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~ナースえいや三十にして立つ~
アメリカでCNA→ICU RN→NP

出産レポ③麻酔科医の重要性

2018-08-27 06:00:03 | 【アメリカ】2人目妊娠出産
前回(出産レポ②)の続きです。


③脊髄くも膜下麻酔の失敗

L&Dの手術室へ入り、手術台の上に乗ると
麻酔科医から麻酔の説明を受けました。
ここで初めて麻酔科医と対面。
手術着の帽子とマスクをしているので
顔全体は見えないけど何となく若そうな印象。

麻酔を打つ時は麻酔科医に背中を向けた状態で
手術台の上に座り背中を丸めなければいけません。
お腹が大きいから少し辛い体勢ではあるけど
Dr.Bや担当ナースが前に立って支えてくれたので
そこまで大変ではなかったかな。

麻酔のカテーテルを入れる時は
電気ショックのようなビリっとする痛みが走ります。
今回はSpinal Block(脊髄くも膜下麻酔)だけど
前回のEpidural(硬膜外麻酔)の時も同様に
電気ショックのような痛みがあったのを覚えてます。

スパイナルとエピデュラルの差は
カテーテルと麻酔を入れる場所が違います。
また、スパイナルは麻酔の効きが早く即効性があるのに対し
エピデュラルはじわじわ時間をかけて麻酔が効き始めます。


スパイナルは脊髄の中、エピデュラルは脊髄の外に入れます

スパイナルのカテーテルが脊髄に入り麻酔を注入。
まだ感覚のあるうちに手術台で横になったんですが
待てども待てども麻酔が効かず(・・;)
足は普通に動かせるし
胸から下の感覚も普通にあります。
尿道カテーテルが入れられたのもバッチリわかりました。
痛みの感覚の有無を調べるために
麻酔科医が何度も注射針でお腹や足をつつくけれど
普通に鋭い感覚があって明らかに麻酔が効いていない。
10分以上待っても何の変化もないので
入っているカテーテルを抜いてやり直すことに。

2回目のスパイナルを待っている間
麻酔科医が携帯をいじって
私に適切な麻酔量を調べてたんですが
最終的に



やり直してもう1度麻酔を入れると
麻酔量の上限を超えて危険なので出来ません
全身麻酔に切り替えるしか手がありません




と言うではありませんか!?(´⊙ω⊙`)
ちょっと補足しますが
麻酔量は体重をもとに決められます。
私の体重だと入れられる麻酔量の上限が少ないらしく
2回目は出来ないと判断されました。

ここでね、私、すごーーーく(×100)考えました( ̄^ ̄)
多くの方がご存知の通り私はICUナースです。
医療知識があるし
たくさんの患者さんのケースを見てきています。
簡単な手術で植物人間状態になったり
最悪の結果になったケースを知っています。

手術中の患者管理って大きくわけると2つあって
1つはメインの手術。
骨折の手術だったら外科医が行う骨を直す行為。
帝王切開だったら産科医が行う開腹手術です。
もう1つは患者の全身管理で
心拍や血圧などのバイタルサインの管理を指してます。
これは麻酔科医が行うことです。
麻酔科医って麻酔を管理するだけじゃなくて
バイタルサインの管理もするんです。

麻酔科医が血圧や呼吸を安定させているからこそ
外科医や産科医は
集中して本来の手術に取り組むことが出来るんです。
心拍数や血圧が不安定(=命が危険)であれば
手術そのものを行うことが出来ないので
手術中における麻酔科医の役割は大きいです。
ちょっとしたサインを見落としたばかりに
バイタルサインが乱れて上手く全身管理を行えず
心肺停止に陥ってしまうケースもあります。

手術の難易度にかかわらず
自分の担当麻酔科医が
どういう人なのか見極めるのはすごく大切



思わぬ出来事に的確に対処する船越先生(麻酔科医)


麻酔科医の役割は大きいです

話を戻して...
スパイナルが失敗に終わり
麻酔科医曰く「もう全身麻酔しか道がない」。
ここで
 本当に全身麻酔しか選択肢はないの?
 他に違う方法があるんじゃないの?
 他の麻酔科医であれば違う方法を提案するのでは?

