28日に記録的な大雨で被害を受けた富山県立山町の住民からは「白岩川ダムの緊急放流が被害を拡大させたのでは」という疑問の声が数多く聞かれました。緊急放流は適切だったのか取材しました。

28日、貯水量を上回る大量の雨が流れ込み緊急放流に踏み切った白岩川ダム。29日、被害が出た川の周辺地域を取材すると…。

立山町の住民:「ダムが一気に吐き出したからこんなんになったんや。少しずつ出してくれればよかったのに、一気に吐き出さんと…」

上市町の住民:「結局、ダムの放流、ダムの放流の是非を取材してほしいわ。もうちょっと少しずつ事前に放流できんかったんかとかさ」

立山町の住民:「自然災害と言えばいいか、人為的ミスと言えばいいかわからん…。今までこんな水の出し方せなんだと思うよ」

富山県は立山町の白岩川ダムが越水する恐れがあるとして、28日午後4時20分から午後5時3分まで緊急放流を実施しました。

緊急放流のあと白岩川ダムの下流立山町の白岩橋付近では水が住宅地や田んぼへと流れ込んでいる様子がみてとれます。

緊急放流とは、大量の雨がダムに流入し続け水位が限界に達する見通しになった場合さらなる水位の上昇を避けるため流入量とほぼ同じ量の放流を行う操作のことです。

富山県によりますと県内のダムで緊急放流を行ったのは2017年の室牧ダムに次いで2回目。白岩川ダムでは1973年の竣工以来初めてでした。今回、なぜ緊急放水に踏み切ったのか?判断は適切だったのか?白岩川ダムの管理責任者を取材しました。

所長「通常はこれですね、これが通常ですね…」「(きのうの)16時30分の段階でここからこぼれている」「ここの高さがダムの洪水時の最高水位の高さになるんです。ここを超える流入量だったと」

赤線で示した場所がダムの限界水位です。3時間後の午後4時には限界水位に迫っているのがわかります。

所長:「計画規模の1.5倍以上のもの想定しているものよりも大きい非常に大きい洪水の量だった」「緊急放水しなかったら水位がどんどん上がっていってオーバーフローする懸念がある」

その緊急放流を避けるためにも行うのが事前放流です。これは水位が限界に達すると想定される場合、あらかじめダムの水位を下げる措置です。

白岩川ダムでも気象庁の降雨予測をもとに事前放流を実施するかどうか判断しています。

所長:「今回、(気象庁の)データをみていますと、それほど降らないデータでもあったということもあって事前放流という形での対応は取っていなかった」「それだけ今回、強烈に短時間に強い非常に強い雨がもたらされたと」

所長:「これみていただいたらわかるんですけど」「この3つが色が変わっていますけど、強烈な雨、3時間で200ミリくらい降っているわけです」

事前放流をしていない中で短時間に予想を超える大量の雨がふったためダムが崩壊し人命への被害が出るのを避けるためにも緊急放流に踏み切らざるをえなかったとしています。

所長:「やむを得ず緊急放流の対応をさせていただいた」「ダムも水を貯めて持ちこたえるもの。耐えている間に逃げてもらうものだと理解していただければと思う」

もっと早く放流していれば、という声に対して県も「事前の予測を上回る雨が降って緊急放流せざるを得なかった」としていますが、住民に対しては丁寧な説明が必要だと思います。