日々、雑多な日常

オリジナル、二次小説、日々の呟きです。

久しぶりに二次を書いた 「蝕が起きましたが、巻き込まれたのは海客でした」

2022-01-30 09:42:00 | 二次創作

ここ数日、何も書いてない火が続いていたけど、書く意欲がなくなった訳ではない。
ハガレンの二次なんだけど十二国記とクロスオーバーさせた話を書きたい、設定とか色々と考えていたら時間がかかってしまった。
王になれば永遠の命だけど、それだと色々と背負うものも多いし自由がないので、海客だ。
ギャグ、ちょっとシリアスとか入れたい、でも恋愛部分もと思ってしまったわ。
オリジナルで中の人を書いたけど、やはりマルコーさんをじっくり書きたい。

 

 芳国(ほうこく)は初代に続いて二代目の王も失道ではないかという近隣諸国の噂に王たちは仕方のないことだと思って
いた、全ての国が繁栄し、平和であることなど有り得ないからだ。
 気の毒な事と口では言うが、それは表向きだ。
 芳国の麒麟は病にかかっているから表に出られない、国、そのものが、もう駄目ではないか、民は国に流れている、最悪ではという噂が流れて数ヶ月が過ぎた。
 麒麟が病にかかれば、国、自体が危うい、そろそろ一年になろうとしていた。


 「峯国の麒麟が祝祭に出たと、それは真か」
 
 その知らせに各国の麒麟たちは喜んだ、だが、王たちは、中でも巧州(こうしゅう)の王の胸中は複雑だった。

 「海客だと、まさか、あの王が」
 
 男の顔に浮かんだのは嫌悪だ、赤い髪、自分よりも若い女が王位についた事を知り、一度は殺そうとした、だが、叶わなかった。
 報告する男は首を振った、黒髪の海客だと。


 使令達の言葉を聞きながら陽子は苦笑した、三年前、慶国(けいこく)に来た海客が自分の知り合いだったことには驚いたものだ、彼女も自分のことを覚えていて、てっきり神隠しではと思っていたらしい。
 
 

 その日、陽子は数日前も小言を聞いたような気がすると思いだした。
 
 「主上、あの者にもう少し危機感を持つように仰ってください」

 それが誰の事を言っているのかわからない訳ではない、だが、あえて何のことだと聞き返した。
  
 「ご友人のことです」

 青年の口調は穏やかだ、だが、その表情に主である自分のほうが困ってしまった。

 わかっている、自分達の世界とは違う、国によっては言葉が通じない事もある、人を騙し、売り飛ばして、殺すなどということもある、だが、今回、使令達が危機感というのは妖魔に対してのこととかされて陽子は困った。
 偶然、遭遇した妖魔は一匹ではなかった、こちらが攻撃するのを彼女が止めたというのだ。

 「親子かもしれないから、見逃すようにと」
 
 使令の班渠(はんきょ)の言葉を聞いて、側にいた景麒(けいき)が諫めるように声を潜めた。

 「景麒、彼女には後で私から言っておく」

 青年は溜息を漏らした。

 「ところで、彼女との会話、言葉に不自由はないか」

 日本から来た彼女は、こちらの言葉を完全には理解できない、賓満(ひんまん)が憑りつけば言葉が理解できるのだが、彼女は、それを拒んだ。
 外国に来ているような気分になれる、残りの人生、毎日、何があるのかと思いながら生きるのも悪くはないと言われて、あえてそのままにしているのだ。

 「会話のときは手振りや身振り、かなり顔を近づけてきます、多分、こちらの表情を見ているのだと思われますが」
 「元々、近眼、目が悪いのもあるんだろうけどね、景麒、甘いと思うかもしれないが、少し」
 「そうですね、今回、峯国の麒麟に関しては感謝しています」

