
研究の推進・成果の普及に関する責務
以下は表記についての自民党PT提案要旨です。
「研究の推進・成果の普及に関する責務」についての規定に関して、NTT法の第一条から第三条までの関連内容を以下に示します。
第一条(目的)。日本電信電話株式会社は、適切かつ安定的な電気通信役務の提供の確保を図ること並びに電気通信の基盤となる電気通信技術に関する研究を行うことを目的とする株式会社とされています。
第二条(業務)。第1項第三号では、電気通信の基盤となる電気通信技術に関する研究を行うことが規定されています。
第三条(責務)。会社および地域会社は、電気通信技術に関する研究の推進及びその成果の普及を通じて、我が国の電気通信の創意ある向上発展に寄与し、公共の福祉の増進に資するよう努めなければなりません。
「研究成果の普及」に関する責務について、研究成果を一律に公開することが、グローバル競争上の優位性を損ない、また、海外企業との共同研究開発に障害となる可能性があります。
IOWNなどの取り組みは国際競争力の源泉となり得るものであり、研究成果の普及責務は、NTTの技術優位性を損なうだけでなく、わが国の経済安全保障にも関わる重要な問題となり得ます。
したがって、研究成果の普及責務については、次期(2024年)通常国会で撤廃すべきであると提言されています。
以下はわたしの意見です。
国際的な視点から見ると、過去に米国からの圧力によって日本の通信市場が開放された歴史がありますが、現在は自国主義の傾向が強まっています。日本の通信産業は、IOWNなどの新技術を通じて国際競争に勝つため、特に失われた30年への反省から強い企業への革新が求められています。国内競争の環境整備から国際競争に勝てるための環境整備へと注目が集まっていると感じます。
「失われた30年」とは、日本経済が1990年代初頭のバブル崩壊後から長期にわたって停滞した時期を指します。この期間に日本は、デフレーション、低成長、少子高齢化の進行、新興国の台頭などの複合的な経済問題に直面しました。経済成長の鈍化により、日本の国際的な競争力は相対的に低下し、かつての経済大国としての地位が揺らぎました。
バブル経済の崩壊は、土地や株の価格が急落し、金融機関が多額の不良債権を抱え込む結果となりました。これによって金融危機が引き起こされ、多くの企業が経営破綻に追い込まれました。政府の経済対策も十分な効果を発揮せず、経済の再活性化には至りませんでした。
加えて、グローバル化の進展により、世界の経済構造は大きく変化しました。特に、中国やインドなどの新興国が経済成長を遂げる中で、日本企業は国際市場での競争力を維持するのが難しくなりました。技術革新のスピードも加速し、情報通信技術(ICT)の発展が新たな産業の成長を促し、経済活動のデジタル化が進行しました。このような状況の中で、日本企業がイノベーションに対応し、国際競争に勝つためには、新しい技術やビジネスモデルを積極的に取り入れる必要があります。
IOWN(InnovativeOpticalandWirelessNetwork)のような新技術は、データ通信の基盤を一新し、次世代の通信インフラを構築する可能性を秘めています。これは光ファイバーや無線ネットワークの性能を飛躍的に向上させ、産業や社会の様々な分野で革新を促すことが期待されています。日本がこのような先端技術を先導し、国際市場での競争力を取り戻すためには、規制の緩和や研究開発への投資増加など、国内外での強いリーダーシップが求められます。
失われた30年の反省から、日本はこれまでの経済政策や産業構造を見直し、新しい時代に適した競争力のある経済体制を築くことが求められています。このためには、国民全体がその必要性を理解し、産業界、政府、教育機関が一体となって取り組む必要があるのです。その意味からNTT法により課せられた規制を解いて自由に羽ばたいてもらうことが大事だと考えます。NTT法が必要かと問われると先進諸外国の例からも今や不自然な存在に見えてきます。
電話の役務のあまねく提供(ユニバーサルサービス)に関する責務
以下は表記についての自民党PT提案要旨です。
「電話の役務のあまねく提供(ユニバーサルサービス)に関する責務」についての規定に関して、NTT法の第三条に基づき以下の内容が述べられています。
第三条(責務)。会社および地域会社は、電話のあまねく日本全国における適切、公平かつ安定的な提供の確保に寄与すると共に、公共の福祉の増進に資するよう努めなければなりません。
