リートリンの覚書

日本書紀 巻第十三 雄朝津間稚子宿禰天皇 十一 ・木梨軽皇子の禁断の恋 ・木梨軽皇子の罪


日本書紀 巻第十三 
雄朝津間稚子宿禰天皇 十一

・木梨軽皇子の禁断の恋
・木梨軽皇子の罪



二十三年春三月七日、
木梨軽皇子(きなしのかるのみこ)
立てて皇太子としました。

容姿が佳麗(きらきら)し、
見る者は、自ずと感じました。

同母妹の
軽大娘皇女(かるのおおいらつめのひめみこ)
もまた艶妙(かおよし)でした。

太子は、
恒に大娘皇女と合わせたいと
おもっていました。

罪であることを畏れて黙していました。

然るに、
感情(こころ)は既に盛り、
殆ど将に死に至りそうでした。

ここをもって、
徒(あだ)に空しく死にゆくよりも、

ただ、
罪在りとしても、

どうして、
たえ忍ぶことができるだろうか、
と思いました。

遂に、
ひそかに通じました。

乃ち、
悒(うれ)える思いも少しやんだので、
歌って、

あしひきの 山田を作り
山高み 下桶(したび)を走(わし)せ
下泣きに 我が泣く妻
片泣きに 我が泣く妻
今宵こそ 安く肌触れ

二十四年夏六月、
御膳の羹(あつもの)の汁が氷を作り
凝(こご)りました。

天皇があやしみ、
その理由を卜(うらな)わせました。

卜者(うらへのもの)は、
「内の乱れがあります。
思うに近親相姧ではないでしょうか」
といいました。

時にある人が、
「木梨軽太子が、
同母妹(いろも)の軽大娘皇女
姧(おか)しました」
といいました。

よって、推問すると、
その言葉は既に実でした。

太子は是、
儲君(ひつぎのきみ)のため、
刑することはできませんでした。

則ち、
そこで軽大娘皇女を
伊予に移しました。

この時、
太子が歌って、

大君を 島に放り
船余り い還り来ぬぞ
我が畳斎め 言をこそ 
畳と言はめ 我が妻を斎め

また歌って、

あまだむ 軽乙女
いた泣かば 人知りぬべみ
幡舎(はさ)の山の 鳩の
下泣きに泣く



・徒(あだ)
実を結ばないさま。かいのないさま。むだに
・悒(うれ)える
気がふさぐ
・羹(あつもの)
吸い物



(感想)

允恭天皇23年春3月7日、
木梨軽皇子を立てて皇太子としました。

容姿がキラキラと光輝き、
見る者は、
自ずと感じました。

国会図書館蔵書、
慶長15年(1610)出版の日本書紀
にふりがなが記されていて、
キラキラとありました。

その時代でも、
キラキラが使われていたと知り、

思わず、ニンマリ。

同母妹の軽大娘皇女もまた
艶やかで美しいひとでした。

太子は、
つねに大娘皇女と交合したい
と思っていました。

しかし、
それが罪であることを畏れて
黙っていました。

しかし、
心は既に頂点まで達していて、
まさに死んでしまいそうでした。

そこで、
実を結ばないままに空しく死にゆくよりも、

それが、
たとえ罪であったとしても、

どうして
たえ忍ぶことができるだろうか、
いや出来ない
、と思いました。

遂に、
ひそかに情交を結びました。

乃ち、
気がふさぐ思いも少しやんだので、
歌って、

あしひきの 山田を作り
山高み 下桶(したび)を走(わし)せ
下泣きに 我が泣く妻
片泣きに 我が泣く妻
今宵こそ 安く肌触れ

訳・
あしひきの 山田を作り 
山が高く 下に桶を走らせた
忍び泣き 私の泣く妻よ
ひとり泣き 私の泣く妻よ
今宵こそ 心安くその肌に触れたい

允恭天皇24年夏6月、
御膳の吸い物の汁が
氷を作り凝結しました。

天皇があやしみ、
その理由を占いさせました。

卜者(うらへのもの)は、
「内の乱れがあります。
思うに近親相姦ではないでしょうか」
といいました。

時にある人が、
「木梨軽太子が、
同母妹の軽大娘皇女を犯しました」
といいました。

よって、
推問すると、
その言葉は真実でした。

しかし、
太子は儲君(ひつぎのきみ)のため、
罪を罰することができません。

そこで軽大娘皇女を伊予に移しました。
この時、太子が歌って、

大君を 島に放り
船余り 
い還り来ぬぞ
我が畳斎め 言をこそ 
畳と言はめ 我が妻を斎め

訳・
大君を 島に放っても 
船が岸に当たり戻ってくるように
きっと帰って来るよ
私の畳にふれるな 言葉こそ 
畳といったが 私の妻にふれてはならぬ

また歌って、

あまだむ 軽乙女
いた泣かば 人知りぬべみ
幡舎(はさ)の山の 鳩の
下泣きに泣く

あむだむ 軽の乙女よ 
痛く泣けば 人が知ることになる
幡舎(はさ)の山の 鳩のように
しのび泣きに泣いている

近親相姦。本当かいな?

次期天皇の位を争い、
足の引っ張り合いの捏造じゃね?

、と一瞬思ったのですが、
允恭天皇の子どもは、
皇后の子どものみ。

外戚がからんでいる訳でもないし…
やはり、事実なのでしょうか。

さて、
禁断の恋の行く末は…

明日に続きます。

読んで頂き
ありがとうございました。


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