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ウェイの中国語翻訳メモ

日本語と中国語の通訳・翻訳を勉強しているウェイ。言語の奥深さにも興味あり。

◆女性でも「先生(せんせい)」OKです

2005年03月10日 | 翻訳の現場
<翻訳の現場にて>
中国語で書かれたビジネスメール文章を日本語へ。
メールの宛先は、会社の相談役Wさん。Wさんは女性弁護士。


中国語にはない日本語のビジネス習慣に合わせて、書き出しはこうした。

「W先生、いつもお世話になっております」

もちろん、原文は「W律師,您好!(lv4shi1 nin2hao3)」としか書かれていない。
ここで、忠実に原文通り「W弁護士、こんにちは」と書いたのでは、芸がない。
よく使われる「您好(nin2hao3)」も場面によって、姿を変える。

で、翻訳完了したし、さぁ送信~!! えぃ。

数分後、このメールを見た中国人Pさん(PさんをCCに入れていたので)
目を真ん丸にして言った。圧倒されるくらいの勢いで。。

「W律師是女的呀!」(lv4shi1shi4nv3de5ya5)
(W弁護士は女性だよぉ!)

Pさんが注目したのは「W先生」という書き出しだった。

中国語で「先生(xian1sheng1)」は、ミスターやムッシューなんかに相当する語。
なので、Pさんは自分の目に飛び込んできた「先生(せんせい)」という漢字を
「先生(xian1sheng1)」と読み、咄嗟に反応してしまった様子。

それ、
「先生(xian1sheng1)」じゃなくて
「先生(せんせい)」ですから~!
「先生(せんせい)」は、女性に対して言っても何の問題もないっちゅーの!

正直、Pさんの勢いにはかなりビビったけど、
とりあえず、間違ってなくって、ホッ。

◆「思いを馳せ」たら、「認識深まる」かな

2005年03月09日 | 翻訳の現場
日本語原文
「▲▼は、地球と人類の歴史を振り返りながら、自然と人間の叡智に思いを馳せる展示です」


中国語訳文
(×)「▲▼的展覧可以供参観者回顧地球和人類的歴史,也可以接触自然和人類的叡智」 
                                         ****


訳者は、日本語原文の「…に思いを馳せる」という部分を
「…に触れることができる」という表現を使って訳そうとしました。
「自然に触れる」とか「叡智に触れる」とかって、言いますもんね。
なので、中国語の動詞には「接触(jie1chu4)」を持ってきました。

でも、この動詞は、物質に【直接触れる】というニュアンスが強い語のようです。
自然や人間の叡智に、直接触覚を以って触れることは出来ないので、
この場面には相応しくありません。

では、「…に思いを馳せる」をどういう動詞で訳せばいいのでしょうか。

三省堂『大辞林 第二版』によると、「思いを馳せる」は、
“遠く離れているものごとについて、いろいろと想像し思いをつのらせる”
と説明されています。

でも、この文が主張したいことは、展示を見に来てくれた人たちに
【思いをつのらせる】だけに止まらず、さらに理解を深めて欲しい、ということだと思います。

見学者は、そのこと(=自然と人間の叡智)に【直接触れる】ことは出来ませんが、
その展示によって、新しい情報が得られます。
そして、自然と人間の叡智について【認識を深める】ことが出来ます。

そう考えると、、、
どうやらここでは「さらに認識を深める」という意味の中国語が合いそうです。


(○)「▲▼的展覧可以供参観者回顧地球和人類的歴史,可以進一歩認識自然的偉大和人類的叡智」
                                        **********   ******                 


ちなみに、「自然(zi4ran2)」の後ろに「的偉大(de5wei2da4)」を付けたのは、
「人類的叡智(ren2lei4de5rui4zhi4)」のリズムと合わせる為です。

◆マンモスの展示会、展示されてるのはなぁに?

