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政治、経済、歴史、その他

一票の格差と自由平等

2013年12月02日 | 日本のこと
11/28の日本経済新聞の記事です。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG27021_Y3A121C1000000/
 「1票の格差」が最大4.77倍だった7月の参院選を巡り、升永英俊弁護士らのグループが岡山選挙区の選挙無効(やり直し)を求めた訴訟の判決で、広島高裁岡山支部(片野悟好裁判長)は28日、選挙区の定数配分は「違憲」と判断し、同選挙区の選挙結果を無効とした。参院選の1票の格差を巡る訴訟で、選挙無効を命じる判決は初めて。

昨年の衆院選を巡っても同じような訴訟が各地で引き起こされ、「違憲」とする判決が相次ぎ、さらには選挙無効であるとする判決もありました。
テレビのコメンテーターは、このままでは、民主主義に反し、憲法に定める法の下の「平等」に反するので、判決に従って一刻も早い是正をしなければならない、などとしたり顔でコメントをしています。
あまつさえ参議院はいらない、廃止して一院制にすべきだ、との声も聞こえますがこんなものは物を知らないか何も考えていないかどちらかしかありません。

そもそも民主主義は、自由と平等という思想から生まれた多数決による意思決定のシステムです。
大多数が間違いを犯すときには、当然に間違った意思決定がなされるわけであって、民主主義が正しく機能するための前提として「成熟した国民が存在すること」が不可欠です。
民主主義そのものが崇高な思想をそのうちに含んでいるわけではなく、いわゆる「世論」に流されやすいシステムが民主主義だと言えるのです。
健全な民主主義が達成されるかどうかは国民のレベル次第で、国民が成熟していない場合、民主主義はしばしば暴走します。

民主主義=世論が暴走した最近の事例は、マスコミに政権交代を煽られ、民主党の甘言に騙され、熱狂した国民があのおぞましい民主党政権を生み出してしまった事だと思います。
なお、マスコミを中心とした世論(すなわち一番パワーを持った世論)は熱しやすく冷めやすく、反省もしません。
今回の特定秘密法案を巡って、尖閣諸島漁船追突ビデオ流失事件の際には、あんなに流失したことを問題だと騒いでいたマスコミが、今回は一転して「知る権利ガー」などと必死になっている姿を見ると、このことがよくわかります。

こうした「民主主義=世論の暴走」を食い止めるために、2院制とし、衆議院で可決通過した法案をもう一度参議院で審議する機会が必要なのです。
さらに参議院は「良識の府」とも言われますが、それは良識に基づき中立で公正な審議をする場を設けることを目的とし、衆議院とは違い解散がなく、6年間という長期間の任期を与えられ、長期的な視野で審議・調査ができるという大事な役割があるからです。

少し考えればわかる事なのに、ちょっとしたきっかけで暴走しかねない民主主義というシステムを金科玉条のように扱い、まるで絶対的な正義であるかのように信じ込んでいる今の世論は想像力に欠け、思考が停止していると言えます。
ちなみに戦後、日本国憲法が公布された1947年に、当時の文部省から新生中学校に社会科の教科書として配布された「あたらしい憲法のはなし」という日本国憲法の解説本(「あたらしい憲法のはなし」は、iTunesやkindleなどの電子書籍で全文無料でダウンロードできます。)に「民主主義とは」という章があり、こう書かれています。
「おおぜいの意見で物事をきめてゆくのが、いちばんまちがいがないということになります。そうして、あとの人は、このおおぜいの人の意見に、すなおにしたがってゆくのがよいのです。このなるべくおおぜいの人の意見で、物事をきめてゆくことが、民主主義のやりかたです。」
悪夢のような3年半の民主党政権を経験した現代の我々に、果たしてこの言葉は素直に受け入れられるものでしょうか?

