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リートリンの覚書

日本書紀 巻第十五 弘計天皇・顕宗天皇 五 ・皇位を譲り合う ・弘計、兄の願いを受け入れる




日本書紀 巻第十五 弘計天皇・顕宗天皇 五

・皇位を譲り合う
・弘計、兄の願いを受け入れる



十二月、
百官が大いにつどいました。
皇太子・億計(おけ)は
天皇の璽(しるし)を取って、
天皇の座に置いて、
再拝して諸臣の位について、

「この天皇の位は、
功ある者が就くべきだ。

貴を著して、
迎えられたのは、
みな弟の謀(はかりごと)だ」
といい、
天下を天皇に譲りました。

天皇は、顧みて、
弟であるからと敢えて、
位に即きませんでした。

また、
白髪天皇(しらかのすめらみこと)も、
まず兄に伝えたいと思い、
皇太子に立てたのであるからと、
後にも先にも固辞して、

「日や月が出ても、
灯火を消さなければ、
その光は難でしかない。

時に、
雨が降って、
猶も浸(ひた)し灌(そそ)ぐのは、
勞でしかない。

貴い弟というのは兄につかえ、
難(わざわい)から逃れるよう謀り、

徳を照らし、
紛(みだ)れを解き、
表立たないところにある。

すなわち、
表立てば、
弟の恭のことわりに反する。

弘計(をけ)は表立つに忍びない。

兄は友愛し、
弟が恭(つつしむ)のは、
不変の原則であると、
諸の古老に聞いた。

自分だけが軽んずることができようか」
といいました。

皇太子・億計は、
「白髪天皇は、
吾が兄というだけで、
天下の事を挙げて、
先に我に属(つ)けた。
我は恥じている。

考えてみると、
これ大王が、
はじめにたくみにのがれることを建てた。
これを聞く者は嘆息する。

帝の孫であることをあきらかに顕した。
これを見る者は、
かなしみ涙をながした。

憫々搢紳(うれえたるうまひとのこ)は、
よろこび、
天をいただく慶(よろこ)びを感じた。

哀々黔首(かなしびたるおおみたから)は、
よろこんで、
地をふむ恩に逢った。

これをもって、
よく四維(しい)を固め、
永く万葉(よろずよ)で
隆(さか)んになるだろう。

その功は、
造物主にちかく、
清い謀は世に映えている。

とおいかな、
はるかかな、
なんとも称することができぬ。

ただこれ兄といえども、
どうして先につくことができようか。

功がなくついたなら、
必ず咎悔(きゅうかい)に至る。

吾は聞いている。
天皇は久しく空位にしてはならぬと、

天命を譲ったり、
拒んだりしてはならぬと。

大王は社稷(しゃしょく)のことを計らい、
百姓のことを心がけてくれ」
といいました。

言を発するうちに、
慷慨(こうがい)し、
涙を流しました。

ここにおいて、
天皇は、つくことが無いと思っていましたが、

兄の意に逆らうまいと、
乃ち、聴き入れました。

御座には即(つ)いませんでした。

世は、
よく実に譲り合ったのをほめて、

「宜(よろしい)かなぁ、
兄弟が怡々(いい)として、
天下は徳に帰した。

親族が篤ければ、
すなわち、
民に仁を興す」
といいました。



・憫々搢紳(うれえたるうまひとのこ)
心配していた官人
・哀々黔首(かなしびたるおおみたから)
哀しんでいた人民
・四維(しい)
1・四つの方位 2・国家を維持するのに必要な四つの基本的な事柄。礼・義・廉・恥をいう
・万葉(よろずよ)
万世
・咎悔(きゅうかい)
悔いる。後悔する
・慷慨(こうがい)
1・気持ちが高ぶっている。2・物惜しみない
・怡々(いい)
喜び楽しむさま



(感想)

清寧天皇5年12月、
百官が大勢集まりました。
皇太子・億計は天皇の璽(しるし)を取って、
天皇の座に置いて、
再拝して諸臣の位について、

「この天皇の位は、
功績ある者が就くべきです。

貴い身の上を著して、
迎えられたのは、

みな弟の計画です」
といい、

天下を天皇に譲りました。

天皇は、顧みて、
弟であるからと敢えて、
天皇位に即きませんでした。

また、
白髪天皇も、
まず兄に伝えたいと思い、
皇太子に立てたのであるからと、
後にも先にも固辞して、

「日や月が出ても、
灯火を消さなければ、
その光は難でしかない。

時に、雨が降って、猶も
水を注ぎ続けることは、
苦労でしかない。

貴い弟というのは兄に仕え、
難(わざわい)から逃れるよう画策し、

徳を照らし、
乱れを解き、
表立たないところにある。

すなわち、
表立てば、
弟の恭の理に反する。

弘計は表立つに忍びない。

兄は友愛し、
弟が恭(つつしむ)のは、
これ不変の原則であると、
諸々の古老に聞いた。

自分だけが軽んずることができようか」
といいました。

皇太子・億計は、
「白髪天皇は、
私が兄というだけで、
天下の事を挙げて、先に私につけた。
我は恥じている。

考えてみると、
これ弟王が、

初めに巧みに逃れることを決めた。
これを聞く者は嘆息する。

帝の孫であることを明らかにに顕した。
これを見る者は、
悲しみ涙をながした。

心配していた官人は、
よろこび、
天をいただく喜びを感じた。

哀しんでいた人民は、
喜んで、
地をふむ恩に逢った。

これをもって、
よく四つの方位を固め、
永く万世で盛んになるだろう。

その功績は、
造物主に近く、
清い謀は世に映えている。

遠いかな、
遥かな、
なんとも称することができない。

ただこれ兄といえども、
どうして先につくことができようか。

功績がなくついたなら、
必ず後悔するだろう。

私は聞いている。
天皇は久しく空位にしてはならぬと、

天命を譲ったり、
拒んだりしてはならぬと。

大王は社稷のことを計らい、
百姓のことを心がけてくれ」
といいました。

言葉を発するうちに、
気持ちが高ぶり、
涙を流しました。

ここにおいて、
天皇は、つくことが無いと思っていましたが、

兄の意に逆らうまいと、
乃ち、聴き入れました。

御座には即(つ)いませんでした。
世は、よく実に譲り合ったのをほめて、

「よろしいかなぁ、
兄弟が喜び楽しむさまは、
天下は徳に帰した。

親族が篤ければ、
すなわち、民に仁を興す」
といいました。

途中、お姉さんが政治を行なったりと、
実に長い譲り合いでしたね。

さて、天皇になった弘計王の
今後はいかに。

明日に続きます。

読んで頂き
ありがとうございました。


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