草の実や木の実がゆたかな季節。
湿潤な織りの先生のお庭では、青い実がたわわに生っていた。
黒真珠のような、青い実だ。
街は早くも冬の気配、
ケアハウスを訪ねると、母はまたひとまわり小さくなっていた。
スタッフさんが、小さな声で、「失禁が始まりました」と・・・。
色白なのに、肉つきが減ったからか、顔が黒ずんで見える。
口だけは達者で、
「ここは姨捨山?」と軽い調子で訊く。
先輩の女性が、
「わたしなんか、もう10年も姨捨山に居るんやから」
と親切に教えてくれたそうな。
帰途、バスに乗り損ねて、ターミナルまで一時間、歩いた。