ダ・ヴィンチ作「岩窟の聖母」について・その1

2016-08-21 23:16:41 | 絵画

 

  こんにちは 

  実は今、とても気になっている絵がありまして、今日は少しその絵のことをお話ししてみよう

  かと思います。

 

  先月イギリスに行ったときにロンドンのナショナルギャラリーでレオナルド・ダ・ヴィンチ作

  という「岩窟の聖母」を見ました。

  という、と言いますのは、ナショナルギャラリーがそう主張しているのであって、世界の多く

  の専門家はダ・ヴィンチの真作ではなく、彼の弟子が描いたものであるという見解で一致し

  てきたのでした。

  ところが、ナショナルギャラリーの館長をしていたこともある美術史大家が真作であると主張

  して、説をどうしても曲げなかったと言われています。

 

  述べ遅れましたけど、レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452~1519)は皆さんご存知のように

  イタリア・ルネサンス盛期の芸術家。

  史上最高の画家と評されており、「モナリザ」や「最後の晩餐」「洗礼者聖ヨハネ」「受胎告知」

  等々の名画を遺しています。

 

  実は「岩窟の聖母」は同じ構図の絵が二作あり、もう一作はパリのルーブル美術館にあります。

  ルーブルのほうは、ダ・ヴィンチの真作であることが認定されています。

  ルーブルの「岩窟の聖母」のほうが先に描かれており、注文主の教会が祭壇画としては気に入ら

  なかったため、ナショナルギャラリーの絵が後からもう一度描かれました。

 

  今回ナショナルギャラリーの絵を見たときには、真作かどうかの論議があるとは知らずに見てい

  たのですけど、素人目にもこの絵には何か違和感が残りました。

  わたしは惚れ惚れするほどダ・ヴィンチの絵が好きで特に思い入れがありますので。

  皆さんの中にも「モナリザ」に憧れていらっしゃるかたは多いのではないでしょうか。

 

  ところが現地ガイドさんは、「これはレオナルド・ダ・ヴィンチが描いた未完成の作品です。

  絵を注文したミラノの教会が代金の支払い額を値切ってきたので、頭に来たダ・ヴィンチが

  手抜きをして描いた絵を渡しました。右側の天使の左手をご覧ください。最後まで描いていま

  せん」と、説明されました。  

  大英博物館やナショナルギャラリーのガイドさんはマニュアルをしっかり勉強して資格試験を

  クリアしている人たちだと聞きますので、ご自分の想像を述べたわけではないと思います。

  ナショナルギャラリーのマニュアル自体にそう書いてあるのでしょう。

 

  レオナルド・ダ・ヴィンチという人はとにかく完全主義者で、自分が納得できるまで描かないと

  気が済まない人だというのが定説ですし、つくづくと絵を見て、わたしもそういう人ではないか

  かと思ってきました。 

  「モナリザ」に至っては、手放さずに死ぬまで加筆を続けていたというのは有名なエピソード。

  その上、納得できない作品は自分で破棄していますので、ダ・ヴィンチのものは67歳で死去

  するまでに15作品くらいしか残されていないと言われています。

 

  そういう人が、どんな理由にせよ手抜きして描いて渡したりするものなのか・・?

  確かに絵描きさんの中には「パン絵」といって、納得できない作品でも生活(パン)のために

  描いて売ることもあるそうですけど。

 

  帰ってから早速調べてみましたら、今まで述べてきたような、ダ・ヴィンチの真作か弟子が描いた

  ものかという対立があることが分かったのでした。

  わたしも、この絵はダ・ヴィンチの真作ではなくて他の人が描いた作品ではないかと思います。

  

  ↓そのナショナルギャラリーの「岩窟の聖母」の画像です。

  カメラやパソコンを通していますので、色彩などは本物通りとはいかないのですけど。  

         

  ↑中央の女性が聖母マリアで、右の女性は天使ウリエル、聖母が肩を抱いている左の幼児が

  ヨハネで右の幼児がイエスです。幼児ヨハネは宗教画でヨハネを表す印(アトリビュート)で

  ある十字架と動物の皮の衣を身に付けて描かれています。

 

  ↓下は、真作と言われているルーブル美術館の「岩窟の聖母」。

  両方の作品はともに縦は約200cm弱、横は120cmくらいの大きな絵です。 

              
                           (Yahoo 画像より)

  わたしは前に一度ルーブルで見たことがあるのですけど、実物は全体的にかなり暗い画面で、

  岩が暗黒の運命のように重くのしかかっているという印象が強く残っています。

  今、画像を見ますと岩は恐ろしい運命の手のようですね。

 

  ↓両者を並べた画像がYahoo画像にありましたのでお借りしました。

       
             ルーブル美術館                 ナショナル・ギャラリー                     

  ↑二つの画像を並べてみますと絵画としての素晴らしさの違いは、歴然としていると思います。

  ルーブルのほうの聖母マリアは気品があり慈愛に満ちてこの二人の幼子を照らしているけれ

  ど、ナショナルギャラリーの聖母のほうは、疲れ切って憮然としたおばさんのように思えて

  なりません。

 

  申し訳ありませんが、この続きは次回にしたいと思います。一回では長くなり過ぎますので。

  是非またお出かけください。

 

 

                            

 

                    

   

 

  

                        

 


最新の画像もっと見る