気まぐれ徒然なるままに

気まぐれ創作ストーリー、日記、イラスト

Your Love 1

2020-03-04 20:30:00 | ストーリー
Your Love 1




私は入社社4年目の25歳 OL
ちなみに彼氏はいない

この会社の 一人の男性に憧れている

女性社員みんなの憧れと言っても過言じゃないぐらい素敵な人


藤川 晴樹 34歳
若いのにもう部長


噂では仕事もできるクールな人らしい

そんな感じする…


私は部所が違うから直接話もしたことはないし
たまに社内で見かけると気分が上がる

残念ながら同じ部署にでもならないと
会話すらするチャンスもない人



とうとう今日は異動発表の日

今の部署から移動になるのかな
入社してずっと今の部署だから慣れてるし
このままここにいたいな…


社内全体の連絡は各自のパソコンに一斉メールで届くようになっている



移動になった、とか ならなかったとか
歓喜や落胆の声が聞こえてくる


私は … メールを開けてみる


【 中野 希 : 営業企画部 1課 】
私 移動!? しかもハードと言われているな営業企画部…


うちの会社は原則、辞令が出たら2日以内に引き継ぎ業務、3日目には必ず移動と決まりになっている


「藤川マネージャーはどこになったの?」という会話が耳に入った


あっ、そうだ!藤川マネージャー!憧れの人!


「あった!営業企画部1課に移動、だって。ウチじゃないのかぁ~ 」

えっ!?
私はもう一度メールを確認した

嘘…
私、同じ部署になった…

あの藤川マネージャーと同じ部署
さっきまでの沈んでたのに

内心大喜びした


ーーーー

とうとう新しい部署で初日の朝
本当に待ち遠しくて いつもより早く出社した

「おはようござい… 」

まだ誰も来ていなかった
一人苦笑いしながら部内を見渡すと

「早いね(笑)」

あの憧れの藤川マネージャーが出社していた

「お、おはようございます!よろしくお願い致します、、」

直接 会話するの初めて …


「よろしくね、中野さん。」
微笑んで私に握手の手を差し出してくれた

流石、藤川マネージャー
顔と名前をもう覚えてくれてる!

「こちらこそよろしくお願い致します!」
手に触ってしまった

二人きりのこの状況に緊張する
早く他の人が出社しないかと落ち着かない

まるで芸能人の推しと対面したみたいなドキドキで
心臓が飛び出そうになった

同じ部署になった女性社員さんが続々と出社しては藤川マネージャーに挨拶を始めた

嬉しそうな表情…
みんな私と同じ気持ちなんだな(笑)



ーーーー

人事異動から約三ヶ月
仕事もなんとかこなしていけてる

マネージャーの仕事ぶりは噂通りだった

卒がなくで的確
自分の仕事もあるのに部下のことも気にかけて
部の士気を下げないよう努めてる

誰よりも早く出社し 誰よりも遅く退社する

なんか…
こんな上司珍しい…

もしかしたら家でもずっと仕事しているのかもしれない

コピーとか私達部下を使わず自分のことは自分でやってる

本当に珍しいというか
仕事ができる人ってこういうことを当然のようにできる人なのかもしれないな…

とにかく 何もかも格好良いのは間違いない

冷静でクールだけど
時々微笑むと優しい表情に変わる

あのギャップ、本当に恋しちゃいそうになる
でも勘違いしちゃいけない

男性 女性に関わらず
チームのように部下を気にかけてる

そういう人なんだ


うちの会社は残業をしてはいけないという空気がありみんな定時に退社していて

私もみんなと同じく退社した


会社のビルを出たところでバッグを探った

あ、あれ!? チケットがない!

手帳に挟んでおいたはずのその手帳がない
会社の引き出し… かな

明日でも構わないけど

引き出しにその手帳があるのか、確実に手帳に挟んでおいたのかが気になって取りに戻ることにした

部署に帰る途中のエレベーターで友達からLINEが入った

“明日 仕事で行けなくなった!急でごめん!この埋め合わせは必ずするからー”

えぇっ …

久しぶりにその友達と会う約束だったから凄く楽しみにしてたのに…

部署に戻ると マネージャーが帰り支度を始めていた

「あれ? 忘れ物?」


自分の引き出しを引くとやっぱり手帳は入っていた
手帳を開くとチケットも入っていた

良かった…

私はマネージャーにライブのチケットを見せた

「これを忘れてて(笑)」

「チケット?」 ジャケットを羽織った

「ジャズのライブがあるんです。」

マネージャーは興味ありげに聞いてきた
「へぇ(笑) 中野さん、ジャズ好きなの? 僕も好きだよ。」

えっ? じゃあ …
「もし … ご都合良かったら、どうですか?」

ドキドキしながら誘ってみた

「君と一緒に?でも彼氏とか友達とかと行くんじゃないの?」

「カレシいませんからっ」
真っ赤になりながら答えた

マネージャーは少し驚いた

「このチケットは一緒に行くはずだった友達がいけなくなったもので、もしよろしければ、と… 思ったのですが、、」

私がマネージャーをお誘いするなんて
なんて無謀なことをしたの!

