エブリディ・ラブリディ

日常やネタなど、
サイトが止まっても動いてます
リンクは自由です。写メ日記もあります

書いていて考えていたことがあるんだ

2005年10月31日 23時25分43秒 | こねた
(フリッパーズ+オリキャラで)

黄龍「……あのー一遍しか書いてないような」
(お茶がし出してる19才)

音々「書いてたら11月1日になっちゃったのよ…」
(中国茶飲んでる15才)

北登「秋月って余裕がないような、夏休みの宿題パターンをやる奴やな」
(まだ時間があるとかしていたら時間がないと言う)

琉樹「後、書いている家に虚しくなったって言うか……ちょっと」
(夜中なのにコーヒー飲んでる15才)

黄龍「虚しく?」

琉樹「こう…萌えも感動も全て計算し尽くさなければ出来ないのかかどうとか」

スフィールド「……書いてるうちに想ったらしいが、計算し尽くして書くみたいなのが虚しくなるから嫌らしい」

音々「虚しいって言うか……この手のキャラクターって、ポイントが別れてるじゃない。ギャルゲーとかもそうだけど」

北登「年下、年上、幼なじみ、ロングヘアーとかショートヘアーとかやな。
   他の属性は……」

創路「言うと長くなるしカットしようぜ」

黄龍「パズルみたいな感じですよね」

スフィールド「で、書いているうちに想うんだ。計算し尽くされた萌えというか……キャラクターの想いではなく、萌えや好かれるために書く文章を書いて
いるのではないかとかな」

琉樹「……演技してるみたいなものだよね」

音々「聖羅も花雪も秋月にとっては子供も同然だけど……書いてるのがね」

創路「難しいもんだよな……そう言えばサイトの改装とかは?」

良次「5日まで最優先の用事があるのでそれをすませてからだ。他もな」

北登「兄やん、突然……」

スフィールド「それに、整える必要もあるからな。ハロウィン」

琉樹「……しばらくお待ちくださいって感じ……だね」

彼女のハロウィン=聖羅編=

2005年10月31日 23時11分45秒 | キャラの日記
今日は10月31日でハロウィン。本当はハロウィンって
日本のものじゃないとかそう言うやぼったいことは無し。
保育所に行ってハロウィンをお祝いして来たの。
園児のみんなが魔女とか狼男とかの仮装をして、私や保母さんとかに
Trick or Treatって言うの。そして私は言われたら
カゴの中に入っているアメやチョコレートをあげるわけ。

「聖羅ちゃん、準備は良い?」

保母さんに呼ばれて、私はお菓子が入ったカゴを持つ。
私も魔女の仮装をしていた。何で魔女かって言うと、
保母さんはみんな魔女みたいなのがあるから。
遊戯室に行くと、部屋が真っ暗で園児たちは外国のアニメを見ていた。
ハロウィンをテーマにした奴でコメディタッチモノ、
それが終わって少ししてから、園長先生が、
”そうしたらトリックオアトリートって言って、お菓子を
貰いましょうね”って言った。
そうしたらみんな一斉に私たちのところに走ってきた。

「トリックオアトリート」

髪の毛をポンポンで縛った女の子が手を出して言ってきた。
私はカゴの中からチョコレートを掴むと女の子に渡した。
女の子は笑顔になった。

「落ち着いて。みんな順番に」

お菓子を貰えるんだって、みんなはしゃいでいて、他の子を
突き飛ばしたりしそうになっちゃうからそうなる前に
言っておく。次に来た男の子がトリックオアトリートって言ったので
今度はキャンディーを渡した。お菓子を貰ったら次のところに子供たちは行って
お菓子を貰う。そうやってしばらく続けていたら、カゴの中が空になった。

「次はゲームをしましょうね」

園長先生が言って、次はゲームをした。フルーツバスケットだ。
私は参加しなくて見ていたけれど、とても楽しそうにしていた。
フルーツバスケットをしたあとで歌を歌って、
ハロウィンの催し物は終わった。

「ご苦労様。聖羅ちゃん、ちょっと待っていてね」

園長先生が笑顔で言った。みんな元気で……とても疲れた。
椅子に座って、伸びをする。魔女の服は引っ張られたりしたので
皺が出来ていた。職員室の方で私は休んでいた。
みんな、楽しんでくれたよね……そう私が想っていると

「トリックオアトリート」

声がした。長い髪の女の子が私に手を出してきた。

「ちょ、ちょっと待ってね」

どうしよう。カゴの中のお菓子はもう無い。だけど、ごめんね。
お菓子はないから……なんてことは言えない。
確か、私はこの子にお菓子をあげていないもの。
そうだ。確かポケットに。

「これ、あげるね」

私はポケットからチョコレートを出すと女の子に渡した。
チョコレートはあにさんが私に朝、くれたものだ。
”これぐらいは食べておけ”って急いでいる私に数個くれた。
チョコレートの中にアーモンドみたいなのが入っていて
歯ごたえがあってとても美味しいの。
女の子はチョコレートを握って

「ありがとう」

って言って職員室から出て行った。笑顔を見せて。
それから少しして園長先生が来た。

「助かったわ。本当に」

とお茶を出してくれた。

「良いんですよ。好きでやってるんだし」

私が好きでやっていることだからね。

「聖羅ちゃんはハロウィンは好き?」

好きとか聞かれても困る。答えようとすると、あることが浮かんだ。

『トリックオアトリート』

私が小さかったときのことだ。
テレビで丁度英語のハロウィンの番組をしていて、覚えたトリックオアトリートを
私はあにさんに言ってみた。私はトリックオアトリートの
意味を解らずに言っていた。ただ、言ってみた。

『解ったよ』

あにさんはポケットから板チョコを出して私の口の中に入れた。
”とっておきのチョコレートなんだぞ”って言って、
苦いチョコレートだった。ビターチョコレートだったのだけれども、
私にはとても甘くて美味しかった。