近年の動向に関して、ユニバーサルサービスの対象となるアナログ固定電話契約数は、1997年には約6,300万件あったものが、2022年末には約1,500万件まで減少しています。一方で、移動系通信の契約数は、2000年に固定電話を超え、昨年末には2億件を超えました。さらに、光ファイバーなどの固定系ブロードバンドやIP電話の契約数も、2012年には固定電話を超えています。
このような変化を踏まえ、有線かつ音声通話のアナログ固定電話だけをユニバーサルサービスの対象として義務付ける意義は薄れています。NTTは2015年に公衆交換電話網(固定電話網)をIP網に移行する計画を発表し、2025年までにIP網への完全な移行を目指しています。
2019年の情報通信審議会の答申では、「他者設備(携帯電話など)の活用等を通じて電話を低廉に利用できる状況を確保すること」との目標が示され、2020年に電気通信事業法およびNTT法が改正され、携帯電話などの他者設備もユニバーサルサービスの提供に活用できるようになりました。
2022年には電気通信事業法が再び改正され、ユニバーサルサービスの対象を固定電話とブロードバンドサービスに拡充することとされました。
今後、ユニバーサルサービスの手段や提供事業者をさらに拡充し、経済安全保障および安全保障の観点から、わが国独自の通信衛星コンステレーションの構築を目指すべきです。ユニバーサルサービスの対象を多元化することは、災害や有事の際に国民の生命と生活を保護するためにも有効な手段と考えられています。
「ラストリゾート責務」についての現状と提案について、以下の内容が述べられています。
現在、電気通信事業法においてユニバーサルサービスとして位置づけられている固定ブロードバンドに関して、光ファイバーの整備率は99.72%に達し、2023年3月時点で契約件数は約4,500万件に達しています。しかし、離島などの未整備地域には依然として16万件の契約件数が残っています。
2022年の電気通信事業法改正では、第二種適格電気通信事業者(ブロードバンド提供事業者)に対して、過疎地や離島地域における赤字の一部を補填する交付金制度が導入されました。しかし、このような地域において光ファイバーを整備することを責務として規定しておらず、また、その責任を負う事業者が明確にされていないという課題が存在します。
このような状況を考慮し、固定電話や固定ブロードバンドが未整備の地域において、品質や料金水準を考慮した上で、携帯電話や衛星通信などの無線通信もユニバーサルサービスの手段として含め、サービス提供を可能とするために電気通信事業法を改正すべきです。
この改正において、NTT東・西に加え、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクなどをユニバーサルサービスの提供主体とし、サービス提供者が不在の地域については、国が適切な事業者を指定できる仕組みを導入し、退出規制を設けるべきです。
2025年通常国会を目途に、電気通信事業法を改正すると同時に、NTT法第3条の「電話のあまねく提供」責務を撤廃すべきです。これにより、未整備地域への適切な通信サービスの提供と、効率的な通信インフラの整備が促進されるでしょう。
以下はわたしの意見です。
すでに横綱となった競合もユニバーサルサービスの提供主体となるべきで、携帯電話や衛星通信などの無線通信もユニバーサルサービスの手段として含め、サービス提供を可能とするために電気通信事業法を改正すべきとしている。この指摘は国民目線から妥当だと思えます。
効率的な通信インフラの整備が促進されることへの期待が述べられているが、競合他社が主張する地域インフラのボトルネック解消が前提になることは明言されていない。共同溝構想の実現に向けた努力がこの提言の前提となると考えます。
NTTの責務を遂行するための担保措置
以下は表記についての自民党PT提案要旨です。
NTT法の第3条に規定された責務を遂行するための担保措置として、以下の項目が存在します。
- 政府による株式保有義務(第4条)。政府は、常に会社の発行済株式の総数の三分の一以上を保有しなければなりません。この株式保有は、特別な資産の公共性と安定的な提供を保障するためのものであり、経済安全保障の観点からも重要です。
- 外国人等議決権割合の制限(第6条)。会社の株式を取得した第一号から第三号までの者による議決権割合と、これらの者による第四号に掲げる者を通じての間接的な議決権割合を合計した割合が三分の一以上の場合、これらの者の氏名と住所を株主名簿に記載または記録してはなりません。この規制は外国人等の議決権を1/3未満に制限するものです。
- 外国人役員規制(第10条)。日本国籍を持たない者は、会社や地域会社の取締役や監査役になれません。
- 定款変更、合併、分割、解散、事業計画の認可(第11条および第12条)。これらの決議と事業計画は総務大臣の認可を受けなければ法的効力を持ちません。