そう考えると、この「民衆権力制度」とも言える、民主主義の前提となっている「自由と平等」という思想も、よほど注意して取り扱わないと利己的で功利的となり、行き過ぎると単なる個人主義となりかねません。
学校などに対して自己中心ともいえる理不尽な要求をする親達を指すモンスターペアレントなどは正にこの代表格とも言えます。
マスコミ報道では、彼らを変わった、困った親だという文脈で整理していますが、戦後教育で義務を教えず「自由平等」に基づく権利ばかりを強調した教育を受けた世代が親になっただけだと思います。

しかし、もともと日本では自由平等がこうした側面持ち合わせていることを暗黙のうちに皆が理解している国柄でした。

例えば「自由人」という言葉の響きに、崇高で高貴な印象を持つ人は少ないと思います。
それどころかなにか身勝手な振る舞いをしそうな印象を持つ人がほんとんどでしょう。少なくとも、今のところは、他人を称賛する時に使う言葉ではありません。

また、今回の一票の格差問題の発端は「法の下での平等に反する。」という事でしたが、これを違う言葉に置き換えると「人が少ない地方を切り捨てよ。」と言っていることと同じです。
たまたま人が多く住んでいるからと言って、その数を頼りに意見を押し通す、という行為は「弱きを助け強きをくじく」を美徳としてきた国柄の発想とは思えません。単なる数の暴力につながる発想だと思います。
「地方の自己責任だ。地方が努力をしなかったから経済的に発展せず、いつまでたっても人口が増えないんだ。」と主張する市場経済至上主義の方にはわからないかもしれませんが、都会に住んでる人がそんなに優れているんでしょうか。
もちろん何をもって人の優劣を判断するかは難しい問題ですが、地方に住みその地域を支えているという事は、むしろ敬意を払うべきことではないでしょうか。
誰が瑞穂の国を支えているのでしょうか。

なお、アメリカでは下院は1.85倍となっていますが、日本の参議院にあたる上院では一票の最大格差は約67倍となっています。
アメリカの各州における上院の定員が州の人口に拘らず、2名と決まっているからです。
上院は各州の代表としての顔があるため(下院は国民の代表)、各州の人口だけで単純に議員の定数を決めてしまって各州間の不公平が生じるのを防ぐためです。

もちろん、自由・平等は大事なものです。
何もないがしろにしたいわけではなく、自由・平等が常に一番最上位にくるものではない、という事を言いたいのです。

自由平等主義が生み出すもの、たとえば経済政策で言えば、新自由主義に基づく市場自由化・公共インフラの民営化・関税や規制を撤廃し自由貿易主義を掲げるTPP・その他の規制改革,構造改革などといった類のものは、本当に正しいものなのか疑ってかからないといけないものばかりだと思います。
自由平等を主張するが余りに、利己的になり、自分の利益を得ることばかり主張しているように思いませんか?そこに公の気持ちは含まれているのでしょうか。

特にTPPについては、賛成者の理由が、「アジアの成長を取り込む」というソフト帝国主義っぽい言い方も気にいりません。
「日本がアジアに貢献していくために参加するんです。」と言われたほうがまだ納得できますが、そうした論調で語られているのを見たことがありません。

こうした思想にとことんまで染まる事が、取り戻すべき日本の姿なのでしょうか?


山本議員騒動とこの国の劣化

2013年11月02日 | 日本のこと
山本議員騒動とこの国の劣化

山本太郎参院議員が秋の園遊会で天皇陛下に手紙を手渡した問題が物議を呼んでいます。
この件に関し、報道では「天皇陛下の政治利用」「マナー違反」などとのコメントしかありませんが、つくづくこのマスコミの論の浅さには辟易します。
ここまで日本人が堕ちたのか、というのが正直な感想です。

今回の問題はそんな浅いものではあり得ません。
彼が思いを伝える対象として天皇陛下を選んだこと自体が問題なのです。

自分の思いを伝える対象としたということは、彼が天皇陛下を権力の対象とみなしたという事だからです。

自分の思いを伝えるという事は、必然的に思いを伝えた相手を何らかの権力をもっているものと勝手に想像し、その権力による効果(自分の主張を広げて欲しいという事)を期待して行う行為であるからです。
つまり天皇イコール権力者、という構図しか彼の頭の中にはなく、戦後の天皇陛下の人間宣言につながる子供じみた浅はかな考えです。

