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悶茶流的同性愛小説

小説を書く練習のためのブログ。

鬼畜晩餐会

2010年09月09日 | 小説 「鬼畜晩餐会」
1-1 材料



「ほら、こっちへおいで」

そう呼びかける祐介の顔は天使のように愛らしく、
春風のように心地よく耳をかすめるその声は、
人の心を突き動かすには充分すぎるほど魅力的で澄んでいた。
人間ですら容易く魅了されてしまうのだ、
首輪をつけた飼い猫を手なづけることくらい祐介にとっては容易いことだった。
祐介は寄ってきた猫を抱き上げると、

「君、秋山さんちの猫だね。かわいそうに」

頭を優しく撫でてやると、猫は安心しきったようにゆっくり瞬きし、そのまま寝てしまった。

「ふふっ、いい子だね。ゆっくり寝てていいよ」

天使のように微笑む祐介の目に、異様な光が差し込んだ。

「起きたら地獄が待ってるんだから」



祐介は猫を腕に抱えたまま人気のない路地を選んで自宅へ帰ると、
遠足用のリュックサックの中に猫を入れてチャックを閉めた。
猫はチャックを閉めたとたん、まるでこれから我が身に起こる悲劇を予感したかのように猛烈に暴れ狂った。
ガサガサと音を立てて床を転がるリュックサックを、祐介は何の感情もない目で見下ろしていた。

祐介はバスルームからタオルを数枚もってくると、キッチンのフローリングの上に丁寧に重ねて敷いた。
そして猫の入ったリュックサックを両手でつかみ勢いよく振り上げると、タオルを敷いた床に叩きつけた。
どすっという鈍い音と、気管から否応なく吐かれた猫の小さな悲鳴が聞こえた。

「ニャーオ・・・ニャーオ・・・」

低くしゃがれた声で猫は何度も鳴いた。
助けてくれと呻いてるようだった。

「まだ死んじゃやだよ。こんなのぜんぜん苦しくないんだから」

祐介は床に敷いたタオルをもとの場所に戻すと、
猫の入ったリュックを背負って家を出た。



つづく。