「好きです」

あの時の、あにさんは

『やっぱり聖羅は笑ってた方が良いな』

って言っていた。
その時からだろうか、あにさんのお陰で私は笑えたのだから、
幸せな気持ちになったのだから、私も誰かを笑顔にしたいって
想ったんだ。

「そうなの。聖羅ちゃん、なんだか嬉しそうね」

その時のことを想い出したのが顔に出てしまった。

「嬉しいことを想い出したから」

決めた。
家に帰ったら、あにさんにトリックオアトリートって言おう。
からかわないで、あの時みたいに私を笑顔にしてね、あにさん。


【Fin】

ハロウィン特集です

2005年10月31日 22時11分58秒 | こねた
音々「…黄龍さん、時間がないわ」

黄龍「……やるとか言っていたから本気で残り時間のうちにやるみたいだけど」

音々「まずはここで書いて後で転載するって」

黄龍「アバウトだ……アバウトすぎだよ秋月……」

音々「代車のバッテリー落として帰られなくなったから」

黄龍「……というわけでちょっとお待ちくださいね皆さん」


えーっと

2005年10月31日 03時19分44秒 | だいありー
全く持って動かしていないネオシスですがハロウィンだったり
花雪の誕生日が(過ぎてるけど)あるので2本ぐらい書こうかなとか
……書いてみたいかなとか。

仕事ですが疲れたというか。

はねしょのしめきりもあるし

あちこちなおして改訂してみた

2005年10月31日 02時13分20秒 | こねた
フリッパーズの奴で。

名前:小鳥遊琉樹(たかなしるき)/エヴァンジェリン・ローズノア・カドガオン
性別:女
身長/体重: 154cm 43kg
血液型:AB型
誕生日:3月20日
髪の色:サラテリ(薄い水色っぽい色)
瞳の色:シャルトル・ブルー
一人称:わたし
家族構成:養母、義姉(実の両親は死亡)

設定:
音無音々の大親友。色素が薄いことを気にしていて外に出るときは
隠すことが多い。某アメリカの大学を15才にして卒業し、その後は経歴を
誤魔化すに誤魔化して日本のある高校にやってきた。名前はどっちも本名。
単に日本の名か外国の名か。外国の血の方が濃い。
コンピューターの扱いにかけてはトップクラス。電子工学、機械工学、
情報工学のスペシャリスト。どちらかというと理数系。

ネット界ではある意味有名人、名前を出すことすら憚れると言われている
<蒼>ことアルティメットブルーその人。本人は究極の蒼と
呼ばれることを嫌っている。HNとして使っているのはブルームーンやユスラ。
隠れるのが非常に上手く、一回隠れると見つけるのが困難になる上
誰かに自分がやったことを押しつけるのも得意なので行動が表立たない。
目立てば何か面倒なことになるから。自分が生きるには小さな日常で十分だと言っている。

無駄のないプログラムなどをあっさり製作しマシン語(機械語)で機械と会話する。
普段は倫敦館というところで一人暮らし。何処でも寝られる。
性格は喋る方に見えて本当は引っ込み思案。目立ちたくないヒト。
自分に自信を持っているタイプ。
一番恐ろしいのは自分のもてる能力をあっさり一点集中できること。

オフの日は引きこもったりしているが外に出ようとするのが多い。

好:本、日常生活、ケーキ、コーヒー
嫌:大多数の大人、睡魔、ウイルス、寒さ

容姿:サリテリの髪のストレート切らないのでそのまま、
シャルトル・ブルーの瞳。服装はだぼだぼしている……体のラインが
見えないような服を選んでいる。


名前:音無音々(おとなしねおん)
性別:女
身長/体重: 164cm 50kg
血液型:O型
誕生日:8月15日
髪の色:丁子色(ちょうじいろ)
瞳の色:檳榔子黒(びんこうじくろ)/角度によっては赤蘇芳(あかすおう)
一人称:私
家族構成:祖父、祖母、父、母、兄、姉

設定:
小鳥遊琉樹の大親友。神懸かりというか重力を無視したというか
とにかくすさまじい運動神経を持っている。ショートレンジでは無敵。
スポーツなら何でも得意。その代わり理数系は駄目。
数々の優れた護衛を出してきた音無家の次女。家は結構金持ち。
運動担当であり直接的な調べものはお任せ。咄嗟の嘘と芝居も上手い。

素直に凄いと言え、解らないことは解らないまま受け止めることが出来る。
これはこうなんだという風に受け止めてしまえる。
感動したものや好きなもの、尊敬できるものを本気で愛せる。
喜怒哀楽が解りやすい。

赤外線視力持ちであり、目の色が違うのは遺伝子異常(本人言われるまで気付かず)
これは暗闇でもモノが「見える」能力であり、モノに触れなくても温度が
知覚できる。切り札として自分の胸にしまっておいていた。
そのため彼女は懐中電灯ではなく、赤外線レーザーの照射装置、レーザー・ディバイスを
ライト代わりに使用する。値段は凄い高い。

オフの日は映画を見に行ったりと外にいることが多い。
家の恒例行事として鍛錬なども欠かさず行っている。

逢崎直樹とは従兄妹通し。と言ってもあんまり逢わない。金を結構貸している。
正月の時とかに奪われるらしい。子供扱いされるのが駄目。結構ヒトに好かれる。
しかしヒトの思いに関しては鈍い方。

好:外、可愛いもの、甘いもの、漫画、動きやすい服
嫌:数学、金にアバウトなヒト、茄子、英語

容姿:丁子色の髪の毛の背中当たりまでのストレート。ポニーテールにしたり
   縛ることの方が多い。細くて筋肉質な体。ナイスバディ。

何もかもが崩れ去っていく中で、君だけが、

2005年10月28日 22時59分07秒 | だいありー
パソコン初期化しろと言わないばかりに起動に手間取ります。
起動させて少ししたら再起動がかかるわ、蒼い画面が出てくるわ、
……だけど初期化できないって言うか、面倒なんだよ(まずこれ)