天皇陛下が護持されているのは、権力ではなく権威です。
そしてその権威とは天皇陛下のみに帰属するものではなく、我々国民が暮らすこの国の歴史、文化、伝統から沸き起こる国柄の総体です。

彼はその大事な国柄に礼儀も知らず、土足で踏み入ったも同然の行為をしたのです。
どう考えても筋違いの行為です。
本気で彼が主張する原発問題を訴え解決したいなら、同じ直訴をするにしても、政治の最高責任者の安倍総理に直訴すべきではないのですか。彼は一体何の為に国会議員になったのでしょう?

彼が行った行為は、王様がいて搾取される国民がいる、といういかにも絵本じみた子供向けのストーリーから発想される幼稚な世界観に基づく行為です。(そして、こうした世界観をもった人が「日本には民主主義が足りない」などと、訳が分からないことを言い始めます。)
こんな人間を選出した東京都民は猛省すべきですし、こんな無礼で浅はかで無知な人間を「マナー違反」としか非難できないマスコミはもはや地に落ちたも同然でしょう。
この国で何が一番大切な事なのか、この国の価値がどこにあるのかという事を知らないにも程があります。

無礼、で済む問題ではありません。
この国の根本を蝕む、幼稚さが露呈した出来事として取り扱うべき由々しき事態です。





でたらめな減反廃止論

2013年10月28日 | 日本のこと
でたらめな減反廃止論

「減反、10年内の廃止検討…支援は大農家中心に」10月27日 読売新聞
政府・与党は、コメの生産量の目標を決める生産調整(減反)について、最長で10年程度の猶予期間を設けたうえで廃止する検討に入った。
環太平洋経済連携協定(TPP)の妥結をにらんで農政を抜本的に転換し、小規模兼業農家を守ってきた減反政策の廃止に踏み込むことで、国内農業の強化を図る。減反の廃止とともに、農業補助金は主に大規模農家へ手厚く支給する改革も進める。政府・与党は24日から減反政策の見直しの議論を始めた。海外の安い農産物に対抗するには、大規模農家や農業法人が自らの経営判断で自由に主食用米を作れるようにすることが必要との判断が強まっている。
ただ、すぐに減反を廃止すると、コメの生産量が増えて米価が急落し、大規模な専業農家ほど打撃を受ける可能性がある。具体的な猶予期間は今後詰める。与党内には慎重論もあり、調整は難航が予想される。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131027-00000299-yom-pol

減反廃止「5年後」検討 政府、農家に猶予期間10月27日 朝日新聞 抜粋
(前略)
減反を巡っては、政府の産業競争力会議(議長・安倍晋三首相)の民間議員を務める新浪剛史・ローソン最高経営責任者が24日、3年後の廃止を提案した。しかし、3年では急すぎて農家が対応できないとの意見も多い。一方で、政府は今後10年間をメドにコメの競争力を強めたい考えだ。そこで、「5年後廃止案」が浮上した。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131027-00000014-asahi-pol

「減反」10月24日 時事ドットコム 時事ワード解説
生産調整(減反) コメの供給過剰による値崩れを避けるため国が生産量の目標を定め、農家の作付けを抑制する仕組み。減反に応じることを条件にコメ農家に支給している補助金は今年度(※2013年度)当初予算で1613億円計上されている。農水省は補助金支給とセットにして農家を減反に誘導してきたが、農業の弱体化をもたらしたとの批判もあり、政策転換を迫られている。
http://www.jiji.com/jc/zc_p?k=2013102400841&r=1

