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政治、経済、歴史、その他

台湾に行って考えたこと

2015年01月20日 | 台湾
台湾に行って考えたこと

昨年の年末から年始にかけて台湾へ行ってきました。4泊5日の長めの日程でしたのであちこち行きましたが、印象に残った場所の一つが台湾南部にある、建設当時は東洋一の規模を誇った烏山頭(うさんとう)ダムでした。
このダムはすでに日本統治時代が始まっていた1920年に着工し1930年に完成しましたが、台湾南部の台南市を一大農業地帯に変貌させ、人々の暮らしを豊かにしたダムとして知られ、またダムの建設に多大な貢献をした日本人技師の八田與一(はったよいち)は、台湾の人々の間で今も一番有名な日本人です。
この功績により、ダムのほとりには八田與一の銅像が建立され、台湾の中学生の教科書にはこのダムと共に八田與一が紹介されています。

私がダムを訪れた日はとても天気もよく、ダムの遠景まで望め、八田與一の銅像はその偉業の大きさとは対照的に静かに物思いにふけっているかのような銅像でした。
当時は日本領とはいえ、故郷からはるか彼方の地で10年以上にわたり格闘した日々(このダム事業はその規模により難工事でしたが、資金繰りも非常に苦労したそうです。)をまるで思い返しているかの様な印象を受ける銅像です。
また、ダムを訪れた翌日に烏山頭ダムに行ったことを台湾の人に話したところ、とても嬉しそうな顔をしていた事が強く印象に残っています。

最近の日本では台湾への旅行者が増え、親台感情も非常に高まっていますが、それでも八田與一の事を知る日本人が少ないという事実は日本と台湾において伝えられる歴史認識の違いがよく現れています。

戦後日本の教育では日本が東南アジアの各国に多大な被害を及ぼしたことばかりが教えられ、ほとんどの今の日本人は戦前の日本が侵略的で悪さばかりをしたと考えがちです。
もちろん今の感覚で考えれば、他国の主権を侵害する事は許されるものではありませんが、学校教育やマスコミが戦前の日本に関して、八田與一のようなエピソードに触れる事はほとんどなく、非常に稀です。
以前のエントリーでも触れたように、武力を背景に他国を制することは当時の国際的なルールに反した行為ではなく、西欧列強国が他国で普通に行った植民地政策と日本の帝国主義と言われた政策に違いはありません。しかし先の大戦に敗れた日本(とドイツ)は悪のレッテルを貼られ、GHQによる戦後教育で徹底的にこのことを教え込まれ、その結果、この国は過去について「とにかく悪かった、謝罪する。」という表面的な態度を繰り返す国となりました。ここで言う表面的な態度とは、何故そうした事をしたのか原因を知らず(もしくは知ろうともせず)、説明もしようともせず(もしくは説明もできず)、ただただ謝罪する態度の事です。

戦後の歴史教育だけでは、例えばほとんどの台湾人が感謝している八田與一という日本人を多くの日本人が知らないという状態では、何故未だに台湾に新日の人が多いのかということも全く理解できないことでしょう。もしかするとただ単に台湾の人は寛容だから、という認識しかないのかもしれません。
また、中国や韓国などの特定のアジア隣国以外の東南アジア諸国が新日的であることも理解できないでしょう。
これらの新日的な感情の源泉は、もちろん戦前日本の評価からくるものです。この時代の植民地政策(つまりごく普通に西欧列強国が行っていた徹底的な搾取です。)と日本のそれは全く違う考え(例えば今回訪れた烏山頭ダムのように大規模な投資事業を行いました。)でしたし、また先の大戦を日本が戦う事によって、このスタンダードな植民地支配の根源を支えていた白人至上的な傲慢な思想(例えば以前触れた「白人の責務」など)に、多少なりとも亀裂を生じさせた事が評価されているためです。