後ははねしょを書かないとと言うのが、
前回はアレだったので反省して今回は……と思うのですが
後はつっこまれたNPCびいきもなおさないと
ひいきしてるわけではないんだけれど。

仕事は相変わらず苛々でしたクリスマスなんて知らないよ

……パソコンは起動するまでが勝負になってきました

片っ端から殺していけ。残った奴が犯人だ

2005年10月27日 23時58分01秒 | だいありー
仕事で苛々して苛々しすぎて吐きそうで気分が悪くて
文具の処全部片付けろとか全部返品しろとか、正気なんでしょうかあの人
クイリング関係を私はどこで買えば良いんでしょうか
最近していないけどさ。

何が起きたかって言うと、クリスマス用品を出すから三つ
開けろと言って後輩ちゃんが必死で開けて私も手伝ってと言うか
仕事が全然片づいていません
それ以前に噛み合っていない職場。ぐちゃぐちゃの部門。
バックヤードは私の部屋以上に荒れているし
整頓しろってまた言われるんだろうし、
かといって時間はないっていうか少ないし、目の前のことを
片付けるので精一杯だし

それで上は時間を効率よくしろとかスケジュールはイントラ
(イントラネット、描く必要はないだろうが)
に入力しろとか言ってくるんだぞ。
しかも名札着けないところを目ざとく言ってくるし
それ以外に言うことアルだろうとか

人事異動だって今日決めて今日言われた(かといって今日に言われたとか
限らない)んだし、引っ越しが11月?(正確に言うと棚替え)
年明けじゃなかったんですかとか話題がずれるずれる。
業者さんとか他の人の法が知っているぐらいですよ。
それってどうかと想う。

だけどさ、母親も解ってくれないところがあるんだ。
噛み合わないんだ。どこもかしこも。
お願いだから私の声と意見を聞いてください、みたいなところはある。
聞いてくれない母親に殺意を抱いて難解殴ろうと思ったか
お客さんがポテトチップスが潰れるとか言って殺意を抱いたり
人間はアレですよ。店員は神様じゃありませんから。
やっぱり今の人間って想いをはき出すのが下手ですよね。
私も貴方も、想いをぶつけることが苦手なのですから
めでたし。めでたし

バイヤーが休みだったのにどうしてあんなにきつかったんだろう。
それで売り上げがないとか昨対(昨年度対比)が悪いとか
言ってくるんだよこっちは良くしたいよ。
でもどうすればいいか解らないじゃない。直せとか言われても
努力しろとか言っても見本見せてよ言うぐらいなら。
こっち、うちの部門チーフ居ないんだから。
……職場は最低ですか?と聞かれたらはいと答えられそうです。今。

自分も嫌だし回りも嫌だ。


私信

はねしょですがすりあわせ金曜日~日曜日の間の夜10時以降に
出来たら、コレを見ていたら……良いのですが。
仕事なんですよ。だから遅い。


その2

夢に永遠に閉じこめることだったんだってどこかしろいいです。



……フリッパーズですが一番好きなのは兄やんです

1000のお題51~60 Inこちら新宿フリッパーズ(11月1日微妙に改訂)

2005年10月27日 02時31分03秒 | 1000のお題
主な登場人物についてはhttp://shibuzome.fc2web.com/を参考に
オリキャラ(元は名前変換のつもりだった)はここから

小鳥遊琉樹(たかなしるき)

日本人のクオーター、ただ国籍は日本。外国の方の名前が長い。
15,6才。アメリカの某大学を卒業していたりする天才。
ブルームーンをハンドルネームに使っているがアルティメットブルーの方が
有名。本人は名乗った覚えがないがいつの間にかそう呼ばれていた。
直訳すると究極の蒼という意味だがそれぐらいのことは出来るししているらしい。
機械工学、情報工学、電子工学のスペシャリスト、普段は倫敦館という屋敷に一人暮らし。
家族に関しては不明。現在は経歴を偽りまくって日本の高校に通っている。
かなりIQも高いんだろうが何処にでも居る一般的な女の子に代わりはない。
集中力が有り余っていたりする。隠れるのが上手い。
ファンハウスを八割方壊滅させたとかいわれている。蒼い目を持つ。
身長は153cm、最近あることがきっかけで10cm以上大きくなりたいらしい。

音無音々(おとなしねおん)

琉樹の親友にして同級生。琉樹や他の天才達と自然体で付き合える少女。
琉樹のすごさをいまいち解っていない。
(それが良いのだろうが)運動神経が霊長類の範囲を超えている。
赤外線視力を持ち暗闇でもモノの形をはっきりと見ることが出来る。
性格は明るい。家が旧家であり代々凄腕の護衛を出し続けてきた。そのために
色々なことを習っている。家が東京にあるまじき大きさ。琉樹の世話係のような
ところもある。コンピューター関係は駄目。成績は中の上ぐらい。


51 七不思議(こちら新宿フリッパーズ)

「こんにちはー」

音無音々(おとなしねおん)があるカフェ……というかコーヒーショップ……を
訪れたのは放課後のことだった。

「音々ちゃん」

「あれ?黄龍さんだ。コーヒー屋さんは?」

カフェにいたのは無愛想な店主ではなく、小柄な黒髪の青年だった。
張黄龍(チャン ファンロン)という。

「向こうで琉樹ちゃんと作業中」

「琉樹、今日は学校に来なかったんだけど何を作ってるの?」

「プログラム……かな」

プログラムと言うが色々ある。説明がしづらいのだ。店主のように顔を見て
コーヒーを入れるなんて事は出来ないので前に聞いていた好みでコーヒーを入れる。
作っておいた菓子も出しておいた。コーヒー屋さんことこの店の店主、
名越良次は音々の親友、小鳥遊琉樹(たかなしるき)と作業中らしい。
相変わらず人がいない店だと音々は想った。