私ったらほんとバカ!?


「それはいつ?」

ーー えっ?


「明日の夜です… 急ですよね?」

マネージャーは鞄の中から手帳を取り出しスケジュールを確認した

「明日の夜… ん、 大丈夫。是非行きたいな(笑)」

ほんとに!?

「じゃあ、これ、、」
チケットを手渡した

「ありがとう(笑) 楽しみだ(笑)」


ーーー


あぁ… 一睡も 眠れなかった
今夜はマネージャーとデート… (?)

あの女性社員みんなの(?)憧れ
“藤川マネージャー”とデート(?)

そんなの 眠れる訳ないよ ーー

早く仕事が終わらないかと一日中
ずっと時計ばかりを見てソワソワしていた


ーーーー

退社時間になり机の整理するふりをしてみんなが帰るのを待った

ほどなくして部内には私とマネージャーと二人きりになった


「それじゃあ 行こうか(笑)」
マネージャーは仕事ではクールに見える人だけど

凄く嬉しそうな笑顔でスーツのジャケットを羽織った

そんなにジャズが好きなんだったんだ
声をかけて良かった

マネージャーの後ろを歩き
会社のビルから外に出た

勤務外時間にマネージャーと一緒に歩くーー

このシチュエーションだけでドキドキする

「あぁ、そうだ。ここからは “ マネージャー ” は抜きにしてくれない? 仕事外だから(笑)」

「では… なんとお呼びすれば 」

ニッコリ笑って
「晴樹、とか?」

思ってもみなかった事を言われ驚いた

いきなり名前の方!?
「そんなの無理ですよっ!」

「変… かなぁ? じゃあ晴樹さん、なら?」

「 だから、名前は無理ですって!(笑) 」

「じゃあ… 妥協して、藤川ね(笑) 俺は希ちゃんって呼ぶね。」


希 “ちゃん”!?
頭で湯が沸かせそうなほど全身がカーッと熱くなって汗が吹きでてきた

それに “俺” って言った!

会社では “私” と言ってるからか
そのプライベート感に緊張度が増してた

なんか色々と頭も心臓にも負担が…


「希ちゃん、彼氏はいないって言ってたけど、好きな人もいない?」

「は、はい!?」
いきなり唐突に “彼氏はいるのか?” なんて普通聞いてくる!?

「あ、これはいけない質問だな。セクハラ発言になるね。
でも、真面目にね、俺は君に興味があるから聞きたい。」
真面目な表情で質問してきた


「興味?」
上司が部下の事を把握しておきたい的な感じ?

でもプライベートの恋愛事情なんて業務とは関係ないよね

若い女は恋愛にうつつをぬかす傾向があるから事前調査的な?


「今は好きな人もいないです。」
これが無難な答えよね…


「そうなのか… 」
やっぱりマネージャーもそう思ってるんだなぁ
女は恋愛にうつつをぬかすって

マネージャーは仕事もできるし 恋愛なんて 二の次、三の次、って感じに見える


優しいんだけど
どこかクールでスマート


感情的になることも情熱的というタイプでもなさそう
そもそも恋愛に興味なんかなさそう


頭の中はずっと仕事のことばかり!って感じ(笑)


だからこそ “ジャズが好き” なんてプライベート情報を入手できたことが嬉しい


「ここだね。」
ライブが行われるジャスバーに着いた

お酒を飲みながら
本格的な生演奏のジャズが聴く

ライブが始まった

時々 目を閉じて聴き入る横顔
グラスを持つ指先
アイリッシュを飲み込む度に動く喉仏
綺麗な鼻筋


日本人としては色素の薄い瞳の色
髪も茶色っぽくて 肌の色も白い

もしかしてクォーターとか…?
とても綺麗でつい見とれてしまう

ジャズの生演奏を聴きに来たのに
私の意識はそれどころじゃなくなってる


そんな私に気づいてテーブルに片肘を立て私をじっと見つめ始めた

「な、なんでしょう、、」

「グラス空いてるけど、次はなにを頼もうか。」
いつもより低い声のトーン

あぁ、グラス、ね!
「あっ、じゃあ 同じもので」

「わかった。待ってて。」
オーダーしに立ち上がった

それでじっと見てたの!

あーもう、紛らわしいなっ!
ドキドキしちゃったよ!

