八月

晩夏光映し流るる二楽章

マイナーをメジャーコードに秋初め

頬を訪ふ風はなにいろ秋の色

しづかなる夜を揺るがし虫の声

筋雲の流れ流れて秋初め

雨音をＢＧＭに処暑の朝

散歩道逃げ隠れする蜻蛉かな

校舎よりコーラス響く秋の朝

鈴虫のフォルテッシモの交響曲

葉陰より空の青さにバッタ飛ぶ

あつさりと髪カットして休暇果つ

七月

パラソルの今日の予定を待ちてをり

入道雲湧きてワクワク散歩かな

散歩道流るる蝉の交響曲

虫干しや表地裏地色の舞ふ

夏の夜の流れしショパンセピア色

校舎より応援合唱大暑かな

闇空のど真ん中咲く花火かな

星雲となりて煌めく花火かな

夜光虫幻想に舞ひポロネーズ

白服の娘の弾く手つきバレリーナ

梅雨明け

曇天を見上げてをりぬ仏桑花

栗羊羮亡父の口元緩みたり

初蝉や湿りし木々に薄日差し

ふららこに木漏れ日舞ひぬゆらゆらり

都合よき音だけ聞こゆ青簾

梅雨明けにやたら威張りし日差しかな

六月

六月の雨と流るるカノンかな

雨蛙明日の雨音想ひたり

押し入れの宝探しの夏至なりぬ

梅雨冷えの水底深く星生まれ

梅雨冷えを訪ひし子の声和らげぬ

蝶翔ちてふつと揺れたる額紫陽花

シャガールの絵葉書飾り六月尽

五月

壁掛けしスカーフの色夏に入る


ラジオより児童合唱子供の日


よきことの何かありさう子供の日


草の先水木の花の星灯る


夏桔梗眩しき日差しにほころびぬ


ブラームス深く流るる五月の夜


木漏れ日のくるくる日差しに遊びたり


大雑把な雨音合わせキャベツ切る


夏の月影を探して猫眠る


桜の実ざわめく葉々に憩ひをり


曇天に歌ふが如くアマリリス


演劇部発声練習初夏の風


トトロめく緑の小径夏蜜柑


瓶に挿すデルフィニウムの青涼し


紫陽花の額の碧さやプレリュード


花菖蒲紫深く佇みぬ


ほととぎす闇夜の緑濃くしたり


続きたる径の紫陽花空の星


夏蛙彩る花とメヌエット