「私はプログラムを組むこと何て出来ないし、琉樹は簡単だよって言うけど」

「簡単なことには簡単だけど、ボスと彼女のレベルまでは行けないよ」

エンペラードールとアルティメットブルー、琉樹はアルティメットブルーと
呼ばれることを嫌うが、ネット界では有名なハンドルネームだ。

「不思議なんだけど。数字とアルファベットだけでプログラム作るのは」

「……音々ちゃん、あんな真似はプログラマーでもそんなに出来るヒトは居ないから」

琉樹はプログラムを作るときは直接機械語で打ってしまう。数字と僅かなアルファベットで
パソコンに命令して作り上げてしまうのだ。音々はパソコンに疎い方なので
”これぐらいは誰でも出来るよ”と言った琉樹の言葉を信じてしまっていた。

「私に取っては不思議すぎ……」

「コンピューターは確かに僕達が何十年かかって出来ないことを一瞬でしちゃうからね」

面倒な円周率の計算も天文学的な数字の計算も、コンピューターは複雑高度なことを
あっさりしてしまい今の世の中には無くてはならないものだ。

「終わったー」

音々がコーヒーを飲んでいると奥から声がしてサラテリ色の髪の少女が入ってきた。
彼女こそがアルティメットブルー、琉樹だ。本人はブルームーンというハンドルネームを使って
いるがそれよりも誰かが呼び始めたアルティメットブルーの方が有名だ。
<究極の蒼>と呼ばれるぐらいのことを彼女はしてしまったらしい。それが何なのかは音々は
知らないのだけれど。

「お疲れ様。何を作ってたの?」

「防御プログラム、良次さんのお陰で良いのが出来たんだ」

満足そうな表情をしていた。椅子に座る。

「……防御って事は何かを護るんだ」

「そう。頼まれちゃって。本気で作ったんだ。恩は売っておかないとね」

「黄龍さんにも破られないって感じ?」

「どうだろう……まあ、その時はその時」

黄龍がハッカー……ネットワークやプログラムの進入のプロであることは音々も知っている。
良次は無言でコーヒーを入れて琉樹に出した。琉樹は美味しそうに飲んでいる。

「どこのプログラム作ったの?」

「それはね。国……」

「……言うな」

「……じゃあ、某機関?」

国……と言いかけた言葉で音々は解らなかったが黄龍はどこの防御プログラムを
作ったのか理解できた。

(ボスと言い、琉樹ちゃんと言い……)

破ることは出来そうだったが莫大な手間がかかるだろう。二人の合作だ。
コンピューターが不思議だと音々は言ったが、不思議なのは店主と美味しそうにコーヒーを飲む
女子高生の方が不思議だと黄龍は感じた。店主はまだしも、彼女は何処にでも居る
一般的な女子高生にしか見えないのだから。

52 大博打を打つ(こちら新宿フリッパーズ)

「琉樹、これは貴方にしか出来ないことなのよ」

「お前だけだ。ブルー……お前しかコレは出来ないんだ」

ブルーと呼ばれるのは好きではないと小鳥遊琉樹は下目黒創路(しもめぐろいつじ)を
睨んだ。ブルーというのは名乗っていたブルームーンではなく、アルティメットブルーを
指すからだ。創路はお盆を出してきた。

「これは?」

「ボスに出すんだ。出すときは”私が入れたんです”って言うんだぞ。聞かれたときも
そう答えろよ」

出されたのはコーヒーだ。ボスこと名越良次は作業中である。
店は張黄龍が切り盛りしていた。とは言ってもお客はろくに来ないので楽だ。

「解った」

頷くと琉樹はお盆を持って良次の方に行った。

「……賽は投げられたな」

言ったのは名越北登(なごしほくと)名越良次の弟だ。黄龍も側にいる。

「俺は怒るにかける」

「笑って許すで」

「……怒るんじゃないでしょうか?」

「許すにしておこうかな」

扉の向こうを四人は見つめた。
良次はパソコンで作業中であり、そこに琉樹が入ってくる。

「凄いコトしてる」

「……それぐらいお前も出来るだろう……」

「やる気はないから」

コーヒーを出されて飲み、良次は顔をしかめた。

「入れたのは誰だ?」

「私が入れたんです」

言われた通りに琉樹は言った。良次はコーヒーをまた飲んだ。
そして、顔をしかめた理由が分からない琉樹を引き寄せた。

「……遅いですね」

「誰か見に行く?」

「北登、お前行くか?」

「恐いわっ!」

「何を話しているんだ?」

何時になっても反応がないので四人が言い合っていると、スフィールド・コリエルノフが
入ってきた。

「スーさん」

「そう言うと何処かの映画のヒトだから辞めてくれないか?」

カフェに揃ったメンバーは(音々は除くが)ネット界では有名なサイバーテロリスト集団、
ファンハウスのトップチーム、インビジブルストーカーズのメンバーだ。

「それがな。俺等で賭けしてん」

賭けの発案者は創路だった。

「ボスのコーヒーに大量に砂糖を入れたんですよ」

「7個ぐらい。丹念に溶かしたんだぜ」

それを聞いてスフィールドは頭痛がしてきた。良次はブラックコーヒー派だ。
と言うよりもコーヒーに砂糖は邪道だと言う者である。
まあ、七個も入れるのは邪道というか酷すぎるというか甘すぎる。

「それを琉樹に渡して琉樹が入れたってことにしたの」

「怒るか許すかどっちかなって……」

他のメンバーなら怒るだろうが、琉樹ならもしかして許すと想ったので創路特製コーヒーを
琉樹に渡したのだ。そして賭けをした。
ある意味大きな賭けだ。ばれたらただではすまない。

