Officer's '70s Theater

'70年代の恐竜的ハイパワー車ファンが昔を懐かしむブログ

宇宙空母ギャラクチカ

2010-04-12 21:21:46 | 映画(航空)
 1978年の古い映画(TVドラマ)ですが、観るとなぜか見慣れた感じがします。それは、この作品で宇宙人や宇宙船のSFXを製作した(当時、模型使用型SFXの第一人者を揃えた)スタッフが次にスターウォーズ第一作(Episode4)を創り上げたからです。
 模型SFXの円熟期(CG合成型SFXへの世代交代の直前)に製作された本作品及びスターウォーズ第一作はいわば「旧世代の集大成」だった訳です。

 遠い銀河の彼方、機械帝国サイロン対人類の永年にわたる戦いに休戦協定が結ばれる歓迎式典のシーンでこの映画は始まります。「人類を絶滅させる」という単純・不変な目的のもとに行動する冷血非道の機械帝国に対して和平を求めるという時点で何か不吉なものを感じます。
 案の定、裏切り・奇襲に遭って機動艦隊はギャラクチカ1隻を除いて全滅。更に12殖民惑星が無差別爆撃されて膨大な人命が失われ、もはや生活を続けられないほどに人類は追い詰められます。
 勝ち誇った機械帝国が容赦なく追跡してくる中で、生き残った人々をありとあらゆる雑多な宇宙船220隻に乗せて、人類唯一の戦力である宇宙空母ギャラクチカに守られながら「伝説の13番目の殖民惑星=地球」に向かって手探りで流浪の旅に出る人類・・・

ただ一人、敵の計略を見抜いた百戦錬磨の渋い軍人、アダマ提督。
誠実で真面目なハンサム飛行士アポロはアダマの長男。
アダマの次男ザックは「出たがりの」見習い飛行士。
遊び人で美女に弱いハンサム飛行士スターバック。
ブリッジクルーの美女アテナはアダマの娘でザックの姉。
サイロン機械兵は目の部分が「ナイトライダーのナイト2000」みたいに常時左右に点滅往復する「古典的なロボットのイメージ」で、歩兵も操縦士も全く同じ外観です。(製作はナイトライダーと同じグレン・A・ラーソン。)

 和平条約締結式で真っ先に敵の奇襲部隊を発見したギャラクチカの偵察機。敵機の大群に追われて逃げ帰る姿をレーダーで捉えたアダマは「未確認機の大群が我が艦隊に向かっています。」と総代表に警告しますが、「きっとサイロンの表敬使節団だろう。発砲してはならんぞ。」と無視されてしまいます。
 被弾して速度の落ちた偵察機は帰艦直前に撃墜されて爆発。それを見た人類総代表が「今の爆発は何だね?アダマくん。」と通信します。アダマが「私の息子(ザック)が乗った偵察機です。総代表・・・」と返信し絶句するシーンが印象的です。

 すぐに敵機の大群は艦隊に襲い掛かり、ただ一隻戦闘準備していたギャラクチカ以外は迎撃機を発進させる暇も無く一方的に破壊されてゆきます。
 でも、なぜ敵は攻撃機だけが来て母船(デス・スターのような機動要塞)の姿が無いのか?アダマは「敵母船は別の攻撃作戦に従事しているのだろう。」と看破します。つまり艦隊が出払って無防備な人類12惑星への攻撃作戦(!)
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 「宇宙空母」という和訳には違和感があります。ギャラクチカは100機の宇宙戦闘機を収容する巨大宇宙船で、艦内で自給自足が可能な一個の巨大都市。むしろ機動要塞と呼ぶべきです。英語ではギャラクチカもサイロン母船も一律にバトルスター(戦闘星)と呼ばれています。
 表記といえば、「宇宙空母ギャラクティカ」では当時の新聞のTV欄に収まらなかったので1文字削って「宇宙空母ギャラクチカ」としたのは有名な話です。
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 2003年になって「ギャラクティカ・リ・イマジニング・シリーズ」としてリメイクされたのですが、歴史設定と主役のキャラが大幅に変更された為、私は馴染めませんでした。
(例えば、飛行士スターバックはなんと、女性ですw)

ファイアフォックス

2010-04-03 19:45:17 | 映画(航空)
1982年のアメリカ映画。クリント・イーストウッド主演。
原作小説はクレイグ・トーマス著。ソビエトで完成した最新鋭高速戦闘機ミグ31ファイアフォックスを盗んでアメリカに乗って帰ろうという工作員(に任命された米国人戦闘機パイロット:ミッチェル・ガント)のお話。

 著者は函館空港へのベレンコ中尉亡命事件(当時世界最速のミグ25フォックスバットに乗ってソ連軍基地を脱走。日本の防空警戒網を突破して函館空港に強行着陸した大事件。)にヒントを得たと言われている。