外資規制や政府による株式保有義務は、特別な資産の公共性や提供の安定性の観点から設けられており、経済安全保障の観点からも検討されています。株式保有義務については、NTT法改正時に検討し、政府の保有株式の売却については、情報通信分野の研究開発や通信インフラの整備・維持、国際的な展開を支援するために充てることが望ましいとされています。
外国人役員規制については、外国人従業員が多く存在するNTTにおいて、その競争力向上のために規制の撤廃が検討されています。
これらの規制についての議論は、国際競争力と経済安全保障をバランスよく検討する必要があります。現行の外資規制の改善についても検討が進められており、国際的な状況に適切に対応するために検討が行われます。
2025年通常国会で、以下の項目に関する電気通信事業法の改正を進めることで担保措置に変えようとしています。
- ユニバーサルサービスの強化。 ユニバーサルサービスの手段や提供主体を拡充し、ラストリゾート責務を明確に規定します。また、通信事業者の退出規制についても検討します。
- 外国人役員の登用要件。 外国人役員の登用に関する要件を見直します。
- NTT東・西の業務範囲の規律。 NTT東・西の業務範囲について、例えばドコモとの統合を禁止するなどの規制を検討します。
- 通信インフラの責任主体。 通信インフラ、特に線路敷設基盤などの責任主体について、現行の規定から変更が必要な場合を検討します。
- 外資規制の補強。 外国資本による規制の強化を検討します。外為法令を改正する場合も検討の対象とします。
- 以下はわたしの意見です。
これらの法改正や措置を講じることで、NTT法の廃止、電話のユニバーサルサービス提供責務の撤廃、政府による株式保有義務の撤廃、外国人役員規制の撤廃、外資総量規制の撤廃、各種認可事項の撤廃などを実現するというのは妥当です。
しかし通信インフラ、特に線路敷設基盤などの責任主体について、現行の規定から変更が必要な場合を検討するという大変大掛かりなことをさらりと述べています。競合他社などの利害関係者はこの点に重大な注目をすべきでしょう。
わたしはこの線路敷設基盤云々はボトルネックの解消を指していると考え、後に述べる共同溝構想が解決のベースになると考えています。
とう道 誰も知らない地下空間
NTT地域インフラのボトルネック解消の切り札としてNTTとう道の共同溝構想を展開したいのですが、その前提としてとう道とは何かをご存知ない方が大多数と思われます。以下に説明したいと思います。
NTT局舎から局舎あるいは市内に伸びる通信ケーブルのトンネルで、人が通れるものをとう道と呼び、それから先は管路と呼ばれるパイプの中を通る。2メートル以上の高さを持ち、このとう道だけでNTT局舎間を歩行可能で、したがって東京の山手線を一周できるとの話をNTT元幹部の人から聞いたことがある。
都市伝説めいていて真偽のほどは不明だが、人口密集地帯の巨大なとう道を思い浮かべるとまんざらあり得ないことではなさそうだ。
地下の浅い部分にとう道を作る場合は、地表から掘って後に天井部分を埋め戻す「開削とう道」とするのが一般的で、トンネル部分は四角くなる。地下鉄のトンネルのさらに下を通るような深いとう道はシールドマシンで掘削することから「シールドトンネル」と呼ばれ、こちらはトンネルが丸型になる。この工法は真藤総裁が事故を防ぐために徹底させた工法だ。
とう道は非常に強固な設計がなされるため、地震を含めた防災の観点から信頼性が高い。とう道各所にはポンプが設置され、水を下水へとくみ出している。このほか、酸素濃度の低下、ガスの流入に備えた対策もされている。高さは5mほど。テロなどから通信インフラを守るためにも有効だ。
地下にケーブル類を埋める方式としては「共同溝」があるが、これは通信以外に電気やガスなど、異なる事業者ないし自治体が工事費用などを分担し、設置する。これに対し、NTTのとう道は、同社の通信ケーブル用。
日本で初めてとう道が作られたのが1926年で共同溝も同じ年に作られた。とう道の総距離は、全国で約1,000km(電力線等との共同溝を除くと総延長は600km)で、その先は「管路」が枝のように分かれ、さらに細い管が地上の電柱やビル、家庭へと続いている。管路の総距離は全国で約67万キロメートルで地球約16周半に相当する。40%が敷設から40年近く経過しているという、つまり老朽化している。
青山電話局のとう道見学