「反応はどうだったんだ?」

「それが来ないんや……誰か見に行ってくれんかなーって」

そう言うと全員の視線がスフィールドに向いた。

「……関係ないんだが」

「……僕達殺されたくありません」

黄龍が言った。他三人が頷いた。スフィールドはしょうがなく、見に行くことにした。

「しっかし、アルティメットブルーがあんな子やとは未だにちょっと信じられんな」

「みんなそう言うんだけど、何で?」

「俺等の中じゃ<蒼>だったらアルティメットブルーをさしますから」

僅かでも電子工学や機械工学に踏み込んだことがある者たちならば、ファンハウス、
アルティメットブルーの名を聞くだろう。それぐらいに有名だが、アルティメットブルーの方が
ある意味では有名だ。口に出すことすら憚れる存在、<蒼>と言われれば問答無用でそれを指す。
音々にはアルティメットブルーのことも琉樹がどれだけ凄い存在なのかも解らない。
それを言うならば音々の周りにいる者たち……CGのスペシャリスト、ウィルスのスペシャリスト、
ハッキングのスペシャリストも凄く見えるのだ。プロフェッショナルの彼等が
琉樹を凄いと認めるのだ。

「それもすごいけど、兄やんが心を開いとるって言うんが」

「……そう?」

「……同じように見えますけど」

「優しいよ。琉樹には」

この世でたった二人の兄弟だからこそ、北登には解った。段々と性格が冷たくなっていき
しまいには笑わなくなってしまった良次が心を許している存在が琉樹だ。
アルティメットブルーであることを抜きにしても、彼女にはそれだけの力があるのだろう。
音々と黄龍には解らない変化だ。
北登にすら開かなくなった良次の心を琉樹は開けることが出来るのだろうか。

「スフィールド、どうだった?」

スフィールドが帰ってきた。なにやら顔色が悪い。見ては行けないものを
見てしまったとか、何かそんな感じだった。

「どうしたのスーさん!何か恐ろしいことでも!」

ロシア語で呟いているが解らない。

「怒ってるのか許してるのかどっちなんだ!?」

「お、俺も見に行った方がええ?」

「辞めておけ……というか創路……というか全員逃げろ……俺も殺される……」

(何を見たんですかスフィールドさん!)

四人が顔を見合わせたがコレはヤバイと感じた。ドアの向こうから気配がする。

「逃げるぞ。とにかく!」

音々、創路、黄龍、北登、スフィールドは逃げ出した。創路がスフィールドを
引っ張った。音々は丁寧に札を閉店しましたにしておく。

「……逃げたか……」

無垢な赤ん坊も不良も黙るような剣呑さで良次が来たとき店には誰もいなかった。
飲みかけのコーヒーカップを丁寧に洗う。店を閉店させると良次は奥に戻った。

「みんなは……?」

「逃げた」

ぐったりとしていた琉樹に触れる。首筋に口付けた。

(逃げるぐらいならしなければいいのに……)

煙草の匂いとコーヒーの甘さが琉樹の口に流れ込んできた。近いうちに必ず報復があるだろう。
しかし、今はまだだ。

「たまには甘いものもいいな」

良次が告げると、琉樹の髪に触れた。


53 視線が痛い(こちら新宿フリッパーズ)

「私もターゲットの一人?」

「それは無いでしょうけど……」

音無音々、スフィールド・コリエルノフ、張黄龍、名越北登、下目黒創路は
コーヒーショップから少し離れたところに来ていた。

「スフィールド、テメェ、何を見たんだよ。せめて怒ってたか許してたかを」

「創路さん……」

創路さんのせいですよみたいなことを言おうとしたが言わないで置いた。
スフィールドがかろうじて言った。

「……楽しそうだった」

「兄やん、砂糖のコーヒー大嫌いやで」

「……そもそも七個はないでしょ」

砂糖のコーヒーで楽しくなるようなヒトではないと全員が知っている。

「でも、どうします?夜……カード持ってきてませんよ」

「今から帰ったら……やばいな」

「それよりもいずれはばれることだろうが俺はせめてそのいずれを先延ばしにしたい」

「創路さんのCGで誤魔化すとか」

「無理だ、無理!あの人誤魔化すことは無理だ!」

そもそもの原因は創路だ。スフィールド、黄龍はそう想った。想いたくもなる。
適当に歩いていると回りの視線に音々は気がついた。

「ところでどうするの?みんな。ホテル?」

「……あそこには帰られませんからね」

店兼住居に帰ったらそれだけで殺されるだろう。音々が考えた。

「良かったら家に来る?」

音々が提案した。北登が反応する。

「音々の家?」

「丁度、パソコンを家に組み込もうとしてたんだけど……解らなくて」

「俺たち全員泊まれるのか?」

スフィールドが聞いた。音々が頷く。

「余裕」

「じゃあそこに泊まろうか」

「仕方がないか……」

抑もの原因はお前だと創路を見るスフィールド、音々の家は男四人泊めても
余裕らしい。親が何か言わないのかと聞けばその辺はどうにかするのだそうだ。

(音々ちゃんの家……)

「黄龍、照れとらんと」

大きく北登が黄龍の肩を叩いた。

「行かない?見られるの嫌だし……そうだ。琉樹……おいて来ちゃったけど」

「琉樹ちゃんに当たるなよ。ボス」

「……違った意味で当たってるが……」

スフィールドが聞こえないように言った。音々達にあのことを言うべきだろうか。
ドアのスキマから見てしまったあの光景を。

「大丈夫ですよ。怒られるのは創路さんで琉樹ちゃんには手を出しませんって」

(違った意味で手は出してるが……)

色々なことを考えている五人だが、日系三世、日本人二人、中国人一人、
ロシア人は目立っていた。何をしているんだお前等という風に視線が集まっている。
彼等が動き出したのはそれから五分後だった。


54 ゴミだらけの部屋(こちら新宿フリッパーズ)