 病にかかった仲間の麒麟の事を思い出した青年は軽く頭を下げた。
 
 「以前から考えていた、ハルさんに手助けをしてもらいたい、私には味方が一人でも必要だ、楽俊に色々と教えて貰っているようだし」
 「官位をお授けになりますか」
 
 その言葉に陽子は驚いた顔で青年を見た、いいのかと。

 「その方が周りの目も少しは変わると思います、同じ海客だから王に優遇されていると思われては」
 「言われているだろうな、だが」
 
 ご存知でしたかと青年は困った顔で自分の主を見た。

 それから数日後のこと、蝕が起きた。


  
 逆転の国土錬成陣で賢者の石を作るのに人の命を使う事はないとわかっても、錬金術の仕組みというものは決して簡単なものではない。
 だから、シロウト丸出しの人間が石を作ろうとして、トラブルが起こってしまったのは、偶然が重なったとしかいいようがなかった。
 イシュヴァールで医師として働いていたティム・マルコーが、ロイ・マスタングからの連絡を受けてセントラルに来る事になったのも仕方のない事かもしれなかった。

 賢者の石の管理を軍が率先して行ってはどうかという意見が上層部から出たが、反対意見もあり、簡単にはいきそうはない、そんな最中に事件が起きた。
 錬成陣の――。

 「どういうことだね、理由を説明してくれないか」
 
 説明する相手の顔色は悪い、しどろもどろで聞いているマルコーの方が珍しく、内心、イライラとしてしまった。

 錬成陣から、消え入りそうな声で呟く相手に、マルコーは何を言っているのかといういう顔になった。
 
 

 案内された部屋に入ると中央には布がかぶせられた塊が見えた、近づこうとしても錬成陣の中に入れないんですと言われて、マルコーは声をかけた。

 「実は三日前から、あの状態で、あれが何かわからないんです」

 ぼそりと小声で呟く男の説明に、マルコーは呆れた顔になった。
 
 「スカー君、頼めるか」

 「ああ、だが、万が一の場合は」

 用心しながら近づくスカーが錬成陣に踏み入ろうとした瞬間、体が弾き飛ばされた、同時に炎が上がり、布の塊から炎が上がった。
 青い火だ、だが、瞬く間に消えると、そこには人が倒れていた。


 「蝕です、人災は」

 報告する景麒の言葉に海客が一人と言われて自分は今、どんな顔をしている、冷静になれと陽子は自分に言い聞かせた。

 「蘭(らん)を飛ばす、どこにいても、あの鳥ならハルさんのところにたどり着けるはずだ」

 
 

 


呪術廻戦 伊地知さんの、それは多難で、恋の始まりといえるのでしょうか?

2021-12-13 12:01:45 | 二次創作

 伊地知潔高、呪術高専東京校で補助監督をしているといえば聞こえはいいが、ようするに中間管理職である、今日も、また嫌みを言われるのかと思いながら向かった先は医務室だ、ところが。
 その後ろ姿に気づいたとき、誰だろうと不思議に思ったのは無理もない、両手に大きな袋を下げて歩いているが、足取りは速くはない、もしかして、医務室に向かうのだろうか。
 時折、よたよたとふらつきそうな足取りは下げている荷物のせいだろうか、見かねて、伊地知は声をかけた。
 すると振り返った相手の手から袋が落ちた。

 

 

 「家入さんのお知り合いでしたか」
 
 恐縮したように伊地知は頭を下げた、テーブルの上には色々なサンドウィッチやサーモスのボトルが並べられ、女が説明する。

 「アールグレイとウーロン茶、こっちはラプサンスーチョン、燻製の香りが強いから、ウィスキーみたいな感じ、ベーグルはショルダーベーコンとローストビーフとスモークチキンで」
 「ありがたい、流石だ、頼んで正解だ」
 「飲み過ぎはよくないから、とにかく、食事はちゃんと取って」
 「助かるよ、コンビニ、弁当屋の食事ってまずくはないけどね」
 「仕事が終わったら、これでもつまんで、燻製、チキンとチーズと」
 「作ったのか」

 そんなに手間はかからないし、簡単だよと笑う女の横顔を伊地知は不思議そうに見た、友人だよと素っ気なく紹介され、正直、えっと思ってしまう。
 
 「驚いたわよ、日々の食事に満足できない寝美味しいモノを作ってって、電話してきたときは」
 「いや、仕事が忙しくてね」
 「伊地知、あんたいつまで、そこに突っ立っているつもり、用が済んだら」

