春
二月尽カットしたての風そよぐ
春浅し森光子の真似まだ早し
花冷えや流るるラヴェル二楽章
青空を探りて満ちる桜かな
モーツァルト花に戯れ風に舞ふ
タンポポの日差し集めし午後なりぬ
春うらら母の育てし花咲きぬ
夏近しピアノカバーはレース柄
夏近し飛行機雲の弧を描く
癒えし母花瓶活けたる薔薇真っ赤
久方に家族揃ひし初詣
花柄のカバー眺めて初日記
初東風や手帳書くペン進みたり
新しき湯飲み買ひたる七日かな
冬うらら癒えゆきし母花飾り
花鉢の雑草取りぬ小正月
水仙の道端一角ひそと咲き
小窓より外へもおいでと寒雀
寒椿径彩り続きたり
通販の服の彩り春近し
歩めればアスファルト咲く犬ふぐり
店先に淡色の花春近し
久方の母の散歩や春近し
日差し浴び香りきらめく金木犀
光食み野山の錦笑ひたり
秋気澄むばたばた響く洗濯物
雨煙る空の上には後の月
爽籟や疾走したるモーツァルト
爽籟やブランデンブルグ協奏曲
うそ寒や響く工事のドリルの音
ハローウィン黒靴おニューの女の子 再掲
秋の暮時を留めて葉々の舞ふ
濃くなりし葉々の彩り冬近し
広場舞ひ悠々自適蜻蛉かな
思い出は押し花にして八月尽
新涼やまな板の音響きたり
鈴虫の大きく小さく星の下
星合に手に取りてみる詩集かな
上着羽織りて歩めれば彼岸花
虫篭の中にも見ゆる夢の色
洋上の小船に銀の月の道
秋の雨響くスマホのタップ音
残る海猫季節の光数えをり
母と見て母の笑ひし良夜かな
明日のこと明日にまかせて虫眠る
ぽんと落つ木の実トトロの土産かな
ゴーシュ弾くチェロの音響く星銀河
フラミンゴ逃亡極め秋団扇
秋爽や発声練習演劇部
ノクターン遺作流るる月の夜
カクテルに月の雫の隠し味
七月はあまりの秒ではじまりぬ
睡蓮の水面ひろげて雨の降る
男梅雨運命五番交響曲
雨上がり我の背を押す蝉の声
トトロめく小路歩きし夏の朝
カリコリと胡瓜食みたる音たてて
夏休みピアノ磨きて楽譜買ふ
夕焼けは見えぬ誰かと話す刻
ボサノヴァの波音続く熱帯夜
蚊遣火や御伽の国に児を誘ふ
ノクターン流るる窓辺夏の月
夏の月めがけて駆けるフラミンゴ
夏バテは知らぬと咲きし百日紅
時を待ち身動ぎもせず未草
宵闇の運びし風に睡る蓮
雲の行方探してをりぬ晩夏かな
通販の服の彩り秋近し
筋雲の流れ流れて秋近し