張黄龍、名越北登、スフィールド・コリエルノフ、下目黒創路が
音無音々の実家を見たのはコレが初めてだ。一言で言うとでかかった。

「ここ東京?」

北登が言うのも無理はない。日本の旧家でとても大きいのだ。土地代いくらだろうかとか
換算してしまうのはスフィールドだ。

「東京だよ」

「何してココまで大きくなってるんだ」

「護衛とか色々と」

音々が案内する。部屋は全面的に和室で洋室は数えるほどしかないだろう。
部屋にはパソコンが置いてあった。新品らしい。

「これよろしく」

「誰が買ったんですか?」

「父さん、だけどアナログ人間だし……」

「俺がセットアップしとくわ」

「一般人が扱いやすい一般的なパソコンでよろしく」

北登にセットアップを頼んだら二世代ぐらい軽く進化させてしまうだろう。
小鳥遊琉樹ならもっと飛ばせるだろうが。

「綺麗なところだね。ファンハウスとは大違いだ」

「……前から想ってたんだけどファンハウスってどんなところ?」

書斎の畳に黄龍が座る。スフィールドは落ち着かない様子だ。
創路はかけられている掛け軸を見ている。龍の掛け軸で値の張るものだ。

「元はサークルだ。パソコンが置いてある」

「部屋はごちゃごちゃなんだけどさ。お陰で僕、掃除が大変だよ」

「何か……テレビとかで見るゲーム会社のアレみたいな?」

「そうそう。仕事が終わると朝日が眩しくて眩しくて眩しくて……」

遠い目をする創路。お手伝いさんがお茶を持ってきてくれた。

「掃除とかは全部黄龍さんの役目なの?」

「まちまちかな。僕の部屋は綺麗だけれど。ファンハウスって本拠地が
あるようでないっていうか……パソコンさえあれば何処でも作業できるし」

「家庭的だよね」

「そ、そんなことないって」

「良いじゃない。そう言うヒト好きだよ」

音々の言葉に黄龍は黙る。顔が赤い。黄龍は音々のことが好きだ。
そのことを言うと回りにからかわれるので黙ってはいるがバレバレだ。

「整頓できない奴って嫌いか?」

「嫌いかな」

リモコンを持つと音々はテレビのスイッチを入れた。ニュースの時間だ。
特集で片付けられない女達というのをしていた。部屋がまるでゴミの収集場のように
散らかっている。

「……俺が仕事してるときもここまで酷くはならないぞ」

「恐ろしいな」

「私の部屋だってここまで汚くないよ」

整頓するのにも大仕事ぐらいの有様だ。

「黄龍、音々の部屋見に行ったらどうだ?」

「創路さん!」

「お前が見に行かないなら俺が見に行くけど」

(……頭が痛くなってきた)

創路は冗談なのか本気なのか解らない。スフィールドが頭を抱える。
北登はパソコンを着実に組み立てていた。音々はリモコンでチャンネルを変えた。

55 人生楽あれば苦あり(こちら新宿フリッパーズ)

シャワーを浴びた後、髪の毛をタオルで拭いていると携帯電話に
メールが入ってきた。音々からだ。大丈夫かみたいなことが書いてあった。
四人に関してのことは何一つ書いていない。ちゃんと家に帰ると言う風に打った。

「音々は家に帰ったみたい」

「そうか」

良次は何事もなかったかのようにキーボードを叩いている。
機械語で打っていた。距離を取って座る。壁に体を預けた。
こうしていると、色々なことを想い出した。
アメリカにいた頃、世界中のあちこちにいた頃、日本に滞在するようになったこと、
音々との出会い、今は幸せだ。
いい加減、琉樹も家に帰ろうと立ち上がり、ドアに手を掛ける。
強く手首を掴まれた。

「帰る」

「帰るな」

「みんな帰ってくるよ」

「……帰ってくると想うか?」

考えた。帰ってくるかどうか。

「……帰ってこないね」

「来たら来たで……だが、軽くはしておくか」

五秒未満で帰ってこないと結論が出た。良次の側による。端から見れば数字の羅列だが
何を表しているのかを琉樹は理解できた。エンペラードールに一人で対抗できると
言われているのがブルームーン……アルティメットブルーだ。

「……そこ、こうした方が良い」

手を伸ばしてキーボードの主導権を奪うと数字配列を打った。ファンハウスの誰も
意見が出来ないエンペラードールに軽々と意見を言ってそして訂正をしている。

「なるほどな」

「最近は遊びしか作ってなかったから、こう言うのは新鮮」

昔は頼まれたモノばかりを作っていた。最近作ったのはお絵かき掲示板だった。

「楽しいか?今は」

「うん。楽しいよ」

アメリカにいた頃よりも今は楽しい。それは間違いない。
彼女はただの何処にでも居る少女だ。と実感する笑顔だった。

「そうか」

「楽しいことがいっぱいでさ。平それに明日音々と映画に行くから」

帰るね、と言おうとしたときに携帯電話にメールが届いた。音々からだ。
『ごめん。なんか黄龍達が父さん達に気に入られちゃって明日無理』
とシンプルに書かれていた。黄龍達と言うことは他のみんなも居るのだろう。

「北登達は音無音々のところか」

メールガードぐらい張っておけば良かったとすると、携帯電話を
向こうに放り投げられた。良次のヒザの方に座らせられる。二人は身長さがかなりある。

「……辛いことは嫌なんだけど」

「楽しいことは辛いことがないと解らないと言うが」

楽しいことばかりでも、楽しくない。辛いことばかりでも、楽しくない。
それは解るが……自己弁護に入ろうとしたとき、思考が途切れた。

1000のお題51~60 In こちら新宿フリッパーズ後編

2005年10月27日 02時19分35秒 | 1000のお題
56 楽屋裏(こちら新宿フリッパーズ)

