朝の洗面所、
バスマット代わりのラグラグが、窓からの逆光を受けて、深い色合い。
母の認知症が重くなって、唾液で床を汚す事が多くなった。
はじめは、本人の自覚を促そうとしたが、無駄と判り、
汚しそうな場所にラグを敷いて、注意を引くことにする。
これだって、意味のないことではあるが、
叱りつけたり、無視するよりは、こちらの気が安まるだけのこと。
およそ、問題行動と呼ばれるものは、周囲の者達にとっての問題、であり、
当人にとっては、小児のチック症状に似たものかも知れない。
体重の激減によって、入れ歯が合わなくなったせいで、唾液が溢れだして気持ちが悪い、
のでは、と、歯科で新しい入れ歯を依頼中。
およそ、周囲の物にとっては、許し難いノイズの発生源、なのに、
この、隣の介護ベッドで寝息を立てる母は、
小さく丸まって、泣き寝入りした無垢な幼子そのもの。
昼間の大迷惑(怒り)を忘れさせるのは、“血のつながり”のせい、だと思う。