やさしいこ

夕暮れのスーパー
混雑のレジに並ぶ。アタシの前はきっと手編みの毛糸の帽子をかぶった
腰の曲がったちいさなおばあさん・・・

清算時、指先のない手袋でおぼつかなく小銭をさぐっている・・・

見習いの札をつけたおかっぱにそろえた真っ黒な前髪がかわいらしい
高校生位の係りの子は、
その様子を見て、おばあさんの買い物の済んだ少しばかり重そうなカゴを
作業台にてきぱき運んだ

そしてレジに戻った頃
おばあさんも支払い額をトレイに整えられていた

彼女は、にっこり笑って
「ありがとうございます。お荷物は、あちらに置いておきましたから・・・」と
耳元に顔を寄せておばあさんに話しかけた。

おばあさんは、しあわせそうにお礼を言ってちょこちょこと作業台に歩いていった。

なぁあああああああんて気の利くかわいらしい子なんでしょう

やさしいのねって声をかけようかと思いつつ
黙って自分の買い物を済ませたが、
彼女は、アタシのときにはツンッとすましたカオで
ありがとうも言ってくれなかった・・・

なんと心得た子なんだろう・・・さらに感心するアタシであった・・・