持ってきたのはマネージャーがさっき飲んでいたアイリッシュだった


「あれ?」


さっき飲んでいた物と同じものをと思って言ったつもりなんだけど…



マネージャーの顔を見たら
「俺と“同じ”の、でしょ?(笑)」と頭を傾けて微笑んだ


一口飲むと凄くキツいお酒だとわかった
こんなの飲んだら直ぐに酔っぱらっちゃう!


まさか私を酔わせたいとか…
いえいえ、それは自意識過剰だよね(笑)

「この曲 …俺 好きでね。家でもたまに聴くんだ(笑)」

その光景
想像できてしまう(笑)

ゆっくりまぶたを閉じて曲を聴き入る ーー

その表情が
なんだか悲しそうでもあり 麗しい


ライブが終わっても
他のお客さんはまだ残って飲んでいた

「マネージャー… じゃなくて、藤川さん。」

「ん? 」

「藤川さん … は、交際してる人いますよね? 」

「なんでいるのが前提?(笑) 今はいないよ。」

「社内でもモテてるじゃないですか。直ぐにでも彼女できそうですけど… 」

「俺モテてるの? 仮にモテているとしてもそこは重要じゃない。
それに俺はそんな簡単に誰かを好きにはならないからね(笑) 」

「はぁ… 」
この人が好きになる人って相当な人なんだろうな


「なに? 信じられない?(笑) 」
セクシーな視線で見つめられて思わず目線を反らした

「い、いえ、そういう訳では(笑) 」

「俺はね… 」
マネージャーに視線を戻したら
真剣な表情で真っ直ぐ私の目を見つめていた


「実はずっと昔から希ちゃんのことが好きだったんだ。だから、、俺のことどう思ってるのかと気になってた。」


好き!?
あ、部下として、ね(笑)


「あっ、いえ(笑) 」

「部下としてじゃないよ。」

え? えっ!?

「いつも元気で一生懸命で、なのにたまにおっちょこちょこミスをする所とか、あぁ!反応が素直で可愛いところとかね(笑) 」

「それ、ディスってます?」

マネージャーが吹き出した

「ククッ(笑) そんなことないよ?そういう返しも好きだな(笑) 」

なんだ…
私 からかわれてるだけなんだ(苦笑)

「ハハッ… ですよね(苦笑) 」

優しい顔になる
「ちゃんと、恋愛感情の “好き” だよ(笑) 」

は!?

いやいや、あり得ないよ!
だって藤川マネージャーだよ!?

信じられないよ!


嬉しいはずなのに
なんで私なのか信じられなくて頭の中が混乱する

固く口を閉じ複雑な表情になってしまっていた私の顔を見て

「迷惑、かな… 」 不安そうな表情になった


不安そうな表情なんて初めて…
私はずっとこの人に憧れてきた

いつも会社では爽やかで頼もしくて
自信に満ちあふれているのに

今夜のマネージャーは …

爆笑したり
悲しそうに見えたり
セクシーな視線

そして こんな不安な表情もする

今夜はマネージャーの感情の動きが手に取るようにわかる

ーー 私のことが女として好き?

「やっぱりわからないです。マネージャーとじゃ吊り合わないのに。」

「吊り合わないってどういうこと?」

「言葉通りです。」

マネージャーは悲しい表情に変わった
「そっか… 」

えっ!? 待って待って!!

「やっぱりフラれてしまったな(笑) 」
残念そうに微笑んだ

あっ、違っ、違うんです!!

「私もマネージャーが好きですよ!男性としてとても素敵だと思ってます!」

驚いた表情に変わった
「いや、でも、、」

好きですよなんて咄嗟に口から出てしまったことに顔から火がでそうになった

「もし、俺への気遣いでそう返してくれたんじゃないなら… 」

「ないなら… ? 」 心臓がバクバク鳴ってる

「俺の彼女になって欲しい。」

こんなに真っ直ぐマネージャーの瞳を見るのは初めて

吸い込まれそうなほと綺麗で薄い色の瞳の瞳孔は大きく潤んでいた

仕事もできるしこんなになにもかも揃ってる人 探してもいない

そんな人が私に好きだって言ったんだよ?
あり得ないでしょう

私なんて 良い評価で何もかも平均的
なんの印象にも残らない

顔と名前もなかなか覚え貰えてもらいにくいような存在感の薄い人間なのに



「今日のチケットをくれた時、本当に嬉しかったんだ(笑) まさか君からチャンスをもらえるなんて思わなかった。」

ーー 冗談じゃなく本当に?

「 君は本当に昔から頑張り屋だったね。
そんな君を見てきて、もっと知りたくて、近づきたくて、いつの間にか好きだと思うようになった。
君は俺のことどう思ってるか、ずっと気になってた。」

昔からって… ?

「ずっとマネージャーは私の憧れの人です。」

「じゃあ、」

「あ、ありがとうございますっ、こちらこそよろしくお願い致します!」

「希ちゃん… ありがとう… 好きだよ。」








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