皆さん、こんにちは
すっかり初夏らしくなりましたね。
今回は「葡萄の付いた吊り看板」の二回目、最終回です。
吊り看板に葡萄の飾りが使われているのは、ワイン・バーやワイン・レストランなど、ほとんど
がワインを置いているお店の看板でした。
葡萄は、「ワインを置いています」というサインになっているようでした。
↓下の写真は、ドイツの東部にあるライプツィヒの街です。
ライプツィヒには、まったくといっていいほど吊り看板が見当たらなかったのですけど、なんと
メドラー・パッサージュというショッピングアーケードの入口にようやく見つけました。
この吊り看板に葡萄が付いているのですけど、見えませんね、後で大写しの写真を載せますので。
実は、この吊り看板がただの吊り看板ではなくて、内容の濃い看板だったのです。
この吊り看板は、このアーケードの地下にある「アウアーバッハス・ケラー」という有名な地下
酒場の看板でした。
「アウアー・バッハス・ケラー」は文豪ゲーテ(1749~1832)がライプツィヒ大学の学生
だった頃に足繫く通っていた酒場だそうで、そこでファウスト博士と悪魔のドイツの伝説を耳にし、
劇詩(戯曲)「ファウスト」が生まれたということです。
ゲーテは生涯かけてこの長編劇に取り組み、ゲーテの代表作になったのでした。
「ファウスト」の中には、このお店も登場しているそうです。
「ファウスト」は演劇だけではなく後世、何度も映画になり、オペラや交響曲にもなっていますし
手塚治虫も漫画本「ファウスト」を書いていますので、ご存知のかたは多いかもしれません。
「時よ止まれ、お前は美しい!」という有名な言葉は、「ファウスト」の中の台詞です。
↓下は、その吊り看板の拡大。葡萄が下がっているのが見えますでしょうか。
左の人物がファウスト博士、右が悪魔のメフィスト。「ファウスト」の登場人物です。
神がファウスト博士の気高さを誉めますと、悪魔のメフィストは、ファウスト博士を必ず誘惑し
堕落させてみせる、と神に宣言をします。そして博士を誘惑するために近づいているところ。
↓下も、「ファウスト」の登場人物です。
ファウスト博士は悪魔メフィストの誘惑に乗り、若返ることを所望し、青年になります。
左が青年になったファウストで、右が見染めて愛し合うようになった恋人グレーヘン。
グレーヘンは、最後は気が狂って殺人を犯し刑務所に入り自殺するという悲惨な運命に。
↑看板に「Auerbachs Keller」(アウアーバッハス・ケラー)と、お店の名前が書いてあります。
Keller (ケラー)というのは地下酒場のことで、ドイツの酒場はほとんどがKellerです。
吊り看板に葡萄が付いていますので、ビールではなくてワイン酒場。
↓ペアの吊り看板を眺めていますと「ファウスト」の世界に入ってゆくような。
このショッピングアーケードに入ってゆきますと、地下に降りる階段の傍にファウスト博士と
悪魔メフィストの像が立っていました。
お店はちょうどこの地下にあり、右の壁に「Auerbachs Keller」というお店の名前が。
お店にはレストランと、ゲーテが通った歴史的酒場があり、酒場の壁にはファウストの場面が描
れているそうです。
↓下の写真は、その「アウアー・バッハス・ケラー」の店内。レストランのほう。
(Yahoo画像より)
↓下は、ゲーテがよく飲みにきた店内の歴史酒場のほうの壁絵。
左の赤い人物が悪魔メフィスト、その横の軍服の人物は若き日にここを訪れた森鴎外。その後方
にファウスト博士。右の羽織袴の人物は後年の森鴎外。鴎外はファウストの日本語訳をしました。
(Yahoo画像より)
↓下も同じく壁絵です。悪魔メフィストと皇帝。
(Yahoo 画像より)
さて、「ファウスト」の結末ですけど、ファウストは繁栄しますが精神は堕落への道を辿りあげくの
果てに失明してしまいます。悪魔メフィストの勝利?
ファウストの死の間際に、先立っていたグレートヘンの天上での必死の祈りによってファウストの
魂は悪魔メフィストの手中に落ちることはなく、天上へ上ってゆき救われて終わります。
↓旧交易会館前の若き日のゲーテ像。「アウアーバッハス・ケラー」に通っていたころの姿。
ライプツィヒはドイツの真ん中辺りを東から西へ走っているゲーテ街道の起点あるいは終点の街。
ゲーテ街道はライプツィヒ→ワイマール→フランクフルトと、ゲーテゆかりの街を結んでいます。
ワイマールとフランクフルトについては以前に、このブログでご紹介しています。
ライプツィッヒはまた、作曲家のバッハが活躍していた街。音楽の街としても広く知られています。
始まりからいきなりファウストの重いお話になってしまいましたけど、次はのどかな田舎町。
ドイツ西部のライン河沿岸にある葡萄とワインの生産地、リューデスハイムです。
陽当たりのよい丘陵地は葡萄畑。
醸造した葡萄酒は昔から、貨物船でライン河を通って運びました。
さすがに葡萄の吊り看板がたくさんあり、過去にも何度かこのブログで取り上げてきた街ですので
詳しくは省略しますけど、看板だけではなく外壁や窓枠に至るまで葡萄の装飾がありました。
↓葡萄はまるでこの街のロゴマークのようでした。
↓下は、葡萄畑です。正面に見えている塔は昔の小さなお城。
リューデスハイムでは、夏にはワイン祭りが盛大に開かれ、各国からお客さんが集まるそうです。
ワイン女王を選ぶコンテストもあって、それは盛り上がるということです。
以上で、「葡萄の吊り看板」を終わります。