はじまりの物語。
 | 大人は泣かないと思っていた (集英社文庫) 寺地はるな 集英社 |
ストーリー
「こうあらねばならない」の鎖を解いてくれる。それが寺地さんの描く物語だ。──こだまさん（エッセイスト）
真夜中の庭で出会った二人の、はじまりの物語。
時田翼32歳、農協勤務。九州の田舎町で、大酒呑みの父と二人で暮らしている。趣味は休日の菓子作りだが、父は「男のくせに」といつも不機嫌だ。そんな翼の日常が、真夜中の庭に現れた＂ゆず泥棒＂との出会いで動き出し……（「大人は泣かないと思っていた」）。小柳レモン22歳。バイト先のファミリーレストランで店長を頭突きしてクビになった。理由は言いたくない。偶然居合わせた時田翼に車で送ってもらう途中、義父の小柳さんから母が倒れたと連絡が入って……(「小柳さんと小柳さん」)ほか全7編収録。恋愛や結婚、家族の「あるべき形」に傷つけられてきた大人たちが、もう一度、自分の足で歩き出す──色とりどりの涙が織りなす連作短編集。
翼を取り巻く人物たち、それぞれの視点から描かれる短編ドラマ。読後はとても充実した気持ちになります。
寺地さんの描くドラマは、いつも沁みるんだな…
日常で自分に重なるところがどこかしらあるので、今回もちょっと胸が痛むようなことや「わかる…」という部分がけっこうありまして。特に田舎に住んでいる者として経験のある、“田舎あるある”が見事にその通りで。
翼君の友人・鉄腕の父親がさ…ほんっとこういうイライラするような人いるよな！っていう人物描写。でもこういう人にでもちゃんと理由があって、長年「こうあるべき」という頑丈な鎧をまとっていたら、それがそのまま自分になっちゃっているんだろうなって。それを脱ぐのは容易ではない…。
たいていの大人は「こうあるべき」って縛られがちよね…そこから解放されたらどんなに最高か。はじまりは小さい一歩かもしれないけれども。
翼君がお母さんに連絡できていますように。
鉄腕がいつまでも翼君と小柳さんの良き理解者・味方でいてくれますように。
（鉄腕くんが何気に一番好きな人物でした）
今年、寺地さんの新刊けっこう出ていますよね。SNSをフォローしていて情報だけは入ってきます。私は文庫本派（kindleだと紙を捲る楽しさが味わえなくてやっぱ苦手）なので、読めるのはもう少し先だなぁ💦