多くの日本人が考えるスタンダードなアジア諸国への罪の意識は、こうした事を踏まえるといかに表面的で軽いものであるかよくわかります。知ってもいない事を何故二度とやりません、と言い切れるのでしょうか。むしろ不真面目な態度と言えるでしょう。

しかしこうした事実を捉えて、だから戦前の日本は良かったとか、日本の評価を変えさせようとか、そういう事を言いたいのではありません。
そもそも当時の出来事を今の感覚で善悪の基準で評価すること自体が大それてた控えるべき態度であり、また明らかに不当な事実誤認は別として、他国に対してこうした評価を押しつけることも間違いです。それでは自分達の傲慢で残虐的な行為を隠すために、戦前の日本に悪のレッテルを貼った連合国と同じになってしまいます。

私が言いたいのは、今の日本でスタンダードに教えられ、信じられている歴史観はかなりバイアスのかかったものであり、自分達が過去の日本の歴史について知らな過ぎだと言うことを自覚することが大事だという事です。
そしてこうしたバイアスのかかった歴史観こそが戦後レジームの一端であると知るべきです。

多くの日本人が東京裁判史観の単純化された捻じ曲げられている歴史観を持ち、そのことに少しの疑いも持たないほどに洗脳されていることは、例えば今回の従軍慰安婦問題について朝日新聞などのマスコミが、真実を伝えていなかった事を謝罪するまで多くの時間がかかったことによく表れています。
日本を取り戻すことは、歴史を取り戻すことでもあり、こうした事を一つ一つ解きほぐしていくしかないと思います。








台湾サービス貿易協定とマスコミ報道

2014年04月18日 | 台湾
台湾サービス貿易協定とマスコミ報道

約20日間に及ぶ台湾の学生を中心とした台湾立法院(国会)の占拠が4/10に終了しました。

この学生達の行動を日本での報道は、最初から最後まであまり取り上げられることなく、この出来事に関心を持って見守っていた一部の日本国民以外は、この学生達の行動の意図するところが正確に伝わることはなかった事と思います。
それどころか仮に報道したとしても、学生達が占拠した理由は馬英九総統がくだんの協定締結を独断で進めた事だけが原因とも受け取れるような表面的な報道が目立ちました。
非常にバイアスのかかった事実を歪める報道ぶりです。

他国の出来事とは言え、問題となった協定の内容が、日本のTPPの問題や、最近にわかに議論されるようになった移民政策について考える機会を広く国民に与えるものであっただけに、今回のマスコミの不作為は、マスコミという組織が国民のためではなく一部の利害関係者のための報道機関であるということを証明する出来事でした。(今に始まったことではありませんが)

今回の中台サービス貿易協定は、協定の進め方にももちろん問題はありましたが、内容の方がよほど問題です。
馬総統が国民に黙って勝手に協定を締結したとしても、その協定の内容が台湾国民のためだと思えるようなものであれば20日間も占拠するような事態にはならなかったでしょう。
ところが、馬総統が発効を進めようとしたこの台中サービス貿易協定はとてもそんな代物ではなかったのです。

ほんの一例をあげると、この協定で開放されることになっている分野には「印刷」や「出版」分野がありますが、中国の印刷業・出版業が台湾に進出して大きなシェアを占めることになると、言論統制された出版物を出版し、台湾における言論の自由を阻害する危険性があること、また同じく開放される「通信業」分野では、台湾人の個人情報・行動や消費履歴・戸籍データなどが中国に流出し、台湾の国家安全が脅かされてしまう危険性などが指摘されています。
そしてなによりも、中国の大手企業が台湾の市場に参入することが台湾の中小企業にとって大きな脅威となること、また本協定では、今よりもより多くの中国人移民を受け入れ易くなるため、相対的に安い中国人労働力が台湾の国民の仕事を奪い、また賃金の下落を引き起こすことによって、台湾国民の生活を圧迫する事などが懸念されています。

