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絵日記

「世の中の役に立つ」ものではなくただ「絵でしかない」ものを描いてみたいな、と。

ひとみ座「華氏451度」を観て その2

2025-04-02 11:33:39 | 人形劇

その2 人形美術

小林加弥子さんのデザイン・美術

 

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「乾いた」「クール」「造形的」「ハード」という言葉が当てはまるだろうか。

いわゆる「ゆるキャラ」などとは対極的な、知的な表現方法だと思う。

いま、TVなどで見られる多くの人形は、「甘い」「親しみやすい」「可愛い」「暖かい」「柔らかい」「略画的」「単純」なものが多い。それらがみな悪いわけでは、もちろんないが、あまりに溢れすぎてしまっているとは、感じる。

故片岡昌が切り拓いた、ある種「無機質な」「冷たい」「造形的」人形スタイルを直接受け継ぐ人は、もう現れないのか、と少々寂しい思いもあったが、「おまえだって、やれなかったじゃないか」と、言われそうで、やや諦めもしていた。そこに、小林加也子さんの突然の登場だ。これは大歓迎。

しかし、この演目を選んだ以上、どうしてもこのスタイルに行き着くのだろう、とは思う。作家の意図・物の捉え方その他諸々を、一番自由かつ存分に発揮できるのが、この美術スタイルだから。

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モンターグ、ベイティーの力の籠った彫刻的表現、性格表現は見事。これが本格的な人形美術の第一作目とは、ちょっと信じがたいほど。

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ミルドレッドの眼の表現は独創的。卵の殻のような質感の肌の表現は、この役にぴったりだと思う。帽子を被せてしまったのも「なるほど、この手もあるか」。

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どの人形も、手の指先の表現まで、実に神経が行き届いている。髪の毛は和紙だそうだが、人形頭の原型に被せてさらに髪の毛専用の原型を取り直したものだろうか。ちょっと、製法の想像がつかない。この髪の毛の工夫で、重すぎず硬すぎず、乱れ過ぎないカツラに仕上がっている。これも、今まで見たことのない表現だ。

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二匹の猟犬もユニークで面白い。実は、これが一番、小林加弥子らしい造形なのではないか(笑)。

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フェーバーは賛否あるかもしれない。私の感覚では「これも、アリかな」くらい。

森に隠れた3人の学者たち、「ここまでみっちり作らなくても」とも思うが、みっちり作って悪いことは何もない。

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小林加弥子さん、演出も兼ねている。「彼女、半年間、一日も休んでいないんですよ」と、老婦人役の蓬田さんが言っていた。