2005年01月24日 | 翻訳の現場
日本語原文
「○○とマンモスの展示において共同プロジェクトを実施し、・・・」


中国語訳文
(×)「和○○一起做有関長毛象展覧共同項目,…」

(○)「和○○一起做有関長毛象冷凍標本展覧共同項目,…」
                    *******


いろいろな訳され方がありますが、ここでは
マンモスを「長毛象(chang2mao2xiang4)」としています。

で、、、
私が分からなかったのは、「冷凍標本(leng3dong4biao1ben3)」と
書かなくてはいけなかったこと!

マンモスそれ自体を展示するわけじゃないから、
「冷凍標本(leng3dong4biao1ben3)」もしくは
「化石標本(hua4shi2biao1ben3)」という説明を
マンモスの後に付けないといけないらしいです。

そっかぁ。。。
・・・してやられた。

“わざわざ言わなくても分かるっしょ~!!”は、
日本語ネーティブの考え方です。

◆「指導者(しどうしゃ)」をどう変えよう・・・?

2005年01月23日 | 翻訳の現場
<翻訳の現場にて>
中国語ネーティブが中国語の原文を日本語に翻訳、
その翻訳された文章を日本語ネーティブが
より日本語らしくする為に校正するシーン。


【校正前】
「○○は日本の指導者に電報を送りました」
     ***********

中国語原文は確認できなかったのですが、
推測ではそのままの「指導者(zhi3dao3zhe3)」か、もしくは
リーダーの意味である「領導者(ling3dao3zhe3)」が
書かれていたのかなと思います。

日本語で「指導者(しどうしゃ)」ということばは、
多くがスポーツなどの技術を教えるという視点の元で使われていて、
「インストラクター」ということばに置き換えられているようです。

さて、上述の校正前の一文ですが。。。
これは「指導者(しどうしゃ)」を他の言葉に直せばいいのでしょうねー?!
「首相(しゅしょう)」としましょうか???

と、一瞬思ってしまいますが、
「日本の指導者」ということばには、
“指導者”個人を意識して見ているわけではなく、
“日本”全体を意識していることが伺えると思います。

それに、日本語は大きな枠組みで着飾った方が
日本語の特性を生かしていると言えるので、
直に電報を送った相手を指すより【周辺の言葉】を用いた方がいいみたいです。

以上の理由により

【校正後】
「○○は日本政府に電報を送りました」
     *********

◆複数の人に敬意を表す必要はない?!

2004年11月29日 | 翻訳の現場
中国語で二人称は、「你(ni3)」と「您(nin2)」があります。

前者が一般的に使われるもので、後者は敬意を込めた言い方。
複数形にする場合、後ろに「們(men5)」をつけます。

でも、基本的に「您們(nin2men5)」というのは使われません。

複数人に敬意を表したいときは、これを使ってもいいじゃな~い?
と思ったのですが、中国人W氏曰く
“複数の人に敬意を表す必要はないっ!”ですって。

実際に面と向って言うときに、こういう表現をするときも稀にありますが、
基本的には「您(nin2)」を複数形にしません。
では、複数人を丁寧に言いたいとき、どう言えばいいのでしょう?


下は「ご愛顧頂き、誠にありがとうございます」というような意味です。

(×)「非常感謝您們対我公司的支持」
          ****

(○)「非常感謝各位対我公司的支持」
          ****

二人称で敬意を表すのではなく、
量詞「位(wei4)」を使うことによって丁寧な表現を作ります。

◆「小額(しょうがく)」でも「少額(しょうがく)」でもなく

2004年11月21日 | 翻訳の現場
<翻訳の現場にて>
会社の契約書翻訳のシーン。中国語から日本語へ。

中国語原文
「関于小額現金支出,将在財務会計制度中另行規定」


ここに出てくる「小額(xiao3e2)」って、小さい金額ってことですよね。
ということは、「小額(xiao3e2)」の日本語訳は「小額(しょうがく)」ではなく、「少額(しょうがく)」としなければなりません。