「何を見たの?結局」

向こうでは音々の父親と創路、北登や黄龍が話していた。意気投合したらしい。
音々はメールで琉樹にお詫びを入れていた。スフィールドは話が苦手だから避けた。

「……ボスが……」

そこで止まる。

「だから何コーヒー屋さんが!」

「音無音々、お前は何処まで恋愛は許せる」

「……いきなり言われても解らないって……うーん……ケースバイケース?
スーさんと平さんが付き合ってると言っても私は認めるから」

「例えで言ったか本気で言ったかは解らないが音無音々……断じてそう言うことはない」

平さん、平口渡はスフィールドの友だ。元ファンハウスのメンバーでもあるが、
ファンハウスが危険すぎて抜けた。

「お互いが良ければ良いんじゃない?」

「そうか……それなら……」

「?、だから何を見たんだってば。もしかしてコーヒー屋さんが琉樹に手でも出してた?
凄い優しい笑みを浮かべて琉樹が真っ赤で」

音々は冗談で言ってみた。冗談で言ってみたのだが、スフィールドが反応しない。
十秒ほど経過した。

「それを見た」

「……え?」

丁度その時黄龍、創路、北登が入ってきた。

「お前の親父さんいい人だな。日本は嫌いだけどここは好きになれそうだ」

「和食のレシピ教えて貰いました」

「スフィールド、お前も挨拶しておけ……どうした?」

場の空気が止まって凍り付いていることに三人は気付いた。

「……一つ聞くんだけどコーヒー屋さんが凄く優しい笑みを浮かべていたらどうする?」

「兄やんが?……今の兄やんがそんなん見せたら驚くよ」

「冷笑ならまだしも優しい笑みか?想像できないな」

「奇跡じゃないんでしょうか」

北登、創路、黄龍の意見は共通してそんなもの見られないとか信じられないとか言ったものばかりだ。

「……写真に撮りたくない?」

「撮ったら……」

携帯を出すと音々は琉樹にメールを打った。話を聞いた以上、好奇心の方が勝っていた。
メール内容は”コーヒー屋さんがとても優しい笑顔を浮かべてるところを送って”だった。


57 君にくびったけ(こちら新宿フリッパーズ)

緊急の用事が良次のパソコンに映し出されて琉樹は解放された。携帯電話がメールを
受信していたようだったので見ると音々からだ。内容を見て首を傾げる。

「優しい笑顔か……」

琉樹の携帯電話はカスタマイズしてあるので写真を撮るときも音が出ないし
他にも様々な機能がある。”……そんなこと言われても自分で撮れば?”と打つと
”呪われそうだから”と返ってきた。

「メールか」

「音々から、そっちは?」

作業を簡単に終わらせる。本当は難しい作業なのだが、彼にとっては簡単だ。

「CIAだ」

「……北登が言ってたけど、貴方は段々冷たくなっていったってさ」

「……そうか……」

「まあ、解らないでも無いけど」

琉樹は大人達に囲まれて生活をしてきた。人間が変わっていく様を嫌でも見せられた。
良次にもあるのだろう。自分の価値観を変えてしまった何かやそう言うものがだ。

「冷たいのは嫌いか?」

「そうでもないけど……スウェーデンだ」

話ががらりと変わった。パソコンの画面がスウェーデンを映し出したからだ。
硝子博物館を映し出している。

「行きたいのか?」

「北欧は時間をかけて行きたいの。本で見たんだけど」

琉樹の時間は大人達によって使われてきた。自由になれる時間なんて少なかった。

「行くか。近いうちに」

「連れて行ってくれるの?」

「行きたいのならな。連れて行こう」

良次が優しい笑顔を見せていた。琉樹は音々の言ったことを想いだして携帯で素早く撮った。
フラッシュがたかれる。素早く添付して送った。

「これでいいのかな……」

「……何故撮った?」

「何かみたいって……」

それを聞いた良次はパソコンを操作した。

『……こ、こ……これ、本当にボス?』

黄龍の声だった。声が震えている。

『兄やん……昔の兄やんがここにおるよ!』

『何か凄い呪われる……』

『失礼だって。それ』

『どうやって撮ったん?合成?創路、お前CG使たん?』

『落ち着けお前たち。見ては行けないものを見てしまった気持ちは分かるが』

北登、創路、音々、スフィールドの声がした。驚いているのがよく解る。

「もしかして盗聴できた?」

「北登の携帯に仕掛けをしたんだが」

琉樹の手から携帯電話を奪うと右手でキーボード、左手で携帯電話を操作した。
投げろ、という声がしたと思ったら破裂音がした。

『ボスが呪ってるよ!』

『……実は呪いも使えたの?』

「携帯吹き飛ばさないでよ」

「後で作ればいいだろう」

「でも、それぐらいまでに笑顔が珍しくて」

携帯を踏まれて壊される。それから琉樹の体が宙に浮いた。抱えられた。
パソコンの電源を良次はきる。

「……行くか」

「何処に」

「やりやすいところにだ」

アルティメットブルーという存在ではなく、小鳥遊琉樹という人間として名越良次は
彼女のことが好きだ。琉樹はそれを知ってはいるが明日のことが気がかりだ。
運ばれながら考えることは、明日はちゃんと来るのかと言うことだった。

58 バレンタインはそういう日ではありません(こちら新宿フリッパーズ)

携帯電話をスフィールドが外に投げた。携帯電話が破裂した。
基盤などが散っている。

「ボスが呪ってるよ!」

「……実は呪いも使えたの?」

「単に破壊しただけだ!」

混乱している黄龍、音々の年少組を年長組スフィールドはなだめた。
北登が気付いて自分の携帯電話を取りだした。音無家にある工具セットで分解する。

「兄やん。盗聴しとった」

「きっと北登さんが心配で……」

「俺たちどうなるんだ。何か凄い嫌な予感って言うか悪寒がして」

琉樹が送った添付メールを最初に見た音々は驚いた。スフィールドもだ。
好奇心で覗いた創路が、北登がなんだろうという風に見た黄龍も同じような反応をした。
良次が、エンペラードールが、ボスが、優しい笑顔を浮かべている。
保育園の先生でもやれそうな笑顔でありどういうシチュエーションで浮かべたのか
気になるところだったがそれよりも先に見てはいけないものを見たような感じで
そして携帯が壊されてと。