と思ったけれども
この麻酔科医が私のケースを担当している限り
残された道は全身麻酔しかありません( ´_ゝ`)

もちろん拒否することも出来ます。
でも全身麻酔を拒否するということは
 ・帝王切開の中止
 ・再度手術のスケジュールを調整しなければいけない
 ・Dr.Bのこの後の予定に影響が出る
 ・他の麻酔科医を手配しなければいけない
 (でも来てくれる麻酔科医がいるのかは不明)
などなど、色々な影響が出てきます。

私に「嫌だ」と言う権利はある。
でもそうすると各所に影響が出る。
すごーーーく悩みました(-᷅_-᷄๑)

また、全身麻酔のリスクもあります。
全身麻酔でもほぼ確実に
次女は安全に産まれ私も無事でいられるでしょう。
でも100%ではない。
絶対に安全なお産はありえない。
ものすごーく低い確率だけど
想定外の結果になることも充分ありえます。



では、手術中に何か起こった時どうなるか?
ここで私には絶対なる確信がありました( ̄^ ̄)





この麻酔科医に危機的状況を管理する能力はない

何かあったら殺されるな( ̄ー ̄ )



と。
こういうのって直感でわかるんですよね(´-ω-`)
微妙なバイタルサインの変化をキャッチして
危機的状況に陥るのを未然に防いだり
危機的状況になった時に
迅速かつ的確に全身管理することは
この医師には出来ないだろうな、と。
何かあった時に他の医師なら救える命も
この医師では殺される助からない
だろうな、と。
そして、私が助からなければ
お腹の中の次女も命を落としたり
重い後遺症が残る可能性があるんだろうな、と。

エピデュラル入れるのに1時間かかる医師。
エピデュラルを5回も入れ直す医師。
(↑知り合いの産婦人科医に後日聞いた話)
エピデュラルとスパイナルを続けて失敗する医師。
麻酔科医の技術としては出来て当たり前のこと。
それが出来ない医師に
経験がものを言う危機的状況管理が出来るとは
とてもじゃないけど思えないんですよね。
これはナースにも同じことが言えるのでよくわかるんです(・ω・)ノ

そんなわけで
時間的には短時間(ものの1分)だけど
自分の中で葛藤&議論を繰り広げた結果




















全身麻酔による帝王切開を了承しました





驚きました?
ここまで「殺されるかも(゚д゚lll)」なんて書いたら
「この麻酔科医クビ!」なんて言いそうな流れですよねー(^-^;)
でも、リスクとベネフィットを天秤にかけて導いた結果です。
全身麻酔にGOサインを出した理由としては
 ・手術拒否したら各方面に迷惑がかかる
 ・手術中に命の危険に陥る可能性はとても少ない
 ・手術は何事もなく終わる可能性が高い
 ・私も次女も無事に生きていられる可能性が高い
 ・経験豊富なDr.Bを信頼している
などでしょうか。
99.5%何事もなく手術が終わり
手術中に何か起こる可能性は限りなく少ない(0.5%)

と自分の中で「大丈夫だろう」という気持ちが勝りました。
(99.5%と0.5%という数字は私の直感的な数字で
 学術的根拠のある数字ではないのでご注意を)
「まさか自分に起こるはずはない」とは全く思ってないけど
「何かが起こる可能性は少ない」のが現実です。

もちろん、麻酔科医を全面的に信頼していないので
自分と次女の命に対する一抹の不安はありましたが
思い切って予定通り帝王切開を受けることになりました。


次回(出産レポ④)へ続く。



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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Hit-chanさん (えいや(管理人))
2018-09-11 23:30:08
アメリカの医療現場って怖いです。このブログで時々言ってるけど、担当医師や担当看護師の患者マネジメントの仕方によって命が左右されるので、私は「病院(Acute care hospital)に行ったら殺されかねない」と常々思ってます。そして今回がまさにそうなりかねないケースだったんですよね。

携帯で麻酔量を計算したのは、一見「えっ?」と思うかもしれませんが、みんな同じ量の麻酔を投与されるものではなく1人1人違うので、正確な麻酔量を確認する(=安全性を保つ)という点において、この行動は正しかったと思います。
返信する
めちゃくちゃ怖いんですけど。。。 (Hit-chan)
2018-08-31 00:54:57
具体的な事は分からなくても、麻酔科医の重要さは何となく知っていました。それなのに、こんな風に色んな部分で頼りない場面があると、本当に不安になりますよね。私の中では、携帯で麻酔量を調べている時点で「ちょっと。。。」って思っちゃいます。「あなた、命を預かるプロなのでは??」って。

それに、命にかかわるとても大切な決断を、えいやさん、ギリギリになって、短い時間で決断されて、難しかっただろうなぁと思いました。

何より、今現在、赤ちゃんもえいやさんも大丈夫だと分かっているから、まだ安心してこの出産レポを読めていますが、これが進行形だったら、ちょっとパニックになってしまいそうです。
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