「小額」・・・>額面が小さい
「少額」・・・>金額が小さい

でも……。
こういう契約書などの改まった文章中にこの言葉が出てきたときには、
それなりの専門的に使われる表現をしなければなりません。
「小額」でも「少額」でもなく、「小口(こぐち)」とするのが適切です。
ここでも漢字マジックに引っ掛かりがちです。

日本語訳文
「小口現金の支払いについては、別途財務会計規則にて規定するものとする」

◆「上場する」の分解作業

2004年11月15日 | 翻訳の現場
<翻訳の現場にて>
会社PR資料の翻訳シーンにて。日本語から中国語へ。

日本語原文
「○○株式会社は2004年11月15日東証一部に上場しました」
       
中国語訳文
「○○公司股票于2004年11月15日正式被接受為東京証券交易所第一類股上市交易」


日本語原文の動詞は、「上場する」ですね。
それに相当する中国語は「上市交易(shang4shi4jiao1yi4)」です。

でも、この中国語訳文、、
よ~く見てみると「上市交易(shang4shi4jiao1yi4)」以外にも
動詞がありますよね。

「接受(jie1shou4)」です。

「上場する」ということは、誰もが勝手にできることではありません。
証券取引所の審査を経て、条件が合えば認められ、それでやっと「上場する」のです。
そうした点から見てみると、ここの「上場する」は、
“認められた”→ よって“上場した”
と考えることができます。

なので、中国語訳文では「接受(jie1shou4)」を使って、
“やっと上場したんだぞ”“認められたんだぞ”という
上場の難しさを表現した方が伝わりやすいということです。

それにしても、日本語では「会社」が主語になってるのに、中国語では「股票(gu3piao4)」が主語になってますねぇ。。。これも又、視点の違いだゎ……。

◆思い切って省くことも肝要!

2004年11月07日 | 翻訳の現場
「勝手ながら、以上の件につきましてご依頼申し上げます」
このような日本語がありました。

実は、私、この日本語に疑問を感じています。
“ご依頼”って、自分に対して使っていいの・・・?!

相手が依頼してきたときには、
「ご依頼頂き、ありがとうございます」等で使いますけど、
自分が依頼してるのに、自分がすることに対して
“ご”を付けるの、ちょっとおかしいと思うんです。

という訳で、実はこの日本語原文が腑に落ちないのですが、
これを中国語に訳せと言われたら、やらねば!

日本語は、慣用的に使われるものが多くて、
意味を持たないものが結構ありますよね。

ここの「勝手ながら」もそのひとつ。
なので、この部分バサッと省いてしまいましょう~。

「上述事宜,謹此拜托(Shang1shu4shi4yi2,jin3ci3bai4tuo1)」

◆「日中(にっちゅう)」が言う“自己主張しよう”と

2004年11月02日 | 翻訳の現場
「中日両国間有関条約」(Zhong1ri4liang3guo2jian1you3guan1tiao2yue1)
「中日投資保護協定」(Zhong1ri4tou2zi1bao3hu4xie2ding4)

などのかた~い言葉とであったとき、
まぁ大体はそのままで大丈夫だよねーと思い、

「中日両国間の関連条約」やら「中日投資保護協定」やら、
日本語で通じる表現に変える人が多いですよね。イヤ、多いんです。

中国語の原文に惑わされて、
【通じる】言葉に置き換えただけで安心しきるパターンです。

でも、こういう場合、
日本語では「日中(にっちゅう)」と順序を変えなければ不自然です。

こう言われると、そんなことくらい分かるよ~って思うけど、
実際中国語の原文を目にすると、漢字というマジックに引っかかり、
「中日(ちゅうにち)」と訳してしまう人、数知れず。

日本語のときは、日(にち)が必ず先に来ます。

「中日(Zhong1ri4)」を訳すとき、
こういう外交に係わるところでは、謙遜するな、自己主張しろ、と
「日中(にっちゅう)」と言う言葉がそう言っているように感じます。

◆「盧溝橋(Lu2gou1qiao2)」を訳そう

2004年10月25日 | 翻訳の現場
日本と中国では漢字という共通の文字を使っているので、両語の固有名詞はほぼそのまま使えば通じるでしょう。
でも、通じることと、上手に表現することはまったく別のこと!

