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リートリンの覚書

古事記 下つ巻 現代語訳 十八


古事記 下つ巻 現代語訳 十八


古事記 下つ巻

墨江中王の反乱


書き下し文


 本、難波宮に坐しし時に、大嘗に坐して、豊明爲たまふ時に、大御酒にうらげて、大御寢ましき。尓して其の弟墨江中王、天皇を取らむと欲いて、火を大殿に著く。是に倭漢直の祖、阿知直、盜み出でて、御馬に乘せまつり、倭に幸でまさしむ。故多遲比野に到りて、寤め詔りたまはく、「此間は何處ぞ」とのりたまふ。尓して阿知の直白さく、「墨江中王、火を大殿に著けつ。故率まつり、倭に逃ぐるぞ」とまをす。尓して天皇歌ひ曰りたまはく、
丹比野に 寝むと知りせば
防薦も 持ちて来ましもの
寝むと知りせば
 波邇賦坂に到り、難波宮を望見けたまへば、其の火なほ炳し。尓して天皇また歌ひ曰りたまはく、
波迩布坂 我が立ち見れば
かぎろひの 燃ゆる家群
妻が家あたり
 故大坂の山の口に到り幸でましし時に、一の女人に遇へり。其の女人の白さく、「兵を持てる人等、多た茲の山を塞ふ。當岐麻道より迴り、越え幸でますべし」とまをす。尓して天皇歌ひ曰りたまはく、
大坂に 遇ふや嬢子を
道問へば 直には告らず
當岐麻路を告る
故上り幸でまして、石上神宮に坐す。


現代語訳


 本(もと)、難波宮(なにはのみや)に坐(いま)した時に、大嘗(おほにえ)にお臨みになられ、豊明(とよのあかり)をなさる時に、大御酒(おほみけ)にうらげて、大御寢(おほみね)になられました。尓して、その弟・墨江中王(すみのえのなかつみこ)は、天皇を取ろうと欲(おも)って、火を大殿に著(つ)けました。ここに、倭漢直(やまとのあやのあたい)の祖、阿知直(あちのあたい)が、盜(ぬす)み出(い)でて、御馬(みま)に乘せて、倭(やまと)に幸(い)きました。故、多遅比野(たぢひの)に到り、寤(さ)めて、仰せになられて、「此間(ここ)は何處(いづく)だ」と仰られました。尓して、阿知直が、申し上げることには、「墨江中王が、火を大殿に著けました。故に、お連れして、倭に逃げました」と申しました。尓して、天皇が歌い、仰せになられて、
丹比野(たじひの)に 寝むと知りせば
防薦(たつごも)も 持ちて来ましもの
寝むと知りせば 
 波邇賦坂(はにふざか) に到り、難波宮を望み見たところ、その火は、なほも炳(あか)るく。尓して、天皇はまた歌い、仰せになられて、
波迩布坂 我が立ち見れば
かぎろひの 燃ゆる家群
妻が家あたり
 故、大坂の山の口に到り幸でました時に、一の女人(をみな)に遇いました。その女人が、申し上げることには、「兵(つわもの)を持っている人等が、多くこの山を塞ぎました。當岐麻道(たぎまぢ)より迴り、越え幸(い)でてください」と申しました。尓して、天皇が歌い、仰せになられて、
大坂に 遇ふや嬢子(をとめ)を
道問へば 直(ただ)には告らず
當岐麻路を告る
故に、上り幸でまして、石上神宮に坐した。



・大嘗(おほにえ)
即位の年の新嘗祭
・うらげて
うらぐ・楽しい気分になる。浮かれる。いい気持ちになる
・大御寢( おほみね)
お休みになる 
多遅比野(たぢひの)
現在の大阪府松原市や羽曳野市の辺り
炳(あか)
 光り輝くさま。あきらかなさま


現代語訳(ゆる~っと訳)


 初め、履中天皇は、難波宮においでになった時に、大嘗祭にお臨みになられ、饗宴をなさった時に、大御酒をお飲みになり、楽しい気分になり、お休みになられました。

この時、その弟・墨江中王は、天皇を殺そうと思い、大殿に火を着けました。

ここに、倭漢直の祖先、阿知直が、密かに天皇を助け出し、御馬に乗せて、大和に行きました。

そして、多遅比野に到着したところで、天皇が目が覚めて、
「ここ、どこだ」といいました。

そこで、阿知直が
「墨江中王が、大殿に火をつけました。それで、お連れして、大和に逃げました」といいました。

そこで、天皇が歌い、

丹比野で
寝ると知っていたなら
薦の屏風でも
持って来ればよかった
寝るとわかっていたなら

 波邇賦坂に到着し、難波宮を遥かに見たところ、その火は、依然として赤く光って見えました。

そこで、天皇はまた歌い、

波迩布坂に
私が立って見ると
(陽炎のように)
燃える宮殿群
妻の家の辺りも見える

 それから、大坂の山の入り口に到着した時に、一人の女性に遇いました。

その女性が、
「武器を持った人たちが、多数この山を塞いでいます。當岐麻道より迴り、越えてください」といいました。

ここで、天皇が歌い、

大坂で
出会った乙女に
道を尋ねると
真っ直ぐに
當岐麻路を告げた

そこで、當岐麻道を上りになられて、石上神宮いらっしゃりました。



続きます。

読んでいただき
ありがとうございました。







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