報道によれば、政府はこれまで米の生産調整として進められていた減反政策について廃止の検討に入ったようです。
上記からこの件に関して、少なくとも以下の事がわかります。
 ①減反廃止を進める理由は、TPPをにらみ国内農業の強化を図るため。
 ②減反政策は、小規模兼業農家を守ってきた。
 ③減反廃止後は、大規模農家へ農業補助金を手厚く支給する。
 ④減反廃止により、大規模農家や農業法人が自由に主食用米を作れ海外の安い農産物に対抗できる。
 ⑤減反を廃止すると、米の生産量が増えて米価が急落する。
 ⑥政府案では5~10年間が減反廃止までの期間。
 ⑦減反は、米の供給過剰による値崩れを避けるために取り入れた政策。
 ⑧減反に応じることにより、農家に支給している補助金の今年度予算は1,613億円。
 ⑨これまで国は補助金支給により減反を進めていたが、上手くいってない。

なお①から⑥までは、政府による現時点での説明ですが、ちょっと考えれば政府の説明には矛盾する事ばかりあります。
①と④については、コメはTPP交渉において聖域とされる重要5品目に入っていたはずで何故「TPPをにらむ」や「海外に対抗する」事を前提とするのか、②と③については安倍総理は以前「日本の美しい棚田を守りたい」と言っていたことと矛盾している、などです。

しかしこうした単純な矛盾以上に、上記の9項目全体を通じ今の政府の方針には大きな問題があると言わざるを得ません。

このブログで何度も触れてきましたように、日本は未だにデフレ経済下です。
そしてデフレは、需要に対して供給が過剰となり景気が後退している状態です。
デフレ期に必要なことは需要を増やすことで、デフレ期に供給(生産)を伸ばすとますますデフレ圧力が高まり、デフレから脱却できません。

上記の①,④はデフレ経済下にも関わらず、サプライサイド(供給側)の政策で米の生産力を伸ばそうとする政策です。
ましてや、米だけを個別にみても年々コメの国内の需要は下がっています。
(農水省によれば、2012年7月から2013年6月までの需要は798万トンと予測され、戦後初めて年間800万トンを割り込む見通しです。なお戦後のコメの需要は1963年の1341万トンをピークに減少傾向が続いています。)
よって⑤で政府が懸念しているように、減反政策を廃止し零細農家を冷遇し大規模農家を厚遇し生産力が上がれば、ほぼ間違いなく米価格は下落します。

これは以前の小泉内閣の時に、タクシー業界を押しつぶした構図とまったく一緒です。
タクシー事業については「道路運送法」という法律があり、その中では最適なタクシー台数の総量の上限などが決めれていました。
ところが2002年にこの法律が「規制緩和」の名のもとに改正され、総量規制が撤廃された結果、タクシー事業に新規参入する会社が増え(供給が増え)ました。
しかしお客(需要)は、タクシー台数が増えたら増えるというわけではないので、競争がし烈となってタクシードライバーの年収は下がり、また下がった収入を取り戻そうとしたドライバーの労働時間は延び、その結果交通事故が増えました。
また、そんな業界に新しく就職をしようとする若者は減り、ドライバーの高齢化が進んでしまいました。
このタクシー業界を巡る混乱は、この問題を重く見た国土交通省が交通政策審議会の中にタクシー問題を集中的に取り扱う「タクシーワーキング」を2008年に設置(同年内に13回開催)し、その後見直しをしたほどです。
このワーキングに参加した現内閣参与の藤井聡さんも著書(「コンプライアンスが日本を潰す」)でこう指摘されています。
『(上記のような事情があるので)世界中の国々で、「タクシー台数の総量の上限」が、政府や自治体によって定められているのです。なお、ニューヨークでもロンドンでもパリでもローマでもフランクフルトでも皆、タクシー台数が、政府によって定められていて、民間の事業者はそれ以上、勝手に台数を増やしてはならないことになっているのです。』

つまり、需要が増えないのに供給を増やしても単に問題を深刻化するだけなのです。
それは自由化や規制緩和が必ずしも正しい結果になるとは限らないからです。


タクシーと違い、コメは国の食糧安全保障に関わる重要な品目です。(誤解が無いように念のため申し上げますが、決してタクシー業界を卑下しているわけではございません。)
そのため、これまで政府は減反政策によりコメ農家を保護してきたはずです。
(しかも⑧のように政府の年間予算約90兆円に対し、補助金は1,613億円とわずか0.9%です。)

