7月12日(月)
天塩川リバーサイドキャンプ場(連泊)歌登~枝幸~猿払~宗谷岬~稚内~キャンプ場

午前6時半。熟睡していたが、日射しの暑さにたまらず起床。快晴。今日も連泊の予定。
道東、道南は雨だという。宗谷岬の丘陵を目指して、8時半前後には出発。咲来峠から歌登、枝幸に抜けたとたんに霧。海沿いに北上していくと、やがて濃霧。温度も下がってきたようで、上着から冷気がばんばん吹きこんでくる。道端にバイクを停めてレインウェアの上だけ取りだして着ていると、宗谷方面からくるライダーはみな、レインウェアを着用している。宗谷地方も雨かと思ったが、ウェアが濡れている様子はない。たぶん、これから向かう道東に備えて着こんでいるのだろう。
天塩川リバーサイドキャンプ場(連泊)歌登~枝幸~猿払~宗谷岬~稚内~キャンプ場

午前6時半。熟睡していたが、日射しの暑さにたまらず起床。快晴。今日も連泊の予定。
道東、道南は雨だという。宗谷岬の丘陵を目指して、8時半前後には出発。咲来峠から歌登、枝幸に抜けたとたんに霧。海沿いに北上していくと、やがて濃霧。温度も下がってきたようで、上着から冷気がばんばん吹きこんでくる。道端にバイクを停めてレインウェアの上だけ取りだして着ていると、宗谷方面からくるライダーはみな、レインウェアを着用している。宗谷地方も雨かと思ったが、ウェアが濡れている様子はない。たぶん、これから向かう道東に備えて着こんでいるのだろう。
猿払小にある集落から猿骨にでる道を走ってみるが、当然だが建物などを見ても開拓当時の面影はない。猿払はもともと三井王子製紙の土地を政府が買い上げ、開拓の地にしたと聞いていたので、このあたりには製紙に使うような木が豊富にあったのだろう。今は村営の広大な牧場(約500ヘクタールもある!)が海沿いに広がり、天然のホタテの水揚げ高は日本一だと看板にある。
いつのまにか、霧も晴れ上がる。ハラ減ったなあと思っていると、238号沿いにぽつんと食堂が見えてくる。別練はライダーハウスになっているようだ。1泊1000円。ちょっと覗いてみる。1階はバイクが5~6台は駐車できそうな車庫になっていて、その奥に雑魚寝の6畳間。車庫の横が風呂場、洗面場、2階にも部屋があるようだ。階段下の物入れ空間の戸には「ヘルパー〇〇君の部屋」と張り紙がしてある。1畳ほどしかないようだが、一応個室だ。外に横浜ナンバーのバイクが停めてあるので、たぶん、そのライダーが食堂のヘルパーをやっているのだろう。
食堂の名前にもなっている「やませ定食」(1000円)を注文。ホタテづくしで、ホタテとタコの刺身。ホタテのマリネ、焼きホタテ(でかい)、毛ガニ入りのみそ汁、メシ、漬け物。天然ホタテ日本一の水揚げ高があるだけのことはある。新鮮でうまい。若い男性が給仕をしてくれたが、どうやら彼がヘルパーのようだ。
食後、宗谷岬から宗谷丘陵に向かう細い道を上り、4速、アイドリング状態で丘陵をトコトコ走り、満喫。稚内では、去年泊まった「さいはて旅館」などを眺め、半島一周。ホクレンの給油所がなかなか見つからないなあと思っていたら、40号を稚内市街地からやや下ったところで発見。稚内とスタンプしてある黄色い旗をもらう。
稚内から内陸部に走るにしたがって、空気がむっとしてくる。
音威子府に着くころには、Tシャツ1枚でも暑いくらいで、道の駅「おといねっぷ」に立ち寄るのも億劫になる。午前中の枝幸側の温度とはえらい違いだ。道の駅にはまったく客の姿はなく、トイレだけ借り、さっさと裏手の小道から立ち去ろうと道の向こうを見ると、パトカーが交差点手前に隠れるようにして停車している。「ネズミ取り」をやっているようだ。彼らは炎天下の下、じいっと辛抱強く息を殺して獲物を待っている。うしろからそっと近づいてエンジンをわんわん吹かし、ばばばと脇をすり抜け、信号無視して一気に走り抜けていく自分の姿を一瞬思い描くが、実際には教習所なみにゆっくり横を走り抜け、交通規則遵守で信号を左折。
と、数十メートルもいかないうちに、右手の全日食チェーン店前の歩道にいるライダーが手を振ってくる。
なんだ。なんだ。
