蜥蜴のツボ

ひねくれ者の独り言

おいしいご飯のわけ

2006-07-26 23:49:36 | 

 君が炊き上げる
 真っ白なご飯が
 いつもいつも
 おいしいのは

 君がお米と向き合っているから
 
 袋を開けるときから
 お米の容器に移すとき
 ザルに移すとき

 冷たいお水を
 お米に浴びせるとき
 きれいに洗った手で
 やさしくお米を洗い
 お水に浸すとき

 お米を火にかけるまでの間も
 炊き上がりの蓋を開けるときも

 君はお米と向き合ってる

 私がご飯を炊くときに
 向き合っているのは
 台所の時計

 今日もおいしく
 ご飯をいただきました

 いつもありがとう

笑ったらいいよ

2006-07-26 23:42:01 | 

 笑ったらいいよ

 転んで
 ひざ小僧をすりむいた時でも
 笑ったらいいよ

 誰かに
 ひどいことを言われ傷ついても
 笑ったらいいよ

 川の流れに
 ぼやけて消えていく
 大きな花を描いた光は
 やがて
 夏も終わり秋が来ると
 
 そんな知らせに
 心がちょっぴり緩んで
 ぼんやりと瞳がにじんでも

 笑ったらいいよ

 明日はきっと追い風
 だから
 笑ったらいいよ

ひとつがなくなるとき

2006-07-26 23:36:22 | 

 ひとつがなくなるとき

 それは
 風に揺れて
 さわり さわりと
 オーケストラのように奏でる
 商店街の街路樹たち

 それは
 風に乗って
 ほわり ほわりと
 思い出を優しく運んでくる
 どこかの金木犀の匂い

 なくなることは
 自然なこと
 なくなることは
 生まれてくることと同じ

 大切な何かも
 存在すら知らない何かも
 いつか
 なくなるときがやってくる

 時を刻むように
 新しい何かが生まれてくることと
 同じように
 
 ひとつがなくなるとき

 ここに刻もう
 ここに刻み込もう

水遣り

2006-07-24 23:51:37 | 

 そこにある花が
 生まれながらに与えられた
 その花を

 咲かせることだけを
 使命として
 生きていること

 なんて素直で
 なんて健気で

 サボテンはサボテンであり
 バラはバラであり
 カランコエはカランコエであり

 私は私であることの
 意味すらわからず

 ただ、ぼんやりと
 水遣りをしながら
 サボテンやバラやカランコエを
 そうっとそうっと
 なでてやる

 そのまま
 そのまま大きくっなてくれと
 願いを込めながら

 変わらず
 大きくなってくれと
 願いを込めながら

にらめっこ

2006-07-24 23:01:17 | 

 笑い声
 誰かの笑い声がする

 耳を澄まして
 テレビも消して
 携帯電話の電源もオフにして

 耳を澄まして

 誰かが笑っている
 クスクスと
 ささやくように笑っている

 クスクスに合わせて
 体の真ん中が
 リズムを刻む

 笑っているのは
 ワタシ?

 ドウシテワラッテイルノ
 ワタシノコトヲワラッテイルノ
 
 唇に軽く力を加え
 目も鼻もまゆもおでこも
 みんな顔の中央に集まって
 私は毎日誰かとにらめっこしてる

 毎日
 ひとりにらめっこをしている

1月の沖縄

2006-07-23 01:01:30 | 

 海に反射した空が
 海とつながるとき

 空に反射した海が
 空とつながるとき

 この世界はひとつになる
 海も空もずっと先の
 ここからは見えない
 宇宙の全てが
 ひとつにつながる

 そんな事を考えていると
 となりであなたは
 逆立ちをして

 「こうすると海と空がわからないよ」

 なんて言い出す

 1月の沖縄は
 時空旅行のような
 贅沢をプレゼントしてくれた

 ジーンズの裾をめくって
 跳ね散らかすしぶきは
 金粉のように
 私とあなたにふりかかる

 昨日までのケンカの理由なんて
 もう どうでもいいね
 あなたと出会った理由なんて
 もう どうでもいいね

 この海と空を
 抱えきれないほど抱きしめて

 明日
 東京に帰ろう

貝殻

2006-07-23 00:52:27 | 

 離れて暮らしているうちに

 あなたは私のような生活を
 私はあなたのような生活を

 幸せの姿だと思うように
 なってしまったのでしょうか

 きっとこの先にあるのだと
 信じて止まない楽園の存在を

 荒れ狂う生命の源となる力が
 大きな大きな波となって
 奪い去ってしまうのです

 奪い去って
 とうてい手の届きそうも無い彼方へと
 置き去りにしてきてしまうのです

 大きな大きな波は
 またやってきて
 今度は不安をこちら側へ
 置き去りにして去ってしまうのです

 それでもわずかに残る
 貝殻ほどの楽園のカケラを
 この手にすくいあげ
 見つめていたら思い出すでしょう

 本当のあなたの望みを
 本当の私の望みを

 

2006-07-20 00:16:54 | 
 耳に流れてくる音
 
 足の裏に伝わる音
 
 胸の奥から響く音

 指先を震わせる音

 
 私に届く音

 どれが真実
 どれが偽り

 目を閉じて
 音をまとって眠る

小さな小さなピンク色の花

2006-07-19 23:50:49 | 

 ふっと足を止めると
 小さな小さなピンク色の花が
 こちらを見ている

 小さな小さな花の
 もっと小さな花びらたちは
 ぐううんと全身を伸ばして
 そのピンク色をこちらに見せる

 背も小さくて
 名前すらわからないその花は

 その花と私の辺りをぐるっと
 やわらかなレースで包むようにして
 そして私に
 ふっと一息吐き出させてくれる

 ピンクの花のように
 目立たなくとも
 さりげない優しさで
 私に触れる人を包みたいと思うのに

 鋭い牙を向けられ
 私を包んだレースは鉄の鎧と化す
 そして時には
 鉄の鎧をも突き抜ける隠された牙は
 向けられた牙を噛み砕いて
 牙の持ち主を威嚇する

 魔法が解けたとき
 周囲を威嚇した牙は
 私の小さな小さな体を傷つけ
 いつか見つけた
 小さな小さなピンク色の花を
 握るようにして
 私は地べたへうずくまる

 またピンク色の花を
 探しに歩き出す
 小さな小さなピンク色の花を探しに

あなたの手

2006-07-19 00:08:39 | 

 夜空に月を見つければ
 月は微笑んでくれていると思い
 
 月の傍らに星を見つければ
 星は語りかけてくれていると思う

 雨に映える紫陽花は
 頑張れよと声をかけ
 
 風に揺れる柳は
 そのままでいいよと
 頭をなでてくれている

 それなのに
 それなのに

 どうして私の瞳の先には
 暗闇に浮かぶ階段で
 その先にある扉は
 開くことなくたたずんでいるのだろう

 もう両手で顔を包み込んでも
 流す涙など残っていないのに

 もういいよ
 もう
 心配しなくていいんだよ

 幸せになっていいんだよ
 幸せになるための道しか
 目の前にはないんだよ

 昼間の暑さが嘘のように
 優しく心地よい風が
 頬に当たる

 手を伸ばして
 その手で掴むの

 欲しかったもの掴むために
 あなたは握って生まれたその手を
 開いたのだから