今日は10月31日でハロウィン。本当はハロウィンって
日本のものじゃないとかそう言うやぼったいことは無し。
保育所に行ってハロウィンをお祝いして来たの。
園児のみんなが魔女とか狼男とかの仮装をして、私や保母さんとかに
Trick or Treatって言うの。そして私は言われたら
カゴの中に入っているアメやチョコレートをあげるわけ。
「聖羅ちゃん、準備は良い?」
保母さんに呼ばれて、私はお菓子が入ったカゴを持つ。
私も魔女の仮装をしていた。何で魔女かって言うと、
保母さんはみんな魔女みたいなのがあるから。
遊戯室に行くと、部屋が真っ暗で園児たちは外国のアニメを見ていた。
ハロウィンをテーマにした奴でコメディタッチモノ、
それが終わって少ししてから、園長先生が、
”そうしたらトリックオアトリートって言って、お菓子を
貰いましょうね”って言った。
そうしたらみんな一斉に私たちのところに走ってきた。
「トリックオアトリート」
髪の毛をポンポンで縛った女の子が手を出して言ってきた。
私はカゴの中からチョコレートを掴むと女の子に渡した。
女の子は笑顔になった。
「落ち着いて。みんな順番に」
お菓子を貰えるんだって、みんなはしゃいでいて、他の子を
突き飛ばしたりしそうになっちゃうからそうなる前に
言っておく。次に来た男の子がトリックオアトリートって言ったので
今度はキャンディーを渡した。お菓子を貰ったら次のところに子供たちは行って
お菓子を貰う。そうやってしばらく続けていたら、カゴの中が空になった。
「次はゲームをしましょうね」
園長先生が言って、次はゲームをした。フルーツバスケットだ。
私は参加しなくて見ていたけれど、とても楽しそうにしていた。
フルーツバスケットをしたあとで歌を歌って、
ハロウィンの催し物は終わった。
「ご苦労様。聖羅ちゃん、ちょっと待っていてね」
園長先生が笑顔で言った。みんな元気で……とても疲れた。
椅子に座って、伸びをする。魔女の服は引っ張られたりしたので
皺が出来ていた。職員室の方で私は休んでいた。
みんな、楽しんでくれたよね……そう私が想っていると
「トリックオアトリート」
声がした。長い髪の女の子が私に手を出してきた。
「ちょ、ちょっと待ってね」
どうしよう。カゴの中のお菓子はもう無い。だけど、ごめんね。
お菓子はないから……なんてことは言えない。
確か、私はこの子にお菓子をあげていないもの。
そうだ。確かポケットに。
「これ、あげるね」
私はポケットからチョコレートを出すと女の子に渡した。
チョコレートはあにさんが私に朝、くれたものだ。
”これぐらいは食べておけ”って急いでいる私に数個くれた。
チョコレートの中にアーモンドみたいなのが入っていて
歯ごたえがあってとても美味しいの。
女の子はチョコレートを握って
「ありがとう」
って言って職員室から出て行った。笑顔を見せて。
それから少しして園長先生が来た。
「助かったわ。本当に」
とお茶を出してくれた。
「良いんですよ。好きでやってるんだし」
私が好きでやっていることだからね。
「聖羅ちゃんはハロウィンは好き?」
好きとか聞かれても困る。答えようとすると、あることが浮かんだ。
『トリックオアトリート』
私が小さかったときのことだ。
テレビで丁度英語のハロウィンの番組をしていて、覚えたトリックオアトリートを
私はあにさんに言ってみた。私はトリックオアトリートの
意味を解らずに言っていた。ただ、言ってみた。
『解ったよ』
あにさんはポケットから板チョコを出して私の口の中に入れた。
”とっておきのチョコレートなんだぞ”って言って、
苦いチョコレートだった。ビターチョコレートだったのだけれども、
私にはとても甘くて美味しかった。
「好きです」
あの時の、あにさんは
『やっぱり聖羅は笑ってた方が良いな』
って言っていた。
その時からだろうか、あにさんのお陰で私は笑えたのだから、
幸せな気持ちになったのだから、私も誰かを笑顔にしたいって
想ったんだ。
「そうなの。聖羅ちゃん、なんだか嬉しそうね」
その時のことを想い出したのが顔に出てしまった。
「嬉しいことを想い出したから」
決めた。
家に帰ったら、あにさんにトリックオアトリートって言おう。
からかわないで、あの時みたいに私を笑顔にしてね、あにさん。
【Fin】