2.5ギガ帯を利用する次世代高速モバイルの事業免許が2社におりた。4グループが名乗りを上げていたのだが電波審議会の答申で結果的にKDDIグループとウィルコムになった。KDDIは技術開発に先行性が認められ、ウィルコムは次世代PHSを利用するためにWIMAXではない異種技術を利用するとして選定された。
この2社は国民投票で選ばれた訳でも市場競争で選ばれたのでもない。しかしある種のコンペで選ばれたことは間違いない。そのコンペ基準が上記の理由ということだがなんだか後付の印象も拭えないが。
しかも技術優位性は議論しなかったという。ひらたくいえば「とにかく昔から研究をやっているということでその期間の長さを基準でKDDIに決めました。もう一つは異種技術ということでウィルコムさんを選びました」ということだろうか。
電波審議会など政府機関がこうしたコンペをする際の選択視点はどこにおくべきか。各界の識者ガ集まっているのであるから今更教科書的なコンペ原則を標榜するのも気恥ずかしいのかもしれないが後出しじゃんけんと非難されないためにも何らかのコンペ基準を示しておくべきだろうと最初は考えた。人口に膾炙しすぎてどうかとも思うがアダム・スミスの「最大多数の最大幸福」あたりがこの際の選択原理にもっともふさわしいことになるだろうとも思った。日本政府流に言い換えると「遍く便益性を享受する」となる。この選択原理に異論を唱える人はあまりいないと思うからであるが。そうなるとこの発表された選択理由はどうもピンぼけで跡づけではないかとの非難を受けそうに思った。
しかし考えてみると選択基準に羽鳥光俊委員長は電波法第一条を引証していた。電波法第一条は電波法の理念を次のようにうたう。「第一条 この法律は、電波の公平且つ能率的な利用を確保することによつて、公共の福祉を増進することを目的とする。」
この法律の「公平」とはわかりやすく身近に引きつけて解釈すると、何らかの情実が働いていないことを指すのだろう。その意味では4グループはイーブンだろう。(天下り役人の受け入れの多寡が情実だとの意見もあるだろうがここでは取り上げない。)そして技術的にも偏りがないことと読める。
次の重要フレーズである、「能率的な利用」とは展開スピードのことと理解できる。これこそ各グループに差のあるところかもしれない。展開スピードに差のある根拠資料はどこかで示されているのだろうか。気になるところではあるが。
こうして考えてみるとコンペ応募側がもし電波法一条をコンペ基準ととらえ、まじめに合格対策を検討していれば自ずから展開スピードに工夫を凝らすべきであった。コンペ提出資料に展開期間の記述は当然あるはずだし、この点が電波法に照らして最大の争点になると読まなかったグループ側にも戦術ミスがあったというべきだろう。本気で免許を取りたければ相手の出方とコンペ基準の想定くらいはしておくべきであった。免許発表前日になって記者会見を開いてもすでに後の祭りである。