「音々様、何が!?」

「気にしないで」

音々が女中さんたちの混乱を沈めた。

「音々さん、携帯電話はあとで弁償します」

「……黄龍さん、あの携帯はちゃんと供養した方が良い?」

「したほうがいいっていうか……」

「だから呪いじゃなくて壊しただけだ!」

「……しかし兄やん……」

全員、思いは同じだった。
ただ、口に出せない。

「年の差と身長の差、どっちをつっこめばいい?」

「……言うな……なんかその話題に触れたらやばい」

場の空気が重くなっていく。創路も触れたくないらしい。

「バレンタインみたいな感じですね。あれって呪われてるんでしょう」

「そうでもないって」

「僕、聞いたんですけど日本のバレンタインは男が男を呪う日だって」

「……そう言う日じゃないからそれに何か当てはまってないから黄龍さん」

日本人二人、香港人の日本のバレンタインを否定する。

「……喜べばええんかな」

「お前は喜べ北登。たった一人の兄だろう」

コーヒー事件の顛末を知るスフィールドはそれ以上触れたくはなかった。聞いた音々もそうだ。
十分ほど場が止まった。アレはボスなのかみたいなのがある。
やがて

「忘れましょう。このことは」

黄龍が言った。
全員、それに賛成した。


59 愛人(こちら新宿フリッパーズ)

「ここが音々の部屋か」

「おじゃまします」

「広いな」

「……この家にはお前と両親と」

「兄貴と姉貴とか」

話題を切り替えた結果、音々の部屋に創路、黄龍、北登、スフィールドを案内することにした。
男が女の部屋に入るというのがあるが音々はそう言うことを余り気にしていない。
寝室と自分の部屋が別々になっていて、部屋は今時の女の子という風に
雑誌が置かれていたり漫画が置かれたりしていた。

「オーマイキーか。これ良いよな」

「良いよね。CGも良いけどアナログも」

創路がDVDを手に取った。オーマイキーとはマネキン家族のシュールなブラックギャグだ。

「漢字検定受けるん?」

「受けさせられる……合格しろってさ」

「漢字なら黄龍に聞けばいいと想うけど」

「北登さん、日本語と中国語だと漢字の使い方違いますから」

部屋に置いてあった漢字検定の本を北登は手に取った。二級だ。黄龍に聞けばいいと言ったが
日本語と中国語だと使い方の違いがある。

「例えば?」

「麻雀が日本だとゲームですけど中国だとスズメに」

他にも色々とある。

「確か漫画で見たけど愛人が日本だとそのまんま愛人だけど中国だと大事な人になるんでしょう?」

「そうそう。日本の愛人を中国語で表すと情人になるんだよ」

少女漫画は借りて読むタイプらしい。

「違いだね……」

「音々、好きな人居るん、居らんかったら黄龍とかどうや?」

「ほ、北登さん!」

からかいで言ってみた北登、黄龍が音々を好きなことを知って居てのことだ。

「……居らんかったらって黄龍さんだって好きな人いるかもしれないじゃない」

(それアンタやから!)

「それに……」

音々の肩を軽く創路が叩いた。手にはオーマイキーのDVDが握られている。

「見ようぜ。これの新作後でアメリカから送るよ。編集済みの奴」

「ありがと。創路さん」

「……え?もしかして……」

「まだだけどな……黄龍……」

音々に聞こえないように呟く創路に黄龍が慌て、北登が本気かという風になる。

「愛人?」

「にしたいかなと」

「……は?」

「……マイキーなら私も見よう」

何か知らないうちに始まりそうな騒動にスフィールドは頭痛がしてきた。
中国語の会話っぽいものが聞こえている。黄龍を北登がなだめていた。
創路はDVDの準備をしていた。


60 構ってください力の限り(こちら新宿フリッパーズ)

時計を見ると昼になっていた。携帯電話のメールが入っていない。
琉樹は起きあがると服を着た。店は開けなかったようだ。
煙草の匂いがする辺り吸ったのだろう。
鞄を手にとって中からゲーム機を取りだした。ご飯が食べたかった。
起動させると、白い兎が画面に現れた。とても可愛い兎だ。
集中を始めた。

「なにをしている?」

「創路さんのゲームのモニター」

良次が入ってきたのを確認せずに答えた。集中力が有り余っている。

「どんなゲームだ」

「育成シミュレーション。可愛いんだ兎とか猫とか」

本物そっくりに動き回る猫や兎を世話する。創路のCGは本物そっくりだ。

「私には回ってこなかったが」

「……回さなかった気持ちは分かる」

この人が動物の世話をしていると何か……というのが創路にあるのだろう。

「映画、音無音々と行くはずだったんだろう」

ディスクを変える。これも創路の試作品だ。

「体調悪いし、それに音々も忙しいしさ」

起動させると人形のような少女が出てきて
『三日ぶりね。琉樹。構ってくれなくて寂しかったわ。今日はどんな会話をするの?』
と音声付きで出てきた。

「それも試作品か?」

「可愛いんだ。構って構ってみたいに言うのが」

言葉を覚えさせて会話するというゲームだ。良次が取り上げて電源をきる。

「くだらんな」

ゲームソフトを出すと踏みつけた。壊れた。

「……酷い」

「構ってる暇があったら来い」

「来いって」

「音無音々の家だ」

音々の家に全員居るはずなのだが……どことなく良次が恐い。
琉樹は指示に従うことにした。

(ソフトはバックアップ取ってあるし……)

ゲーム機も奪われて外に投げられた。

「……早く来い」

怒り君だったのでしょうがなく着いていった。ゲーム機程度なら組み立てればすむ。
何故あそこまで怒るのか琉樹には理解できなかった。
それを理解できる者は居たとしても、口に出せないだろう。
その、感情を。


柔らかい光りの雫

2005年10月26日 23時11分08秒 | だいありー
コーヒー屋のコーヒーとかが50年ほど値上がりしていたり
サンデーを買ったらクロスゲームが地味に悲しくて
道士郎でござるで笑い、結界師で本当に死んだんだと実感して

こちら新宿フリッパーズを買いました。通販で
迅速すぎて嬉しくなる……良次さん好きだ