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悶茶流的同性愛小説

小説を書く練習のためのブログ。

PSU物語 最終章

2010年10月01日 | PSUオリジナル小説
「運命」


「ねえ…何も言わずに聞いてくれる?」

「ん、なんだ?」

「君の生きる明日が、今日と違う世界に見えても、思い出して、君なら大丈夫」

「はっ? なんだそれ?」

「ううん、何でもない。っていうか、何も言わずに聞いてって言ったでしょ!」

「ははっ、わりぃ!」

「あのね、君は運命って信じる?」

「運命かー、別にないとは想わないけど、気にしたことねえかな」

「じゃあ人ってさ、死んだらどうなると思う?」

「どうなるって、そりゃあ…う~ん、わかんねえよそんなの!
つーかどうしたんだよ、急にそんな小難しい話」

「うん、ちょっとね、たまにはこんな話もいいかなーって思って。もうひとついい?」

「おう」

「今度はちゃんと聞いてよね!」

「へいへい、わかりました。何でしょうかお嬢様」

「もう!」

「ははっ、冗談だよ。ちゃんと聞く」

「もうすぐニューデイズに新しい幻視の巫女が誕生するの、知ってる?」

「ああ、結構でかいニュースになってるしな」

「その巫女様が持ってる幻視の力は、何も彼女だけが持つ特別な力じゃないの」

「えっ、そうなのか?」

「うん。わたし達ニューマンの中には、ときどきそういった不思議な力を持って生まれる人がいてね、
この話は巫女様と同じ幻視の力を持つ人から聞いた話なんだけど──
世界はね、運命という大きな命の流れと、それを取り巻く絆の糸によって、全てが必然を織り成して巡っているの」

「おい…意味わかんねえぞ」

「うーん、簡単に言うと、この世界に誰かが生まれることも、この世界で誰かが死ぬことも、
全ては運命によって定められていることなの。そして、わたし達が生きていく中で誰と出会い、
どんな人生を歩むかも、あらかじめ全てが定められていて、決して変えることはできない」

「はっ? なんだよ、それじゃ──」

「お願い、もう少しだけ聞いて」

「お…おう、すまん」

「わたしと君が出会うことも、ずっと前から決まってたんだよ。
そして、いつかみんな離ればなれになるように、誰にも必ず別れの時が来る。
だけどそれは、嘆き悲しむようなことじゃなくて、命を繋ぐための大切な絆なの」

「命を繋ぐ…絆?」

「うん。わたし達の命は何度も繰り返し、何度もめぐり逢うんだよ。そのつど姿を変えて。
君とわたしも、次の人生では親子かもしれないし、兄弟かもしれない。
お婆ちゃんと孫かもしれないし、席が隣同士の同級生かもしれない。
敵と味方にわかれるかもしれないし、喧嘩だっていっぱいするかもしれない。
でもね…それでも必ず、まためぐり逢える。
だから君も信じて、君自身の運命を」




君なら大丈夫




─ 完 ─