たしかに⑨のようにこれまでの政府の減反政策の方針は、いろいろとまずさがありました。
(例えば、これまで政府は稲作農家に稲作をやめて他の農産物の生産をするように勧めてきましたが、水田は水が得やすい場所である一方、水はけが悪いため畑には向かず、こうした転作政策は上手くいきませんでした。その結果休耕田や耕作放棄が増える事となりました。)
しかし、減反政策をやめ生産に関し自由度を上げてしまうと、以前のタクシー業界の二の舞になることは必至です。

それよりも、米の消費が伸びるような政策(例えばコメが小麦やトウモロコシの代用となるような技術開発を政府が主導し進めコメの消費量を伸ばすようにするなど)を進めるべきです。
そうすればコメ農業自体に対する見通しも明るくなって、就農する若者も増え今問題になっている農村の高齢化問題も解決できると思います。
その道筋がつくまでは、補助金などを継続,補強して農業を保護すべきです。

今の政府の一番の問題点(特に第3の矢と言われている成長戦略)は、規制改革はそれだけで無条件で良しとし、保護をすべからく悪としている点です。
これまで理由があって存在していた規制をやめる時、まして国民の食糧安全保障に関わるかもしれない項目については慎重に議論すべきです。


最後に、日本の農業だけが手厚い保護を受けているかのようなマスコミの報道ですが、完全にウソです。
下記のようにアメリカをはじめヨーロッパでは日本の農業よりよっぽど手厚い保護を受けています。

ウィキペディア「食糧自給率」より
農産物への補助金については、日本の国内補助金はEUやアメリカより小さく、輸出補助金も実質的な補助金も含め多用している欧米輸出国に対して、日本では輸出補助金ゼロとなっており、高品質をセールスポイントとして補助金に依存しない形での輸出の増加を目標としている。また、日本は低関税率、輸出補助金ゼロ、価格支持政策が廃止、という保護水準の低さにより低自給率となっているのに対し、高自給率の欧米諸国は、高関税、農家への直接支払い、輸出補助金、価格支持政策の組み合わせによる政府からの保護により高自給率となっている。ちなみに、農業所得に占める政府からの直接支払いの割合は、フランスでは8割、スイスの山岳部では100%、アメリカの穀物農家は5割前後というデータがあるのに対し、日本では16%前後(稲作は2割強)となっている。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A3%9F%E6%96%99%E8%87%AA%E7%B5%A6%E7%8E%87

いかがですか?日本のコメに競争力がないのは本当にその生産に関する構造的な問題だけでしょうか?
大規模化と効率化だけで日本のコメ農業が生き残れると思いますか?

日本を取り戻す??

2013年10月07日 | 日本のこと
日本を取り戻す??

前回のエントリーからすっかり時間がたってしまいました。
すいません。

間が空いてしまったのは忙しかったのもありますが、なかなかブログを更新する気になれなかったためです。
「日本を取り戻す!」「戦後レジームの脱却!」というスローガンを掲げていたはずの自民党が、今年3月のTPP参加表明を皮切りに、第二の矢は放置し、経済成長力会議などの規制改革(という名の自由主義)路線を突き進み、以前の3/16のエントリーの中で触れた不安が次々と形となったため、いろいろと調べ、読み、考える時間が必要でした。
ある程度整理がつきましたので、つたないブログですが継続していきたいと思っていますのでどうかよろしくお願いします。

さて、今月の1日にまだ日本経済がデフレ下にも関わらず、安倍政権は消費税増税を決定してしまいました。

奇妙なことに、消費税増税については賛成派も反対派と同様に日本経済にダメージを与える政策である、という点で認識が一致しています。
デフレは需要不足により物価が下がり続ける現象で、その需要不足の時に増税を行うことは消費者の需要(購買意欲)をますます低下させ、デフレからの脱却を阻むことになるからです。
増税になったから物を買おう!と喜ぶ人はまずいないでしょう。