パトカーでも追ってくるのかと思って、ミラーでうしろを確認してから、そのライダーをよく見ると、なんとHさんじゃないか。去年、糠平のキャンプ場で知り合ったセローのライダーだ。
「久しぶり。どしたの」
「留守電のメッセージ聞いてきたんですよ」
あ。そうか。忘れていた。
彼とは出発前に、メールのやり取りを数回やっていて、そのときにお互いの携帯電話の番号を教えあっていたのだ。午前中、今、天塩川キャンプ場にテント張っていると、伝言を入れていたのをすっかり忘れていた。でも、こんなにすぐにやってくるとは。4~5日たってから、道東あたりで再会するだろうなと漠然と思っていた。Hさんは昨日フェリーで小樽について、昨夜は糠平キャンプ場泊だったらしい。天塩川キャンプ場にテントを張って、買い出しにきたという。
じゃあ、今夜は飲もうということになり、酒をどこで買うかしばし相談。Hクンはもうこの店で仕入れたようだ。
「ワインだったら、セイコーマートのほうが安くて豊富にあるね」
数キロ先にいったところにセイコーマートがある。
「でも、酒がおいてあるかどうかわかりませんよ」
と、Hさんが忠告してくれる。
「看板の一番上に、ワインって書いてなかった?」
「ワイン?」
「ほら、wineって白抜きがあるところは、酒も扱っているんだよね」
「ええ! あれ、ワインって読むンですか。いつも、あれは変な模様だなって思っていたんですよ。そうなんだ。あれはwineなんですか」
ということで、自分だけセイコーマートに寄って、ビール4本、ワイン1本(380円)を買ってからキャンプ場に戻る。キャンプ場から温泉施設までは100メートルほど。Hさんがノーヘル、スリッパ履きでバイクを運転して入浴しに行ったので、自分も荷物をテントに置いてすぐにあとを追う。
「ここ、シャンプーありませんよ」
と、風呂場で会ったHさんにそう言われる。
去年、金山湖畔の風呂場でも、石けんがなく、だれかが残していった小瓶のシャンプーを石鹸代わりに使った苦い思い出がよみがえってくる。
「石けんもないんだ」
「いや、石けんはありますよ」
と、Hさん。
ん、もう。
石けんがあれば充分だ。自慢じゃないが、ここ10年以上シャンプーを日常的に使ったことはない。頭も身体を洗うのも、すべて石けんのみ。シャンプーなどビジネスホテルなどにたまに宿泊したとき、使うくらいのものだ。リンスなど1回も使ったことがない。自分の髪の毛と地肌にとっては、リンスなど幻の存在だ。だが肩まで髪を伸ばしているロン毛のHさんは、ちょっと残念そうな顔をしている。
露天風呂からは、視界を遮るものがほとんどないので、天塩川が眼前をゆったり流れるのを眺めることができる。外の湯は結構温いので、ゆっくりゆっくり気分だ。Hさんは7月30日の小樽発の便が予約済みだという。前方の景色が夕焼けに染まっていく時間がなんともいえない。
宿泊施設も整っている建物から、ノーヘル、ビーチサンダルでバイクを運転してキャンプ場に戻る。身体が火照っているので、顔と頭にに当たる風が気持ちいい。たったこれだけの距離だが、ノーヘル、ノーグローブ、サンダルで気軽に走るのは、精神的にもかなり開放される。でも違反は違反なんだ。
夜は、Hさんがもってきたドカシーをサイトの芝生の上に広げ、その上でささやかな夕食兼飲み会。Hクンは新兵器として、ウォークマンに超小型スピーカーを取りつけられるやつを持ってきていて、音楽のBGMまで演出してくれる。蚊が多いので蚊取り線香を焚くが、効果はほとんどない。ウィンナーを焼いてビールの肴にする。
しばらくして京都からやってきたアフリカツインのライダー、仕事を辞めて北海道を一周している四国出身のオフ車ライダー、X4に乗っている大田区のライダー(あとで親しくなるMさんだ)などが集まってきて、わやわやとやる。ライダーはこの5人だけだ。あとはサイトの外れに、蚊帳つきのでかいテントを張っているファミリーキャンパーがいるのみ。
「北海道は違う違うてみんな言うけど、実際、走ってみたら、奥飛騨あたりと景色はかわりゃせんじゃないの」
と、四国のライダーがぼやいたりするのを聞きながら、静かに夜は更け、満天の星の下、午後10時過ぎにはお開きとなる。

猿払川。自然のままの河岸。

宗谷丘陵。