「運命」
「ねえ…何も言わずに聞いてくれる?」
「ん、なんだ?」
「君の生きる明日が、今日と違う世界に見えても、思い出して、君なら大丈夫」
「はっ? なんだそれ?」
「ううん、何でもない。っていうか、何も言わずに聞いてって言ったでしょ!」
「ははっ、わりぃ!」
「あのね、君は運命って信じる?」
「運命かー、別にないとは想わないけど、気にしたことねえかな」
「じゃあ人ってさ、死んだらどうなると思う?」
「どうなるって、そりゃあ…う~ん、わかんねえよそんなの!
つーかどうしたんだよ、急にそんな小難しい話」
「うん、ちょっとね、たまにはこんな話もいいかなーって思って。もうひとついい?」
「おう」
「今度はちゃんと聞いてよね!」
「へいへい、わかりました。何でしょうかお嬢様」
「もう!」
「ははっ、冗談だよ。ちゃんと聞く」
「もうすぐニューデイズに新しい幻視の巫女が誕生するの、知ってる?」
「ああ、結構でかいニュースになってるしな」
「その巫女様が持ってる幻視の力は、何も彼女だけが持つ特別な力じゃないの」
「えっ、そうなのか?」
「うん。わたし達ニューマンの中には、ときどきそういった不思議な力を持って生まれる人がいてね、
この話は巫女様と同じ幻視の力を持つ人から聞いた話なんだけど──
世界はね、運命という大きな命の流れと、それを取り巻く絆の糸によって、全てが必然を織り成して巡っているの」
「おい…意味わかんねえぞ」
「うーん、簡単に言うと、この世界に誰かが生まれることも、この世界で誰かが死ぬことも、
全ては運命によって定められていることなの。そして、わたし達が生きていく中で誰と出会い、
どんな人生を歩むかも、あらかじめ全てが定められていて、決して変えることはできない」
「はっ? なんだよ、それじゃ──」
「お願い、もう少しだけ聞いて」
「お…おう、すまん」
「わたしと君が出会うことも、ずっと前から決まってたんだよ。
そして、いつかみんな離ればなれになるように、誰にも必ず別れの時が来る。
だけどそれは、嘆き悲しむようなことじゃなくて、命を繋ぐための大切な絆なの」
「命を繋ぐ…絆?」
「うん。わたし達の命は何度も繰り返し、何度もめぐり逢うんだよ。そのつど姿を変えて。
君とわたしも、次の人生では親子かもしれないし、兄弟かもしれない。
お婆ちゃんと孫かもしれないし、席が隣同士の同級生かもしれない。
敵と味方にわかれるかもしれないし、喧嘩だっていっぱいするかもしれない。
でもね…それでも必ず、まためぐり逢える。
だから君も信じて、君自身の運命を」
君なら大丈夫
─ 完 ─
「ねえ…何も言わずに聞いてくれる?」
「ん、なんだ?」
「君の生きる明日が、今日と違う世界に見えても、思い出して、君なら大丈夫」
「はっ? なんだそれ?」
「ううん、何でもない。っていうか、何も言わずに聞いてって言ったでしょ!」
「ははっ、わりぃ!」
「あのね、君は運命って信じる?」
「運命かー、別にないとは想わないけど、気にしたことねえかな」
「じゃあ人ってさ、死んだらどうなると思う?」
「どうなるって、そりゃあ…う~ん、わかんねえよそんなの!
つーかどうしたんだよ、急にそんな小難しい話」
「うん、ちょっとね、たまにはこんな話もいいかなーって思って。もうひとついい?」
「おう」
「今度はちゃんと聞いてよね!」
「へいへい、わかりました。何でしょうかお嬢様」
「もう!」
「ははっ、冗談だよ。ちゃんと聞く」
「もうすぐニューデイズに新しい幻視の巫女が誕生するの、知ってる?」
「ああ、結構でかいニュースになってるしな」
「その巫女様が持ってる幻視の力は、何も彼女だけが持つ特別な力じゃないの」
「えっ、そうなのか?」
「うん。わたし達ニューマンの中には、ときどきそういった不思議な力を持って生まれる人がいてね、
この話は巫女様と同じ幻視の力を持つ人から聞いた話なんだけど──
世界はね、運命という大きな命の流れと、それを取り巻く絆の糸によって、全てが必然を織り成して巡っているの」
「おい…意味わかんねえぞ」
「うーん、簡単に言うと、この世界に誰かが生まれることも、この世界で誰かが死ぬことも、
全ては運命によって定められていることなの。そして、わたし達が生きていく中で誰と出会い、
どんな人生を歩むかも、あらかじめ全てが定められていて、決して変えることはできない」
「はっ? なんだよ、それじゃ──」
「お願い、もう少しだけ聞いて」
「お…おう、すまん」
「わたしと君が出会うことも、ずっと前から決まってたんだよ。
そして、いつかみんな離ればなれになるように、誰にも必ず別れの時が来る。
だけどそれは、嘆き悲しむようなことじゃなくて、命を繋ぐための大切な絆なの」
「命を繋ぐ…絆?」
「うん。わたし達の命は何度も繰り返し、何度もめぐり逢うんだよ。そのつど姿を変えて。
君とわたしも、次の人生では親子かもしれないし、兄弟かもしれない。
お婆ちゃんと孫かもしれないし、席が隣同士の同級生かもしれない。
敵と味方にわかれるかもしれないし、喧嘩だっていっぱいするかもしれない。
でもね…それでも必ず、まためぐり逢える。
だから君も信じて、君自身の運命を」
君なら大丈夫
─ 完 ─