misty green and blue

Life is like an onion...

ひとごろしのうた

2017-06-11 | books


当時飛ぶ鳥を落とす勢いの絶大な人気を誇る3ピースバンド「EZ COME EZ GO」のギタリストとして活躍するも、音楽観の相違によりやむなく解散、ソロ活動もままならず、悶々とした日々を送っていた31歳の大路樹に救いの手を差し伸べたのが、大手のレーベル会社の宣伝部部長・遠藤だった
樹の“音楽バカ”“ミュージシャンの気持ちに寄り添えるディレクター”の才を見込まれての採用、見習いとして5ヶ月が過ぎた頃、新人発掘オーディション用の音源デモを聴いていたある日、「ひとごろしのうた」と題された哀切漂うミディアムテンポの曲に衝撃を受ける
自身がかつて愛用していた“ブラックビューティー”こと69年製レスポールカスタムから紡ぎ出される玄人はだしの力強い音色と情感豊かなヴォーカルにすっかり魅せられた樹だったが、“瑠々”という名前以外の手掛かりは皆無だった....
瑠々を探し出すべく、上層部に掛け合い、FM局を使っての“指名手配”が始まった
しかしながら有力な情報が得られないまま、2ヶ月余りが過ぎ、業を煮やした樹は思い切ってインディーズレーベル「6955」を立ち上げ、CDをリリース、SNSを使ったプロモーションも功を奏し、「ひとごろしのうた」は発売6週目にして週間インディーズチャートで1位を獲得、瑠々の作品を耳にしてから7ヶ月が過ぎようとしていた ―
そんな折も折、最近起きた3つの殺人事件の被疑者2名と被害者1名が「ひとごろしのうた」を聴いていたとの記事が週刊誌に掲載され、社会的大問題に発展した
SNSの炎上、店頭からのCD撤去 ― 万事休すの状況下、果たして樹は瑠々を守ることが出来るのか....?!

 いたかったでしょう とげがささったまま こころが赤いなみだながしてる
 こぼれたしずく ぬぐってあげる こごえた身体 だきしめてあげる
 このぬくもりを かんじてよ とおいきおく おもいだして


瑠々は自殺していた
中3の時、付き合っていた陸上部の加瀬の子を身籠ったという怪文書が校内に出回ったことが原因
瑠々の両親は離婚していた
「ひとごろしのうた」は唯一無二のロックバンド「THE RED RUM」のギタリスト・早瀬慧二が娘の十七回忌を終えた直後に見つけた遺品―亡き娘が両親へのクリスマスプレゼントとして温めていたオリジナル曲を、元アイドルの小野寺ルミの提案で“復讐のため”に両者が手を加え、編曲されたものだった....

3人はもうこの世にいない
早瀬の形見、69年製レスポールカスタムを受け取った樹は、早瀬の想いを胸に1年間限定のEZ再結成に向け、新たな闘志を燃やす―


心の琴線に触れる作品だった
但し、加瀬を殺めた犯人の真相を明かすエピローグは不要だった
ほんの少し、興醒めした


復讐と懺悔の、延いては最初で最後の“家族がひとつ”になった曲 ―「ひとごろしのうた」
何故だろう、読み進めている間、Melancholic Power Metalのこの曲が私の頭の中を離れなかった....

This Is War / Vandenberg
 


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