二人は昼食を外で食べようと、再び車で海沿いを走った
まだ少し行楽シーズンには早いせいか、何所もひっそりとしている
海岸沿いにあった小さなカフェで少し遅いランチを済ませ
そのまま海岸を散歩することに
二人、手を繋ぎながら波打ち際をゆっくりと歩く
潮風が心地よく頬を吹き抜け、通り過ぎて行く。
あなたは私の手を握りしめ、潮風を全身にうけながら
ずっと遠くの地平線を見ている。
そんなあなたの遠い瞳に少し寂しさを感じ、繋ぎあう手に力を入れ握り締めた。
「ん?・・・」
私のほんの少しの不安に気が付いたのか、私の顔を覗きこみ
大丈夫だよと笑顔を向ける。
こんなに笑顔が暖かい人だなんて・・・
私だけが知っているあなたね・・・
さっきまでの不安な気持ちが、その笑顔でぱっと消えた。
「何だかここだけ時がゆっくりと流れているみたい・・・」
「あぁ、本当だね・・・」
「私達、毎日忙しい過ぎるのかも・・・」
「確かに・・・忙しすぎてこうしてジニョンとゆっくり出来る時間がなかなか取れない」
あなたは少し寂しそうに呟く
「ねぇ、今日はこのまま何もしないで、こうして海を眺めていましょうよ」
「そうだね、思いっきりゆったりと過ごそう」
二人は砂浜に寄り添うように座った
波が白い泡となって寄せては反し、波の音がまるで子守唄のように心に響く
こうして愛する人のそばに要られれば、他には何も要らない・・・
ジニョンは子供の頃のことを思い出していた
小さい頃何度も読んだ物語・・・
「ドンヒョク、 難破船の少年 って言う物語知ってる?」
「いや、知らないな」
あなたでも知らないことがあるのね・・・
「その物語がどうしたの?」
「ちょっと思い出したの・・・海を見ていたら・・・」
「どんなお話?」
私は何度も読んだそのお話を、記憶をたどりながら思い出してみた
「客船に乗り合わせた少年と少女が出会うところからこの物語は始まるの。
少年は孤児だった、少女はそんな孤独な少年に恋心を抱くの。
ところが何日目かで突然嵐が訪れ、船は木の葉のように海の上でゆれ続け、
激しく揺れる甲板の上で少年が頭に怪我をしてしまう。
少女は自分の服を破り、怪我をした少年の額に巻いてあげた。
少年もそんな優しい少女のことを好きになっていたのよ。
でも、嵐はますます激しさを増していった。
嵐に飲み込まれて、やがて船が沈没しようとする時に、
一隻の救命ボートから、あと一人だけ乗れるぞと言う声が聞こえ、
少年は少女を海へ突き落としたの。
・・・少女はボートに救出された・・・
沈没してゆく船の上から少年が手を振っているの・・・
・・・さようなら・・・そう言いながら・・・
少女はその時気が付いたの、少年は死を選んで少女を助けたんだと・・・
少年の愛と、その愛によって助けられた少女の悲しいお話・・・」
ジニョンは話しながら、涙がでそうになった。
愛する気持ちが分かる年齢になって、改めてこの物語のせつなさが
痛いほど分かる気がする。
「少女は、手を振りながら沈んで行く少年を
どんな気持ちで見つめ続けたのかしら・・・
ドンヒョク?あなたがその少年だったら・・・
あなたなら、どうする?」
あなたは私の肩を抱きながら、とても静かに答えた。
「簡単だよ、ジニョン・・・ 僕だったら絶対にその少女を放さない」
そう言うと再び私をきつく抱きしめた。
涙が溢れ出す・・・
そうね、私もそうするわ・・・子供の頃に感じていた、この物語への違和感
その答えが今はっきり解った。
自己犠牲なんて嫌、愛してるのなら・・・愛しているのなら離れちゃだめ
残されたこの少女はきっと、ずっと心に痛みを抱えて生きていったはず・・・
隣にいるあなたが真っ直ぐに私の顔を見つめていた
海の底より静かな、その瞳で・・・
「ジニョン、愛しているから・・・・
愛しているから、僕から離れないで・・・」
あなたの大きな手がそっと私の涙を伝う頬に触れる、
そして涙の跡に優しく唇を寄せる・・・
************************
やがて辺りが夕焼け色に染まりだした。
二人は暗闇に変わるまで寄り添いながら、日が沈んでいく海を眺めていた
「暗くなっちゃったね、そろそろホテルに戻ろうか?」
「海が・・海がこんなに黒いなんて・・・・何だか吸い込まれそう・・・・」
あなたは僕にもたれ掛りながら呟く
ジニョン・・・一人じゃないよ・・・隣を見て
いつでも側に僕がいることを思い出して・・・
あなたの腕を引き寄せ、立たせると優しく抱きしめた
「さぁ、ホテルへ帰ろう」
微笑むあなたの肩を抱きながら、再び寄り添い歩きだした
「おなかすいちゃった・・・」
あなたの一言で二人は笑い出し、ホテルに戻ったら何を食べようか
その話題であなたは張り切りだす
ジニョン・・・僕は何が食べたいか、もう決まっているんだ
でも、今そんなこと言ったら、きっとあなたは顔を赤くして怒るんだろうな
ちょっと先につまみ食い
何を食べるか悩んでいるあなたの唇に熱いキスを一つだけ・・・
驚く顔がとっても可愛い、僕のジニョン
さぁ、戻ろう・・・・
僕はあなたの手を掴み走り出した。
駄目なんですよ、一人助かるなんて一緒でなくては、
それは愛では無いんですよね、繋いだ手強く握って欲しいです、いつもシニョンが羨ましいわ~ ホテルで食べるって?!もしかして?
駄目だ~いけないこと考えてしまいました
このお話を進めている時に、ふっと思い出したんです。
子供の頃寝る前によく読んでいた本。
人のために死ねるのか?
子供の頃はそんな風にしかこの本の内容を捉えてなかった。
でも、大人になって思い返すと、それだけじゃないような気がしました。
次のⅢは大人の色がかなり濃いので、ここに載せるのを躊躇していたんですが、が、やっぱり載せちゃいます。。
私の中の大好きなドンヒョクとジニョンだから。
私、昔から「フランダースの犬」とか「人魚姫」が嫌いなんです。子どもが読むのに主人公が死ぬ。ありえません!!最後に天使が来たって騙されるもんか!生きて幸せになってこそなんです!!だから子供にも見せてません。でも、ディズニーの「リトルマーメイド」は海の泡なんかにならず王子と結ばれるので見せてます(笑)
死んで花実が咲くものかって想いが強いの。
ドンヒョクssiの考え方は凄くいいですね!
感動しました!!
さ、鼻栓用意して3章に・・1章でバケツ一杯出た鼻血。3章では・・・・風呂釜一杯くらい出るかも・・。
とっても怖いお話だと子供心に記憶に残っていました。
その本の絵は沈んでいく船に手を振っている少年と、老人が乗っていたの。自ら残ると言った人達。
誰かのために犠牲になるって事が怖かった。
私は自分が可愛いから
ドンヒョクなら、ジニョンと一緒に生き残る道を探し出したと思う。
二人で生きていく道を。