 とっとと仕事に戻れ、というより出て行けという視線に伊地知は、はっと我に返った。

 「あの、これ、よかったら、どうぞ」

 女からパンとマグボトルを手渡されて伊地知は驚いた。

 「いや、この男はうどんが好きだ、年中、そればかりだ、あんたの作ったものを、勿体ない」

 「しょーこちゃん、そんな言い方は上司の人に」
 
 とんでもないと家入は首を振り、あんたは人をよく見た方が良い、この男のどこが、上司に見えるんだと、ぶつぶつと呟いた。

 「気にしないでください、荷物を持ってもらったし、はい」
 「で、では、あ、ありがとうございます」

 受け取った瞬間、家入の視線に伊地知は逃げるように医務室を出た。

 

それから数日。


 「何だって、聞こえなかった」
 「あの、名前をお聞きしたいと、お友達の」

 空耳かと家入は呟いた。

 「この間のお礼をしたいと、携帯の番号でもいいのですが」
 
 家入は手を差し出し、金でいいと伊地知を睨みつけるように見た。

 「気を遣わなくていい、材料費として渡しておくから、一枚でいいよ、万札だとなおよろし」
 「あのー、無茶を言わないでください」
 「黙れ、一回の飯で餌付けされたか」
 
 なんですか、それ、餌付けって、伊地知は呆れたように家入を見た。

 「人妻に近づくんじゃない」
 「えっ、ひっ、人、つまって」

 すぐには返事が出てこない。

 「とっくの昔に旦那は亡くなったけどな」
 「わ、私は、そんなつもりは」
 
 じーっっ、本当かと言いたげに家入は伊地知を見た。

 「その、亡くなったというのは、事故、それとも病気か」
 
 老衰だと答えに、一瞬、へっと、気の抜けた答えを返した伊地知に、いい年だったしなと家入は、にやりと笑った。

 

 


ブラッドレイ、渋いオヤジに、ハグとキスはお礼です

2021-05-28 17:02:28 | 二次創作

 Chromeのエラーのせいでブログを新しくしました。

 ハガレンの二次です、現在、pixivとハーメルンで投稿しています。

 

 

 確か自分は取り調べを受けていたはずでは、だが、目が醒めるとベッドの中だった、しかもふわふわというか、まるでホテル仕様みたいでシーツも気持ちがいい、びっくりした。

 「起きたようだね、気分はどうだい」

 低音、響く、まるで映画俳優みたいな声に思わず視線視線を向けて体を起こす。

 「自分が今どこにいるかわかるかな」

 


 「だから、俺は言ったんだ」

 思いっきり机を叩いたのは元、大佐、いや、現在は大統領選に向けて必死に動いているロイ・マスタングだ、彼は怒っていた、以前から国家錬金術師の試験が厳しすぎる、これでは将来、その道を目指す人間がいなくなるのではないかと危惧されていた。
 試験の難易度を少し下げてはどうかという意見が世間だけではなく軍内部でも囁かれだしてくると放ってはおけなくなった。
 最初は、そんな不満など放っておけば良いという意見もあったが、それに反発する人間が現れた。
 試験に落ちた研究者崩れの人間だ、ただのシロウトなら良かったのだが、なまじある程度の知識があるだけにまずかった、失態を犯したのだ。
 真理の扉を開く事だけをすれば良かったのだが、そのときに障害、アクシデントが起こった。
 
 「関係のない人間がこちらに来た、つまり召喚というやつか」
 「巻き込まれたようです、しかも一般人、市井の人間です」
 「これは、そう、軍の管理体制が問われても仕方ないですな」

 おい、試験の難易度を下げると決めたのはおまえ達ではないかとマスタングは高官達の顔を見た。
 だが、手のひら返しというか面倒ごとは若者に任せる、これは試練だという目で周りは睨みつけてくる、自分一人が悪役なのかと思ったのも無理はないだろう。

