を再生しながら、好きなだけオナニーに没頭できた。
しかし、三度目のオナニーの時、まさに射精を迎えようとしたその瞬間、爆音と共にトイレのドアが吹っ飛び、
目の前に進藤虎男が現れたのだ。
そして一拍遅れで射精したダイヤの精液が、こともあろうか虎男の股間に飛び散った。

ダイヤはあの瞬間を思い出すたび死にたくなる。
勃起したチンコはもとより、射精するところなんて誰にも見られたことないのに……。
しかもあいつ、気でも狂ったのか俺の精子を手にとってまじまじと眺めてやがった……。
いや、そんなことよりも、そのあとの虎男の言動全てが、ダイヤを地獄へ突き落とすことになるのである。








「お前、ホモだったのか?」

虎男はいつの間にか携帯電話をダイヤへ向けていた。
シャッター音とフラッシュが焚かれ、勃起した下半身を丸出しにした写真を数枚撮られた。
ダイヤは完全に思考回路がショートし、真っ白になった頭でその過程をぼーっと眺めていた。

「証拠確保。いいか、おい。お前は今日から俺のシモベだ。
これからは俺の言うこと、命令には100%従ってもらう。もしも命令に背いたり、反抗的な態度を取ったりしたら、
お前がホモで、旧校舎の便所でホモ動画見ながらオナニーしてたって、この写真と一緒に学校中に言いふらしてやる」

「や……やめっ……やめろ!」

ダイヤは虎男の携帯を奪おうとするが、足首にたまった下着とズボンが引っかかり、バランスを崩して虎男の胸に顔面から突っ込んだ。
虎男はまるで猫でも持ち上げるように、ダイヤの襟首を掴んで体を持ち上げた。とんでもない怪力だ。

「おい、忘れるな。お前と俺は、すでにアルジとシモベだ。少しでも反抗したら――」

虎男は腹いっぱいに空気を吸い込むと、便所を飛び越えて廊下にまで響く大声で、

「海星高校二年B組み中村ダイヤは実はホモで便所でホモ動画見ながらオナニーしてたこれは証拠の――」

「わぁぁあああああああ! わかった! やめろ!」

「何でも言うこときくか?」

「…………」

「海星高校二年B組み中村ダイ――」

「わぁーーーーーーっ! かった、きく、きく!」

「じゃあまず一つ」

「その前にパンツ……履かせろよ……」

「お、すまん」

虎男はダイヤを降ろしてやり、
ダイヤは下着とズボンを履いた。

「じゃあまず一つ。アルジとシモベはいつでもどこでも一緒だ。
単独行動は許さない。学校に居る時はつねに俺と一緒に居ろ、いいな?」

「はぁ~……」

「それ、返事か?」

「わ、わかったよ」

「もう一つ。実は俺、購買部のチクワドーナツサンドが大好物なんだ。
あれは毎日限定2個販売で、コアなファンが居るからなかなか買うことができない。
でも、昼休み開始のチャイムと同時にダッシュで行けば必ず買える。
俺の為に毎日チクワドーナツサンドを買って来い。2個ともだ。
一個はアルジの分、もう一個はシモベの分。一緒に食べよう。心配するな、金は渡す。
――念のために言っとくが、もしも買うのに失敗したら……どうなるかわかるな?」

「わ、わかった……」

「そして最後に……」

微妙な沈黙。

「な、なんだよ」

「まぁいい。とにかく、以上の二つは絶対だ。いいな?」

「おう……」

「じゃあさっそく一緒に教室に帰ろう」

虎男はご満悦でダイヤの肩を抱いたが、ダイヤは即座にそれを振り払った。
ゲイの大人相手にずっとそうしてきたせいで、反射的にやってしまったのだ。
虎男は眉間にシワを寄せる。

「いや、今のは違う!」

ダイヤは慌てて虎男の腕を取って自分の肩に回した。
不思議なことに、嫌悪感は少しも感じなかった。



**********



「で? もう一週間もやってんだけど、いつ終わるんだよ、このふざけたゲーム」

「さぁな」

「お前、ほんとに鬼か? こんなこといつまでも続けられるわけねえだろ」

「わかった、あと一週間続けろ。そしたら開放してやる」

「ほんとだな? 今確かに聞いたぞ。あと一週間でアルジとシモベ、終わるんだな?」

「あぁ」

「っしゃー! クソがっ!」

「あ? 今なんつった?」

「べつに」

虎男はB組みの教室の中で、聴こえるか聴こえないかのギリギリ小さい声で呟く。

「海星高校二年B組み中村ダイヤは実はホモで――」

「ぶぁ~~~~~~っ! やめろマジ!」

ダイヤはほとんど息が漏れただけのような声でそれを遮った。



その悪夢、本当に終わるのか?



つづく。