 当時は「鉄のカーテン」と呼ばれるほどソ連の情報が少なく、ミグ25の存在が判ったのは「イスラエルのレーダーが敵機を捕捉し迎撃したが、迎撃戦闘機(マッハ2.1)を楽々と振り切って逃げ去った。後からレーダーの記録を解析したらマッハ3.3と算出された。」という状態。当時の対空ミサイルの最高速度はマッハ3だったので、この敵機が最高速度で逃げ続ければ自動追尾ミサイルは追いつけないまま燃料切れになる。西側諸国は慌てて対空ミサイルの軽量化・高速化に追われる事になった。
 2010年現在、対空ミサイルの最高速度はマッハ3.3~3.5に上がっており、各国の戦闘機は高速化よりもステルス化やデコイ発射によってミサイルから逃れる工夫に注力している。

 当時はまだミグ27までしか登場していなかったので、ミグ31は想像上の機体にすぎなかった。その数年後、本物のミグ31(フォックスハウンド)が登場したとき、映画とは似ても似つかない外観だったので、この映画は「見て見ぬふり」をされる存在になってしまった。

そう言えば米国のステルス戦闘機F117ナイトホークも本物が飛行する何年も前から想像図を元にF-19ステルスの名前で数社から違う外観のプラモデルが発売され、結局本物が登場したときは全く違った外観だったというような笑い話がある。

 原作小説はミッチェル・ガント操縦士のベトナム戦争のPTSD描写及びソビエトへ潜入後のロシア人鬼刑事の執拗な追跡とポーランド人協力者の命がけの援助というサスペンス部分が中心の「スパイもの」だが、映画は離陸後の空中逃亡が中心の「航空アクションもの」の味付けが濃くなっている。

 海面近くや雪原を音速飛行したときの「衝撃波で飛沫が巻き上がる」描写は「民間人が自分で体験する機会が全く無い」ので、とても迫力が有る。ただし空中戦の描写は「明らかに模型使用と判るチープな造り」なので、過大な期待はしないほうが良い。

 ステルス化装置、自動追尾ミサイル、脳波感知操作システムなど空想的な要素が沢山出てくるが、当時の航空ファンから見ると「お笑い」でしかなかった。
 函館のMIG25の実地検分の結果、ロシアは電子装置の技術が米国に比べて大幅に遅れており、強力なエンジンとブースターで最高速度だけは出せるものの「レーダーを含む射撃管制ソフトは米国より20年以上遅れている」と分析された。つまりドッグファイトに弱い「高価すぎる高速偵察機」としての価値しかない機体だと判明したのだ。

 余談だが、米国のマッハ3級航空機(SR71偵察機)は高い摩擦熱に晒される翼前部に高価なチタニウムを使っていたのに対し、MIG25は比較的安価な鋼鉄を使っていた事がこのとき判明し、米国軍事関係者を驚かせた。こうすれば安く出来るが機体は重くなり、エンジンパワーを余分に必要とし燃費も悪くなる。

トップガン

2010-03-20 13:56:16 | 映画(航空)
当時最先端の米国製豪華戦闘機「F-14トムキャット」を取上げた事で話題となった映画で、主役トム・クルーズの出世作です。
大ヒットしたので「ホットショット!」などのパロディー映画もたくさん作られました。
男性向け戦争映画と誤解されがちですが、ストーリー自体は「愛と青春の旅立ち」的なラブロマンス要素も入っているので、女性を連れて観に行ける映画でした。
1986年作品。
Top Gun - Danger Zone (Music Video)

私のような航空マニアの関心は「最高軍事機密のコックピットはどう描写されるのか?」でしたが、蓋を開けると「旧式のF4ファントムの計器盤と操縦幹」が写っていたので、「そりゃーそうだ罠」と妙に納得したのを覚えています。

敵機役は単座と複座のF5フリーダムファイターが勤めています。個人的にこの機体は好きなのですが、開発目的が「軽量安価な戦闘機」だったので常に「脇役」扱いで、対地攻撃・訓練・偵察・連絡・仮想敵機(飛行特性がミグ21に似ていた為)などに使われました。
米国内で大量採用されなかったので会社は外国(後進国・西側同盟国)への販売に注力せざるをえませんでした。短い滑走路で大げさな支援設備無しで簡単に運用できる点が評価され、スイスは「秘密基地から高速道路を利用して発着する防空戦力」として採用しました。帰還→給油→武器再装填→再発進のターンアラウンドタイムが短い事も利点でした。
映画の後半で「アイスマンのトムキャットが5機の敵機に追い回され、マーベリックが援護に向かう」シーンがありますが、プロのパイロットが高速でロール・シザース機動を行いながら複数機が乱舞する実写映像はF5の軽快性を証明しており、一見の価値があります。