そしてこうした移民による経済的な困窮に対する指摘は、単に心配しすぎているだけというわけではなく、実際に近年の台湾で中国系移民が増えるにつれ現実問題として既に指摘されている事なのです。
また、移民によるこうした問題は、移民政策を進めたヨーロッパ各国でもいまや悩みの種です。

今回の台中サービス貿易協定は、こうした事実を踏まえると経済成長を狙ったものとは言えず、政治的な思惑で勧められたものであるとしか言えません。
そしてもちろんTPPも経済的な効果を期待した政策ではなく、政治的な思惑で進められているものです。

TPPが国民経済のための経済政策でないことは、いまだに明確な経済効果が示されないこと一点だけで明らかです。(TPPの公式な経済効果は内閣府が作成したもので、10年間でたったの3.2兆円という代物です。年平均を0.32兆円とし日本のGDPを500兆円と仮定すると、年間わずか0.06%の押し上げ効果にしかなりません。こんなものは為替ですぐに吹き飛ぶ誤差の範囲ではないですか?)
何かあるとすぐに「経済効果が○○円」とはしゃぐマスコミが、今となってはこのことにまったく触れないのはあまりにも不自然です。
たったこれだけの効果と引き換えに、国民の生活の安全を守ってきた規制を岩盤規制だとレッテルを貼り、「日米関係をより強固なものにするためのものだ」、「国家100年の計だ」、「グローバルな世界をリードする野心的な取り組みだ」、「日本の農業は強い」、「重要5品目は守る」と言った事ばかりの抽象的な報道を繰り返すのを聞くたびに、只々呆れてしまいます。誰のためにマスコミや政府がこの協定を進めようとしているのでしょうか?多くの国民のためではないことは明らかで、この協定に賛成している顔ぶれを見れば、その動機はおのずとわかります。

今回の台湾の学生たちの行動をマスコミが報じないのは、当然の事です。




台湾:サービス貿易協定

2014年03月21日 | 台湾
台湾:サービス貿易協定

(新唐人2014年3月20日付ニュース)
台湾と中国が去年6月に結んだサービス貿易協定を巡り、台湾では馬英九政権に対する反発が広がっています。協定発効に向けて手続きを進める与党の国民党に対し、野党は不透明な密室協定だとして強く反発しています。18日夜には、協定に反発する学生200人近くが立法員の議場を占拠し、21日まで続ける構えです。議場の外にも台湾各地から市民数千人が集まり、協定の撤回と関連法律の制定を求めています。

https://www.youtube.com/watch?v=QDhQlnh8aDo

上記のニュースのように、昨年に台湾の馬英九総統が中国と締結した「サービス貿易協定」について、これに反発をする学生を中心に、日本で国会にあたる立法会議院を3/18日から占拠しています。

今回の発端となったこのサービス貿易協定は、馬英九総統が国民に秘密のうちに独断で中国と調印し、そのことを追及されて始まった議会での議論を時間切れを理由に打ち切る、という取り進め方に問題があったこととあいまって、協定そのものの問題もあるようです。

この協定は、中国側が金融や医療など80分野を、台湾側が運輸や美容など64分野を開放する内容ですが、経済規模的に優位な中国企業が台湾へ容易に進出できるようになってしまう事と(台湾企業にとっての脅威となります)、また、中国企業家のビザの更新も無制限に行える事(中国人の移住が容易となります)とする条文の内容が問題であると地元ニュースでは報道されています。
要するに台湾という国家にとってこの協定の内容が、経済的にも国の歴史や文化と言った国柄にも大きな影響が懸念されるものである事が今回の反発につながっています。

日本では、盲目的に「今はグローバル化の社会だ!」と信じている人が多いので、上記の点を台湾の人達が問題視していることは、何か「鎖国的」な印象を持つ人が多いかもしれません。
特に「私は地球市民」などと自称する方々は、逆に「何故歓迎しないのか?」と思うでしょう。