 「実は帰還させる方法があったのですが、こちらに残りたいと希望する者もいて」
 
 まさかと高官達は驚いた、どんな理由かと聞くと男は少し困惑気味な顔になった。

 

 な、なんだとー、マスタングは心の中で絶叫したい気分になったのはいうまでもない。
 テーブルの上の書類は召喚された人間の報告書だ、性別、年齢、家族、今まで自分がどんな環境で過ごしていたのかという事が書かれているが、中には結婚の文字もあるしかも驚いたことに、サンバノ、ジェルソ、ダリウス、キメラの三人だ。
 性格にいうとこの三人は普通の人間ではない、合成獣、キメラだ。

 「おい、知ってるか、ジェルソさんなんか、嫁を二人ももらったらしいぜ」
 「おい、それって重婚とかじゃねえのか」
 「キメラだし、軍人ってこともあるから特別待遇だろ」
 「おれ、見たぜ、ありゃあ、どう見ても十代だろ、しかも二人とも可愛いんだよ」」
 「子供が早く欲しいってせがまれてるらしい、信じられねえ、美的感覚が違うのか」

 人間ではない合成獣の姿の方が可愛くて一目惚れだと街中で可愛らしい女の子に両腕を掴まれて歩いている姿を見たという話を聞いたとき、マスタングはそんな馬鹿な話があるかと思った。
 だが、軍の所内でばったりと遭遇したのだ。

 「これで、あたし達二人とも、ジェルソさんの嫁、ですね、子供も早く作りましょうね、お姉ちゃんは」
 「あたしは働く、ジェルソさん一人の給料だと大変だと思うのよ、将来の事も考えないと、子作りは任せた、サポートするから男の子、女の子、最低でも二人ずつ産んでね、子供ができたら一軒家も視野に入れてる、勿論、持ち家をね」
 「お姉ちゃん、そこまで考えているの、凄い、あたしなんか」
 「子供は若いうちに産んだほうがいいのよ、ねっ、ジェルソさん」

 ジェルソは喜んでいいのか、少し複雑な顔だ。
 二人の美少女は虫類大好きで子供の頃からトカゲや蛇をこっそりと可愛がる、いや、内緒で飼っていた、将来は大型の外国産の蛙や蛇を飼いたいと思っていた、ところが、飼育には許可だけでなく、厳しい検査が必要だった。
 だが、問題は他にもあった、二人の親がいないこと未成年、姉は19、妹は16歳、家庭環境の問題、親がいないというだけで、これではペットもだが、結婚もできないと思っていた矢先、突然二人は、見知らぬ世界に来てしまった、そこでジェルソを見て一目惚れ、恋に落ちたのだ、ペットではない、話すこともできる、しかも大きいのだ、どこかの錬金術師がデブと言ったらしいが、姉と二人を両腕に抱えてもびくともしない力持ち、しかも軍人、普通のサラリーマンよりは高給取り、これを逃す手はない。
 そして、自分達姉妹二人を嫁にしてと猛烈アタックの末、無事に結婚までこぎつけた。
 
 若い女の子に腕を取られて歩いているいる太った蛙男を見たとき、マスタングは自分の目を疑った。
 若くてイケメンの自分は恋人、彼女はいる、だが、それだけだ、結婚したら一人に縛られると思っていたからだ、だが、二人は反則ではないだろうか。
 
 大統領選、もうどうでも良くなってきたと思ったのも無理はない。
  

 

 「気分はどうだね」
 
 眼帯をした男性が自分を見下ろしていた。
 
 「あいにくと珈琲しかなくてね、すまない」

 手渡されたカップを受け取ると女は少し不思議そうな顔で男を見上げた、聞きたい事は色々とあるが、まずは飲んで気持ちを落ち着けようと思ったのかもしれない。

 「融通の利かないところがあってね、軍人というのは仕事熱心といえば、それまでだが、色々と状況を聞いているうちに君は」

 まるで警察の尋問みたいに色々と聞かれた事を思い出した、そして一番嫌な事を思い出して惨めな気分にになってしまった、泣きたくても、それもできなくて、机に突っ伏してしまって、それからどうしたんだろうと思って顔を上げて男性を見た。