機会があり、米国大使館のスタッフや通信事業者の人たちと一緒に都内の青山電話局のとう道見学に招かれたことがある。管路の借用料金を巡ってNTTと米国通商代表部まで巻き込んでの交渉を続けていた時だから2002年の頃か。外資系の通信業者は都内の自前敷設工事に苦労をしていた。さりとて管路を借りようとすると再構築価格をもとに算出した料金を提示され料金が折り合わない。そんな交渉こう着状態の中での見学会だった。
地下約30メートルと聞いた記憶があるが途中までエレベータで降りていき階段をさらに降りると大きく頑丈なロックのかかった重い潜水艦風の防水壁(扉)からとう道に向かう。ドアを何回も通り抜けるとようやくとう道の入り口にたどり着く。そこはかなり広いスペースで蛍光灯が薄暗く灯り、冬でも寒くないと説明される。
「オペラ座の怪人」が住んでいそうなラビリンスな場所だ。とう道の中に入って頑丈なドアを閉められると、どんな大声を出そうが外部には一切声は届かない。間違って入り込み知らぬ間にロックされると次の巡回がくるまでは誰もこない。そんな想像をすると恐怖を覚えるような場所だ。
とう道内部はメタル線や光ファイバの束がうっすらとほこりをかぶってラックにとぐろを巻き、巨大な蛇のようにみえる。 かつて地下鉄の謎を扱った本を古書店で立ち読みしたことを思い出す。なにか秘密の地下路線が戦前にはあったとのストーリーだった。その本の信憑性はともかく、とう道も何か秘密のルートがあってもおかしくない、そんな想像をたくましくさせる場所である。
東京都下の市街地の地下約30メートル。薄暗いトンネル内部に設置された棚に整然と並ぶ太さ約10センチメートルの通信ケーブル。それが何十本も何百本も束ねられ、延々と伸びている。地上を忙しく歩く人たちは、自分の足下にこんな地下空間があるとは想像もしないだろう。しかし太さ約10センチメートルの通信ケーブルはいずれ光に取って代わられる。そのあとには巨大な地下空間が残される。
地域インフラ空間を共同溝機構に
わたしはかつて1980年代に経験した、NTT民営化当時の元気な日本、GDP世界2位の日本に戻ってほしいと子や孫の世代のために切に思っています。NTTの衰退と日本の衰退は因果関係があるのかどうかは明らかでは無いし特に半導体産業の衰退との因果関係は学者の詳細な研究に待つ他ない。
しかしNTTが力を発揮しきれないと主張するNTT法の責務を外してあげようではないかとも思う。責務を外して世界と五角に戦えるというのであればその企業姿勢を尊重し、否定から入らないで日本国民として応援しようではないか。
ただし以前として未解決の不都合な点である地域インフラボトルネック問題を双方で合意できる解決に持っていこうではないか、その上でお互いが思う存分に伸びていけば良い、それが1990年代以降にNTT再編成問題等で論争してきた一人としての偽らざる心境です。
自民党PTからNTT法を廃止する提案が出ており、個々の提案についてはすでに論評として述べてきたが、わたしが最大の関心を持つのは地域インフラに関する自民党PTの提案であり、以下の3案が挙げられています。
いずれも決定打にかける案だが今後の検討の叩き台として掲げたものと思われます。つまりこれを叩き台にして大いに議論してもらいたいとの意図が読み取れます。
1 公共性を保つ観点から国有化と委託案
NTTの通信基盤は、その公共性から国有化し、運営は通信事業者に委託すべきだとの主張があります。これにより、公共インフラの管理を確保し、競争環境を維持できると考えられています。
2 資本分離案
NTTの通信インフラと通信事業部門を切り離す提案もあります。これにより、競争環境が改善される可能性がありますが、技術革新や効率化の動機が低下する懸念も指摘されています。
3 現状維持案
NTTの現在の運営体制を維持すべきだとの立場です。これにより、設備の構築や管理が継続的に行われ、技術革新に対する刺激が保たれるとされています。
そして経済安全保障の観点も考慮しながら、NTTの通信インフラに関する将来の運営方法について早急に検討し、政府による決定を求める声に応えると結んでいます。経済安全保障の観点を考慮するとしているのは注目の言及であり、NTT地域インフラは国防上やテロ対策として極めて重要な施設であり、また外資へ流れるなどはとんでもなく危険なことだと認識している。
自民党PT提案は踏み込んだ具体的な方策までは言及せず今後の議論を待つとしているのですが今後はこの点こそ諮問委員会で重点的に議論すべきであり、40年来の地域インフラ課題解決の最後にして最大のチャンスだと考えます。この点についてはNTTも競合他社も国民の直接の利害に関することであり異論のないところだと思います。