消費税増税の問題はもちろんそれ自体が日本経済に直結するため大問題ではありますが、本当に考えなければならない問題は何故こうした事態が起こったかということだと思います。
それは、抽象的な言い方ですが、自民党が正に掲げていた「戦後レジーム」が未だに続いていて日本はその中に制度的にも精神的にもどっぷりとつかってしまっているためだと思っています。

戦後レジームとは、第2次世界大戦後の戦勝国(とりわけアメリカ)を中心とした世界秩序の事です。
(日本に限って言えば、日米安保と平和憲法により象徴される体制です。)

敗戦国としてスタートした日本は西側諸国の一員としてパクス・アメリカーナ(アメリカ一極体制)のもと1955~73年の間「高度成長期」と呼ばれる経済成長を遂げてきましたが、このレジームが日本にとって心地よいものであるための前提条件は、アメリカの国力が強力である事です。(心地よい、は半分皮肉です。)
戦後アメリカの経済規模はすさまじく、アメリカのGDPは当時の世界のGDPの約半分を叩き出し、50~60年代はそのピークを迎えていました。
日本は明治の開国以来第2次世界大戦直前までの欧米諸国に対抗するための必死の努力がウソのようにそのアメリカの庇護(それとも準占領でしょうか)のもと順調に経済復興を遂げてきました。

ところがアメリカ一極体制は、ニクソン・ショック(1971年。ドルの金兌換停止)、ブレトン・ウッズ体制の崩壊(1973年。固定相場制の廃止)、1980年代のレーガノミクスの失敗、1990年代のリーマンショックなどを通じ世界中に混乱をまき散らしながらそのパワーが次第に低下していきました。

日本はその結果、1972年の繊維協定、1970年代の家電製品の輸出自主規制、1985年のプラザ合意、1988年のスーパー301条、1989年の日米構造協議、1993年の日米包括経済協議、1994~2009年の年次改革要望書、2010年日米経済調和対話などによりジャパンバッシングと呼ばれるアメリカの要望を次々と突きつけられる事となりました。

具体的なアメリカの要望の事例として、年次改革要望書により日本の法制度を変更した内容の一部を下記に記載します。

1997年(平成9年) 独占禁止法が改正される。持株会社が解禁される。
1998年(平成10年) 大規模小売店舗法が廃止される。大規模小売店舗立地法が成立する(平成12年(2000年)施行)。建築基準法が改正される。
1999年(平成11年) 労働者派遣法が改正される。人材派遣が自由化される。
2002年(平成14年) 健康保険において本人3割負担を導入する。
2003年(平成15年) 郵政事業庁が廃止される。日本郵政公社が成立する。
2004年(平成16年) 法科大学院の設置と司法試験制度が変更される。労働者派遣法が改正(製造業への派遣を解禁)される。
2005年(平成17年) 日本道路公団が解散する。分割民営化がされる。新会社法が成立した。
2007年(平成19年) 新会社法の中の三角合併制度が施行される。
※ウィキペディア「年次改革要望書」より。http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E7%B1%B3%E6%A7%8B%E9%80%A0%E5%8D%94%E8%AD%B0

最近実施された、規制緩和や民営化に関する大きな出来事がほとんどと言っていいほど網羅され、そしてそのほとんどが日本経済と国民の生活に混乱を引き起こす要因となったものばかりです。
今回は掘り下げませんが、TPP(という名の外圧を利用した規制緩和)への参加もこの流れにのったものだと言えるでしょう。

何も今回の消費税増税がアメリカの要望によるものと陰謀論を煽りたいわけではありませんが、産経新聞編集委員の田村秀男さんは産経新聞の日曜経済講座でこう述べられてます。
『日本はデフレで国内資金需要がないから、余剰資金は海外に流れ出る。デフレ圧力を一層高める大型消費税増税に日本が踏み切ることは米欧の投資ファンドにとって死活的な利害といえよう。』
※2013/9/27「消費増税デフレで現金支払機であり続ける日本」より。http://tamurah.iza.ne.jp/blog/entry/3191582/