地球市民の人は論外として、多くの日本人が上記のような印象を持ってしまうのは、インターナショナリズム(国際主義)とグローバリズム(地球主義)を混同しているからだと思います。
インターナショナリズムは「国家間」の協調や協力体制を通じて世界の秩序や繁栄を目指す思想であるのに対して、グローバリズムは地球を一つの共同体とみなして「同化」を進める思想です。
(厳密にいうと、インナーナショナリズムも、もともとはグローバリズムに近似していたようですが。)

各国にはその国独自の歴史や文化伝統があり、また気候や資源の有無などといった地理的条件にも違いがある、ということを前提としながらつき合っていくことが「インターナショナリズム(国際主義)」です。
いわば「国と国との際(きわ)」でのおつきあいをしましょうとするもので、そこには、自立した国同士がお互いを尊重する前提が必要です。
この前提に基づくよい貿易活動とは、例えば工業国が資源国から材料を輸入し製品を輸出するといった中で、お互いの国が不足しているものをお互いで補い合い便益を得るという事でしょう。

かたや各国同士の事情を考慮せず、同一のルールでやりましょう、とすることが「グローバリズム」です。TPPなどに代表される自由貿易主義などは明らかにグローバリズムに基づくものだと言えます。
各国の違いを認めず、同じルールで物事を行えば、その時に強い者が必ず勝ち、この前提で貿易を行えば単なるパイ(=市場)の奪い合いとなるでしょう。
例えが悪いかもしれませんが、小学生と大人が同じ距離で徒競走を行えば大人が勝つに決まっています。勝負に公平性を保つためには、小学生は大人の半分の距離でよいとするなどのハンデをつけるしかありません。
貿易おいてこのハンデにあたるものが、関税や非関税障壁と呼ばれるルール(法律)であり、そうしたハンデを自主的に決めることができる国が「主権国家」なのです。

「日本は貿易立国だからTPPでグローバルに活動していかなくてはだめなんです。」という意見をテレビや新聞の報道でよく見聞きしますが、上記の違いが分かっているのでしょうか。
本人には自覚はないのかもしれませんが、相手の事を思いやらろうとはしない醜い態度であると思います。
TPPに反対することは、決して鎖国主義ではありません。
むしろ相手のことを思いやる惻隠(そくいん:他人のことをいたましく思って同情する心。仁に通ずるもの。)的な態度であり、思いやるためには自分自身がまずしっかりと自立しなければならないとする責任ある態度です。

さて話は戻りますが、いま台湾でこのサービス貿易協定に反対している人達は、決していわゆる鎖国的な思想に基づいて反対しているのではなく、この協定がもたらす自国への影響について心配して反対しているのだと思います。
市場開放による経済的な脅威だけではなく、移住による国体の危機を感じているからだと思いますし、そしてどう控えめに見ても、まさに中国は台湾の方々が心配しているこの事を協定の目的としているとしか思えません。
(中国は中国共産党による一党独裁体制の全体主義国家であり、グローバリズムと非常に相性が良い覇権主義国家です。中国がチベットやウイグルで行っている事を見れば今回台湾で何を狙っているかよくわかるでしょう。)

なお、日本でもこのサービス貿易協定の思想と同様と思われる思想で様々な政策が議論されています。
部分的とは言え、産業政策をするよりも経済特区などで外国企業の誘致を優先しようとする動きがありますし、また労働不足を理由に、失業対策をするよりも外国人労働者を毎年年間20万人受け入れることが検討されています。
日本が主権国家であり、国際国家であるならば、こうした政策は果たして正しいものなのでしょうか。
日本は、何故台湾の方々がこの協定に必死に抵抗しているのか考えるべきだと思います。彼らは、手続き論に対する反対だけではなく、自国の存亡にかかわる問題として反対しているはずです。

そして、この台湾の状況に対し報道しない自由を駆使する日本のマスコミは安定のクズっぷりです。彼らのスポンサーにとって都合が悪い「TPP推進反対」へと繋がりかねない出来事は報道できませんし、もともと中国に有利な報道しかしない彼らは、今後も真面目に取り上げる事はないでしょう。

加油台湾!