 「その、恥ずかしいところを」

 ほんの少しの沈黙の後、女性なら無理もないという言葉が返ってきた。

 「君を元の世界に帰る事もできるらしいが、だが、そうしたくはないだろうね」

 「その、仕事辞めて、アパート引き払って」

 口からこぼれるように淡々と出るのは自分の話は赤の他人からしたら興味はない、つまりは他人ごとだ、だが、吐き出したいという気持ちがあったのかもしれない。

 「すみません、こんな他人の事情なんて」

 男はベッドの端に腰掛けると続けてと促した。
 
 「話した方が楽になることもあるだろう」

 「心機一転、新たにやり直そうと、つまり、仕事も男もアパートも引き払って、気分を変えようと旅行に行こうと思ったんです」

 「そうか、それで、今の気分はどうだね」

 訳が分からないうちに知らない場所に来て、警察、軍人に色々と質問されて怖いという気持ちになってしまった、だが。

 「今は、そんなに悪い気分ではないです」

 「ほう、何故だね」

 「愚痴を聞いて貰ったら、悩んだって仕方がないだろうって気分になってきました」

 ははっと男は笑った、それはいいことだと。
 
 「貴方がいい男だからですよ」

  
 何か困った事があったら軍の移民サポートセンターに来ればいいと言われて女は、ありがとうございますと頭を下げた。

 「ブラッドさんでしたね、軍人さんなんですよね」

 「退職したばかりなんだよ、だから、わかるだろう、周りの目が、用もないのにオヤジが来ているといいたげな」
 
 廊下を歩いているとすれ違う人たちが皆慰霊して頭を下げている、退職したというが、もしかして偉い人ではと思いながら女は隣を歩く男性を見た、貫禄があるというか、どう見ても下っ端の役人には見えないのだ。

 「色々とありがとうございました」

 自分の愚痴、たまっていた不満を吐いてしまった後、ブラッドレイと名乗った男性は色々な話をしてくれたのだ、殆どがオヤジギャルというやつだ、十代の少女なら訳がわからないとスルーするだろう、だが、三十路のアラサー、おばさんには丁度よかった、大笑いして腹が痛くなるくらいだった。

 「まさか、この年になって女性を泣かす事になるとは思わなかった」

 とブラッドさんのあっさりとした言葉を、それも真面目な顔でいうものだから、また笑いたくなった、これもギャグなんだろうか、ついさっきも涙が出るくらいオヤジギャグで大笑いしたばかりだというのに。
 軍人という事もあるだろうけど、廊下ですれ違う人は皆、背も高い、日本ではないんだと言うことを改めて実感してしまう。

 もうすぐ建物の外に出るというところまで来た。

 「ブラッドさん、色々とありがとうございます、愚痴を聞いてくださって、元気づけてくれて、何かお礼をしたいんですけど」

 旅行鞄には最低限のものしか入っていない。

 「気にしなくていい、移民もだが、君のような巻き込まれて来た人間は、これからが大変だ、礼などは」

 ブラッドさんは言葉を切った。

 「そうだな、この年になると男も図々しくなってくる、お礼のキスぐらいはいいかな」

 どこか楽しそうな笑顔だ、オヤジ、おじさんの笑い顔が素敵、可愛いと思えるのは自分もギャルや少女ではなくなったんだろうと思ってしまった。

 持っていたスーツケースを床に置いて、両手を伸ばすと大柄な男の体を抱きしめる、自分がハリウッド映画のボンッ、キュッ、ボンの女優さんみたいなら絵になるんだけど思いながらハグをした後、両方の頬にキスをした。

 

 「なっ、何やってんだ、あのオッサン」
 「引退したって言ってたけど」
 「非常勤じゃなかったのか」
 
 これを見ていたのは若い軍人だけではなかった、ロイ・マスタングもだ。
 
 木桜 春雨(きざくら はるさめ)性別女性、年齢36歳、年寄りは少し若く見えるらしい、日本人。
 真理の扉のアクシデント、錬金術師の不始末ということで、こちらに来ているのが殆どは女性らしいということが判明したのは後のことだ。