Xで見られるような地域インフラの資産がどちらに属するかの果てしない不毛の論争は国民の望むところではありません。地域インフラは国民資産でもなければNTT資産でもない、双方が共有する不可分な資産だとの認識を持つことが極めて重要なキー概念だと思います。この聞き慣れない不可分資産についてはおいおい説明していきます。ここでは双方の共有資産であり、分けることができないものだと理解しておいてください。
わたしは1990年代より現場でNTT再編成議論に携わってきたがこの認識に立って議論した記憶がない、つまりこのことは誰も認識していなかった。地域インフラの資産論は国民の資産かあるいは株主の資産という不毛の議論としてあっただけだ。そして現在もその議論を引きずっています。
地域インフラは国民資産でもなければNTT資産でもない、双方が共有する不可分な資産だとの認識は電波資産とのアナロジーでも容易に辿り着きます。
基地局は携帯事業者の資産だが電波は国・国民の資産であり、そして電波インフラはこの有形・無形の資産が混じり合って不可分の資産となる。
同様にとう道などの地域インフラ空間も道路占用権と一体になって初めて有形・無形の資産が混じり合って不可分の資産となる。
競合他社が地域インフラは国民の資産だと主張することは2000年代初頭にかつて孫正義氏も主張し、のちに光の道構想では検討委員会のメンバーである町田氏に財務的な欠陥を指摘されてひっ込めた主張です。その後に資産論については議論される機会がないままに進まなくなった。そして現時点では心情的、情緒的な主張に聞こえる。これは地域インフラ資産論の検討が十分でなかったためであり、共有資産という観念が無かったからだと理解しています。
しかし地域インフラのうち道路占用空間はNTTと国の不可分の資産であり、共用資産であるという根拠に立てば国民資産でもあるという主張は正当になる。ただし従来の轍を踏まないためにはNTTが敷設してきたとう道や管路そして光ファイバー等の資産(有形資産)は純粋にNTT資産だと整理する必要がある。
混乱は競合他社がこの光ファイバー等の資産(有形資産)まで国民の資産だと主張しているように聞こえることにある。あくまでも無形資産である道路占有権つまり空間利用権が国の資産でありこの認識に立てば競合他社が国民の資産だという主張も一部の真理をついていたのです。
この認識に立って現実的な解である共同溝構想を提案したい。
すでに国土交通省などが日本全体の共同溝構想である情報ボックスを企画し進行中でありモデルはすでに存在しているので進めるのが容易だと思います。
新たな共同溝構想をこの情報ボックス構想と一体化させるか、あるいは総務省独自の構想として立ち上げるかあるいは独自の管理機構とするか選択肢は今後の検討課題です。これは自民党PTが提案するインフラの選択肢と合わせて検討課題にすることで検討が進むのではないか。以下に共同溝構想の利点を考えてみます。
・巨額の譲渡費用が発生しない。地域インフラのうち共有資産のみ(あるいはとう道構築部分も含むこともあるがこの場合譲渡費用が国に発生することもある)を譲渡して共通管理下に置く。
・電波と類似の管理期間として働く。共同溝管理機構で電波管理と類似の無形空間利用管理を行う。
・高度技術のモチベーションが阻害されない。NTTと競合他社がこの無形空間を共同溝管理機構から利用権として認可される。必要に応じて配分された無形資産の範囲で新たに開発が期待される。
IOWN(InnovativeOpticalandWirelessNetwork)のような新技術は、データ通信の基盤を一新し、次世代の通信インフラを構築する可能性を秘めているが、このような敷設を自社独自の判断で実施できる。
自動運転やスマートシティ構想実現のための競争には敷設競争も欠かせないが、共同溝構想はこの期待に応え得ると思います。
・共同溝のNTT所有光ファイバーは現行通りに電気通信事業法で料金面で適正に管理され利用が担保される。つまり競合他社は共同溝利用権を持った後も現行と同レベルの光ファイバーを安定して借り受けることができるという点が極めて重要になります。
資産の譲渡や巨額の譲渡経費が新たに発生しないことが非常に重要であり、借受も良し、自社設備もよしという、競合他社の経営に大きなショックを与えないことに留意しなければならないと思います。
以上がNTT法廃止議論を眺めていて試行錯誤の上に辿り着いたわたしの今後の地域インフラ・ボトルネック解消に期待する提案です。
大事な事は地域インフラは国民資産でもなければNTT資産でもない共有の不可分な資産だと認識することであり、資産論を抜きにした公益論だけで担保されるとかつてADSL華やかな頃の米国でも局内設備利用に当たってゲージ内工事が憲法違反の議論で反対されたケースもあり、競合から見ても担保が不安定だ。より担保性の高い無形資産保有の上での管理が最善だと思います。
続く