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携帯版・なごぐら

携帯アプリから作った名古屋で暮らす女性のブログ。
ナゴヤかな?名古屋かな??。
地元の魅力発掘ブログ。

第5幕・あの花

2018-07-02 15:46:16 | 私・小説
大人の世界に入っても
私はなんとなく、あの双葉のことが
気になっていた。

土の場所は、覚えてる。

試しに行ってみた。

双葉はなかった。

代わりに花が咲いていた。
「大丈夫、これからはきっとうまくいく」
誰かに言われた訳じゃないけど
そう言っているみたいだった。

私は花を摘むとすぐに自宅に帰り、
花瓶に挿した。

でも花は、その時だけしか
きれいには見せてくれなかった。

私が仕事から帰った2日後。

花は、散ってしまった。

涙は出ない。
感情なんてとっくに忘れてしまったから。

それからどのくらい時間が経ったかな。
病院おくりにされたり、
そのまま障害を持ってしまったり、
友達がやっとできたり、
別れたりを繰り返したりした。

仕事も何回か変わって、今じゃ
人に言えるようなものに
すらなっていない。

いやきっと言った所で
わからないだろう。

そう簡単にいえば、仮の居場所なんだ。
職業で言えば、無職。
そういう所。

私はそれでも絵を描く自分を
続けていた。

プロになんてなれなくてもいい。

ただ自分の持っている良さを
捨てたくなかった。

(つづく)

第4幕・私は、また一人になった

2018-06-30 18:35:13 | 私・小説
どんぐりの女の子と知り合って、
彼女と遊んだり、彼女の友達たちと
知り合って仲間がだんだんとできた
…気がしてた私。

だがそれは、
そんな気がしてただけだった。

別れは、突然訪れる。

どんぐりの女の子が
都会の風に飛ばされてしまう日が来た。


私はまた一人になった。
いままで仲間だと思っていた存在は、
どんぐりの女の子がいたから私に
付き合ってくれていただけで、
「私の」仲間ではなかったのだ。

一人になった私は、また双葉のある
土のところに来ていた。
またカエルに会いたかった。

カエルはいつまで待っても来ない。
寂しい。寂しさばかりが募った。

人に頼ってばかりじゃ
何も見つからない。

歩き出さなければ。

それから5年後。


私は、人間の世界に戻ることにした。
小さくなった体を大きくするために
できるだけのことはしてみた。

野菜も肉も魚もなんでも
食べて運動もして早起きもした。

いつのまにかもとの人間に戻っていた。
そして気づけば、私は「大人」の仲間に
なったらしい。どうしてだかは、
忘れてしまったけど。

(つづく)

第3幕・雨上がり

2018-06-28 13:24:52 | 私・小説
雨上がり。私は外へ出て、
種を植えた場所へ行ってみた。
双葉が顔を出していた。

花が咲くのかな。

ふと思った。

風に揺れて一枚の手紙が
飛んできた。

どんぐりの女の子からの手紙だった。

「私と友達になってくれませんか?」

近くを見回すと、キョロキョロしながら
どんぐりの女の子が私を探していた。

それからよくわからないけど
私達は、友達になった。

(つづく)


第2幕・カエルと私

2018-06-27 22:51:15 | 私・小説
種を見つけた私は、足元の土に混ぜた。
私は小さくなっていてその辺の虫にも
餌にされそうなくらいの大きさに
なっていた。

ぼちゃんぼちゃんとすごい音がして
驚いて葉っぱの下にかくれた。
どうやら雨がふっているみたいだ。

雨宿りをしよう。
なんとなくそう決めて雨が止むのを
待っていた。一匹のカエルが
すごいイビキをたてて寝ている。

もし起こして食べられたら大変。
私は、黙ってその場を離れようとした。



カエルは、目を覚ましてしまった。


「大丈夫だ。なにもしないから。
困ったことがあるなら言えよ。
味方になるからさ」

カエルはそういうと、
意外にも可愛く笑った。

私は、少し気持ちをらくにして、
カエルと話をしてみた。
「ふーん。ひどいことをいう奴だね。
そんなの気にしなくていいよ。
きみにはきみのいいところがあるさ」

私は、未だにその言葉の意味が
よくわからない。

カエルは、雨があがるのを確認すると、
どこかへ行ってしまった。

(つづく)

第1幕・はじまり

2018-06-27 22:26:40 | 私・小説
(これは、私の人生をもとにした、ちょっとだけノンフィクションな小説)

いつの頃からか、私には名前があり、
人間になっていた。記憶があるのは、小5〜小6ぐらいからだったと思う。

毎日のように私は、ある女の子から目の敵にされて、いつも意地悪をされていた。
イジメというほどのものではないが、
私は苦手意識を持っていた。

ある時、その女の子が言った。
「あんたなんかいてもいなくても同じ」

最初はその言葉にとまどった。

同時に人間不信が始まった。

人間の国は嫌だ。
もうなにも見たくない。
私は私を捨てることにした。
全てを忘れると誓ったのだ。

手元には一枚の紙があった。
そこに思いつくままに絵を描いた。
とたんに扉は開いた。

体がみるみる軽くなっていく。
気づくと目の前には、
ひとつの種があった。

(つづく)