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旅の途中で

絵のこと音楽のこと本のことetc・・・趣味全開でスケッチスケッチ!

ギュスターヴ・モロー展

2005年07月31日 21時07分23秒 | アート
兵庫県立美術館で、今日まで開催されていたモロー展へ行ってきた。

モローは、ギリシャ神話や聖書の世界をどことなくオリエンタルなムードで描き、神秘的な魅力で飾った画家だ。
今回、生で間近で見て特に魅力的に思ったのは、彼の使う「白」の神秘性かな。
色調の抑えた茶系の画面の中で、神話の登場人物の肌の、なんとも言えない艶めかしい白さが目立つ。生き物の肌というか、陶器の白、大理石の白という方がその感覚に近い気がする。

例えば、人間に「火」を与えたために、岩場につながれ生きながらに鷲に肝臓をついばまれる、プロメテウスの絵がある。
そのプロメテウスの肌の白さ、肝臓をついばむ鷲の頭と目の白さが不気味に印象的だった。

「旅する詩人」という絵がある。ペガサスの足下で物思いに耽ってる感じの詩人が描かれているんだけど、この詩人の肌の白さは、ペガサスという空想の生き物と交流を持った生身の人間に、神秘性を与えているように見える。

もうひとつ彼の絵でおもしろいのは、具象的に描かれた画面の中に、線描で平面的に描かれた装飾模様だ。
女性達が横たわる絵がある。彼女たちは陰影もリアルに描かれているというのに、彼女たちの服には、細い筆でいかにも上から書き足したのがわかる模様が細かく加えられている。

それがなぜか全然不自然じゃなくて、それどころかそれが画面を引き締めて緊張感を与えている。すごい計算だなーと感心する。

モローの代表作といえば、「サロメ」を題材にした連作だろう。
ユダヤの王が、娘サロメの見事な踊りに褒美を与えると、サロメは幽閉されていた洗礼者ヨハネの首を所望する。
ヨハネは首を切られ、その首は盆に載せられてサロメに献上されるという血なまぐさい話だ。

傑作「出現」は、そんなサロメの世界をこれ以上ないくらいの完璧さで表している。
王宮の中で王や王妃の見守る中、宙に忽然と現れたヨハネの首(その首からは血がしたたっている)を、サロメが左腕で指し示している。
自分が殺させた男の首を見ても、ひるむどころか堂々とした態度で対峙するサロメは、血のしたたる生首よりも恐ろしい物に見える。

そしてこの絵にも、細かい線描で描かれた装飾文様が画面をより神秘的なものにしている。
この「出現」によって、その後の文学・演劇の世界で扱うサロメの世界観は大きく影響を受けたらしい。


この日は最終日だというのに、土曜日だというのに、美術館はがらがらだった・・・ってアンソール展の時にも同じ事を書いた気がする(笑)
ただ、子ども達が沢山模写にきていた。これはとてもいい企画だと思う。外国の美術館ではそっちゅう遭遇する光景だったが、日本でももっと積極的にこういう活動が広がればいいのに。

 なのに傘を持っていかず・・・

ジェームズ・アンソール展

2005年07月24日 13時44分24秒 | アート
三重県津市の三重県立美術館に、ジェームズ・アンソールの作品がくる!ということで、はるばる三重県まで行ってきました。
津なんて初めて降り立つよー。わ、素朴で緑が多くていい町だなー。銀行も緑に囲まれてるよーと、感動しながらてくてく歩いていくと、緑深い環境の中に、すっきりとしたモダンな外観の建物が見えてきた。 これが三重県立美術館だ。

おしゃれなフレンチレストランがあったり、2階の休憩所は壁一面のガラス窓に囲まれていたりと、なかなか快適な美術館だ。

で、メインのジェームズ・アンソール。
マグリットと同じくベルギーを代表する巨匠ではあるが、一般的にはマグリットほどの知名度はないでしょう(その証拠に、土曜だというのに美術館はがーらがらだった・・)。

「仮面の画家」と呼ばれた彼の絵は、ゆがんだ顔を持つさまざまな仮面や、ドクロ、悪魔といったグロテスクなモチーフが多い。
だけど、グロテスクでありながらどこか滑稽な表情には、見る者を引きつけてやまない。
それは多分・・・なんていうか、仮面は単なる仮面ではなくて、その下に血肉を持った人間が隠れているのが感じられるから・・・
人間の持つ嫉妬やどん欲や残虐が、仮面に現れているからだろう。

おもしろいのは、人間の暗い部分を描き出しながらも、決して暗くならないところ。
白やピンクを多用した色彩にもよるところが多いが、作者が楽しんで描いてる感じがする。

傑作「仮面の中の自画像」は、そのものずばり、おびただしい仮面に囲まれた自画像を描いているんだけど、見ているとうきうきしてくるというか、楽しげな音楽さえ聞こえてくる。
アンソールは自分の芸術を信じ、愛していたんだなぁ。

それにしてもマグリットといいアンソールといいデルヴォーといい、ベルギーの画家は独特な世界を持っているなぁ・・・

三重県立美術館には、もちろん常設展示室もあります。
これがなかなか充実している。軽く流すつもりが、出てくる作家がすごい!
三岸好太郎、小磯良平、梅原龍三郎、ダリなどなど。
夏休みだからか、子どもにわかりやすい説明がつけられていたのも良かった。

その後、津から一気に名古屋へ移動。知人と夕食を共にして、万博一色の名古屋駅周辺をひやかして帰った・・・疲れたけどいい一日だった・・・