例えば、「盧溝橋(Lu2gou1qiao2)」。
日本語でも「盧溝橋(ろこうきょう)」で通じます。

イタリアに関する中国語の文章があったとします。その中に「盧溝橋(Lu2gou1qiao2)」が出てきました。日本語へ翻訳するとき、そのまま「盧溝橋(ろこうきょう)」でいいでしょうか。

ここでの「盧溝橋(Lu2gou1qiao2)」は、「盧溝橋(ろこうきょう)」ではなく「マルコ・ポーロ・ブリッジ」となります。

固有名詞だから! と安心しきることなく、
文章の内容に応じて、他の言い方を考えてみることが必要ですね。

◆「赤水(あかみず)」は何色?

2004年09月28日 | 翻訳の現場
<翻訳の現場にて>
浄水器の取扱説明書の中に書かれている注意事項、
日本語から中国語へ。

 日本語原文
「赤水が出ているときはしばらく『原水』を流してから……」
       
 中国語訳文
「水中因含鉄銹等成分而呈褐色時,先将水管里的水放掉……」


ここで注目したいのは「赤水=褐色」ということろ。日本語では「赤水(あかみず)」と言うけれど、よくよく観察してみると、実際のそのものはレンガ色と言うか、まぁ茶系色ですよね。日本語がどうして「赤水(あかみず)」と言われるようになったのか定かじゃないのですが、もしかしたら、その言葉ができた当初はそこまで細かく色を区別していなかったのかもしれませんね。

信号のススメの色は「青(あお)」と言いますよね。見たところ「緑(みどり)」なのに。それは、かつて日本語の中には赤と青の二通りしか色を表す言葉がなかった名残りだと聞いたことがあります。赤と青の二つしかなければ、オレンジは赤に分類されてしまうし、緑は青の仲間に入ってしまうんです。赤水もそれと同じかなぁ。茶系だけど、赤に分類されてしまったのかな!?

さてさて、ここでの色の訳語は「褐色(he4se4)」となっていて、それに「鉄銹(tie3xiu4)」などの言葉を加えて説明しています。「褐色(he4se4)」だけでは伝わりにくいということですね。

色の話は、鈴木孝夫著『日本語と外国語』に詳しく書かれていて面白いです♪

◆「健康(けんこう)」が「体力(ti3li4)」と訳されるとき

2004年09月20日 | 翻訳の現場
<翻訳の現場にて>
本格的サバイバルのマニュアル本(こんなのあるんですねぇ)を日本語から中国語へ。

 日本語原文
「コンパスに頼らず移動する」「水分補給をする」「健康維持に注意する」
       
 中国語訳文
「不靠指南針識別方向」「補充水●(●単立人右面加分)」「保持体力」


ここで気になるのが3項目目の「健康維持に注意する」ということろ。
日本語原文では「健康維持」となっているから、中国語訳も容易に
「健康(jian4kang1)」という訳語が浮かんできますよね。

でも!
翻訳するときの大原則『読者は誰か?』ということを忘れてはいけません。
これを読んでいる人は、そう、本格的サバイバルをする人たち。
生か死か、という瀬戸際を突き進んで行く人たちですよね。

だとすると、この日本語原文で言っている「健康維持」って
暗に「死に直面しないような強靭な体力を!」と言ってるんですね。

じゃ、「健康(けんこう)」=「体力(ti3li4)」か?
と聞かれると100%そうだと言うわけじゃないですが、
時と場合によっては、そうなるときもあるってことです。

こうして、『読者は誰か?』を考えていくと、より中国語らしい訳語が生まれてくるのです。