F-14トムキャットの最大の売りは「自機のレーダーで同時に24目標を認識しながら、そのうちの6目標に同時にミサイルをロックオンして誘導できる」フェニックスAAMシステムでした。でもこの映画にはそんな最高軍事機密は一切出て来ません。旧式の赤外線誘導サイドワインダーミサイルだけを使用しています。ロックオン時のマーカー画面もF4とF5のものが使われています。
細かいことを言うと、最大6発のフェニックスを搭載すると「発射せずに帰還した場合」着艦時に重量オーバーでアプローチ速度が高くなり、タッチダウンで脚が折れる危険性があるので、せいぜい一機あたり4発(左右のバランスをとる為に偶数装備が基本)しか搭載・使用できない制限がありました。
安全な帰還の為にはミサイルを海に投棄すれば良いのですが、一発十億円以上もするフェニックスミサイルを捨てるのは税金の無駄使いであり、もし敵国に拾われたら軍事機密が漏れるので、それは事実上出来ません。

F-14のもうひとつの目玉は「速度や姿勢に応じて無段階にスムーズに動く自動式可変翼システム」でした。固定翼のF-15イーグルとの模擬空中戦ではその優位が証明されましたが、「常に潮風を受け、離着艦時に強い応力を受ける空母艦載機」としては部品点数が多く複雑な機構は「整備士泣かせ」だったようです。
結果として、空母の倉庫に「部品取り(ハンニバリズム)用の予備機」を複数抱えておかないと、まともに運用できない事態に陥りました。例えば空母に16機搭載していても、そのうち4機は部品欠品のため動作不能状態といった具合です。

更に「泣きっ面に蜂」で肥大化した重量に対してエンジンが出力不足のためパイロットは空中戦の最中に失速・墜落しないように神経を使わねばならず、米国議会の公聴会で「欠陥機だ!」と問題になる事態に発展。映画でも戦闘中のエンスト・墜落で相棒が事故死する姿が描かれています。
双発機は片方のエンジンが停止しても片発で飛行可能でなければなりませんが、上昇旋回中だと速度低下→空気流入量減少→残った片発も停止→墜落となります。
(※エンジンは初回分が耐用年数に達する頃にはより強力な新型に換装する予定だったが、開発遅延で旧型を増産しなければならないうえに新型の開発費高騰に拍車がかかる悪循環になった。)
重量増加に起因する設計変更と新型エンジンの開発失敗の結果、その価格は当初見積もりの一機150億円から納入価格400億円にまで高騰し、結果的にその超高価格が米国議会で再三問題になりF-14の退役を早めてしまいました。(2006年に全機完全に退役)
そのような様々な不利益に懲りた米海軍は、その後は可変翼戦闘機を一切採用していません。
また、このF-14の価格高騰問題を契機として比較的安価な軽量戦闘機F-16やF-17(後のF/A18)の開発と配備が加速されることになりました。

ちなみにロシアもミグ23フロッガーという可変翼機を作って配備しましたが、これは3段階の位置固定で、しかもパイロットが自分で判断して手動で角度をセットするという簡易な(比較的安価で壊れにくい)方式でした。
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 劇中で敵機を撃墜するミサイルはサイドワインダーと呼ばれる短距離型自動追尾式空対空ミサイルです。これはベトナム戦争時から存在する製品で、何度も改良を加えながら長く使われています。だからその操作方法も広く知られています。
 簡単に言うと敵機の発する熱をセンサーで感知し、その熱源に向かって突き進みます。上下左右に航路をとる動翼が付いているので、標的が逃げ回っても執拗に追いかけます。そして衝突直前に自爆して散弾銃のように破片を敵機に浴びせて墜落させます。
<操作方法>
まず敵機に接近し、出来れば背後にまわって攻撃位置につきます。敵機のエンジンの排気口が見える位置が最良ですが、最新のサイドワインダーは対面航行状態でも発射可能なほど精度が上がっています。
1.コンソールの武器選択スイッチで複数のミサイルのどれかを選択。
2.トリガーを半分引くと、リモートでミサイル先端のセンサー(シーカー)が動作開始し、「ピ・・ピ・・」というサーチ音が聞こえはじめます。
3.センサーが敵機の熱源を捕らえると音の感覚が短くなってゆき、「ピーーーー」という連続音になったらロックオン完了なのでトリガーを最後まで引き、リリース(発射)します。パイロットは「シーカーのトーンが良くなったので発射した。」という風に表現します。
4.もしもミサイルが外れた場合、トリガーに機関砲発射タブを被せます。トリガーを半分引くと機首のレーダーが敵機をロックオンできる状態になり、サーチ音が出ます。敵機の距離・方向・速度をコンピュータが計算し、敵機の未来位置にマーカーが表示されます。自機をそこに向ける(銃の照準点とマーカーを一致させる)と、ロックオン完了です。トリガーを最後まで引けば発砲されます。