つまりデフレが加速すれば、日本の国内投資は伸びないため余剰金は海外へ投資される事となり米国債や証券が買われる事になるという事です。
また田村さんの別の分析では、リーマンショック(2008年12月)以降のFRBの金融緩和による資金供給(マネタリーベース)は今年6月時点で1兆5000億ドルであり対する日本の対外金融資産は1兆7000億ドルとなり『日本のマネーは国際金融市場の安定においてFRB以上に貢献しているともいえる。』とも指摘されています。
http://tamurah.iza.ne.jp/blog/entry/3193321/

日本の経済を犠牲にして他国の利を得るポジションに貢献する、これこそが戦後レジームではないでしょうか。
どこまで意識しているかわかりませんが、あるいは無意識だとしても結果的にこのタイミングでの消費税増税は日本経済に深刻なダメージを与えることになり戦後レジームの脱却どころかますます強化しているように感じてなりません。






なんかおかしい

2013年05月21日 | 日本のこと
なんかおかしい

最近、日本の景気の先行きに関し明るい報道が目立ちます。
今日5月20日の日経平均の終値は15,000円を大きく超え15,360円となり5年5か月ぶりの高水準だそうです。
また、政府が発表した景気月例判断も2か月ぶりの上方修正となっています。
もちろんこの事はうれしいのですが、マスコミが一斉にこうした報道をする場合には、これまでロクな事がありませんでした。
なんとなくこの秋に向け、消費税増税を進めるための布石を打っているのではないのか?と勘ぐってしまいます。

少し前になりますが内閣府が16日に発表した1-3月期の実質GDP(国内総生産)は、前期比0.9%の伸び率で年率換算3.5%の成長率であったとの報道も一斉に流れました。
が、そもそも何故実質GDPなのか?

実質GDPとは名目GDPから物価上昇率を引いたものです。
「実質GDP = 名目GDP - 物価上昇率(インフレ率)」です。
つまり、1-3月期の実質GDPの伸び率0.9%に対し名目GDPの伸び率は0.4%という事は、未だ日本経済がデフレから脱却できていない事を如実に表しています。
デフレから脱却しインフレ局面になっているならば、名目GDP伸び率>実質GDP伸び率となるからです。
しかし、このことに触れている報道は皆無でした。

デフレ下の経済で肝心なのは実質GDPではなく名目GDPです。
実質GDPの伸び率でいけば2010年の年間伸び率は4.65%となっており、今回の発表された年換算の実質GDP伸び率3.5%を大幅に上回っています。
ではリーマンショックの2年後であった2010年度は景気が回復した年といえるのでしょうか?

※日本の実質経済成長率の推移(1980~2013年)
http://ecodb.net/country/JP/imf_growth.html#ngdp_rpch

今の日本経済の問題は名目GDP伸び率の低迷、すなわちデフレが問題なのであって、以前のエントリー(2012/8/11「何故マスコミは消費税率UPに賛成してきたのか?」http://blog.goo.ne.jp/mikisonson/e/c006557a3ca1b313a356d4c0add48f1f)でも触れましたが、マスコミのスポンサーである日本の大手企業のほとんどは世界を市場としたグローバル企業であり、輸出戻し税の恩恵を受ける彼らにとって消費税増税はウェルカムなのです。

マスコミがスポンサーの意向を受けて、恣意的に実質GDPの伸び率を前面に押し出した報道を行なっているとしたらどうでしょうか?

どう考えてもこのタイミングで消費税増税を実施するのは時期尚早です。せっかくの景気回復の兆しを摘んでしまうことになります。
橋本内閣の時に消費税増税を断行した結果、日本経済は本格的なデフレに陥り、その後失われた15年に突入した事を決して忘れてはいけません。直近で日本に先行し消費税率を上げたイタリアなどもやはり経済が落ち込みました。

附則18条を無視し税率アップを既成事実化しようとしているマスコミの報道をそのまま受けいれず、疑ってかかる目線を持つことが大事です。