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ドイツ語練習帖

マルと亀のドイツ語学習メモ帳

Peter Handke "Wunschloses Unglück"

2018-01-05 10:42:03 | ドイツ語いろいろ

この本の題名はなんだろう?なんかおかしくはないか?
気になったから日本語訳を見た。
「幸せではないが、もういい」という訳で元吉瑞枝氏が同学者から翻訳本を出している。
よけいに分からなくなってしまった。
「もういい」という日本語は、何かやけくそになっているときに使うような気がするからだ。
Unglück が「不幸」という意味なのは初歩のドイツ語で習うとしても
wunschlos というのはかなり難しい。
Wunsch が「望み」でlos が「ない」と分けて考えると簡単なのだが
この二つがくっつくと「望みがない」ではなく
「これ以上望めないほど」という意味になるらしい。
その上、この単語はたいていの場合、wunschlos glücklich sein と慣用句として使われる。
「何不自由なく充分だ」という意味になる。

ところがペーター・ハントケはこの本の題名をglücklich という形容詞ではなく
Unglück という名詞にしてしかもUn の付く反対語にしている。
直訳すると「望みようがないほどの不幸」ということになる。

元吉瑞枝氏によるとドイツ語を母語とする人たちは
「glück を名詞にして反対語にするという二重に転倒されている機微を一瞬にして認識する」
のだそうである。どんな機微なのだろう。
こう表現することでこのひねった慣用句が「ひどく不幸」なことを意味するのではなく
「不幸だけれども、いやいいんだよこれで」という意味になることなのだろうか。

ペーター・ハントケはドイツ語圏では重要な作家として常に注目を浴びているそうだ。
名前は知っていたが読んだことがなかったペーター・ハントケを
もう数年前のことだがドイツ語を勉強しているとき先生が「読んだことがある?」と聞いた。
それで慌ててこの本を購入した覚えがある。
だがゆっくり読む暇がなく今まで本棚の飾りになっていた。
この本はペーターが29歳の時に母親が51歳で自殺した時のいきさつを書いたものだ。

ドイツ語で書かれた本を原語で読むのは諦めがついたから日本語で読もう。
元吉瑞枝氏のこの日本語訳も読んでいて心地よさそうだから。
題名の解説だけでも面白かった。
ドイツ語ってやっぱり楽しい。

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